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ウメヤキ村編
第7話「赤紫色の痣」
しおりを挟む季節は夏から秋になる。
「ベーゼ、荷物が届いたわよー」
「ありがと、ナト」
小包をナトから受け取ったベーゼは早速、包装を剥ぎ取って中身を取り出す。
「本?」
「アドルフィネからだ。手紙が挟まってるな。えーっとなになに『入学試験対策の本を送ります。これを全て頭に入れなさい。試験の流れとかも載っているわ。五年あるからと言って悠長な事をせず毎日コツコツやるのよ。アドルフィネ』だってさ」
「通りでこんなに分厚いわけなのですね」
「さーて内容は……」
ベーゼは教本をパラパラとめくって内容を確認する。
「出来そうですか?」
「これは……うーん、あー、そうだよな……」
ベーゼは目頭を押さえてため息をつく。
「難しい……ですよね」
「いや、その逆だ。めっちゃ簡単。言われてみりゃ高校受験だもんなぁ……」
「じゃあ、試験も!」
「余裕! 家庭教師のバイトしてて良かった。あとは実技試験か……Eクラスの魔物討伐の実演……?」
「冒険者が請け負う魔物討伐の一番簡単なやつですね。でっかい虫とかはぐれたゴブリンや小型の魔物ですね」
「じゃあ簡単だな」
ベーゼは右拳を握りしめて自分の力を信じる。
「手術、痛かったな」
ジワリと右手首に赤紫色の痣が浮かび上がる。
「あっつ! なんだこれ熱い!」
「ベーゼ!?」
「焼ける!」
痣からは白い煙が立ち上り、肉の焼ける臭いが立ち込める。ベーゼは台所に向かい水桶に右手を沈める。
一瞬の冷気がベーゼを熱から遠ざけるが、すぐに水桶の水がボコボコと気泡を上げて蒸気で視界を煙らせた。
湯気の隙間から右腕を見ると肘くらいまで痣がまるで巻き付くように登っていた。
「――――ァァッ!!」
「ベーゼ! 今助けます!」
痛みに苦しむベーゼをナトが抱きかかえると風呂に向い、水が張ってある湯船の中にベーゼを放り込む。
ベーゼの痣は大量の水でようやく冷やされて沈静化した。
「痛みが……熱が引いた……?」
「よかったです」
「ナト、これは?」
「この赤紫色で蛇が巻き付いたような痣は……」
「もうこれ完全にもののけのお姫様的なアレの主人公の呪いじゃん!」
「デザインが完全に祟り神の呪いのそれですね」
「……今は触っても何ともないな」
「これは……呪い?」
「ナトからみてこれは?」
「わかりません。呪いが混ざっているように見えます」
「混ざってる?」
「はい、これはおそらくユニークスキルだと思います。正確にはユニークスキルの代償としてこの痣が発現したというのが現状の見解です。それも確度はとても低いですけど」
「そうか……それで肝心のユニークスキルは?」
「検討もつきませんね」
「大事なとこが謎かよ!!」
「で、ですがこの代償なのですからきっととても強いユニークスキルに決まっています!」
「どうだかな」
「信じるものは救われます」
「足下が?」
「それは日頃の行い」
「そりゃそうか」
ベーゼは風呂から上がると服を着替え直し、右腕の状態を確認する。
「酷い痣だ肘くらいまで伸びてきてる」
「今は痛まないのですか?」
「大丈夫だ」
「発作の条件は一体何でしょう……」
「さぁな……」
「謎は深まるばかりですね。ひとまず腕は見えないようにしておきましょう」
ナトは、魔力糸を束ね始める。
「それ魔力糸で編む必要があるのか?」
「どうせなら一番いいものにしようかなとハイエンドアームカバーを」
「まぁ、これから何年もつけるものだし、質が良いに越したことは無いか」
「防刃防弾耐衝撃性も完備して、それから発作が起きたときの冷却機能も……」
「いやそこまでしなくても――」
「色は何色がいいですか?」
「任せる」
「デザインはどうしますか?」
「うーん、ニッチなやつでもなんでもご自由に。かっこいいほうが嬉しいな」
「わかりました」
数時間後、ナトは魔力糸を自在に操り、ベーゼの右腕にフィットするアームカバーを作成した。
「出来ました!」
「おお!」
「試着お願いします」
「わかった」
ベーゼはアームカバーを右腕に付けると絶妙なフィット感に驚いた。生地は明らかにファンタジーを逸脱している伸縮素材で良く伸び、適度な締め付けでズレが起こらないように設計されている。
そして極めつけがデザインである。
「なんで、アンドロイドが負傷して腕の中にある機械部分が露出したようなデザインになってるんですかね?」
「昨今流行と聞いたメカバレというやつですね。ベーゼが元いた世界を思い出して寂しくないようにと思って」
「おい、これじゃあサイエンスフィクションじゃねえかSFだよSF!!」
「ファンタジー世界で巨大ロボットが戦うものとかありますから!! 大丈夫です!」
「かっこいいし着心地もいいからこれでいいや」
「はーい、痣が全身に出てきたらベーゼロボットになっちゃいますね」
「うーわ、それちょっと笑えるかもアンドロイドじゃん」
「SF世界にようこそという感じですね」
「ファンタジーも良いけどロボットもかっこいいな、衛星からレーザーをぶっ放してるところ見てみたい」
「魔法で頑張ればできるかもしれませんね」
「楽しみだ。そのためにも勉強しないとな」
ベーゼは教本を開いて勉強を始める。
「さて、これからは午前中勉強の午後筋トレだな」
そして五年という月日が流れるのだった。
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