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カニカマ学園編
第8話「無理難題の試験」
しおりを挟む「さぁーて、あんたたち五年の成果見せなさいよ」
ピンク色の髪を持つ背の低い女は仁王立ちで意気揚々と二人の男に向って言う。あまりの勢いに膨らんだ胸がポヨンと動く。
男の一人は銀色の髪にすらりと伸びた背、紅蓮の双眸が光る二枚目、ケルブス・ルカヌス。
もう一人の男は黒髪に黒目、発達した筋肉が服の上からでもわかるほど膨張している。右腕にはメカバレデザインのアームカバーを装備したタフガイ、ベーゼ。
「うん、アドルフィネ安心して、僕たちは必ず合格するから」
「見てろよ。この五年で俺とケルブスは特訓したからな!」
「気合いは文句なしね! あんたたちカニカマ学園の席をもぎ取ってきなさい!」
「カニカマかぁ……うん、なんかすごい気が抜ける名前」
「何言ってるのよ? カニカマは聖典にも記された――」
「いやいいから! 試験に集中するわ」
「そうね! ベーゼの無い頭で頑張りなさい!」
三人がいる場所は、ハンペン王国が誇る貴族をはじめとした金持ちが集まる名門学校、カニカマ学園だ。
そして今日は高等部入学試験当日である。
「じゃあ、二人とも頑張りなさい! 特にケルブスは頑張って!」
「俺はぁ?」
「ベーゼは、受かれば良いんじゃない?」
「お前さぁ……」
「冗談よ。二人とも合格したらご馳走したげる!」
「それは期待してるよ!」
「楽しみにしてるからな!」
そんな会話をしながらベーゼとケルブスは試験会場に意気揚々と向っていった。
入学試験の内容は午前中が筆記試験、午後は実技試験で特に重視される試験だ。試験の内容は闘技場で一般的に弱いとされる魔物の討伐が課題となる。
「やぁ、君たち」
金髪の青年が二人の行く手を遮るように割り込んでくる。
「初めまして。僕はリナレウス・モリター・テネブリオ、カニカマ学園高等部一年、つまるところアドルフィネの同級生に当たる。よろしく」
「こちらこそ、ご丁寧にありがとうございます」
ケルブスは深々と頭を下げる。ベーゼもその様子を追うように頭を下げる。
「しかし、アドルフィネの従者は可哀想だね。まさかFクラスに配属されるなんてね!」
リナレウスは嫌みったらしく言う。
「どういう意味でしょうか?」
「そのままの意味だよ。アドルフィネはカニカマ学園の鼻つまみ者クラスであるFクラスに振り分けられたんだ。その従者として入る君たちもFクラスというわけだ。まぁ、君たちのような汚い平民がカニカマ学園の敷居を跨げるだけでも光栄か」
ベーゼは眉間に皺を寄せた。その表情に気付いたケルブスは咳払いをして注意を促す。
「僕たちはアドルフィネと一緒なら結構です。平民なのでここを卒業したら貴族の皆様とも二度と顔を合わせることはないと思いますので」
「そうか、確かにそうだ。だけど平民風情と三年も顔を合わせなきゃいけないこっちの身にもなれよ。アドルフィネもだ! 金も無ければ地位も無い弱小貴族がキャンキャン吼えるだけでこっちは目障りだ」
「聞いてりゃおま――」
「申し訳ありません。そろそろ筆記試験があるので失礼します」
リナレウスを横切る瞬間、悪辣な笑みを浮かべているのをベーゼは見逃さなかった。
「なぁ、アドルフィネってなんかやったのか?」
「彼女のことだ、黒を黒と言わなきゃいけないのに白と言ってしまったんだろう」
「あー……何となくわかってきた。面子でも潰されたのかね?」
「あの子らしいね。どっちにしろ、僕らは合格するしかない」
「そうだなケルブス、この試験何かあるかもな」
「どうした?」
「あのリナレウスがどうにもキナ臭い」
「ベーゼ……用心しよう。この試験、僕たち以外を信用できないのかもしれない」
「ああ、上等だ」
二人は筆記試験の教室に入り、席に着く。
しばらくすると教官とリナレウスが入ってくる。
「では試験を始めます。問題は一問一答形式でその場で成否がわかるようにします。これは答案用紙のすり替え対策のためです。一問渡して一問答える。制限時間内で解けた問題数をそのまま得点します」
「今回、平民のために特別ルールを与えよう。どうせアドルフィネの従者しか試験を受ける者はいない。二人一組仲良くひとつの試験を受けることを認める」
カニカマ学園は初等部から高等部までエスカレーター式の学校であるため、高等部からの編入は珍しい。現に今回の試験の受験者はベーゼとケルブスだけだ。
試験管が答案用紙を渡し、魔力作動式のタイマーを起動する。
かくして筆記試験が始まった。
「さぁて、問題は?」
「ベーゼ、これ」
ケルブスは問題を指差すとベーゼは顔を歪めた。
「こいつは入試のレベルじゃねえな……」
「やられたね……」
「だが舐められたもんだな」
「うん、そうだね」
「「この程度の問題、楽勝だ!」」
ベーゼとケルブスは難なく問題を解いていき、開始三十分で所定の問題を全て解き終えた。
「おい、リナレウスの顔みたか?」
「うん、見た見た。自分でも解けない問題をサクサク解かれて口をぽかんとしてたね」
「しかも五十問を三十分でだぜ? マジで笑えたわ!」
「さて、あのお貴族様のことはほっときたいのだけど次の実技試験、絶対何か仕掛けてくるよ」
「ああ、用心しねえとな。そういやケルブスの武器はどうするんだ?」
「僕は家にあった双剣を持ってきたよ。なんで家にあるのかわからないけど」
「体は大丈夫なのか?」
「正直言うとあんまりよくない。ごめんね虚弱体質で……」
「気にすんな、そのためにフィジカル担当の俺がいんだ」
「ベーゼは病気から限りなく遠そうだもんね」
「筋トレは免疫力を上げるからな」
「ふふ、じゃあ次の試験は期待してるよ。どうせ仕組まれているだろうし」
「次は何が来るのか」
「ケルブスとベーゼ、実技試験の準備が整いました。移動してください」
試験管の呼びかけがあるとベーゼとケルブスは立ち上がって武器を取る。
「ベーゼ、ひとつ使う?」
ケルブスが双剣の一振りをベーゼに差し出す。
「いや、刀剣を持つと震えが止まらなくなって動けなくなるからいいや。それに俺には拳があるからな」
「相変わらず刀剣恐怖症なんだね」
「何が原因なのかはサッパリだ」
闘技場に入ると、ベーゼは顔を上げる。
円形の会場は砂が敷き詰められて3メートルほど段差の上には観覧席が設けられている。
「まるでコロッセオだな。ここはギリシャかぁ?」
「ベーゼなんか言った?」
「独り言さ」
「気を引き締めて、来るよ」
「それでは実技を始める。試験内容は魔物の討伐、以上だ。なお危険な実技のため無理する前に棄権することを推奨する」
「試験管、棄権した場合はどうなりますか?」
「勿論落ちる」
「あ、はい」
ベーゼはため息をついて正面を向く。
対面のゲートから大きな影がゆっくりと近づいてくるのがわかった。
「おっと、これは……」
「やっぱ仕掛けて来やがったか」
豚のような顔に茶色い体には無数の傷が浮かんでいる。血走った目を見るにかなり痛めつけられて怒り狂っているのがベーゼにはよくわかった。
オークと呼ばれる魔物で人間を易々なぎ倒せる危険な魔物だ。それでもランクとして低い部類に入る。
オークが持つ丸太を削って作られた棍棒が高らかに持ち上げられる。
空気が徐々に張り詰める中、実技試験が始まった――。
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