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帰還

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 俺達はドルドランドから、ジルク商業国の国境沿いまで来ることが出来た。
 ドルドランドに向かう時は盗賊に足止めをされた。しかし今回は魔物は現れたけど、盗賊の類いと会うことなくここまで来れた。
 ウサン州からドルドランドに来ていた荒くれ者達の中に、盗賊達がいたのか? それとも荒くれ者達が捕まったことで、自分達もこのままだとやばいと感じ、逃げた可能性もある。
 何にせよ。治安が良くなったことは良いことだ。
 そしてジルク商業国に入ったが、こちらは盗賊はおろか、魔物の姿すら見当たらない。
 これはズーリエの冒険者達が、治安をしっかりと維持してくれているからだろう。
 そのため、ズーリエの街にはすぐに到着することが出来た。
 日は既に暮れており、暗闇が辺りを支配している。
 俺達は街に到着すると、すぐにカレン商店へと向かった。

「ただいま」
「ただいま~」

 そして光が灯ったカレン商店に入る。

「リックちゃん、ノノちゃん。お帰りなさい」
「二人ともお帰りなさい」

 店には母さんとおばあちゃんがいて、俺達を出迎えてくれた。

「お母さん、おばあちゃん、会いたかった!」

 ノノちゃんは母さんとおばあちゃんの胸に飛び込む。
 すると二人はノノちゃんを優しく抱きしめた。

「私もノノちゃんに会いたかったわ」
「おばあちゃんもよ」

 ノノちゃんは母さんとおばあちゃんに会えたのが嬉しいのか、笑顔が溢れている。
 目の前の三人が、幸せな家族だと思うのは俺だけじゃないはず。
 ノノちゃんに帰るべき場所が出来たのなら、本当に嬉しいことだ。
 これはドルドランドに戻る時、ノノちゃんはズーリエにいてもらった方がいいかもしれないな。

「あら? 後ろにいるのはサーシャちゃんじゃない」
「メメメ、メリス様! カ、カレン様! ご無沙汰しております! せせ、先日はお世話になりました! あいたっ!!」

 サーシャは頭を下げすぎて、近くにあった机におもいっきり頭をぶつけていた。

「だ、大丈夫か?」
「大丈夫です⋯⋯でも痛いです」

 緊張しているのか、それともドジっ娘の称号が関与しているのか。
 とにかく痛みをとるために、俺はサーシャに回復魔法をかけた。

「ありがとうございます。コホンッ! メリス様、カレン様、ご無沙汰しております。先日はお世話になりました」

 どうやらもう一度やり直したらしい。
 今度は噛まずに言えたようだ。
 サーシャのドジっ娘称号は限定的となっているが、今この状況は何か関係しているのだろうか? 
 少し気になるな。

「サーシャちゃん大丈夫?」
「はい。お見苦しい所をお見せしました」
「そんなことないわ。サーシャちゃんはいつも通り素敵な女の子よ」
「ありがとうございます。ですがお二人の美しさには敵いません。是非その秘訣を教えて頂きたいです」
「そうね――」

 何だか話が長くなりそうだ。
 女性陣を置いて俺はリビングへと向かう。
 すると椅子に座っているおじいちゃんの姿が見えた。

「おじいちゃん、ただいま」
「ああ⋯⋯」

 相変わらずおじいちゃんは素っ気ないな。
 だけど暫くこの光景も見れなくなると思うと、少し寂しくなる。
 俺はおじいちゃんに背を向けて自室へと向かう。
 そして一時間程経つと、夕食の時間となったので、俺はその場でドルドランドで起きたことを話す。

「だから暫くズーリエには戻らないと思うんだ」
「なんじゃと!」

 俺が話終えると突然おじいちゃんが大声を上げた。
 び、ビックリした。おじいちゃんがこんなに感情を露にするのを初めて見たぞ。
 何か気になることでもあったのか?

「おじいさんどうしたの? まさかリックくんがこの家から離れるのが寂しいの?」
「べ、別にわしはリックがいなくても寂しくなんかない!」

 そう言っておじいちゃんは席を立ってしまうのであった。

 おじいちゃんside

 リビングを出たおじいちゃんは直ぐ様自室へと駆け込む。
(な、なんじゃと! リックが家を出ていく! そんなバカなことがあってたまるか! リックはずっとここにいて結婚し、曾孫を作って、そして家族に見送られながら、あの世に旅立つというわしのプランが⋯⋯これも素直にならなかったわしへの罰なのか! 女神様、どうかわしのささやかな夢を潰さんでくれ!)

 おじいちゃんは俺の知らぬ所で、思いの丈を心の中で叫ぶのであった。
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