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第2章 神々の運命
第42話 転移魔法
しおりを挟む神斗が北欧神話の世界にて海乃と別れビフレストを渡っていた時、イデトレアでは再び敵の襲撃を受けていた。
「奴ら、まるで最初から準備してたみてぇにタイミングよく現れやがったな」
「いいえ。おそらく我らの報復攻撃のタイミングは予見していなかったと思いますよ。敵は神斗さんたちが北欧神話の世界へ乗り込んでしばらく経ってから現れ始めました」
「つーことは、神斗の兄貴たちが北欧神話の世界に報復攻撃しに来たのを確認したからイデトレアへの襲撃を始めたってことか。汚ねぇやり方しやがって、男なら正々堂々と勝負しろってんだ!!」
「敵は魔獣や巨人ばかりで裏にいる敵も男とは決まってませんが……まぁ姑息な手を使うのは私も気に入りませんが」
北欧神話への報復攻撃を行う部隊には王である神斗、軍務総長である海乃、王下親衛隊の天の七支柱に所属する光輝と竜斗、そして三つの部隊が集まった合同部隊といったイデトレアでもトップクラスの戦闘力を持つ者たちだった。
敵はこれを好機だと判断し再び襲撃してきたのだ。
「て、敵影を確認!前方から三体の巨人と複数の魔獣が来ます!さ、さらに右翼からも……ッ!左翼からも敵が来てます!!」
「野郎ども!敵は数が多いだけで対して強かねぇ!焦らず冷静に対処しろ!」
「敵は確実に倒してください。他の部隊と連携して打ち漏らさないよう注意を」
敵は最初こそ少数の魔獣たちばかりだったが、やがて巨人が現れ数も増えてきていた。今ではもう敵の数が前回の奇襲攻撃以上にまで膨れ上がっていた。
「ちっ、倒しても倒しても湧いて出てきやがる。敵の転移場所は抑えらんねぇのか!?」
「それは難しいようですよヘラクレスさん。どうやら相当強力な転移魔法のようで結界で覆うことすらできないそうです」
「そんなことできるやつ、ウチのキーキさんかもしくは……あの野郎ぐらいか」
「はい。おそらく転移魔法を展開しているのは北欧の悪神、ロキです」
敵が現れる場所は正面と左右、それぞれに存在する転移魔法からだった。
そのため転移魔法さえ抑えれば敵は現れなくなるのだが、それは簡単なことではなかった。
前回の襲撃と同様、転移魔法を使って敵を送り込んでいるのがロキだったのだ。
「今はまだ我々の方が有利ですが、早く魔獣たちの転移場所を抑えなれば逆に押し込まれてしまいます」
「くっ、なら俺が突貫して……」
「確かに貴方なら敵が転移してくる場所まで行くことはできると思いますが、そのあとはどうするんですか?敵の転移魔法を止める手段があるとは思えませんが?」
「うぅ……お、俺の拳で……」
「ちなみに物理的に破壊することは不可能だと思いますよ?あのロキのことです。簡単に破壊できる魔法を使うはずがありません」
ただの魔法であればカレンやヘラクレスが破壊することができるものの、魔術の天才であるロキが発動している魔法となれば話が変わってくる。
カレンとヘラクレスが敵の転移魔法にどう対処するか思考を巡らせている時、後方から何者かが近づいてきた。
「カレンさん!ヘラクレスさん!」
「ん?ありゃあ……お嬢じゃねぇか!」
「え?ゆ、優香さん!?」
カレンたちに近づいてきた人物とは優香だった。
優香は海乃の戦闘訓練を受けていたため敵を倒しながら前線まで来ることができたようだ。
「どうしてこんな前線へ?貴方は後方で待機だったはずですが?」
「空美さんからの指示で来ました。敵の出現を止めるために」
「止めるって……転移魔法をですか?」
優香はただ戦闘に参加するために来たわけではなかった。
神斗や海乃たち実力者が不在の今、戦いを長引かせるわけにはいかない。すぐさま転移魔法を止めて戦いを有利に運ぶ必要がある。
そこで空美は、転移魔法を止められる可能性のある優香に指示を出したのだ。
「はい。出来るかは分かりませんが、私は転移魔法が使えるのでそれを応用して敵の転移魔法を無力化できるんじゃないかと」
「そ、そんなことできるのか!?」
「同じ魔法を逆展開させて相殺することは理論上可能だと思います。それに空美さんからの指示であれば期待できます」
敵の転移魔法を優香の転移魔法を用いて相殺、無力化せる。
これは既に存在している魔法と全く同一種の魔法を逆展開させてぶつけることで、その魔法を打ち消すというものだった。
この理論を使えば、物理的に破壊が難しいものでも無力化させられるのだ。
「空美さんからはまず正面の転移魔法を無力化して欲しいそうです」
「そうですね。左右よりも転移速度が速く敵が多いですからね」
「なるほど!正面さえ抑えちまえば残るは左右。敵を分断して戦いを有利に進めるな!」
現状最も敵が多く、激しい戦いが繰り広げられているのが優香たちのいる場所だった。
この場所での戦いをどうにか抑え込めれば、戦いが有利になるのは確実と言える。
「敵の転移魔法を無力化するにはすぐそばまで行く必要があります。そこでカレンさんとヘラクレスさんの力をお借りしたいんです」
「なるほど、わかりました。では我々が突撃して道を切り開きましょう」
「正面の転移魔法を無力化したらそのまま左右の敵と戦えってわけか。あの女狐め、我らが姉御と肩並べるだけのことはあるな!しょうがねぇ、やってやろうじゃねぇかッ!」
しかし、転移魔法のある場所に向かえば向かうほど敵の数が増えていく。そう易々と辿り着けそうにない。ましてや優香一人で向かうのはかなり危険だと言える。
そこでこの場にいる戦力を総動員し正面にあるロキの転移魔法まで突撃する。うまく正面の転移魔法を無力化できれば左右に残存する敵を側面から叩くという作戦が立てられた。
「総員、突撃用意ッ!!私とヘラクレスの後に続いてください!敵の出現を止めるため、正面の敵を突破し優香さんを転移魔法のある場所まで送ります!」
「正面の転移魔法が無力化し次第左右の敵へ向けて攻撃を行う!最後まで気を抜くなよッ!行くぞ野朗どもぉぉおッ!!!」
「「「おおおぉぉぉぉぉッッ!!!」」」
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