泣けない僕と泣き虫な彼女

はらぺこおねこ。

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Scene01 やさしい世界

04

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それから12年後。
ハヤトは16歳になっていました。

「困りましたね」

キサラギは、小さく言葉を漏らしました。

「困りましたね」

キサラギの同僚でありファルシオン再生部隊の隊長であるスーも険しい顔を浮かべます。

「スーさんの回復魔法でも無理ですか?」

キサラギの質問にスーは、答えます。

「もうしわけありません。
 回復魔法は呪いの類に効果はないのです」

わかっていた。
わかっていたことでした。
それでもキサラギは希望を捨てずに来れたのはハヤトと言う希望がいたからです。

「そうですよね。
 私の目に見えたのは、アイが死ぬ瞬間です。
 どんな選択をしてもあの子は死ぬ。
 ただ一番穏やかに死ねるのは、ハヤトくんと行動をともにすることなのです」

キサラギは目頭を押さえました。

「ハヤトくんは、このことはご存知なのですか?」

「いえ、何も知らせていません。
 ただ、アイの花嫁修業にと旅のお供をすうようにお願いをしました」

「そうですか。
 なにも知らないほうがいいかもしれませんよね」

「そうですね。
 知らせるとハヤトくんは、無理をしてアイよりも先に亡くなってしまう。
 それは避けなくてはいけません。
 ハヤトくんは、人類の希望なのですから」

「見えてしまったんですね。
 あの子の未来も」

スーがそういうとキサラギが小さく笑います。

「見えすぎる……というのも困ったものですね」

キサラギの目は、目に写った存在の未来と過去が見えます。
あまりにもつらい未来が多かったためキサラギは目を開けるのを諦めました。

「お父さん。
 そろそろ出るよー」

アイは今日。
ハヤトと旅に出ます。
立派なレディになるために花嫁修業をするためとキサラギに説得されて……

アイは、キサラギの部屋の扉を開けました。

「あ、アイちゃんこんにちは」

「スーさん!来てくれてたんですか?」

アイが嬉しそうに笑いました。

「うん、アイちゃんの晴れ舞台!
 きちんとおばちゃん見てるからね!」

「おばちゃんじゃなくお姉さんの間違いじゃないんですか?」

そういったのは16歳になったハヤトです。
左目には眼帯をつけています。

「私、まだお姉ちゃんでいいのかな?」

「いや、20歳ですよね?
 まだまだお姉さんですよ」

 ハヤトがそういうとスーはクスリと笑います。

「なんだか貴方は人の心を穏やかにする天才ね」

 そういったスーは、ハヤトの体をぎゅっと抱きしめます。

「え?」

ハヤトの顔が赤くなります。

「ハヤトくんのエッチ……」

アイが、小さく言いました。

「アイちゃんも抱きしめる?」

「わ、私は……」

なぜだか、それを聞いたハヤトは耳まで真っ赤にさせました。

「もしかして、ふたりってそういう関係?」

スーが、そういってふたりの顔を交互に見ます。

「ち、違います!」

アイは、照れながらハヤトの服の袖を掴みます。

「え?」

「行こう」

アイは、今にも泣きそうな顔でそういいました。

「え、あ、はい」

ハヤトは不思議そうな顔をしてうなずきました。

「仲良くするんですよ」

キサラギはそういうとアイはいいます。

「うん、大丈夫だよ。
 ハヤトくん優しいもん。
 グリンピース残しても怒らないもん」

「ハヤトくん、グリンピースを残したら怒っていいですからね」

キサラギが小さく笑うとアイが戸惑いながら言います。

「ピーマンはいいよね?」

「ピーマンも残したら怒ってください」

「えー!ニンジンは?牛乳は?干芋や椎茸は??」

「全部食べてください、大人なんだから」

「えー」

アイが涙目でハヤトの方を見ると。

「全部美味しく料理します」

ハヤトがそういうとキサラギが笑いました。

「はい、お願いします」

そうしてふたりの旅がはじまるのです。

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