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入学試験(6)
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「行くよ!」
俺はシズルさんに向かって駆け走った。
素手での戦いは、一つだけこちらが圧倒的に不利なものがある。
それはリーチの長さだ。
俺とシズルさんでは倍まではいかないけど、それに近いくらいの差がある。
だから勝機を勝ち取るには懐に入り込んで、接近戦をするしかない。
だがそれはシズルさんもわかっているのか、胸部に向かって蹴りを放ってきた。
「くっ! 速い!」
本当はかわして懐に潜り込みたい所だけど、俺は受け止めることを選択する。
ぐっ!
こっちはパワーブースターで身体能力が上がっているのに、なんて蹴りだ。腕が痺れて痛いし、吹き飛ばされそうになったぞ。
「ほう⋯⋯今のを受け止めるか。面白い」
シズルさんは俺が蹴りを止めたことで、ニヤリと笑みを浮かべる。
そしてさらに右に左にと拳を繰り出してきた。
「お、重い⋯⋯」
一撃一撃が重く、一発でもまともに食らえば、致命傷になるのは間違いない。
「ハーハッハッ! 楽しい! 楽しいぞ! もっと私を楽しませてくれ!」
俺が拳を凌いでいるのが嬉しいのか、笑い声と共にさらに攻撃のスピードが上がってきた。
そんな気はしていたけどシズルさんは戦闘ジャンキーかよ。
いくら攻撃を防いでいるからといって、ダメージは蓄積されている。このままだと押しきられてしまうぞ。
だけど攻撃を何度も受け止めている内に、少しずつ拳のスピードに慣れてきた。
俺は向かって右ストレートに対してカウンターを合わせる。
だがシズルさんは俺の攻撃を察知していたのか、身を捻り拳を避けてしまう。
「油断も隙もないな。こちらのなすがままだと思ったが、反撃されるとは」
「今のはたまたま拳を出しただけですよ」
「そのようなことはない。あれだけ防戦一方でも少年の目は死んでなかった。今だって何か起死回生を狙ってる⋯⋯そんな目をしているぞ」
せめて油断してもらおうと謙遜してみたけど、シズルさんには通じないようだ。
やはり普通に戦ったらこの人には勝てない。
そして絶望的なことがもう一つある。おそらくシズルさんはまだ本気を出していない。
こっちは現状でもいっぱいっぱいなのに、これ以上の力で来られたら敗北は必須だ。
「あの子、何とかシズル様の攻撃を耐えてるわね」
「だけどあのシズル様相手に勝てるわけねえだろ」
「そうね。シズル様のジョブは拳聖だもんね」
拳聖だと!
拳聖といえばプラチナランクのジョブだ。
歴史的に名を残している人も何人もいる。
シズルさんはジョブにも恵まれている訳か。
「その表情は私が拳聖だって知らない顔だな。ジョブを聞いて怖じ気づいたのか?」
「冗談言わないでよ。例えジョブがプラチナランクだろうと諦める理由にはならないから。僕にはやらなきゃいけないことがあるんだ。例え相手がブラックランクでも負けるつもりはないです」
「お前⋯⋯いいね。益々気にいった」
「それなら負けてくれますか?」
「嫌だね。男なら勝利して自分の手で未来を切り開いてみな」
やはり模擬戦だろうと俺に勝ちを譲る気はないようだ。
こうなったらあの手を使うしかない。
そのためには少しでもいいから動きを止めないと避けられてしまう。だけどシズルさん相手にそうそう隙は作れるものじゃない。
何か手はないか。
早くしないと再びシズルさんが攻めて来て、考えるどころじゃなくなってしまう。
俺が持っているカードはマジックブースター(⭐3)、真実の眼(⭐2)、大岩(⭐1)、ポイズンスネークの毒(⭐2)だ。
単純に命を奪うならポイズンスネークの毒が有効だけど、さすがに毒を使ったら試験に落ちるし衛兵に捕まるだろう。
そうなると手持ちのカードは三枚になるけど、いずれも使えそうにない。
いや、ちょっと待てよ。俺には三枚のカード以外に使えるものがあるじゃないか。
たぶんシズルさん程の手練れには、二度は通じないと思うけど、初見なら隙を作ることが出来るはずだ。
「良い作戦でも浮かんだのかな?」
「さあ、それはどうでしょう」
まさか俺の心の中を読んだのか?
やはりシズルさんは末恐ろしい人のようだ。
「そろそろ決着をつけさせてもらうよ」
シズルさんがこちらに迫ってくる。
チャンスは一度きりだ。
俺はシズルさんの動きを止めるために、もう一つの武器を使用するのであった。
俺はシズルさんに向かって駆け走った。
素手での戦いは、一つだけこちらが圧倒的に不利なものがある。
それはリーチの長さだ。
俺とシズルさんでは倍まではいかないけど、それに近いくらいの差がある。
だから勝機を勝ち取るには懐に入り込んで、接近戦をするしかない。
だがそれはシズルさんもわかっているのか、胸部に向かって蹴りを放ってきた。
「くっ! 速い!」
本当はかわして懐に潜り込みたい所だけど、俺は受け止めることを選択する。
ぐっ!
こっちはパワーブースターで身体能力が上がっているのに、なんて蹴りだ。腕が痺れて痛いし、吹き飛ばされそうになったぞ。
「ほう⋯⋯今のを受け止めるか。面白い」
シズルさんは俺が蹴りを止めたことで、ニヤリと笑みを浮かべる。
そしてさらに右に左にと拳を繰り出してきた。
「お、重い⋯⋯」
一撃一撃が重く、一発でもまともに食らえば、致命傷になるのは間違いない。
「ハーハッハッ! 楽しい! 楽しいぞ! もっと私を楽しませてくれ!」
俺が拳を凌いでいるのが嬉しいのか、笑い声と共にさらに攻撃のスピードが上がってきた。
そんな気はしていたけどシズルさんは戦闘ジャンキーかよ。
いくら攻撃を防いでいるからといって、ダメージは蓄積されている。このままだと押しきられてしまうぞ。
だけど攻撃を何度も受け止めている内に、少しずつ拳のスピードに慣れてきた。
俺は向かって右ストレートに対してカウンターを合わせる。
だがシズルさんは俺の攻撃を察知していたのか、身を捻り拳を避けてしまう。
「油断も隙もないな。こちらのなすがままだと思ったが、反撃されるとは」
「今のはたまたま拳を出しただけですよ」
「そのようなことはない。あれだけ防戦一方でも少年の目は死んでなかった。今だって何か起死回生を狙ってる⋯⋯そんな目をしているぞ」
せめて油断してもらおうと謙遜してみたけど、シズルさんには通じないようだ。
やはり普通に戦ったらこの人には勝てない。
そして絶望的なことがもう一つある。おそらくシズルさんはまだ本気を出していない。
こっちは現状でもいっぱいっぱいなのに、これ以上の力で来られたら敗北は必須だ。
「あの子、何とかシズル様の攻撃を耐えてるわね」
「だけどあのシズル様相手に勝てるわけねえだろ」
「そうね。シズル様のジョブは拳聖だもんね」
拳聖だと!
拳聖といえばプラチナランクのジョブだ。
歴史的に名を残している人も何人もいる。
シズルさんはジョブにも恵まれている訳か。
「その表情は私が拳聖だって知らない顔だな。ジョブを聞いて怖じ気づいたのか?」
「冗談言わないでよ。例えジョブがプラチナランクだろうと諦める理由にはならないから。僕にはやらなきゃいけないことがあるんだ。例え相手がブラックランクでも負けるつもりはないです」
「お前⋯⋯いいね。益々気にいった」
「それなら負けてくれますか?」
「嫌だね。男なら勝利して自分の手で未来を切り開いてみな」
やはり模擬戦だろうと俺に勝ちを譲る気はないようだ。
こうなったらあの手を使うしかない。
そのためには少しでもいいから動きを止めないと避けられてしまう。だけどシズルさん相手にそうそう隙は作れるものじゃない。
何か手はないか。
早くしないと再びシズルさんが攻めて来て、考えるどころじゃなくなってしまう。
俺が持っているカードはマジックブースター(⭐3)、真実の眼(⭐2)、大岩(⭐1)、ポイズンスネークの毒(⭐2)だ。
単純に命を奪うならポイズンスネークの毒が有効だけど、さすがに毒を使ったら試験に落ちるし衛兵に捕まるだろう。
そうなると手持ちのカードは三枚になるけど、いずれも使えそうにない。
いや、ちょっと待てよ。俺には三枚のカード以外に使えるものがあるじゃないか。
たぶんシズルさん程の手練れには、二度は通じないと思うけど、初見なら隙を作ることが出来るはずだ。
「良い作戦でも浮かんだのかな?」
「さあ、それはどうでしょう」
まさか俺の心の中を読んだのか?
やはりシズルさんは末恐ろしい人のようだ。
「そろそろ決着をつけさせてもらうよ」
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俺はシズルさんの動きを止めるために、もう一つの武器を使用するのであった。
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