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シャドーの異変
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今1番あってはならない事態はノノちゃんが殺され、リリが連れ去られることだ。
拘束されているノノちゃんとシャドーまでの距離は10メートル程。今なら俺は両手足にダメージを負っているため、シャドーは油断しているかもしれない。
このまま殺られるなら一か八か特効をかけてシャドーを道連れにしてやる。
俺は一瞬の隙でも見逃さないためにシャドーの一挙手一投足に細心の注意を払う。
「次はどこに短剣を刺すか⋯⋯心臓かそれとも額にするか」
シャドーは俺にとどめを刺すつもりなのか急所への投擲を言葉にする。
くそっ! シャドーの警戒心が少しでも解けるのを待っているが圧倒的有利な立場でもその動きに油断はなく、いよいよ状況は厳しくなってきた。
こうなったら黒き短剣を投げた瞬間に突撃をかけてノノちゃんを救うしかない。
俺は覚悟を決めてシャドーの攻撃を待つ。
「もうやめて⋯⋯これ以上血を流したらお兄ちゃんが死んじゃう⋯⋯誰かお兄ちゃんを助けて!」
ノノちゃんの悲痛の叫びが周囲に響くが、このくらいのことではシャドーの隙を作ることなど出来ない⋯⋯と思っていたが突然シャドーはノノちゃんの拘束を解き左手で頭を抑え苦しみ始める。
「ぐ⋯⋯あっ⋯⋯」
「お兄ちゃん!」
そしてシャドーの手から容易に逃れることが出来たノノちゃんはこちらへに向かって走ってくる。
なんだ? 何か今シャドーを苦しめる要因があったのか?
だけど今はそのことを考えるよりこの好機を逃すわけにはいかない!
「完全回復創聖魔法」
俺は自分に回復魔法をかけてシャドーにつけられた傷を治す。
「お兄ちゃぁぁん!」
そして涙を流しながら走ってきたノノちゃんを抱きしめ、俺の背後に降ろすと地面に落ちた剣を拾いシャドーへと向かう。
「リリ、ノノちゃんを頼む」
「任せて」
俺はノノちゃんの護衛をリリにお願いして、シャドーの頭部を狙ってカゼナギの剣を振り下ろす。
シャドーは右手に黒き剣を持っているが左膝を地面につき十分な体勢が取れていない。どこかの赤い人も言っていたがチャンスは最大限に生かさせてもらうぞ。
「くっ! その程度の攻撃で!」
シャドーは黒き剣でカゼナギ剣を防ぐが俺の攻撃は終わらない。剣を防いだはずのシャドーの肩が鎧ごと深く切り裂かれ、赤き血が滴り落ちる。
「き、貴様⋯⋯何をした!」
シャドーは先程まで無抵抗の俺をいたぶり余裕の態度を取っていたが、思わぬ攻撃を食らったためか感情を露にする。
今俺がシャドーにダメージを与えたのは、以前皇帝陛下との戦いに使ったカゼナギの剣に魔力を込め、細く鋭い真空の刃をイメージして斬りつけるやつと同じ方法だ。
だけど本当は急所である頭部に食らわせて一撃で蹴りをつけるつもりだったが、シャドーは何か危険を察知したのか、俺が剣を打ち込んだ際に首をひねり真空の刃をかわしたのだ。
しかしダメージは大きい。シャドーを逃がしたら今後どのような手を使って俺を殺しに来るかわからないためこのまま一気にカタをつける。
「どこぞの悪役のようにペラペラ喋ると思うか? あなたのような危険人物はここで消えてもらう!」
俺はシャドーにとどめを刺すため再びカゼナギの剣に魔力を宿し、真空の刃を打ち込む。
だがシャドーは先程食らった一撃が頭の中にあったのか、剣を受けずに身を屈めてかわす。だが肩に傷を負っているせいか動きは鈍かったため、剣をかわされた後に俺はシャドーの顔面を狙って右足で蹴りを放つ。
すると蹴りは見事頭部に直撃しシャドーを後方へ吹き飛ばすと同時に、シャドーの黒き仮面を剥ぐことに成功する。
これがシャドーの正体か。
シャドーはこれまでの言動から冷酷なイメージがあったけど素顔は以外に優男の風貌で髪の色は俺と同じ黒髪だった。
シャドーは俺の蹴りを食らって地面に倒れているため今なら殺れる!
俺はカゼナギの剣を手にシャドーへと駆け出す。
「あっ!」
だが俺は突如聞こえてきたノノちゃんの声に思わず足を止めてしまう。
まさか他にも敵がいたのか!
俺は背後にいるノノちゃんに視線を向けるが特に異常は見られない。
「あ⋯⋯あの⋯⋯ご、ごめんなさい」
何故ノノちゃんが突然声を上げたのか意味がわからなかった。だけど今はノノちゃんが声を上げた理由を考えるよりシャドーを倒すことが先決だ。
しかしこの一瞬の出来事が致命傷だった。
シャドーの身体の半分は既に影に入っていたのだ。
「ぐっ⋯⋯あ⋯⋯お、覚えていろよ。今回は予期せぬことが起きたが次は必ず」
「待てシャドー!」
俺はカゼナギの剣に魔力を込めて風の衝撃波を放つが、シャドーは既に影の中へと消えてしまい攻撃が当たることはなかった。
シャドーを倒し損ねたことは痛いがとりあえずノノちゃんを取り戻せたしリリを護ることができた。
後はおびただしい数の魔物を倒して街の脅威を取り除くだけだ。
俺はカゼナギの剣を手に視線を魔物へ移す。
すると先程まで動きを止めていた魔物達は南へと撤退し始めた。指示を出していたシャドーが退却したからだろうか。
こうして俺はシャドーに殺されかけたが何とか人質に取られたノノちゃんを助け出すことができ、そして南門から魔物達を撤退させることに成功するのであった。
拘束されているノノちゃんとシャドーまでの距離は10メートル程。今なら俺は両手足にダメージを負っているため、シャドーは油断しているかもしれない。
このまま殺られるなら一か八か特効をかけてシャドーを道連れにしてやる。
俺は一瞬の隙でも見逃さないためにシャドーの一挙手一投足に細心の注意を払う。
「次はどこに短剣を刺すか⋯⋯心臓かそれとも額にするか」
シャドーは俺にとどめを刺すつもりなのか急所への投擲を言葉にする。
くそっ! シャドーの警戒心が少しでも解けるのを待っているが圧倒的有利な立場でもその動きに油断はなく、いよいよ状況は厳しくなってきた。
こうなったら黒き短剣を投げた瞬間に突撃をかけてノノちゃんを救うしかない。
俺は覚悟を決めてシャドーの攻撃を待つ。
「もうやめて⋯⋯これ以上血を流したらお兄ちゃんが死んじゃう⋯⋯誰かお兄ちゃんを助けて!」
ノノちゃんの悲痛の叫びが周囲に響くが、このくらいのことではシャドーの隙を作ることなど出来ない⋯⋯と思っていたが突然シャドーはノノちゃんの拘束を解き左手で頭を抑え苦しみ始める。
「ぐ⋯⋯あっ⋯⋯」
「お兄ちゃん!」
そしてシャドーの手から容易に逃れることが出来たノノちゃんはこちらへに向かって走ってくる。
なんだ? 何か今シャドーを苦しめる要因があったのか?
だけど今はそのことを考えるよりこの好機を逃すわけにはいかない!
「完全回復創聖魔法」
俺は自分に回復魔法をかけてシャドーにつけられた傷を治す。
「お兄ちゃぁぁん!」
そして涙を流しながら走ってきたノノちゃんを抱きしめ、俺の背後に降ろすと地面に落ちた剣を拾いシャドーへと向かう。
「リリ、ノノちゃんを頼む」
「任せて」
俺はノノちゃんの護衛をリリにお願いして、シャドーの頭部を狙ってカゼナギの剣を振り下ろす。
シャドーは右手に黒き剣を持っているが左膝を地面につき十分な体勢が取れていない。どこかの赤い人も言っていたがチャンスは最大限に生かさせてもらうぞ。
「くっ! その程度の攻撃で!」
シャドーは黒き剣でカゼナギ剣を防ぐが俺の攻撃は終わらない。剣を防いだはずのシャドーの肩が鎧ごと深く切り裂かれ、赤き血が滴り落ちる。
「き、貴様⋯⋯何をした!」
シャドーは先程まで無抵抗の俺をいたぶり余裕の態度を取っていたが、思わぬ攻撃を食らったためか感情を露にする。
今俺がシャドーにダメージを与えたのは、以前皇帝陛下との戦いに使ったカゼナギの剣に魔力を込め、細く鋭い真空の刃をイメージして斬りつけるやつと同じ方法だ。
だけど本当は急所である頭部に食らわせて一撃で蹴りをつけるつもりだったが、シャドーは何か危険を察知したのか、俺が剣を打ち込んだ際に首をひねり真空の刃をかわしたのだ。
しかしダメージは大きい。シャドーを逃がしたら今後どのような手を使って俺を殺しに来るかわからないためこのまま一気にカタをつける。
「どこぞの悪役のようにペラペラ喋ると思うか? あなたのような危険人物はここで消えてもらう!」
俺はシャドーにとどめを刺すため再びカゼナギの剣に魔力を宿し、真空の刃を打ち込む。
だがシャドーは先程食らった一撃が頭の中にあったのか、剣を受けずに身を屈めてかわす。だが肩に傷を負っているせいか動きは鈍かったため、剣をかわされた後に俺はシャドーの顔面を狙って右足で蹴りを放つ。
すると蹴りは見事頭部に直撃しシャドーを後方へ吹き飛ばすと同時に、シャドーの黒き仮面を剥ぐことに成功する。
これがシャドーの正体か。
シャドーはこれまでの言動から冷酷なイメージがあったけど素顔は以外に優男の風貌で髪の色は俺と同じ黒髪だった。
シャドーは俺の蹴りを食らって地面に倒れているため今なら殺れる!
俺はカゼナギの剣を手にシャドーへと駆け出す。
「あっ!」
だが俺は突如聞こえてきたノノちゃんの声に思わず足を止めてしまう。
まさか他にも敵がいたのか!
俺は背後にいるノノちゃんに視線を向けるが特に異常は見られない。
「あ⋯⋯あの⋯⋯ご、ごめんなさい」
何故ノノちゃんが突然声を上げたのか意味がわからなかった。だけど今はノノちゃんが声を上げた理由を考えるよりシャドーを倒すことが先決だ。
しかしこの一瞬の出来事が致命傷だった。
シャドーの身体の半分は既に影に入っていたのだ。
「ぐっ⋯⋯あ⋯⋯お、覚えていろよ。今回は予期せぬことが起きたが次は必ず」
「待てシャドー!」
俺はカゼナギの剣に魔力を込めて風の衝撃波を放つが、シャドーは既に影の中へと消えてしまい攻撃が当たることはなかった。
シャドーを倒し損ねたことは痛いがとりあえずノノちゃんを取り戻せたしリリを護ることができた。
後はおびただしい数の魔物を倒して街の脅威を取り除くだけだ。
俺はカゼナギの剣を手に視線を魔物へ移す。
すると先程まで動きを止めていた魔物達は南へと撤退し始めた。指示を出していたシャドーが退却したからだろうか。
こうして俺はシャドーに殺されかけたが何とか人質に取られたノノちゃんを助け出すことができ、そして南門から魔物達を撤退させることに成功するのであった。
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