狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する

マーラッシュ

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変わらぬハリスさん

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「申し訳ありませんでした!」

 役所の応接室では、頭を地面につくくらい下げているルナさんの姿があった。

「いや、約束したの今日の朝だし、ルナさんは忙しいから仕方ないよ」

 俺は昼過ぎに役所に到着したが、太陽はもう沈みかけていた。

「すみません。これも全てラフィーネのせいです。ルナ代表をブレイヴ学園に出向させるよう提案したのはラフィーネですから。お陰で出向するまでにやらなくてはならない仕事がこんなに。不満があるなら直接ラフィーネへお願いします。もし言いにくいようでしたら私から文句を言いましょうか? ルナ代表がいなくなることで、私がむさい男達の中で働かなくてはならなくなったと。こうなったら有給休暇を申請して私もブレイヴ学園に⋯⋯」
「ちょっとハリスさん! それはやめて下さい! 私がブレイヴ学園に行っている間は、ハリスさんが街を運営していくことになっていますよね? それに私はこのお話を頂き、とても光栄に思っています。ラフィーネ様にご迷惑をおかけするようなことは、絶対に言わないで下さいね」
「ということで、今回お待たせしてしまったことに関しての苦情はしないで頂けると助かります」
「最初から苦情を言う気はありませんよ。ハリスさんがルナさんと一緒にいたいから、ラフィーネさんに文句を言いたいだけでしょ。俺を巻き込まないで下さい」

 この人は相変わらずだな。
 だけど甘く見たら痛い目を見るということはわかっている。
 だから俺はこの人の前で隙をみせるようなことはしない。

「ふふ⋯⋯私の目論見を見破るとはやりますね」
「いや、誰でもわかるようなことを褒められても⋯⋯」
「さすがはドルドランドの領主になるだけはありますね。それにアルコール度数の高いお酒も気になります」

 さ、さすがハリスさんだ。
 俺がドルドランドの領主を要請されていることや、ウイスキーのことも知っているんだな。
 やはりこの人は油断ならない。だけどこれからする話に関係あるのでちょうどいい。

「そのことで少しお話が⋯⋯ズーリエはブドウが名産品なんですよね?」
「そうですね。味は以前食べて頂いた通りです」

 確かにあれは美味しかった。前世で食べたものと遜色なかった。

「それではこちらを飲んでみて下さい」

 俺は異空間から飲み物を取り出して、コップに注ぐ。

「これは⋯⋯以前ラフィーネ様に出した物ですよね」
「この香り、この味わい、最高ですな」

 二人は一度飲んでいるので、ワインの味は知っているはずだ。

「この飲み物⋯⋯ワインを作ってみませんか? 主な材料はブドウなのでズーリエで作ることは可能――」
「本当ですか!?」

 俺が言葉を終える前にルナさんが反応する。

「は、はい。簡単に作れますよ」

 ワインの作り方を創造魔法で出した本で調べたけど、エールより楽に作れる。
 ブドウを粉砕、もしくは圧搾して果汁をアルコール発酵させる。そして樽に詰めて熟成させた後、ろ過して濁りを除いたら完成だ。

「ハリスさん! すぐにワインを作製する予算を組んで下さい! 貧民街の整備が終わったらすぐに取り掛かりますよ!」

 ルナさんはやる気満々だな。
 ワインという品物に対して、商売人の血が騒いだのかもしれない。

「このワインがあればズーリエの経済が回り、潤うこと間違いないです! そしてワイン作りが上手くいけば、いつでも飲むことが⋯⋯えへへ」

 いや、どうやら自分の私欲も少し入っているようだ。ルナさんもアルコールが好きなんだな。

「リックくんは素晴らしい提案をしてくれました」
「ズーリエに良質なブドウがあったからですよ」
「アルコールは人の理性と意思を狂わせます。酔わしてしまえばガードの硬いアリアちゃんも⋯⋯キリッ」

 ハリスさんは真面目な顔をして、ゲスな言葉を発している。
 アリアちゃんって誰ですか。
 あ~⋯⋯何かワインの作り方を教えたくなくなってきた。
 ハリスさんの毒牙にかかる人をなくすためにも、ズーリエでワインを作らない方がいいかもしれない。
 俺は冷ややか視線をハリスさんに送る。

「⋯⋯もちろん冗談ですよ。これでズーリエの経済が潤い、美味しいワインを提供できますね。街の人達のためにも、この計画を成功させないといけません」

 絶対にこの人は自分の私欲しか考えてないだろう。
 何かこの後のことを言いたくなくなってきた。
 しかし俺がズーリエにいられる時間も限られているので、伝えない訳にはいかないだろう。

「⋯⋯これも飲んでみて下さい」

 俺は異空間から新たにボトルを取り出し、コップに注ぐ。

「これは⋯⋯お酒? 先程のワインと違って琥珀色をしていますね」
「まさか他にも新しい酒があるなんて⋯⋯さすがリックくんです」

 そして二人はコップにある酒を飲み干すが、想定外の味に、驚きを隠せないのであった。
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