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ウメヤキ村編
第5話「コンキオリン摘出手術」
しおりを挟む無事にコンキオリンがベーゼに転移し、二人は自宅に戻った。
「さて、ベーゼ、何か言い残したことは?」
「日本に売られている抹茶アイスのほとんどがカイコガの糞を使っている」
「最後に絶望的な事実をぶっ込むのはやめてください」
「ついでにイチゴ味のアイスクリームとかに使われている食紅もコチニールカイガラムシ」
「やめなさい!! 知らない方がいい現実をぶち込むのはやめなさい!! じゃあ切開しますからね!」
ナトは剃刀を取り出してコンキオリンと腕の肉の間に刃を滑り込ませる。
「思った以上に深いですね……」
「俺の懐の話かな?」
「余裕そうですね。痛くありませんか?」
「オオスズメバチと良い勝負」
「そうですか」
ナトは手際良くベーゼの腕を切開してコンキオリンを引っこ抜く。
「いってええ!」
「まずはひとつ目です」
「あと何個あんだよ」
「六つですね」
「六つ、言い出したのは俺だが理不尽だなこれ」
「次から徐々に深い部分に食い込んだコンキオリンを取り出します」
「つまり?」
「もっと痛いです」
「麻酔とかありません?」
「諦めてください」
「だよな……いっっ!」
テーブルにはベーゼの鮮血が滴る。
「しんどいな」
「あなたの選んだ道です」
「厳しいね」
「事実です」
「ギャンブルやめたら? ヴッ!!」
「あっ!!」
「いてえええええええええ!!!! 手滑らせたろ!!」
「ごめんなさいごめんなさい!! ギャアアアアアアアアざっくり裂けてる!」
「おいおいおいおいおい!!!! 死んだわ俺……」
「大丈夫です太い血管には……あー切れちゃってますね」
「はぁ!? やってんねえ!」
「どうしましょう!!」
「糸を使って血管を縫い付ける。裁縫得意だろ?」
「え、そんなんで良いんですか!?」
ナトは大きく深呼吸して剃刀を持ち直す。
「このまま一気に全部摘出します。荒っぽくなりますが我慢してください。そのあと一気に縫います」
「わかった。任せる」
ナトは一気に剃刀で切り開き、コンキオリンを摘出する。
テーブルには血だまりができはじめていた。
「あとひとつ!!」
最後のコンキオリンを摘出するとナトは剃刀を投げ置いて両手をベーゼの右腕にかざす。
「ユニークスキルを使います」
「え、何それ?」
ナトの指先からは肉眼で見えるか怪しいくらい細い糸が現われて傷口に先端が突き刺さる。
「なんだこれ!?」
「私のユニークスキル『灰色の祈り手』は魔力で練り上げた超高硬度の糸を自在に操ることが出来ます」
全ての傷口が縫合を開始し、ベーゼの血管や神経、筋肉が縫われていく。
「うわすげえ」
「ユニークスキルの話はしていませんでしたか?」
「うん、してねえな」
「ユニークスキル、ゲームなどで言うところのキャラのが持つ固有能力のことですね。それらを総称してユニークスキルと呼びます。魔法の適性を上げるものから私のように魔力糸を自在に操るようなものまであります」
「ファンタジーって感じがしてきたな」
「そうですね、ちなみに私のユニークスキルは厳密に言えばユニークスキルが進化したものでスペリオルスキルと呼ばれるものです」
「なるほど! 俺には何があるんだ?」
「だいたい10歳くらいでユニークスキルが発現し始めます。正確にスキルを知りたいなら鑑定することでわかりますが15歳以上にならないと鑑定できないのがネックですね」
「わかった、あと五年かぁ……」
「私の子なので何かしらのスキルがあると思いますが、一般的に無い人の方が多いです。魔法だって使える人はあまり多くないのですから」
「そうだ魔法! 俺使えるのかな?」
「そちらも15歳になったら鑑定でわかりますよ」
「そっちも15歳か……なんで15歳なんだ?」
「鑑定の魔法が安定するのが15歳くらいだそうです。おそらく人間の体が大人になると安定してくるのだと思いますよ」
「なるほどなるほど」
「さて、とこれで縫い終わりましたよ」
「おー、見事な縫合だな」
「裁縫は得意中の得意ですので。今包帯を巻きますね」
ナトは上機嫌だった。
「んでも、これ、落ちるのか?」
ベーゼは真っ赤に染まったテーブルを指差す。
「まぁ、良い具合に着色できたということで」
「右手が使え無いから掃除お願いするよ」
「はいはい」
ナトは魔力糸を使って掃除道具を自在に操り始める。
「え、一度も見たことねえけどそんなことまでできるの!?」
「隠していてすみません『灰色の祈り手』はこの世界でも有数の強いスキルです。なので変な噂を流されないようにと思っていました」
「それがどうして?」
「ベーゼ、今のあなたの身体能力ならよほどの手練れでもない限り力負けすることはありません」
「んー? どういうこと?」
「もしも悪い奴らにあなたを人質に取られてしまったら私は言いなりにしかならないということです」
「あ、なるほど」
「しかも私の力を使えば村一つ鏖殺するのは容易いです」
「へ?」
「そちらの言葉で言うのなら私は戦略兵器になれるということです」
「へー……はっぁ!?」
「ユニークスキルもさることながら私は女神の権能として呪詛も司っています。魔力ももちろん女神ですから神並にありますし」
「え、うちのお母さん強すぎ?」
「女神ですから」
「それもそうか……」
「隠していてすみません……」
「謝らなくていいよ」
ナトは何千とある糸を操り家事と仕事を全て平行して作業する。
「何はともあれ、ケルブスが助かって本当によかった!」
「ケルブス君、あれ以上呪いが進行しなくて本当によかったです」
「そうだな」
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