18 / 44
カニカマ学園編
第18話「ケルブス、動く」
しおりを挟むプニューダの一件から数日が経過した。
本当ならすぐにプニューダとレギウスを会わせる予定だったが、プニューダの顔に擦り傷があって心配をかけたくないという話があり、時間を取ることになった。
レギウスの内心が穏やかでは無いのは授業態度からも容易に感じ取ることが出来た。
「レギウス随分荒れてるな」
「当然よ。私だって同じコトされたらああなるわ」
「だよなぁー……」
「そこ! 授業はちゃんと聞きなさい! じゃあベーゼ! この問題の答えは?」
パープレアがため息を交えながら聞く。
「xが4でyが5」
「正解よ。でも内申点下げるわ」
「わぁーお」
「嫌なら黙って授業を聞きなさい」
「はいよー」
「返事ははいの二文字よ」
「はい」
『で、実際プニューダはどうなんだ?』
ベーゼは視線を合わせず、ノートに言葉を書いてアドルフィネとケルブスとやり取りを始める。
『ショックが酷い。レギウスよりも凹んでるわ』
『立ち直る?』
『難しいわ』
『ケルブスはどう思う?』
『プニューダのことよりAクラスが引っかかる』
『どうして?』
『プニューダの一件、本当に偶然なのかなって?』
『まだ一回だ。神経質になってねえか?』
『それなら良いけど』
『まぁでも、そうは言うが、プニューダが絡まれた時、嫌な感じがするとか言ってたな』
『うん、不思議とそんな感じがしたんだ』
『ユニークスキル『継承』の影響かしら?』
『かもしれないな』
『それならケルブスがAクラスに探りを入れてみる?』
『アドルフィネが言うなら俺も文句は無い』
『わかりました。やってみます』
『Aクラスにもユニークスキルを持っているやつらがいるわ。くれぐれも気をつけるように』
ケルブスは静かに笑って二人を安心させた。
****************
ケルブスは放課後になると静かに教室を後にしてAクラスの教室へ向う。
Aクラスから出てくる女生徒を少し眺めてから、宿題のプリントを持っている女生徒に目を付ける。
その女生徒の後を付けて人が少なくなったところを見計らってわざとぶつかる。
「申し訳ありません!!」
ケルブスはそう言いながらプリントを拾う。
「い、いえこちらこそ失礼しました」
「お優しいのですね」
ケルブスはニッコリと笑う。
腹黒いことにケルブスは自分の容姿が美形であることをよく理解している。それを利用する手は無いと考えて手にしたい情報を見つける手腕も無意識に会得していた。
「あっ……」
「差し障りが無ければ、このプリントお持ちしましょうか? せめてものお詫びです」
「えっと……はい」
ケルブスは転んだ女生徒に手を差出して立たせると、並んで歩いた。
「先ほどは本当に失礼しました」
「いえいえ」
「しかし、プリントの提出を任されるなんて教師からもあなたは信用されているのですね」
「私なんてまだまだです。プリントもアメリカーナ様の代理で提出しているだけなので」
「あっ、これは失礼しました。アメリカーナ様のご友人でしたか」
「アメリカーナ様のお知り合いですか?」
「直接の面識はありませんが知人からよく話を聞いております。品行方正、成績優秀、おまけにお美しい姿に慈善活動などされているとか?」
女生徒は一瞬目を暗くした。実際のアメリカーナとケルブスが言っているアメリカーナに齟齬があるからだ。
「アメリカーナ様はそのようなお噂があるのですね……」
「お噂ということは、事実では無いと?」
「えっと、それは……」
「是非教えて頂けないでしょうか? 僕とあなただけの秘密ということで」
ケルブスは人差し指を自分の口にピンと立ててあざとく囁く。
「そ、そういうことでしたら」
女生徒は顔を紅くして首を縦に振った。
「ありがとうございます」
「えっと、気を悪くされたら申し訳ないのですが、アメリカーナ様はそのような人ではありません。意地悪く人を見下しているような方です。現にFクラスの女生徒先日もいびっていました」
「Fクラスの女生徒を?」
「最近ですと、たしかプニューダという女生徒が外に出たのを聞きつけてわざわざいびりにいったとか」
「そんなことが……しかし、どうやってわかったのですか?」
「アメリカーナ様たちは自分が気に入らない人物には追跡の魔法をバレないように使うのです」
「そんなことが……ん? 今アメリカーナ様たちって?」
「はい、Aクラスを牛耳っている方が何人かおりまして、その人たちが情報網を巡らせて学園の地位を盤石にしているのです」
「お名前とかわかりますか?」
「女生徒ならアメリカーナ様、ラテラリス様、男子生徒ならリナレウス様、モラウィッツ様、あとはサルカツス様も一枚噛んでいると聞いたことがございます」
「なるほど……ありがとうございます」
「いえいえこちらこそプリントありがとうございます」
「それでは」
ケルブスはプリントを女生徒に返すとすぐにその場を去って行った。
先ほどの笑顔が嘘のように凍るような表情に戻る。
外に出るとベーゼと合流する。
「お疲れさん」
「アドルフィネは?」
「プニューダのとこ」
「そっか」
「それで首尾は?」
「良かったけど。最悪だった」
「そうか……あーあーAクラスほんとやだねえ~」
「本当に嫌になるね」
「次はどうする?」
「邪魔されるとわかっていても、僕たちはあの二人を会わせなくちゃいけない」
「よっしゃあ、そうこなくっちゃ!」
「これは友を助けるための戦いだね」
「こっちは殴れねえけどな」
ケルブスとベーゼは拳を合わせて意気揚々と寮に戻った。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる