没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

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急いでいる時こそ落ち着くべき

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 ルビーさんは猛スピードでセレノア方面へと飛んでいる。
 最初はそんな速さで移動したら、重力と風の影響を受けて振り落とされるんじゃないかと思ったけど、そのような影響は一切受けなかった。
 おそらくルビーさんが何らかの方法で、俺達を守ってくれているのだろう。

「ほら、ルリシアさん見て。もう帝都に到着したよ」

 今俺達は帝都の上空にいる。遥か下の方には城があり、最高の景色だ。これは空を飛べないと見ることが出来ないシチュエーションだ。

「む、無理ぃぃぃっ! こ、怖くて目が開けられないようぅぅ」

 そうだと思ったよ。
 実はルビーさんが空を舞ってから、ルリシアさんは俺の胸に顔を埋めて外を見ないようにしていたのだ。

「大丈夫ですよ。風の影響もないし景色が綺麗ですよ」
「ユートくん絶対に私から離れないでね! 離れたら私、大変なことになっちゃうから!」

 大変なこととはどんなことか気になるが、本当に怖がっているので、俺はルリシアさんが少しでも安心出来るよう抱きしめる。

「ユートくん⋯⋯」
「たぶんもうすぐ着くから、このまま目を瞑ってて下さい」
「うん! ありがとう」

 そしてあっという間にセレノアにある自宅まで到着した。

「ここに降りればよいのか?」
「はい。お願いします」

 ルビーさんは屋敷から少し離れた、開けた場所に降り立つ。

「ルリシアさん。着きましたよ」
「ご、ごめんなさい⋯⋯あ、足が震えて立つことが出来ない」
「なんじゃ情けないのう。ルセリアは我の背中に喜んで乗っておったぞ」
「そんなこと言われても、怖いものは怖いから仕方ないです」

 地面に降りても、ルリシアさんの恐怖は消えていないようだ。
 でもずっとルビーさんの背中に乗っている訳にもいかないし⋯⋯

「ルリシアさん、ちょっと失礼します」
「きゃっ!」

 俺はルリシアさんの膝裏と脇に手を回し持ち上げる。するとルリシアさんから可愛らしい声が聞こえてきた。

「ユユ、ユートくん!? きゅ、急にどうしたの!」
「少しだけおとなしくしてて下さい」

 俺はルリシアさんをお姫様抱っこして、ルビーさんの背中から飛び降りる。
 そして着地した後、ルリシアさんを地面に降ろした。

「どうですか? 立てますか?」
「う、うん」
「顔がすごく赤いけど大丈夫? 歩けなさそうだったら僕が家まで運ぼうか?」
「ううん! 大丈夫だよ! 衝撃的なことがあったから怖いのなくなっちゃった」
「衝撃的なことってなに?」
「な、何でもないよ。ユートくんは気にしないで!」

 気にしないでと言われると気になるけど、今はトアに竜の血を飲ませる方が先だ。
 俺は屋敷へと足を向ける。

「ユートくん!!」
「ユート様!」

 すると屋敷の方からセリカさんとソルトさんの声が聞こえた。

 わざわざ出迎えに来てくれたのか。
 二人ともトアの治療方法があると知ったら驚くぞ。
 俺はこの時、二人の喜ぶ顔を頭に浮かべていた。
 それにしても二人は全速力でこっちに向かってきているけど、そんなに俺に会えて嬉しいのかな?
 今までずっと一緒にいたから、数日離れるなんてことはなかったからな。
 俺も二人に会いたかったし、出迎えてくれることが凄く嬉しい。
 しかし二人は俺とは違うことを考えていた。

「ユートくん! 竜から離れて!」
「まさか食べるつもりですか? させませんよ!」

 えっ? えっ? もしかしてルビーさんのことを敵だと思ってる? トアの元へすぐに行くことしか考えてなかったけど、迂闊だった。
 確かに突然竜が現れれば、敵だと思ってもおかしくない。

「おもしろい。返り討ちにしてくれるわ!」

 しかもルビーさんまでやる気になっちゃってるよ。
 このままだと望まない戦いが始まってしまう。

「ストップ! ストップ! ルビーさんは敵じゃないから二人とも止まって!」

 俺は両手を激しく振って、静止するよう促す。

「ルビーさんも冗談はそのくらいにして、早く人間の姿になって下さい」
「これからおもしろい所じゃったのに。まあユートの願いなら聞かない訳にはいかんからな」
「に、人間!? どういうこと?」

 ルビーさんは俺の言葉通り、人間へと変身する。
 だけど何故か今回は最初から服を着ていた。
 それならなんで初めからそれをやってくれなかったんだ?

「この竜はルビーさんと言います」
「ルビー様⋯⋯ですか? まさかユートくんが竜を連れてくるなんて、思ってもいませんでした」
「そしてこちらは帝国のお姫様のルリシアさん」
「ルリシア・ウィル・デ・ヴィンセントです」
「お、お姫様!」

 セリカさんは二人の存在に驚き、再び叫び声をあげるのであった。
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