没落貴族のやりすぎ異世界転生者は妹の病を治すため奔走する~しかし僕は知らなかった。どうやらこの世界はショタ好きが多いようです~

マーラッシュ

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ダンジョン

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「えっ? 入学したばかりの俺達がクリア出来んの?」

 クラスメートから至極真っ当な意見が上げられる。

「大丈夫だ安心しろ。学園のダンジョンは入ったら最後、出口に行くまで出られない仕組みになっている」

 全然安心出来ないし大丈夫じゃない。それってクリアしなくちゃ出られないってことじゃないか。
 クラスメート達も俺と同じ想像をしたのか、表情が暗い。

「もしかして教員の先生達が一緒に行ってくれる感じですか?」
「いや、お前達だけで行ってもらう」
「でも先生達がいなくても、Sクラスの全員で行けば大丈夫じゃないかな」
「残念だが今回のダンジョン攻略は、三人のグループを六つと二人のグループを一つで行ってもらう。ちなみにこのダンジョンは入口が別々で、出口付近でしか合流出来ないことになっているからな」

 さっきからシズル先生から放たれる言葉は、全然安心出来る内容じゃないんだが。
 この人は俺達を絶望の渦に叩き落として楽しんでいるんじゃないかと、疑いたくなってきた。

「そしてグループは私が振り分けさせてもらう」

 シズル先生がグループを発表していく。
 ルリシアさんはカレンさんとニナさんと一緒のようだ。
 そして俺は⋯⋯フリードさんとのチームだった。

 フリードさんとか⋯⋯全然話をしたことないというか無視されているからな。
 こんなんでチームとして成り立つのだろうか。
 まさか俺への嫌がらせでフリードさんと組ませたのか? 教師がそんなことをするはずがないと思いたいけど、相手はシズル先生だからな。
 武に関しては認めているけど、性格面では信用出来ない。

「ホームルームは以上だ! それとユートはこの後職員室に来るように」
「わかりました」

 ホームルームが終わり、生徒達は教室から出ていく。
 俺もシズル先生に確認したいことがあったのでちょうど良かった。
 仮面の集団を捕らえる方法をホームルームで話すと言っていた。だけどシズル先生はダンジョンについてしか話をしていない。
 今の話にどんな意図があるか聞かなくては。

「僕は先生の所に行くけど」
「私達は教室で待ってるから」
「うん。わかった」

 俺はルリシアさんに一言残して、教室を後にする。
 そして廊下に出ると、シズル先生の姿が見えた。
 どうやら俺を待っていてくれたようだ。

「ユート、着いてこい」
「わかりました」

 俺はシズル先生の後ろを歩く。
 するとシズル先生は階段を昇り始めた。
 どうやら一階にある職員室には行かないようだ。もしかして屋上に行くのかな?
 俺の予想通り、シズル先生は階段を昇り切り、屋上へとたどり着いた。

「今日は良い天気だな。こういう日は仕事をサボるに限る」
「サボらないで下さいよ。それより仮面の集団の対策を聞かせて下さい」
「まあそんなに焦るな」
「焦ってはないですよ。何故この時期にダンジョン攻略をするんですか?」
「お前、私の話を聞いてないな。そんなに私の話が聞きたいなら教えてやろう」

 俺はシズル先生の言葉に息を飲む。

「今回の件は王家の問題が絡んでいると見ている。アイゼンシュッツ王国側から、怪しい素性の者達がゲレーヒトに入ってきた時期と、仮面の者達が現れた時期が一致しているしな」
「よくそんなことがわかりますね」
「こう見えてもSランク冒険者だからな。正当なルートでは手に入らない情報も知ることができる」

 非合法で手に入る情報という訳か。これはどうやって手に入れたかは聞かない方がいいな。

「王家ということは」
「ああ⋯⋯おそらく下らない後継者問題だ」

 どこの国も大変だな。後継者を決めると争いが起きるなんて。

「カレンさんが狙われるってことは、後ろで意図を引いているのはフリードさん?」
「それはまだわからん。だからお前が監視しやすいように二人でチームを組ませてやったんだ」
「どういうことですか? まさかダンジョンを攻略中にフリードさんを亡き者にしろって言うつもりじゃ」
「お前怖いことを口にするな。本当に十歳か?」
「⋯⋯十歳ですよ」

 ちょっとさっきの発言は子供っぽくなかったか。
 余計なことを口にするのはやめよう。

「だがまさにお前が考えていることを仮面の者達も実行するかもしれん。カレンがダンジョンに潜れば暗殺するには持ってこいの状況だろう」
「まさかシズル先生はカレンさんを囮にするつもりですか」
「入口は六つに分かれているが、基本一本道で、出口で合流できるダンジョンになっている。もしカレンを狙う者がいたなら、カレンと同じ入口を使うはず。そして出口で私は待ち構えているから⋯⋯」
「僕は入口からカレンさんを狙う人達を追い詰めろってことですね? それでもしフリードさんが関わっていたら、そのままフリードさんを拘束しろと」
「そういうことだ。それと明日仮面の者達がカレンを狙うとすれば⋯⋯Sクラスの中に仮面の者達と繋がりがある者がいる可能性が高くなる」

 確かに相手を逃がさず捕らえるなら、その方法はありだ。
 だけどカレンさんを囮にするのはちょっと気が引ける。

「長い時間狙われていると、肉体的にも精神的にも疲弊していく。だからなるべく早期に解決して、カレンを楽にしてやろうじゃないか。私とユートなら出来るだろ?」

 シズル先生はそこまで俺のことを買ってくれているのか。それとカレンさんのことをとても心配しているように見える。
 それなら多少危険はあるかもしれないけど、俺はシズル先生の問いに対して、はいと答えるしかなかった。




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