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悪党は素直に敗けを認めない
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「何だかよくわからない間に試合が終わったな」
「まあ子供の戦いなんてこんなものだろう」
観客達も今の戦いを不自然に思わなかったようだ。
二人を除いては。
フローラとリアは顔を膨らませるているため、俺の勝ち方に不満を露にしている。
おそらく一瞬でモーノ倒し、スカッとした勝利を望んでいたのだろうが、俺には俺の考えがあるんだ。ここは我慢してくれ。
とりあえずこれで一回戦は勝利した。だが優勝するにはこの戦い方を後五回繰り返さなきゃならないのか。
目的のためとはいえ、ストレスが溜まるな。
「ちょっと待ちなさい! ボクちゃんが負けるなんてありえないわ! 何かずるい手を使って勝ったに決まっています!」
俺が闘技場を降りると、モーノの母親が今の決闘に言いがかりをつけてきた。
「外套なんか着て、怪しいったらありゃあしない! そうでしょみなさん!」
モーノの母親は数の暴力をするためか、周囲に同意を求め始めた。
「確かに顔を見せないのはおかしいよな」
「不正をしていないなら外套は取ってほしいかも」
「顔を隠すなんてもしかして犯罪者とか?」
まずいな。このままだと無理矢理外套を剥ぎ取られかねない。
「さあ、清廉潔白であるというならその外套を脱ぎなさい。そして不正を認め、ボクちゃんの勝ちを認めるがいいわ」
何故外套イコール不正なのか、モーノの勝ちを認めなければならないのか理解できないが、このままだと騒ぎは収まらないな。
こうなったらこの状況を静める禁断の方法を使うとしよう。
俺はチラリと上部へと視線を向けた。
すると俺の意図を理解したのか、透き通った声が周囲に響き渡る。
「静まりなさい!」
声は観客席の上部にいたリアから放たれた。
「不正の証拠もないのに決闘を愚弄するなど、この神武祭を汚す行為です。もし彼の者が外套を脱ぎ、不正の証拠が見つからなかった場合、貴女はどう責任を取るつもりですか?」
「そ、それは⋯⋯」
リアの言葉にモーノの母親や観客達は飲まれ、誰も声を発するものはいない。
なかなかどうして。その周囲を掌握した姿は王族に相応しいと言えるな。
元々素養はあったが、最近強くなったことで威厳が身についてきたようだ。
「も、申し訳ありませんでした」
「謝罪する相手が違うのでは?」
リアが指摘すると、モーノの母親が悔しそうな表情でこちらを向く。
「言いがかり⋯⋯をつけて⋯⋯も、申しわけ⋯⋯ありません⋯⋯でした」
「許そう」
明らかに心から謝罪している感じではないが、この場を長引かせれば、それだけ注目を浴びてしまう。目立ちたくない俺にとっては望む展開ではない。この場はさっさと終わらすのが吉だろう。
「リシアンサス王女の仰る通りだ」
「不正を決めつけるのはよくないな」
「それにしてもさすが王族だ。まだ幼いながらもさすがの貫禄だった」
現金な奴らだな。
王女の一言で考えを簡単に変えるとは。
だが今はその権力主義の考えはありがたい。
こうして神武祭の一回戦は幕を閉じた。
そして俺は二回戦以降も実力を隠しながらものらりくらりと戦い、決勝戦まで駒を進める。
決勝戦は明日のため、今日は俺の出番はもうない。
後は大人の部の戦いを見学するだけだ。
俺は一度闘技場から離れ、外套を取ってからフローラの席の隣に座る。
「いよいよ大人の部が始まりますね。オルタンシアさんは次の次です」
それでいい。
フローラはアンノウンとのことを隠すため、少年・少女の部での戦いについては語らない。
「フローラも飛び入り参加してみたらどうだ?」
「嫌ですよ。飛び入りして負けるなんて、ものすごくカッコ悪いじゃないですか。それよりもうオルタンシアさんの順番ですよ」
フローラの言葉通りオルタンシアが現れ、淡々と闘技場へと上がる。
「がんばれよ!」
「どこまで進めるか楽しみにしているぞ!」
「オルタンシアちゃんならきっと優勝できる!」
場内から割れんばかりの声援が飛び交う。
まさかこんなに応援する人がいるとはな。
とてもじゃないが、犯罪者の娘とは思えない。
普通なら罵詈雑言を言われてもおかしくないはずだ。
だがこの観客の声を聞いて思ったが、おそらく街の住民達もオルタンシアの父親がキルドを殺害したなんて、考えていないのだろう。
やはりキルドが殺された事件には、何か裏があるのは間違いなさそうだ。
「それでは⋯⋯はじめ!」
そしてオルタンシアの試合が始まった。
だがこの試合は最速で決着がつく。
何故ならオルタンシアが横一閃に剣を振り抜き、相手の剣を折ったからだ。
「まあ子供の戦いなんてこんなものだろう」
観客達も今の戦いを不自然に思わなかったようだ。
二人を除いては。
フローラとリアは顔を膨らませるているため、俺の勝ち方に不満を露にしている。
おそらく一瞬でモーノ倒し、スカッとした勝利を望んでいたのだろうが、俺には俺の考えがあるんだ。ここは我慢してくれ。
とりあえずこれで一回戦は勝利した。だが優勝するにはこの戦い方を後五回繰り返さなきゃならないのか。
目的のためとはいえ、ストレスが溜まるな。
「ちょっと待ちなさい! ボクちゃんが負けるなんてありえないわ! 何かずるい手を使って勝ったに決まっています!」
俺が闘技場を降りると、モーノの母親が今の決闘に言いがかりをつけてきた。
「外套なんか着て、怪しいったらありゃあしない! そうでしょみなさん!」
モーノの母親は数の暴力をするためか、周囲に同意を求め始めた。
「確かに顔を見せないのはおかしいよな」
「不正をしていないなら外套は取ってほしいかも」
「顔を隠すなんてもしかして犯罪者とか?」
まずいな。このままだと無理矢理外套を剥ぎ取られかねない。
「さあ、清廉潔白であるというならその外套を脱ぎなさい。そして不正を認め、ボクちゃんの勝ちを認めるがいいわ」
何故外套イコール不正なのか、モーノの勝ちを認めなければならないのか理解できないが、このままだと騒ぎは収まらないな。
こうなったらこの状況を静める禁断の方法を使うとしよう。
俺はチラリと上部へと視線を向けた。
すると俺の意図を理解したのか、透き通った声が周囲に響き渡る。
「静まりなさい!」
声は観客席の上部にいたリアから放たれた。
「不正の証拠もないのに決闘を愚弄するなど、この神武祭を汚す行為です。もし彼の者が外套を脱ぎ、不正の証拠が見つからなかった場合、貴女はどう責任を取るつもりですか?」
「そ、それは⋯⋯」
リアの言葉にモーノの母親や観客達は飲まれ、誰も声を発するものはいない。
なかなかどうして。その周囲を掌握した姿は王族に相応しいと言えるな。
元々素養はあったが、最近強くなったことで威厳が身についてきたようだ。
「も、申し訳ありませんでした」
「謝罪する相手が違うのでは?」
リアが指摘すると、モーノの母親が悔しそうな表情でこちらを向く。
「言いがかり⋯⋯をつけて⋯⋯も、申しわけ⋯⋯ありません⋯⋯でした」
「許そう」
明らかに心から謝罪している感じではないが、この場を長引かせれば、それだけ注目を浴びてしまう。目立ちたくない俺にとっては望む展開ではない。この場はさっさと終わらすのが吉だろう。
「リシアンサス王女の仰る通りだ」
「不正を決めつけるのはよくないな」
「それにしてもさすが王族だ。まだ幼いながらもさすがの貫禄だった」
現金な奴らだな。
王女の一言で考えを簡単に変えるとは。
だが今はその権力主義の考えはありがたい。
こうして神武祭の一回戦は幕を閉じた。
そして俺は二回戦以降も実力を隠しながらものらりくらりと戦い、決勝戦まで駒を進める。
決勝戦は明日のため、今日は俺の出番はもうない。
後は大人の部の戦いを見学するだけだ。
俺は一度闘技場から離れ、外套を取ってからフローラの席の隣に座る。
「いよいよ大人の部が始まりますね。オルタンシアさんは次の次です」
それでいい。
フローラはアンノウンとのことを隠すため、少年・少女の部での戦いについては語らない。
「フローラも飛び入り参加してみたらどうだ?」
「嫌ですよ。飛び入りして負けるなんて、ものすごくカッコ悪いじゃないですか。それよりもうオルタンシアさんの順番ですよ」
フローラの言葉通りオルタンシアが現れ、淡々と闘技場へと上がる。
「がんばれよ!」
「どこまで進めるか楽しみにしているぞ!」
「オルタンシアちゃんならきっと優勝できる!」
場内から割れんばかりの声援が飛び交う。
まさかこんなに応援する人がいるとはな。
とてもじゃないが、犯罪者の娘とは思えない。
普通なら罵詈雑言を言われてもおかしくないはずだ。
だがこの観客の声を聞いて思ったが、おそらく街の住民達もオルタンシアの父親がキルドを殺害したなんて、考えていないのだろう。
やはりキルドが殺された事件には、何か裏があるのは間違いなさそうだ。
「それでは⋯⋯はじめ!」
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だがこの試合は最速で決着がつく。
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