狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する

マーラッシュ

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いざ、ブレイヴ学園へ

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 翌日の早朝

 皇帝陛下は昨日の内にシュバルツバインに戻って行った。
 そして俺とサーシャ、エミリア、そしてノノちゃんはブレイヴ学園へと旅立つため、領主館の前にいた。

「エミリア、気をつけてね」
「サーシャも元気で」

 アンジェリカさんとソフィアさんは、これから旅立つ娘と抱擁を交わしていた。

「ママ、ドルドランドのことお願いね」
「お母様もお元気で」

 仲が良い親子の姿は見ていて気持ちが良いものだ。
 だがその姿を羨ましそうに陰から見ている者達がいた。
  
「エ、エミリア⋯⋯パパとの抱擁はないのか」
「ソフィアには嫉妬してしまいますね」

 イシュバル公爵とフェルト公爵は俺の横でポツリと呟く。
 めんどくさいな。この父親達は。

「自分達で抱きしめてほしいって言ったらどうですか?」
「バカヤロー! それで断られたらどうするんだ! 二度と立ち直れなくなるぞ!」
「やれやれ。子を持ったことのない若者はこれだから困りますね。私達に死ねと言うのですか?」

 この人達本当にめんどくさい。
 だけどこのめんどくさいおっさん達は、ドルドランドに残ってアンジェリカさんとソフィアさんのサポートをしてくれるようだ。それにブレイヴ学園に行っている間、ドルドランドに残るリリのことを守ってくれると約束してくれた。
 仕方ないなあ。ここは二人に手を貸してあげるが。

「エミリア、サーシャ」

 俺は二人の名前を呼び、一瞬父親達に視線を向ける。そして頼むと頭を下げると意図を理解してくれたのか、二人はため息をつきながら父親の所へ向かい、抱擁を交わす。

「パパ、ママのことを助けてあげてね」
「お父様、リリナディアさんのことをよろしくお願いします」

 余程嬉しかったのか、抱きしめられている父親達は涙を流していた。
 どれだけ娘のことが好きなんだと言いたい所だが、将来俺も娘を持てば二人のようになるかもしれない。
 だからとやかく言うのはやめよう。

「ドルドランドのことは俺に任せてくれ!」
「誰であろうとリリナディアさんには指一本触れさせませんよ。サーシャは父を信じて、お役目を全うして下さい」

 どうやら父親達は満足しているようだ。これで張り切ってリリナディアのことを守ってくれるだろう。
 そして願わくば、これから俺に敵意を向けないでくれると助かる。

「アンジェリカお姉ちゃん、ソフィアお姉ちゃん、ノノ行ってくるね」
「ノノちゃんは本当に可愛いわ」
「家に持って帰りたくなってしまうわね」

 ノノちゃんがアンジェリカさんとソフィアさんに抱きしめられている。
 だが二人の愛情が強すぎるのか、ノノちゃんが胸に埋もれて苦しそうだ。
 実はノノちゃんもブレイヴ学園に行くことになった。
 ドルドランドに残るならそれでもいいと思っていたが、俺達に着いていくことを選択してくれた。
 正直俺としてはかなり助かった。
 俺とサーシャとエミリアの三人だと、もし二人がケンカをしてしまったら、どうやって止めればいいのか悩んでいた。
 だけどノノちゃんがいれば、上手く二人の緩衝材になってくれるはずだ。
 それにノノちゃんはフィアナさんと同じ十四歳だ。もしかしたら二人は友達になれるかもしれない。そのような希望もあったので、ノノちゃんがついてきてくれて、凄く感謝している。

「それではリック様、そろそろ参りましょうか」

 サーシャの言うとおり、名残惜しいけどそろそろ出発の時間だ。
 別れの挨拶も終わり、俺達は改めてアンジェリカさん達と向き合う。

「リック、不本意だがエミリアのことを頼むぞ」
「サーシャのこともお願いします」

 珍しく父親達が真面目な顔で話しかけてきた。

「ニナとは少しの間、一緒に旅をした仲間でもあるんだ。だからフィアナのことは俺達も気になっていた」
「ニナさんが姿を消した時、皇帝陛下はとても肩を落とし、そして何故すぐに帝国に連れて来なかったのか後悔していました」
「あんなに落ち込んだエグゼルドは見たことなかったぜ」

 あの皇帝陛下が落ち込む? それだけニナさんは大事な人だったということか。

「フィアナさんのこと頼みましたよ」
「この私がいるのよ。大丈夫に決まってるわ」
「お父様達のご期待に答えてみせます」

 皇帝陛下には、ザガト王国を追い払うために力を貸してもらった恩がある。
 必ずその任務を遂行してみせるぞ。
 こうして俺達はアンジェリカさん達に見送られながら、北西にあるブレイヴ学園へと向かうのであった。

―――――――――――

この度「狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する」の第三巻がアルファポリス様より、5月22日に書籍化することになりました。 
 また、書籍化に伴い、大改稿、改題しました。 
書籍の内容は新しい展開が盛り込まれており、既に今作を読んでくださった方でも楽しめる内容となっております! 
エミリアと新キャラが活躍する巻となっています。
これも皆様のご尽力のおかげです。
狙って追放に関わってくださった全ての皆様に感謝申し上げます。 もし書店で【狙って追放】を見かけた際にはお手に取っていただけると嬉しいです!
そしてコミカライズ化も始動しています。小説共々読んで頂けると幸いです。
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