異世界転生したら『ハンペン』だけど俺は賭博駄女神(母)と追放悪役令嬢(嫁)と異世界をめっちゃ楽しく生きていく!!!!

白井伊詩

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カニカマ学園編

第20話「限界超越」

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 ベーゼがリナレウスと対峙している同時刻――
 
 ケルブスとレギウスは全力で大地を蹴る。
 
「ベーゼはいいのか!?」
「信じて!」
「わかった!」
 
「けど嫌な空気だ」
「嫌な空気? どういうことだケルブス?」
 
 
 助け――て――
 
 
 ケルブスの頭に声が響く。この声は以前にも耳にしたことがあり、決まってよくない事が起こる前兆だった。
 
「わからない、直感なんだ」
「ユニークスキルの影響か?」
「僕の事より、大切な婚約者のことを考えた方がいいよ」
「プニューダ……」
「急ごう、魔法を使うよ」
「それは校則違反だ!」
「四の五の言わない!」
 
 ケルブスは風の魔法を唱えて、レギウスと自分に風の足場を作る。
 足場を蹴るとスプリングが押し返すように体を前に弾ませた。空中を跳躍しながら加速する。
 
 
 カフェテリアに着くと、案の定アドルフィネとプニューダがアメリカーナとラテラリスと対峙していた。
 今回はアメリカーナの取り巻きの男も何人かいてアドルフィネたちを押さえつけている。
 
「アメリッ――カーナ――ッ!」
 
 殺意、それがケルブスの双眸に浮かぶ。
 
「ケルブス!」
 
 レギウスの声でケルブスは我に返る。
 
「ありがとうレギウス、自分を忘れるところだった」
「お互い様だ!」
 
 
 二人が風に乗り、アドルフィネたちの前に立つ。
 
「プニューダ!」
「レギウス……様!」
 
「ふふっ、ごたーいめーん。良かったわねえ」
 
 アメリカーナが悪辣な笑みを浮かべている。ケルブスは反吐が出そうだったが顔は涼しい顔を装う。
 
「アメリカーナ何故こんなことをする!」
「何故、ですって?」
 
 眉間にしわを寄せ、先ほどまでの悪辣な笑は消え去った。アメリカーナは息を荒げながらレギウスを睨み付ける。
 
「地雷を踏んだようだね……」
「地雷?」
「元は踏むと爆発する兵器が転じて相手の逆鱗に触れることを言うってベーゼが言ってた」
「なるほど! ということは俺なんかやってしまったのか!?」
「中等部の時に何したんだい?」
 
 
「あとちょっとでその男が! その男が私のものになったというのに! そこのわけもわからない毒女のせいで!」
 
 アメリカーナは金切り声寸前の声でレギウスを指さす。
 
「しかも、中等部では幸せそうに……私のモノを奪っていったその女も! 私のモノにならない奴らなんて全部滅茶苦茶になってしまえばいいのよ!」
 
 アメリカーナは取り巻きに指示を目で送りプニューダを拘束したままレギウスの前に突き出す。
 
「プニューダ! 無事か!?」
「はい!」
 
 
 プニューダとレギウスに全員の視線が向いた瞬間、ケルブスは屈んで風魔法を唱える。
 
 爆風が吹き荒んだ瞬間、アドルフィネを押えていた取り巻きの髪の毛を掴んで引き剥がす。
 取り巻きの鳩尾に膝蹴りを入れる。そして耳元でこう囁いた。
 
「次その汚い手でアドルフィネに触れてみろ。二度と人前に出られない顔にしてやる」
 
 それから取り巻きの膝を踵で蹴り抜く。
 
 
「アドルフィネ! 無事ですか!?」
「流石私のケルブス! 私があえて静かに黙っていたのをよく察したわ!」
「ありがとうございます。しかし、アドルフィネならあの程度の男を軽く捻れたのでは?」
「ふふん、やっぱドラマティックな救出劇に女子は憧れるのよ!」
「そうですか……では僕はプニューダさんを――」
「静観よ。今水を差したら野暮ってものよ?」
 
 ケルブスは足を緩めてレギウスたちを見つめる。
 
 
 
「さーて、ここでレギウスのかわいいかわいいプニューダちゃんの髪を切ったらどうなるのかしら?」
「――ダメッ! レギウスは何度も私の毒を吸っているの! これ以上吸ったら本当に死んじゃう……」
 
 レギウスもまずいと思って後ずさろうとするがすかさずアメリカーナが言葉で止める。
 
「ここで下がったらプニューダの綺麗な顔に傷でもつけてやろうかしら?」
 
 プニューダの顔にラテラリスはポケットナイフを押しつける。
 
「卑怯なッ!」
「これで完全に心が折れる瞬間が見えるわ。楽しみー!」
 
 
「アドルフィネ!」
「もう手遅れよ! あなたも毒ガスを吸うことになるわ!」
 
 
 取り巻きの男子がポケットナイフを広げるとプニューダの髪を切り裂いた――
 
 
「やめて――! もう誰も傷つけたくないの――」
 
 
 だが無慈悲にも髪の毛は次々とガス化していく――。
 
 レギウスは逃げることも考えたが、プニューダが傷つくより自身の痛みを受け入れる。
 
 それは明らかに正しい選択ではないし、もっと良い選択肢はあったはずだが――
 
 だが、その愚直とも言える信念の貫き方をした結果――
 
 
「うっ……あれ?」
 
 ユニークスキル『限界超越ブレイクスルー』によってプニューダが放つ毒を克服した。
 
 
 
 
 そして奇跡はまだ続く――
 
 
 プニューダの毒ガスは風に吹かれてもそこに滞留している。それどころか毒ガスは彼女の髪の毛に集まり再び髪の毛を再構築する。
 
 
 ユニークスキル『毒毛』がスペリオルスキル『毒ノ女王イペリット』に進化したのだ。
 
「……私のユニークスキルが進化した!?」
 
 プニューダは意識を集中させると髪の毛がガス化し始め、その無色透明な毒ガスを意のままに操る。
 
「アアッ! なんだ!? 焼ける――」
 
 取り巻きの男子が地面に転がる。彼の両腕を見ると爛れて皮膚がべろりと剥け肉が見えている。
 
「何よ……これ?」
 
 アメリカーナは狼狽うろたえながら後ずさりする。
 
 
「アメリカーナ! 逃げるなら今のうちよ! 今のプニューダを止められるのはレギウスしかいないわ!」
 
「くっ! 覚えておきなさい!」
 
 そう吐き捨ててアメリカーナとラテラリスそして取り巻きが逃げていった。
 
「臭いセリフね」
「そうだねアドルフィネ」
 
 アメリカーナたちの影が小さくなるまで見送る。
 
 
 
「プニューダ!」
「レギウス様!」
 
 二人は抱擁を交わしている。
 
 
 
「人と人が会うだけでこんなに大変だなんて思わなかったわ……」
「全くです」
「こっちはアメリカーナが邪魔してたけどそっちは?」
「リナレウスです。リンチをベーゼが一人で……」
「助けに行かないの?」
「ベーゼを信じているので」
「そう」
「ですが、万が一の時は――」
「ここでは私の指示が絶対よ」
 
 
 
「ま、その万が一もねえんだけどな!」
 
 
 アドルフィネとケルブスの首に腕をかけてベーゼが寄りかかる。
 
「ベーゼ、随分酷い有様だね」
「ゼロ距離で火球ぶつけてくるわ、殴るわ蹴るわ、挙げ句の果てに武器まで出してきやがった」
「やり返さなかったの?」
「やり返してよかったのか?」
「バカ! ダメに決まってるじゃない!」
「大丈夫だ。まぁ、俺をぶん殴った衝撃で手首痛めた奴がいたけどノーカウントだよな?」
「はは、そんな怪我口が裂けても言えないね」
「だな……」
 
 ベーゼはボロボロの体に力が入らなくなり、意識がそこで途絶えた。
 
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