異世界を裏から支配する~表舞台は信頼できる仲間に任せて俺は無能を装って陰で暗躍する~

マーラッシュ

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天才剣士

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「澄ました顔してんじゃねえよ」
「俺達はちょっと付き合ってほしいって言ってるだけじゃねえか」

 こいつらはバカなのか?
 白昼堂々と少女に絡むなんて、捕まえて下さいと言っているようなものだ。
 今は神武祭で普段より人が多いから、その分衛兵も配置されているはず。

「私はあなた達に用はありません」
「お前がなくてもこっちにはあるんだよ!」

 男達は手は出していないが、明らかに少女を挑発している。
 もしかしたら少女が手を出すのを待っているのかもしれない。

「ユウトさん、見ていられませんよ。早く助けてあげた方が⋯⋯」
「いや、もう少し待とう」
「でもこのままでは⋯⋯」
「それならフローラが助けたらどうだ」
「わ、私が! 無理ですよ」

 初めての実戦を終えたばかりのフローラには厳しいか。だがその慎重な行動は望ましい。本当に怖いのは力だけの魔物ではなく、小賢しい知識を持っている人間だからな。

「あの少女も剣を腰に差しているから、腕に覚えがあるんだろう。万が一の時は助けるから安心して見ていろ」
「それならいいですけど」

 俺とフローラが小声で会話している間にも、男達の挑発行為は続いている。

「貴族だからといってお高く止まってるんじゃねえよ。いや、元貴族だったか」

 男達の言葉に少女の目が一瞬見開く。
 なるほど。あの少女は没落貴族という奴だったのか。
 少女の両親が王や領主の怒りを買ったのか、それとも何か犯罪を犯したのか。いずれにしても貴族として過ごして来たのなら、今の生活は少女にとって耐え難いものだろう。

 しかし少女は男達の挑発行為には乗らず、無視を決め込んでいる。

「ちっ!」
「やはりそう簡単にはいかねえか。こうなったら

 依頼? たまたま男達の近くにいたため聞こえたが、この少女を煽っているのは誰かに頼まれたからなのか?
 そして話を聞く限り、男達はこれから別の行動を移すようだ。

「こうなったら力ずくで言うことを聞かせてやる!」

 男達は方針を変えたのか、突然少女に襲いかかってきた。

「ユウトさん!」

 フローラの悲痛の叫びが聞こえたが、それは杞憂に終わる。
 なぜなら男達が少女に掴みかかろうとした瞬間、後方へと吹っ飛び、そのまま地面にひれ伏したからだ。

「えっ? 嘘!?」

 どうやらフローラは目の前の出来事が信じられないようだ。
 だが意外にも、周囲の人達はそうでもないらしい。

「さすがオルタンシアちゃんだ」
「13歳だが天才剣士と言われていることはある」

 街の人達にとって、このオルタンシアと呼ばれる少女が強者だということは、周知の事実のようだ。
 だから誰もオルタンシアを助けることをしなかったのか。
 そしてようやく衛兵達がこの場に現れた。

「騒ぎを起こしたのはこの男達か!」
「君も何があったか話を聞かせてくれないか」
「わかりました」

 衛兵達は意識を失った男達とオルタンシアを連れて、この場を離れていく。

「それにしても、あの人凄かったですね」
「少なくとも今のフローラより強いのは確かだ」
「うっ! 確かにそうですね。私にはあんなに大きな人をで気絶させることなどできません」

 、やはりフローラよりオルタンシアの方が強いことがわかるな。

「一発じゃない。三発だ」
「えっ? 本当ですか!」

 オルタンシアは男達三人に対してそれぞれ、みぞおち、胸部、顎に三発拳を食らわせていた。
 おそらく顎に一撃食らわすだけで、気絶させることは出来ただろうに。それなのにみぞおちと胸部にも拳を放つとは。余程男達の行動に腹が立っていたのだろう。

「私の拳を見切るなんて⋯⋯中々やりますね」

 どうやら俺の言葉がオルタンシアに聞こえたようだ。

「たまたまだ」
「なるほど。そう簡単に実力は語らないというわけですか」
「そういうわけではないけど」
「これは神武祭で戦うのが楽しみです。だけど私は家のためにも絶対に負けられません」
「だけど俺は12歳だから、あなたと戦うことはないですよ」
「そうですか。それなら来年を楽しみにしていますね」

 そしてオルタンシアは衛兵と共にこの場を立ち去る。
 しかし残念だが俺は神武祭に出るつもりはないがな。

「フローラは確か今年13歳になったんだよな?」
「はい」

 年は俺やリアと同じだが誕生日はフローラの方が早かったはずだ。

「俺の代わりにオルタンシアと神武祭で戦ってみるか?」
「無理無理無理ですよ!」

 俺の提案にフローラは全力で首を横に振っていた。
 強者と戦うのも経験になるが、そんなに嫌なら無理強いはしないでおくか。それに今のフローラなら、オルタンシアに勝利する確率は万に一つしかないからな。

 そして俺とフローラは騒ぎが終わったので馬車へと戻る。
 だがこの時の俺は、オルタンシアに対して悪意の視線を向けている者がいたことを知るよしもなかった。

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