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カニカマ学園編
第15話「毒毛の少女」
しおりを挟む女子寮、プニューダの部屋の前にして三人は少し息を飲んだ。
「たまたま散髪してて、開けた瞬間毒ガスなんてこと無いわよね……」
「いやいや、そんなこと起こるわけないない」
「それは無いと僕も思うよ」
「流石にないわよね。じゃあノックするわ」
アドルフィネは扉を三回叩く。
返事はない。
「え、留守?」
「ちょっと待て」
ベーゼがドアノブに手を掛けると鍵が掛かっていないことがわかった。
「開いてるな」
「確か寮のルールで在室の時は鍵を開けるんだったよね」
「ええそうよ、万が一の病気などで倒れたときすぐに駆けつけられるようにね」
「あ、あれそんな理由だったのか」
「このバカ!」
「そんな怒るなよ。それで開けるか?」
「ベーゼが開けて、私とケルブスで中に入るわ」
「わかった。開けるぞ」
ベーゼがドアを開けると、アドルフィネとケルブスが部屋に入る。
部屋は完全に遮光してあるため真っ暗だった。ただ薄ら奥の方から蝋燭の火のような淡い光が揺れているのが見えた。
「プニューダ、失礼を承知で部屋に入りますわ!」
アドルフィネが部屋の奥へと足を進める。
「待って! 今はダメ!」
あまり大声を出し慣れていない、か細い声がアドルフィネたちに聞こえた。
「げほっ! 胸が――」
「まずい!」
だが時既に遅く、アドルフィネとケルブスは胸を押さえて倒れ込む。
「あっおい!」
ベーゼは考えを巡らせることもなく部屋に入る。倒れている二人のところに駆け寄るとすぐに呼気があることを確認する。
「入らないで……言ったのに……」
ベーゼが顔を上げると、白い髪にオレンジ色の瞳が暗闇に薄らと覗えた。
「プニューダか?」
オレンジ色の瞳が立てに揺れた。
「君は私の毒が効かないの?」
「言われてみれば……じゃなくて二人をここから出さないと」
ベーゼは二人を引きずって外に出す。
「うぅ……」
「二人とも大丈夫か?」
「少し空気を吸ったら楽になってきたわ。回復魔法を使うわ。その間にベーゼは何があったか聞いてきなさい」
「わかった」
ベーゼはプニューダの部屋に戻る。
「ふ、二人は大丈夫なのですか?」
「大丈夫だ。ところで今は入るとまずいって?」
「髪の手入れを……」
「そういうことか」
「ごめんなさい……わざとじゃ――」
「こっちが無理に入ったんだ自業自得だ」
「そ、それとどうして男の人が?」
「あー、俺はさっきいたお嬢さんの従者なんだ。ちゃんと許可をもらって女子寮に入ってる」
「納得しました……えっと」
「俺はベーゼだ。あんたと同じFクラス、そしてレギウスに頼まれてここに来た」
「レギウスが?」
ベーゼはゆっくりと頷く。
「えっとその、婚約破棄……でしょうか?」
「違う。とても会いたがっていた」
「それは……できません……」
「何かあるのか?」
「私にはその資格が無いです」
「詳しく教えてくれないか?」
プニューダは声を震わせながら、頷く。
「私……はユニークスキルのせいで……クラスの人を殺し……かけ……」
「落ち着け、急いでねえからさ」
「それで色々な人……傷つけた。レギウスが一番酷い症状だった……死んじゃうと思った」
「……そうだったのか」
「だから私は、もうここから出ないの……誰も傷つけたくないの」
「それがいいのか?」
「ダメなのはわかっているの……でも今もこうして私は人を殺しかけた」
「あら、いつ私たちが死にかけたですって?」
「そうだよ、ちょっと驚いて転んだだけだよ」
アドルフィネとケルブスは体を回復させたのか部屋に戻る。
「入って大丈夫なのか?」
「毒に侵されたら回復魔法、ガスが問題ならケルブスの風属性魔法で毒ガスを吸わないようにすれば良いだけさ」
「どうして……私なんかにそこまでするのですか……」
「レギウスに頼まれたからよ、私どころか平民であるこの二人にまで深々と頭を下げて」
「そこまでして……も……私は……毒で……」
涙を床に零しながらプニューダは言葉を何とか紡ぐ。
「なぁ、プニューダ」
「何ですか、ベーゼさん」
「率直な気持ちだけでいい。レギウスに会いたいか?」
泣きはらした目に、潤んだオレンジ色の瞳を真っ直ぐ向けてプニューダ・バエティス・カリッターラはハッキリと言った。
「会いたい」
その言葉を聞いて、三人は顔を合わせて頷いた。
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