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カニカマ学園編
第19話「耐えろ耐えろ耐えろ」
しおりを挟むベーゼは静かに自室のベッドに寝転ぶ。
『ベーゼ聞いてる?』
『聞こえてる』
『ふっふっふ、この魔法どうかしら?』
アドルフィネの声がベーゼの枕元にある小さな水晶玉から聞こえる。
『便利だな』
この水晶玉には魔法の術式が組み込まれており、多人数で通話ができる。
『アドルフィネはすごいね』
『パープレア先生に教えてもらったの』
『あいつ、ちゃんと魔法教えてるんだな』
『パープレア先生はあれでもコーニコリス先生と同じで超級魔法の使い手なのよ』
『それってすごいのか?』
『カニカマ学園でも歴代含めて五十人はいないって聞いたよ』
『へぇー、すげえや』
『たまには敬ったらどうなの?』
『そうだな……いや面倒くさいからいいや。てか本題に入ろうぜ』
『えっと、僕が探りを入れた結果、やっぱりアメリカーナが裏で色々やってるみたい』
『うーわ、最悪』
『全くだ。アドルフィネ、あの女やってもいいか?』
『すぐに暴力で解決しない! でもやるときはみんなでやりましょう! あの女には散々苦汁をなめさせられているわ!』
『『はい、わかった』』
『じゃあ、次はレギウスとプニューダの関係ね。プニューダはショックからだいぶ立ち直ったけどレギウスにまた迷惑がかかると思って腰が上がらないわ』
『レギウスはいつ爆発してもおかしくない。早く手を打たねえと問題起こすぞ?』
『それも問題ね』
『アドルフィネ、ここはもう一度セッティングしてみない?』
『ケルブスは何か考えがあるの?』
『僕たちの目的はプニューダが学校に通えるようになること、まずプニューダの心の支えになるのは間違い無くレギウスだ。逆にレギウスもプニューダが心の支えだ』
『二人が再会できれば折れにくくなるってことか』
『それならちょっと手を出したぐらいじゃ、二人の関係にヒビが入らなくなる』
『なるほど、わかったわ。幸いなことに明日は土曜日で休み、時間はたっぷりあるわ』
『邪魔させねえぞ』
『そうだねベーゼ』
『私はプニューダと話を付けるわ。二人はレギウスのところへ』
『『わかった』』
通話を終えるとすぐにケルブスと合流してレギウスの部屋に向った。
「おーい、レギウスいるかー?」
ノックしながらベーゼは声をかける。
「どうした? もうすぐ消灯時間だぞ?」
「明日、プニューダともう一度会ってもらう」
その一言でレギウスは目つきを変えて「わかった」と短く返した。
「まぁ、そう固くなるな。明日は休みだからな」
「恩に着る」
「それは上手くいったらだよ」
「そうだな」
話が終わると、ケルブスと別れて自室に戻り明日に備えて眠りについた。
****************
翌朝になると朝食を簡単に済ませて出かける準備をする。時間も丁度良い頃合いで何も無ければ余裕を持って衆愚場所であるカフェテリアに行ける。
男子寮の玄関に行くと私服のレギウスとケルブスが既にいた。
「お、俺が最後か」
「大丈夫、今来たところだよ」
「うん、おはよう!」
三人が少し話をしていると複数の足音が後ろから聞こえた。
「……チッ」
「はぁ……」
「やあやあFクラスの諸君おはよう。今日はどこに行くんだい?」
リナレウスがいつものように取り巻きをぞろぞろと連れて三人に歩み寄る。
ケルブスとアイコンタクトをとるとレギウスを引っ張って玄関を静かに歩き出していった。
「どうやらお友達に見放されたみたいだね」
「今日は休日だぜ? ただでさえ毎日俺の顔を見せてんだ。あいつらだって辟易するさ」
「ふーん、まぁどうでもいいや、どうせプニューダだろ?」
「さぁーなー?」
「とぼけるなよ。君らのような下等生物の考えていることなんかお見通しだ」
リナレウスはベーゼの胸を人差し指で小突く。
「仮にそうだったとして、そっちには関係ないだろ?」
「ああ、そうだとも! 一切関係ないね! でも――」
「でも?」
「見たいんだ。婚約者同士が惨めに地面に這いつくばって壊れていく様をね!」
その言葉で右腕が熱を持ち始めた。殴り倒してやりたいがリナレウスが怪我をすればアドルフィネの立場が悪くなるのは明白、それだけは避けなければならない。
「へぇーたいそうな趣味じゃねえか」
「楽しいだろ?」
「興味ないね。そんなゴミ虫だましみたいな趣味」
「なんだと?」
リナレウスは顔を引きつらせて怒りを露わにする。
「おっとぉ? お貴族様ぁ? こんな卑しい平民のぉ~~~? 言葉で怒っちゃいましたぁ~~~~~???」
「お前!! 表出やがれ!」
メッキが剥げたようにリナレウスが言葉を荒げた。
取り巻き四、五人に囲まれた状態で表に出る。
「物騒になってきたな」
「貴族に喧嘩売るとどうなるか教えてやるよ」
取り巻きをよく見ると手を突き出して攻撃態勢を取っている。
「あ、ちょっと待ってくれ」
「はぁ?」
ベーゼは上着を脱いで綺麗に畳むと、地面に置いて肩を回して準備する。
「おう、いいぜ、来いよ」
半裸の男が意気揚々と取り巻きに手をクイクイと煽る。
「やっちまえ」
「うっはー、ありがちな台詞」
取り巻き達が魔法で一斉に風やら炎やら氷やらをぶつける。
しばらくの間一斉攻撃が続くがベーゼはつゆほどもダメージは無い。
「ふん、これで身の程を知ったなら今後口答えする――」
「あー……それで、いつイビリがスタートするんだ? 今のは準備運動だろ?」
ベーゼのこの台詞は、リナレウスを煽るために言ったわけではなく、コーニコリスとの戦闘訓練の準備運動が本当にこの程度なのである。
「舐めやがってッ!!!!」
リナレウスがベーゼの眼前に右手を前に出すと詠唱を始める。
「おっと――」
リナレウスから火球が放たれる。
避ける間もなくベーゼの腹に火球が直撃する。先ほどの取り巻きたちと違ってはっきりとした実力がダメージに反映されている。
体勢を崩しかけたが持ちこたえる。
だが、リナレウスは既に次の火球の準備をしていた。
ベーゼは腕で顔を覆い顔面直撃だけ回避する。
「さぁて次はどうかな平民!」
リナレウスから放たれた三発目の火球がベーゼの腹に直撃する。
「ッ――!」
一発目、二発目の火球とはレベルが違う。明らかに重い一撃だった。
意表を突かれたベーゼはその場で片膝を突くが、リナレウスは躊躇うこと無く四発五発と火球をひたすらぶつける。
「早く地面に寝たらどうだ?」
「ちょっとそれは出来ねえなぁ!」
ベーゼはよろけながらも歯を食いしばってリナレウスの前に立ちはだかる。
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