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長(45分以上/15000文字以上)
星屑フォリ・ア・ドゥ(28,000文字程度)
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【登場人物】
◆ステラ(渡会 星音)\女
◆テトラ(橋本 宗也)\男
◆モノ(神田 春生)\男
◆ジド(川上 双葉)\女
◆トリ(幸村 猫目)\男
◆ペンタ(木村 星太)\男
◆ヘキサ(私村 佐江子)\女
◆ヘプタ(根室 業人)\男
◆オクタ(秋津 風)\男
◆リリヤ\女
◆シシド\男
◆リオネラ(カルラ)\女
◆逃げる人\関根 夕\女
◆揺蕩う夢の住人\伊東 悠星\男
◆揺蕩う夢の住人\鈴木 真咲\女
◆揺蕩う夢の住人\福沼 玲印\男
◆揺蕩う夢の住人\黒川 彩樹\女
◆医者\御手洗 千堂\男
◆渡会 朱音\女
◆渡会 星司\男
◆湯田 日向\男
◆星野 寧音\女
◆寺田 光\男
◆夢川 ひまり\女
◆酔っ払い\福村 慎二\男
◆警察官\堂島 功\男
◆婦警\真霜 上\女
◆泣く人\須藤 優希\男
逃げる人「しつこいっ…あいつ、何度撒いたら気が済むのよ…!」
テトラ 「何度でも探し出す」
逃げる人「テトラ!!」
テトラ 「どこへ行く気だ。ここは鉄道、逃げ場なんてねえぞ」
逃げる人「…また、また失敗…!?」
テトラ 「その切符は回収させてもらう。」
逃げる人「辞めてよもう!!やめて、私は………!」
テトラ 「悪いな、俺のエゴで。…おっと、火がついちまった」
逃げる人「宗也!!!!」
テトラ 「さよならだな。」
逃げる人、消える
テトラ 「…何度も何度も…、諦めの悪ぃ奴だ…」
モノ 「またあの子…返したのかい」
テトラ 「…なんだ、モノ」
モノ 「ねえ、ちょっと。…干渉しすぎなんじゃないかい?僕らが干渉していいのは彼らの浅瀬だけであって……。…そんなことして。叱られてしまっても知らないよ?」
テトラ 「黙ってろモノ。これは俺の問題だ」
モノ 「テトラ。…最後の警告だ。君はこれ以上勝手をするべきじゃない。本当に、本当にリオネラに消されてしまうよ」
テトラ 「…。」
モノ 「テトラ!」
テトラ 「…結構だ。」
暗転・明転
星音 「っ!」
リリヤ 「おはようございます!切符をお渡しします」
星音 「は…はあ」
リリヤ 「失くすと、その場で戻されますので、ご注意下さいねェ」
星音 「…どこだっけ、ここ…。私、電車なんて乗ってた…?完全に寝てたけど、乗り過ごしちゃったかなぁ。と言うかそもそも、どこに向かってたんだっけ…何にもわかんないや…」
シシド 「次は~……揺蕩う夢~、揺蕩う…夢~……」
星音 「揺蕩う夢…変な名前の駅。…そうだ、切符にどこ行きか書いてあるかも…。かれ……きし…?」
テトラ 「ここか」
オクタ 「ええ、僕が見間違えてなければ。」
ジド 「…いつもより遠かったですね」
声)星音「あれ……この人、誰かに似てる。懐かしい誰か。大好きな誰かに、似てる気がする…」
テトラ 「おい。車掌だ、切符を拝見する」
星音 「はい…どうぞ。」
テトラ、星音の手から切符を奪い取る。
テトラ 「…」
声)星音「その時私は、なんだか胸が騒つくような感じがしていた。取られてはいけない。切符を、返して貰わないといけない…そう、強く思った。次の瞬間、私の手は乱暴に切符を掴んでいた」
星音、「私の手は」辺りで切符を奪い返す。
テトラ 「お前……何か、気付いたのか…?」
星音 「こ、これ、私のです…自分でもよくわからないけどっ…私のなんです!!」
オクタ 「…回数を重ねたからでしょうね」
テトラ 「妙に勘が鋭くなってるらしいな。関係ない、それを渡せ……俺がちゃんと、綺麗に燃やしてやるからよ」
星音、走って逃げ出す。
テトラ 「…ここは鉄道だぞ…。逃げ場なんか、…ある訳ねえだろ…」
オクタ 「僕が行きましょうか?テトラさん、とても疲れた顔をしています」
テトラ 「…そりゃ、…そうだろうよ…」
ジド 「でもまずいですよ、四番。次の…揺蕩う夢で降りられると厄介です。あそこは時間が捻じ曲がってますから…彼女の身体が耐えられるかどうか…。縛れば楽ですけど」
テトラ 「あ?」
ジド 「冗談ですよ」
オクタ 「なんにせよ急ぎましょう、見失っては危ない。それに、あそこで取り残されたら…戻すことさえ出来なくなります」
テトラ 「ああ…追うか。手分けするような道もねえしな」
暗転・明転
星音 「な…なんなの、あの人達……車掌さん?いやでも、燃やしてやるからとか言ってたし…悪い人!?」
ヘプタ 「そうっスよ、あのヒト達は悪いヒトっス!」
星音 「うわぁ!」
ヘプタ 「オレは七番のヘプタっス、よろしくっス!」
星音 「よ、よろしくお願いします…?私は…、私は…ええと、…誰なんでしょう?」
ヘプタ 「大丈夫っスよ!じきに思い出すと思うっスから」
星音 「そうなんですかね…」
ヘプタ 「お嬢さんを追ってたあのヒト達は、いろーんなヒトを巻き込んで、大混乱を巻き起こそうとしてるんっス!やばいっスよね?」
星音 「確かにやばいのかもしれませんね」
ヘプタ 「そこで!オレがお嬢さんにいいモノあげるっスよ!(言いながら、透明な羽織を手渡す)」
星音 「…レインコート?」
ヘプタ 「違うっスよぉ…確かに見えるかもっスけど…。それは、オレの能力を詰め込んだ『透明化フード』っス!誰からも見つからなくなるし、オマケに思考も透明に!こちらをプレゼントっス!」
星音 「え、良いんですか!?」
ヘプタ 「勿論っス!オレも、あなたがあのヒト達に捕まっちゃうのは本意じゃないっスから…」
星音 「あ、ありがとうございます!」
ヘプタ 「…さあ行って!先頭まであと十車両はあります、少しでも向こうへ!」
星音、走り去る。
ヘプタ 「身体もスケスケ、頭もスケスケ…心もスケスケで…全部透明になっちまって、死んじまうんスけどね!頼みの綱のテトラさんにも、霊力すら霧散していくから見つけてもらえないんじゃないっスかね?まぁドンマイっス!」
テトラ達、急ぎ足で入ってくる。
テトラ 「あいつの霊力が弱まった。お前だろ七番…!」
ヘプタ 「おお、気付くの早……ええ、勿論オレっスよ!」
オクタ 「どうしてそんなことを。あなたのことだ、規則を遵守しろとは言うまいに」
ヘプタ 「いやいやいや、テトラさんの好きな人だけ生き返るなんてずるいでしょ?あんな簡単なことで蘇るなら…央奈さんだけでも戻してあげられたのに……央奈さん…会いたいよ…!! じゃないわ、いやー取り乱しちゃってすみませんね!でもそういうことなんで。まぁ、一人だけ好きな女取り戻してのうのうと生きようなんて許されない、というよりオレが許さねーよ…ムカツクから死ねってことっスよ」
ジド 「男の執着とかキモいんですが。…四番、七番なら消しても文句は言いませんよね?」
テトラ 「…」
ヘプタ 「…二番…あんた、ほんの少しでも央奈さんに似てるんだから、そんな言葉遣いしないでほしいんスけど…つか、気に入らないんスよそのファッション!女ならもっと可愛い服着ろ…地味顔が地味な服着てちゃモブでしかないっスよ!?」
ジド 「私はお前の元カノじゃねえよ、カス」
オクタ 「二番、僕が。…同じ男として、女性を軽んずる人間は許せない」
ヘプタ 「…テトラさん、八番を殺ったらあんたが出てきてくれるんスか?」
テトラ 「…」
ヘプタ 「こっちを…こっちを見ろよ!!」
オクタ 対 ヘプタ。
ヘプタ、地面に崩れ落ちる。
ヘプタ 「こんなに力量に違いがあるとは…流石に思ってなかったっスよ」
ジド 「…『九曜縛り』。」
ヘプタ、ジドの能力で後ろ手を組まされる。
ヘプタ 「…ふっ、はははは……二番、オレの能力は、あらゆるモノの『存在感』を下げること……。霊力の存在感を下げられるオレを、霊力そのものを縛るあんたの能力で縛れる訳ないでしょ」
ジド 「!」
ヘプタ 「さよなら!また今度!」
ジド 「逃すかっ…」
テトラ 「いい。…それよりあいつだ。今に『揺蕩う夢』に着く。きっと降りるだろう。手分けして探すぞ」
オクタ 「はい。」
ジド 「…わかりました」
テトラ 「絶対に、夢で迷わせないように…!」
暗転・明転
シシド 「揺蕩う夢~、揺蕩う夢~。定刻出発時間は、二十分後です」
リリヤ 「お降りでしたら、時計をどうぞ!」
星音 「時計…?」
リリヤ 「向こうでは二十分が分からないでしょうから…五分前の十五分後にタイマーをセットしてございますよォ」
星音 「ありがとうございます。」
星音、戸惑いながらも降りる。
星音 「…誰からも見つからなくなるんじゃなかったっけ…」
ユウセイ「ねぇ君、僕と一緒に来ない?」
星音 「あ…あの、ここってどこなんですか?」
マサキ 「ここは『揺蕩う夢』。現実と夢と虚構が混じり合った場所。何年経っても時は流れず、数秒待てば十年が経つ。そんな場所だよ。」
ユウセイ「僕はユウセイ。」
マサキ 「私はマサキ!」
ユウセイ「失った記憶を取り戻したいなら、ずっとここにいればいい。じきに戻るよ」
マサキ 「一度入ったら出られないかも!でもきっと楽しいよ?」
星音 「出られないのは、多分、困ります」
マサキ 「えぇっ!楽しいのに!」
レイン 「ユウセイ!マサキ!その子は?」
アキ 「遊ぶならあたし達も混ぜてくれよ」
ユウセイ「レインとアキだよ。」
星音 「す、すみません、通してください!」
ユウセイ「ほら、時計を見てみなよ。既に十分経ったよ」
マサキ 「十分で帰れる?帰れる?」
星音 「や…やめて…!!」
モノ 「…一度だけ、助けてあげる。二度はないよ、渡会星音ちゃん」
レイン 「モノ!」
アキ 「なんだってアイツがこの子に手ェ貸すんだ!」
マサキ 「あたしたちのことは助けてくれなかったくせに!」
ユウセイ「贔屓すんじゃねーよ!」
モノ 「黙れ!君達は望んで揺蕩う夢に身を沈めた。その子は違う」
住人たち「…。」
モノ 「さあ、去れ!それとも、僕の力で魂ごと消滅させられたいか?」
ユウセイ「…行こう!この幸せな夢は、永遠に僕たちだけのものだ…」
星音 「…だ…誰ですか…?」
モノ 「…神田春生だよ。僕がしてあげるのはここまで。戻りたければ戻れば良いし、ここに残りたければ…それも良いんじゃないかな。選ぶのは君だ。ああでも、一つだけ。」
星音 「?」
モノ 「これ以上時間を歪められないように…君の『時間』に魔法をかけてあげる」
星音 「これは…」
モノ 「…よし、巻き戻った。あと十分で決めるんだ。鉄道まではきっと五分で着くから」
星音 「…ありがとう、…ございます」
モノ 「うん、じゃあね。」
星音 「……私、本当に…なんで逃げてるんだっけ。なんとなくだ。…悪い人じゃないのかな?でも怖い。…どうすれば…」
星音、自分の手が透けていることに気がつく。
星音 「え…手が…あ、足も…!やだ、沈む、うまく地面に立てないっ!なんで!?」
星音、しゃがみ込む。
星音 「やだ、怖い…せっかく助けて貰ったのに、私、私っ死んじゃ……」
星音、たぷんと音がして、倒れる。
星音 「息ができない。でも、なんだか懐かしい…いやでいやで仕方なかった、体が動かなくなっていく感覚…これは…」
テトラ 「どこだ!!」
声がして、間もなくテトラが駆け込んでくるが、星音を認識することはできない。
星音 「!しゃ、車掌さん!車掌さんっ助けて!!沈んじゃう!!息ができないんですっ!!」
オクタ 「いませんね…」
ジド 「でも微かにステラさんの霊力が…このあたりにいるはずなんです」
星音 「私ここにいます!虫がいい話でごめんなさいっ…助けて……!!」
テトラ 「…もう五分しかない、…あいつ、どこ行ったんだ…!!」
アラーム音が鳴り響く。
テトラ 「これは……」
星音 「助けてください!!ごめんなさいお願いします!!」
テトラ 「渡会!!!」
二番八番「渡会さん!」
テトラ、星音を引っ張って立たせる。
テトラ 「急ぐぞ!!」
ジド 「はい!」
オクタ 「了解!」
四人、走って去り、もう一度入ってきて鉄道に乗る。
リリヤ 「…駆け込み乗車ァ、駄目ですよ。気をつけてくださいねェ」
テトラ 「…ああ」
ジド 「さて、さっさと終わらせましょう!」
ジド、星音を取り押さえる。
星音 「!?」
テトラ 「ああ。」
テトラ、切符を奪い取り、燃やす。
星音 「あ………」
星音、気を失ったように首を垂れる。
テトラ 「…救ってるっつうのに、…死んじまうみたいな、…絶望したような顔するもんだ…」
ジド 「…四番、あなた…崩壊しかけてますよ」
テトラ 「…なに?」
オクタ 「干渉しすぎたんですよ。…ここからは僕たちにお任せを。もう現世に戻ってください」
テトラ 「…あとは頼んだ」
テトラ、ふらりと倒れる。
暗転・明転
星音 「……う…」
宗也 「!目え覚めたか!?」
星音 「そ…宗ちゃん…」
宗也 「…良かった。」
星音 「また宗ちゃんの夢を見たよ。宗ちゃんが私を追っかけて、私はなぜか逃げるの。夢の中にいる時は宗ちゃんのこと覚えてなくて…。なんなんだろうね、この夢。あたしが死にかけると……必ず見るねえ」
宗也 「おい、無理して体起こすな。また悪化したらどうする」
星音 「死ぬ前に…彼氏、欲しいなあ…優しいひと…それで、あたしのことだけ見てくれるひと」
宗也 「…そうだな。」
朱音 「つーちゃん!!」
星司 「星音!」
星音 「あ、朱音さん、お父さん…」
朱音 「良かった…ほんとに良かったよ…お医者様が助からないかもって言ってたから…」
星司 「宗也くんもありがとう、私たちの代わりに、星音のそばにいてやってくれて…」
宗也 「いえ……、友達…なので。」
千堂 「…はっきり言って、奇跡ですね。あんなに不安定になって尚、息を吹き返すとは。しかも、これで十回目ですよ。…正直初めてみる症例で、ちょっと私も驚いてます」
朱音 「つーちゃん、…信じ続ければ、きっと治るから……」
星司 「大丈夫だよ、星音。」
千堂 「…橋本君、いえ、四番サン…あんた、またですか。関根君も何度も送り返してるらしいじゃないですか」
宗也 「うるせえ。お前は黙って俺を向こうに繋いでればいい。お前ら姉弟も俺が救ってやったんだろセンドウ。」
千堂 「…姉ちゃんのこと出されると弱いですけど…。それにしても、渡会君は異常ですよ。言い方がちょっと悪いですけど…あんな高スパンでバンバン死にかけるなんて…もう、魂が限界迎えてるんですよ」
宗也 「じゃあてめえ、諦めて死ねっつうのかよあいつに」
宗也、千堂の胸ぐらを掴む。
宗也 「誰よりも頑張って生きてきたあいつに、誰よりも色々諦めてきたあいつに、そんな軽々しい言葉を吐けんのか!?」
千堂 「…渡会君は自分が死ぬって分かってるんです!!」
宗也 「…んだと」
千堂 「渡会君は覚悟ができてます、いつ死んでも仕方がないと、よく生きたと思ってます」
宗也 「他人の心がてめえに分かるか」
千堂 「…分かりますよ。目を見れば」
宗也 「あ?」
千堂 「ヤブでも医者ですからね」
宗也 「……死ね」
宗也、千堂を殴り飛ばす。
千堂 「がッ…!!四番サン何を…」
宗也 「お前が…お前があいつの代わりに死ねよ……!!あん時死ぬ予定だったお前が!!あいつの代わりに!!」
千堂 「…できるなら…か…代わってあげたい…ですけどね…」
宗也 「…余計なこと喋ったら殺す」
千堂 「…リオネラ様が、…妙なことを言っていました。…お気をつけて……」
宗也、去る。
千堂 「…自分も『死ぬ予定だった』から、…命を賭けて渡会君を救うとでも言うんですか…可哀想な人だ…。」
暗転・明転
ひまり 「つーちゃん!!もうガッコ来て大丈夫なの!?」
星音 「うん、ちょっと安定し始めたみたい。」
寧音 「なんで星音ってそんなに体弱いんだろう。ウチらが代わってあげたい。」
ひまり 「わかる!!二週間ぐらいかわったげたい、その間につーちゃんのしたいこと全部させたい」
星音 「その気持ちだけで十分だよ。ホントにあたしの体になったら辛いよー?」
寧音 「めっちゃ不謹慎でごめんだけど、テスト回避できるなら有り」
星音 「もー、ネオンはまた都合のいい考え方してぇ」
日向 「なぁ、渡会ちゃんほんとに大丈夫なん」
宗也 「…ああ」
光 「『…ああ』じゃねーーわ!なんでお前まで上の空!?てかお前ら一緒に登校してきたよな、橋本と渡会って付き合っ」
宗也 「はあ? …ないだろ。あいつは俺みたいなのはタイプじゃねえから」
日向 「……寺田、最近あいつおかしないか?おかしいって言うか、変わったやんな」
光 「分かる。大人びたっつーか老けたっつーかさ。隈も消えてねーし…」
日向 「あー…橋本の隈、あれは消えやんと思うで。俺の寝不足の隈とちゃうくて、茶色の隈は擦った痕やから」
光 「へー…あいつ、感動系の映画でも見漁ったのかな」
日向 「さあ…」
ひまり 「…あ、あとさ…隣のクラスの夕ちゃん、…また自殺未遂だって。聞いた?」
寧音 「え、それって橋本の親戚の?」
宗也 「…一命取り留めたっぽくて良かった」
ひまり 「本人なりに考えて、深い理由はあるんだろうけど…どうしても、死んでほしくはないよねえ。」
星音 「そうだね。残して行く方も残された方も悲しいばっかりだし」
ひまり 「ひまり怖いな…自分の好きなひとが自殺しちゃったら。」
宗也 「…遺されるのが怖いのか」
ひまり 「ううん。…何もできずに、誰かを死なせちゃうのが怖いよ」
寧音 「…何しんみりしてんの!久しぶりに星音が学校来れたって言うのに。」
ひまり 「そうだね!ひまり反省っ!よーし、復帰パーティーだ!」
光 「おし来たっ!今日は俺の秘蔵じゃがりこ開けてやろう!日向!お前も!」
日向 「…しるこサンドしかないけど」
光 「お前もっと若者っぽいやつ買ってこい!行け!」
日向 「ええ~…行きたない…お前が行けや」
寧音 「星音あれ好きだったよね、ウチ今日の朝急いで買ってきたの、食べよ食べよ」
ひまり 「あたしもー!」
星音 「いいの?みんなありがと!なんか元気出たよ!」
宗也 「…」
宗也、去る。
星音 「…宗ちゃん?」
光 「ほっときゃ戻ってくる、追っかけたいなら行けばいいけど」
星音 「…一人になりたいのかな」
日向 「わからん。あいつ、構ってちゃんやからな」
17
ひまり 「じゃじゃーん!!ポテチ!つーちゃんしあわせバターだもんね!」
寧音 「復帰おめでと、星音!」
星音 「…ありがと!」
暗転・明転
星音 「…宗ちゃん、このごろぼーっとしてるよね。何かあったの?」
宗也 「そう……か?」
星音 「うん。悩みとかあるんだったら、早いうちに相談してよ。…まぁ、あたしが悩みの種だったら、ごめんだけどさ」
宗也 「そんなことない、お前に悩みなんてねえよ」
星音 「そッ、よかった!」
宗也 「…お前、体型変わったか」
星音 「ん?ああ……ちょっとねぇ。」
宗也 「そんな落ち込むな。…でも、俺の前で無理に明るく振る舞わなくていい」
星音 「無理にでも明るくしてないと死んじゃいそーなの!だからあたしはいつでもニコニコで…」
宗也 「辛そうだぞ」
星音 「…宗ちゃんもね。」
宗也 「…俺は、そんなことない」
星音 「…ふふっ、あっはは!意地っ張り!」
宗也 「意地じゃねえよ、マジだわ」
星音 「宗ちゃんが意地張ってない時なんてあるの?」
宗也 「そもそも意地なんざ張ってねえよ」
酔っ払い「あぁン!?だァから、おれァ~やってねェっての!!」
警察官 「ハイハイ、話は署で聞くわ」
酔っ払い「なぁー婦警さんこの男どうにかしてよォ~…」
婦警 「ナゴヤの婦警はそんな甘くないでねー。はい、大人しく車乗りゃあ」
警察官 「まだ夕方だってのに騒ぎ起こしやがってもう、お兄さん大人しくして」
宗也 「…最近増えたな、酒に浸る大人」
星音 「ここんところ、どんどん治安悪くなってるよねえ」
宗也 「…全員死ねばいいのに」
星音 「…宗ちゃんがああ言う大人にトラウマあるのは知ってる。…でも…他人に軽々しく死ねなんて言う人だったっけ、キミは」
宗也 「…俺…」
星音 「…らしくないって言うか……良くないよ。」
宗也 「………俺今……、なんで?」
宗也、走り去る。
星音 「宗ちゃ……ちょ、一人でどこ行くの!?」
暗転・明転
宗也 「センドウ!!」
千堂 「あ…橋本君」
宗也 「なんか…、なんか変だ、俺…今、フワフワしてる!」
千堂 「フワフワ? …具体的には」
宗也 「前と価値観が違う気がする、思ってるのと違うことが口から出る。あと……霊力が、どんどん感じられなくなってる。」
千堂 「……やはり、四番サンの存在が崩壊しかけてます。銀河鉄道の車掌だったからこそ持っている『命に対する価値観』や『性格』『霊能力』が失われつつあります。これを止めることができるのは…リオネラ様、だけです」
宗也 「そんな…、」
モノ 「…自身の変化に気がついたようだね、テトラ…いや、宗也。」
宗也 「モノ…!」
千堂 「い…いるんですか、そこに、一番サンが…」
モノ 「…ここに僕は、モノとしてではなく、神田春生として…君の親友として来ている。その上で言わせてもらう、…君の車掌としての霊体は完全には崩壊していないが、僕の『正す』力でも直すことはできない。…君はじき、ただの人間に戻る」
宗也 「は…?」
モノ 「そして、あの子……渡会星音は、また死ぬ。それが君とあの子の別れだ。あと三日四日しかないが、…その間に告白でもしておけよ」
宗也 「オイ待てっ、モノ!視界が…霞む、これは…視えなくなったのか、霊体が…」
モノ 「…せめて、自殺をし続ける関根夕だけでも、…見放せば良かったのに。」
千堂 「…どう、…でしたか」
宗也 「…クソ……どうすれば…ッ!!」
宗也、走り去る。
千堂 「…四番サンったら、…すぐ逃げちゃうんですから…。」
星音、部屋に入ってくる
星音 「御手洗先生」
千堂 「…どうしました?渡会君」
星音 「……宗也が最近、おかしくて。」
千堂 「……あぁ、もう……私が喋ったってことは、…他言無用でお願いしますよ」
星音 「なにか、教えてくれるんですか?」
千堂 「…突飛な話をしますが、信じてください。…渡会君がよく見ると言う奇妙な夢。あれは全て本当に起こっていることなんです。あなたは何度も四番サン…橋本君に救われている。」
星音 「え…」
千堂 「…でも、運命を歪めすぎたせいで、橋本君は車掌になる力を失いました!次にあなたが死にかける時が、…本当に、『最後』なんです。一度死にかけた人は、その後一週間は絶対に死にません。あなたの魂は限界です、なので…ピッタリ四日後くらいには…きっと。」
星音 「…そうなんですね。…やっぱりあれ、…夢じゃ…」
千堂 「ごめんなさい、私達が救ってあげられなくて。なんのための医者なんだって、自分でも無力さを痛感してます」
星音 「…いいんです。私はよく生かされました。十分なんです。…でも、それで宗ちゃんが悲しむのは嫌です。…どうしたら…」
千堂 「…さあ…あの人は、気難しい方ですから…。」
星音 「…先生は、先生はなんで宗ちゃんの秘密、知ってるんですか?」
千堂 「…私は、四番サンに…リオネラ様のことを教えていただいて、…それでこちら側に蘇った人間なんです。」
星音 「え…」
千堂 「姉と一緒に死にかけて、でも…四番サンがリオネラ様に掛け合ってくれて、話す機会をくれたんです。私は、彼に恩を返さないといけないんです。だからこうして医学を学び、あなたを最大限延命できる施設を整えました。…それでも…神には抗えませんでしたが…。」
星音 「…人を蘇らせる、神がいる?」
千堂 「…あ、あの方を、信用しない方がいい!私は運が良かっただけです!誰しも必ず蘇らせていただける訳では…!!」
星音 「リオネラ…、私が死んだ時に、その人に会えれば…」
千堂 「無理です!!そもそも、…殆どの人は、死ぬ前の自分の記憶を思い出せません」
星音 「思い出せますよ」
千堂 「どうしてそんなこと…」
星音 「…恋なんですよ、あたしが宗ちゃんに感じてるのって。だからきっと、いけます」
千堂 「…こ、…恋…」
星音 「それに、どうせ死ぬなら希望を持って死にたいです!その方がきっと、何事もうまく行くと思いませんか?人の信じる力って、絶大なんですよ」
千堂 「…お好きに。あなたがそう言うなら、私に止める権利はありませんから。」
暗転・明転
宗也 「…この前は、…ごめん」
星音 「…いいんだよ、そうやって思えるなら大丈夫。それより、なんなのその怪我は…」
宗也 「…センドウと喧嘩」
星音 「センドウって御手洗先生!?馬鹿なの!?」
宗也 「俺のこと聞いたんだってな」
星音 「…うん。今までずっと、助けてくれてたんだね。本当にありがとう。……あたしね、宗ちゃんに助けられてばっかじゃ嫌なんだよ。助けられた分、ちゃんとあたしも宗ちゃんの力になりたい! …だから、…なんで宗ちゃんがそんなに悩んでるのか、聞かせてよ。」
宗也 「…疲れたんだ。…ごめんな、…心から助けたいと思ってる。生きていてくれて良かったと、助けられて良かったと思ってる。それでも…『もう疲れたな』って思っちまってた。…浅ましい人間だろ?勝手に自己満足で助けてるだけのくせに、感謝の言葉すら貰えねえのかよってずっと思ってたんだ。ほんと、性格悪いよな。」
星音 「ううん。もっと早くに気付けなくてごめんね。助けてくれてありがとう。自分の命を削ってまで、あたしのことを想ってくれてありがとう。宗ちゃんのおかげで、今こうやって息ができる。」
宗也 「…ごめん、…無理矢理感謝求める、みたいな、…ほんと嫌な奴だよな」
星音 「あたし心からありがとって思ってるよ!すーぐネガティブ思考になるんだからもう…それに、あたしは宗ちゃんの……」
宗也 「俺のなに?」
星音 「そーゆーとこが好きなんだよ。」
宗也 「…なあ、渡会。」
星音 「ん?なに?」
宗也 「…やっぱいいや」
星音 「え、なにそれ。気になる。言ってよ。」
宗也 「いや、いい。また言いたくなったら言う」
星音 「早く言いたくなって!」
宗也 「……あと四日…なんだよな。…何かしたいことあるか」
星音 「…言ったら叶えてくれるの?」
宗也 「うん。…なんでも。」
星音 「………うーん、……豪遊したい!全部宗ちゃんの奢りで!」
宗也 「そんなことでいいのか?」
星音 「じゃあ今すぐあたしと結婚して!って言ったらしてくれるの?」
宗也 「うん」
星音 「…やめて期待しちゃう」
宗也 「してくれよ」
星音 「…またそういうこと言ってぇ」
宗也 「俺じゃだめか?」
星音 「あたしすぐ死んじゃうんだよ?初彼女と数日しか続かなかったって、だいぶデバフでしょ」
宗也 「…べつに、…お前以上に大切にしたい奴なんていねえし」
星音 「…宗ちゃんのそういうとこ大好きよ。でもさ……、宗ちゃんが一番大事なのがあたしなら、悲しくなっちゃうでしょ……だから、あたしが嫌いになるようなこと!いーっぱいお金使わして、いーっぱいわがまま言って、それで……早くあたしのこと忘れたくなるように、」
宗也 「そんなに駄目なのかよ」
星音 「…うっさいなーもう。大人しく嫌いになってて」
宗也 「………最初はなに行くんだ」
星音 「え?」
宗也 「豪遊すんだろ、俺の金で」
星音 「…よーし!モール行こ!そんで、服とかスイーツとかコスメとかなんでも買わす!宗ちゃん貯金は!?」
宗也 「……15万」
星音 「えぇ!?お金持ちじゃん」
宗也 「使い道ないから…小遣い。」
星音 「あたしが使い果たしてやるっ!行くよ!あっプリも撮らないと!」
宗也 「プリクラ…?」
星音 「宗ちゃんとあたし二人のやつね!」
宗也 「あれ、すごい目デカくなるんだろ。男は気持ち悪いぞ」
星音 「いーのいーの!あたしがデコったげるから!」
暗転・明転
朱音 「つーちゃん、…ちょっと、いい?」
星音 「…なあに、朱音さん」
朱音 「あのね…、御手洗先生から聞いたんだけど…その、…あと少ししか生きられないかもって…」
星音 「…うん。だからあたし、この数日間めっちゃ楽しんだの!カラオケ行ってー、モール行ってー、プリ撮ってー……とか、…色々…したんだよ、…泣かないで、あたし分かってたんだ。…もう長くない命かもって。でも大丈夫、覚悟はできてる」
朱音 「…ごめんね…なにもしてあげられなくて…」
星音 「いいの!それに、また死にかけても、生き返るかもしれないよ?(咳き込む)」
朱音 「つーちゃん!」
星音 「大丈夫、大丈夫…」
朱音 「……つーちゃんにとって、私、お母さんになれてた…? …産みの親にはなれなかったけど…つーちゃんのこと、幸せにできてた…?」
星音 「なに言ってんの、お母さん! あたしちゃんとお母さんだと思ってるよ。朱音さんの方が慣れちゃって、ずっとそうやって呼んでただけなの…ごめんね…」
朱音 「私こそごめんね……無理をさせて…」
星音 「お母さん、写真撮ろ!あたし、遺影は証明写真とかじゃ嫌だからね。死ぬほど可愛いやつ!」
朱音 「遺影って……」
星音 「ほら!一緒に写って!」
朱音 「…そうね、家族写真なんか多い方がいいよね」
星音 「うん!いくよー…はいっ、チーズ!」
朱音 「…撮れた?」
星音 「うん!可愛い?」
朱音 「可愛いよ。」
星音 「…泣かないでってば、お母さん…あたしまで、悲しくなっちゃうでしょ…」
朱音 「…つーちゃん、ドレスとか着にいこうよ。旅行もいいね。今のうちにもっとお出かけしてさ。それとも学校行きたい?」
星音 「どっちも。選べないよそんなの」
朱音 「欲しい服とか、食べたいものとか…もう、何でもやっちゃおう!」
星司 「ただいま!遅れてごめんっ…ちょっと社内で揉めちゃって…」
朱音 「星司さんっ…星音、私たち、やっと覚悟決めたよ、使えてなかった有給も全部使う。今を全力で楽しもう。もうつーちゃんがやりたいことのために全部の時間使って、休日も全部空けて、いつでもそばにいる」
星音 「…あたし、欲しいもんとかないよ?強いて言えば思い出だけ!このまま、みんなで楽しく過ごせてさえいれば…それでいいの!」
星司 「…小さな頃から、病気や僕たちの多忙で色々我慢させていたと思う。本当に…本当にごめんよ…」
星音 「あぁもう、…だから良いんだってば…」
星音、つられて涙を流し始める。
星音 「あのね…二人に一つだけお願い。」
朱音 「なぁに?」
星音 「あ…やっぱふたつ」
星司 「なんでも。」
星音 「一つ目! …勝手にあたしを憐れまないで。あたしは幸せだし、二人の子供で、今のあたしに生まれてこられて良かったって思ってる。だから、勝手にあたしの人生を不幸にしないで。…二つ目。もうすぐ死ぬかもしれないにしても、今まで通りでいて!もしかしたら死なないかもだし、病気じゃなくて事故でいきなり死ぬかもしれない。それでもあたしは、今まで通りがいいんだ。約束してくれる?」
朱音 「わかった…頑張るよ、つーちゃんがそうしたいなら。」
星司 「うん。僕たちは星音の味方だからね。」
星音 「…ありがと!」
朱音 「よし!今日は青椒肉絲にしよう!ね、つーちゃん食べてなかったじゃない。」
星音 「御手洗先生がお肉はやめといた方がいいかもって」
朱音 「関係ない!食べたきゃ食べよう!」
星音 「…食べる!病院食ばっかで飽き飽きしてた!」
星司 「僕のせいでまた遅くなっちゃったけど…そろそろ八時だ。明日も学校なんだから、十一時までには寝るよ。でも、それまではなんでもしよう!久しぶりにスマブラでもやる?」
星音 「よっしゃ!ボコボコにしてやらー!宗ちゃんで修行したあたしは前より強いぞ!」
星司 「かかってこい!」
暗転・明転
ひまり 「ええっ!?寧音ちゃんにカレシぃ!?」
星音 「どどどどいういこと!?誰!?写真は!?」
寧音 「ちょ、声大きいって…写真なんかないけど…」
光 「ネオンに!?ありえねぇ!!ガサツで毒舌で断崖絶壁のコイツに!?絶対嘘だ!!」
日向 「ヒトの彼女に断崖絶壁とか言いなや」
寧音 「あ、実物ならそこに」
光 「ま……まさか、おお前……お前お前お前!!仲間だと思ってたのにいい!!」
星音 「え、え、えぇぇ!?ネオン日向君と付き合ってんの!?待って心臓が…」
寧音 「あんたが言うと洒落にならないのよ!」
光 「おいなんか言えお前も!」
宗也 「何を」
ひまり 「日向君とネオンが付き合っちゃったよ!ひゅうネオだよ!!」
宗也 「やっとか」
ひまり 「やっと?気付いてたの!?」
宗也 「日向は星野見る時目が違うから。お前ら、そう言う話好きなくせに鈍感すぎなんだよ」
ひまり 「えぇ…やっととか鈍感とか宗也君が言う?って言うか…」
光、ひまりの口を押さえる
ひまり 「ぐ」
光 「言わない優しさってのもあんだオメーは黙ってろッ!」
寧音 「光こそひまりと付き合わないわけ?」
光 「誰がこんなのと!」
ひまり 「あっそぉ…」
寧音 「いーよひまりにはもっといい男いるから」
日向 「寺田君さいてー」
光 「お前までなんなんだよ!」
ひまり 「いーえ?ひまりにはもっといいヒトいますから。近所の九条くんとかいますから?」
光 「九条くん誰?イマジナリーフレンド?」
寧音 「あぁ、あぁイケメンだったよ?」
光 「は!?」
星音 「光かわいそ!早くしないと取られちゃうよひまり」
光 「どうでもいい!勝手に作れカレシなんか!」
寧音 「あーっコイツ拗ねたァ!ガキだ!」
日向 「渡会、これ。」
星音 「あ、しるこサンドじゃないじゃん。珍しい」
日向 「夢川と星野に買わされてん。」
星音 「めっちゃ食べたい…でも太っちゃう…」
日向 「気にすんな。ヤダ太っちゃう~!みたいなんはヨソで…つか、橋本とやればいいやろ」
星音 「…ばか!殴るよ!」
日向 「殴ってるってもう」
宗也 「…つづ」
ひまり 「遮って)やばい!塾だ!もう行かないと!」
光 「げ、マジじゃん…」
ひまり 「ひまり普通に行くから光遠回りしてね。じゃあねばいばい。行ってくる!みんなばいばい!」
光 「てめっ…待て!ひまり!」
ひまり・光、走り去る
寧音 「…じゃ、あたしたちもデートだから」
星音 「え!」
日向 「そういうことで。」
寧音・日向、去る
星音 「なんでみんな、変に気い使うのよぅ!」
宗也 「…楽しめたか? …多分、今日か明日って…話だろ…」
星音 「言っとくけど、あたしの後とか追ってきたら怒るからね」
宗也 「…分かった。追わない」
星音 「宗ちゃん、」
星音、手を広げる。
星音 「…来てくれないの?」
宗也 「…」
星音 「…寂しいよ」
宗也 「それはだって、別れの挨拶だろ!?」
星音 「…」
宗也 「そんな理由で、お前に触れられたって……嬉しくねえよ…」
星音 「…今日の夜、必ず正門の前に来ること。夜の二時にしようかな。またLINEで言う」
宗也 「…何するんだ。秋の真夜中なんて寒いぞ」
星音 「ん?何かぁ…特に。喋りたいだけだよ。死ぬ前にいっぱい遺言残しとこーと思って。」
宗也 「…なんでそんなに明るくいられるんだよ。死ぬわけでもないのに、俺の方が……」
星音 「…初めてじゃないからねぇ。こんな風になるのも。言い方が悪いけど、毎度騒ぎ立ててくれるのは嬉しいよ。でも、あたしはもう良いかなって思ってる。よく生きたよ! …宗ちゃんのおかげでね」
宗也 「…そうか。……そうなんだな」
星音 「だから安心して。」
宗也、星音を抱きしめる
星音 「時間差で来たか」
宗也 「好きだ。…愛してる。」
星音 「…うーん…嫌いになって欲しいって思ってたんだけどなぁ……。…あたしも大好きだよ、宗ちゃん。」
宗也 「…」
星音 「強いよ宗ちゃん、苦しい」
宗也 「…ごめん」
星音 「…よし、帰ろっか!」
宗也 「…そうだな。」
暗転・明転
宗也 「…センドウ、オイ…千堂」
千堂 「何ですか?あ、あんまり近づかないで、ちょっとPTSD出そうなんで」
宗也 「PTSD?」
千堂 「トラウマ的なやつですよ。せっかく長い間かけて寛解させたって言うのに、この間殴られて再発したんですよ」
宗也 「…悪かったよ」
千堂 「…何がですか?」
宗也 「改めて謝ろうと思って。…代わりに死ねとか……、殴ったり…とか……すまん」
千堂 「…良いですよ別に。この先どんなに酷い目に遭ったって、私に文句を言うような資格はありませんから…。私こそ、改めて謝らせて下さい。あなたに断りもなく渡会君に…その、銀河鉄道の話をしてしまって」
宗也 「良い。きっといつか、言われなくても気付いたよあいつは」
千堂 「…関根君の自殺…止められなかったなんて思わないで下さいね。…彼女は死にたがっていました。あれでよかったんです」
宗也 「……俺には、…俺には…分からない。自ら死を望む人間の気持ちが。夕とは昔から仲が良かったし、俺の前では疲れた顔の一つも晒さないような奴だった。なのにこうだ。」
千堂 「親戚…従姉妹さんなんでしたよね。…仮にですけど、四番サン、いえ、橋本君は、母親や兄弟…親戚や親しい人に、疲れたところを見せたいと思いますか?」
宗也 「…心配はかけたくない。でも、心配はしてほしい」
千堂 「その気持ちと同じですよ。関根君を追い詰めたものが何であれ、…冷たい言い方ですがもう関係ない。橋本君がこれからどうしたいか、どうするべきか、…遺された人達と共に、どう生きるか。それが大切ですから」
宗也 「ヤブでも医者か」
千堂 「ええ。人の死というものに、誰よりも多く触れてきました。それは、車掌のあなたも同じはず。」
宗也 「…ああ。」
千堂 「…治せなくてすみませんでした」
宗也 「…何を」
千堂 「渡会君の病を。原因不明の心臓病…さらに渡会君の特性、呼吸器・循環器系が悉く弱いのも相まってあんなにも苦しめてしまいました」
宗也 「…そういうのは本人に言え。」
千堂 「でも、橋本君が一番苦しんでいる。あの子のために。」
宗也 「言い過ぎだろ。」
千堂 「いいえ。ご両親とあなたが渡会君を支えた結果ですよ。」
宗也 「そうだといいな。苦しむならあいつのために苦しみたい」
千堂 「…詩人とか目指せば良いんじゃないですか?」
宗也 「茶化すなよ…これでも意外と本気だぞ…」
千堂 「尚更良いじゃないですか!素敵な言葉を本気で言えるなんて、心から大好きな証拠でしょう?」
宗也 「…黙れ、また殴られたいのか」
千堂 「ご自由に。」
宗也 「……終わっちまう、…のかな」
千堂 「さぁ。どうでしょう。続くかも。」
宗也 「…今日が全ての終わりじゃないと良いな」
千堂 「ええ。続くと良いですね。」
宗也 「…誰かが死ぬのがこんなに悲しいのは初めてだ。…死んでほしくない」
千堂 「じゃあ死ぬ前に言っといた方がいいですよ」
宗也 「…考えとく」
千堂 「素直じゃないなあ。」
宗也 「……ふは、…ははは」
暗転・明転
星音 「…寝たかな、二人とも」
星司 「家出かい?不良娘」
星音 「起きてたんだ。…止める?」
星司 「いいや。でも母さんなら止めた」
星音 「行ってくるね。…帰って来れなかったら、ごめんね」
星司 「大丈夫。その時はその時だ。そしてまた、息を吹き返すかもしれないだろ?」
星音 「…うん、でしょ。」
星司 「好きにしな。」
星音 「…行ってきます!」
星音 「…あ、いた!忘れずに来てくれた」
宗也 「忘れたりするかよ。」
星音 「ふふふ。…さて、どこに行こうかねぇ?」
宗也 「学生二人で深夜徘徊なんて、補導で捕まってお終いだぞ」
星音 「そうならないように老け顔の宗ちゃん連れてきてんじゃん」
宗也 「老けっ……」
星音 「最悪なんとか大学生です!でいけるって。」
宗也 「無理だろ、かなり無理だろ」
星音 「公園でいいや。いつもの…って言っても、昔か。思えばだいぶ昔だ。懐かしいね…あそこ行こ」
宗也 「…あそこってどこだっけ」
星音 「そうやって照れるとすぐ忘れたフリする宗ちゃんはキライでーす」
二人、一度去ってまたすぐ入ってくる。
星音 「…デートみたいだね、深夜デート!」
宗也 「深夜すぎるだろ。…大人になってからやれよ…」
星音 「大人になんてなれないもん! …あーぁ、免許も仕事もお酒もまだなのになぁ。あたし全部やりたかったんだよ。でもまぁ…今こうして外を歩けるだけで、ちょっと楽しいんだけどね。」
宗也 「…どうしても、俺じゃだめか」
星音 「えぇ、またその話? 言ったじゃん。あたしが断るのは、宗ちゃんが次に進むためなんだよ。…宗ちゃん一途だからさ。死んだ人のために…ううん、あたしのために一生を費やすなんて、勿体無いから」
宗也 「勿体無くない。俺はお前が好きなんだよ。一生を費やす覚悟も、命を投げ打つ覚悟もある!だから……、だから…………」
星音 「…よし、分かった!じゃあ、次生き返ったらね」
宗也 「それじゃ…」
星音 「そしたら宗ちゃんだけは、あたしが生き返るって信じててくれるでしょ」
宗也 「…分かった、信じる、信じてるから、絶対に戻って来てくれ」
星音 「言われなくてもね! …死ぬ覚悟はできてるけど、死にたくはないの」
宗也 「渡会…」
星音 「死んだ後のことなんてわからないし、天国に行けるほど良いこともしてない。それに、お父さんお母さんにも迷惑かけちゃう。寂しくさせちゃうな。それも嫌だ。」
宗也 「…そんな理由だけでか?」
星音 「…………死にたくないよ!怖い!ちょー怖い!消えたくない!忘れられたくないよ!もうみんなに会えなくなるなんて……嫌だよ……」
宗也 「やっと、涙見せてくれたな」
星音 「あーもう!頑張って抑えてたのに!さいって!もうヤダぁ……!!」
宗也 「俺ばっかり弱いとこ見られてたら不公平だろ」
星音 「こんなに頑張って来たのにさぁ、終わる時って一瞬なんだよ。怖いに決まってるじゃん。やだよ……」
宗也 「…戻ってくるんだろ」
星音 「…うん……」
宗也 「…絶対な…」
星音 「……うん…」
星音、宗也の頬にキスをする。
宗也 「えっ…」
星音、激しく咳き込んだ後、項垂れる。
宗也 「おいっ!渡会!大丈夫か!!おいっ!!!」
暗転・明転
千堂 「…まずい状態です。でも、延命措置を続ければまだ助かるかもしれません。諦めないでください。娘さんは何度も、奇跡のような回復力を見せています。絶対に、諦めない方がいい」
朱音 「…あなたが、つーちゃんを止めていれば…!!」
星司 「…そうだね。ごめん。」
朱音 「…違うの、…ごめんなさい、どうにもならなかったって分かってるの…ごめんなさい…」
星司 「…いいんだよ…」
宗也 「千堂」
千堂 「何ですか」
宗也 「…帰ってくるよな」
千堂 「ええ。きっと、いえ、必ず…」
暗転・明転
星音 「…はっ、ここは…!!」
モノ 「…もう、…か」
星音 「あなたは……」
モノ 「…最後の情けだ。…こんなに色々して、僕も消されてしまうかもしれないな…。君の記憶を戻してあげる」
星音、翳されたモノの手を掴む。
星音 「魔法なんて必要ありませんよ、神田春生さん。私、…覚えてます」
モノ 「……え?」
星音 「記憶がある状態で来るのは初めてですね。改めまして、あたしは渡会星音です。助けてくれてありがとうございました」
モノ 「…いやいやいや……え?」
オクタ 「ここです!」
ジド 「え…い、一番と一緒にいる!?」
星音 「あ!あなた達は…あの時の!こんにちは、渡会星音です。え~~と、あ、二番さんと八番さん?何回目かにちらっと聞いた気がします」
オクタ 「え…もしかして、記憶が…?」
星音 「はい。…あと、私、人を探してるんです。リオネラさんって人ご存知ですか?」
ジド 「り…リオネラ様のことまで……」
オクタ 「記憶があるなら、リオネラ様に直談判しに行くよりも……車掌になった方が話が早い。」
星音 「え?私車掌になるんですか??」
モノ 「捲し立てない。…まずは自己紹介から。ね?」
ジド 「…そうですね。」
モノ 「僕は一番、モノ。本名は神田春生だけど、できれば一番かモノって呼んで。」
ジド 「二番の…ジド…です。二番と呼んで下さい。絶対。」
オクタ 「八番、オクタと申します。ご自由にお呼びください」
星音 「渡会星音です。よろしくお願いします。」
モノ 「…さて、何から話そうか。」
星音 「ここって、何なんですか?」
モノ 「ここは、銀河鉄道。生と死の間だよ。鉄道にいる間はまだ、ギリギリ生きていると言ってもいい。終点の彼岸に着いた時、人間は本当の意味で死ぬ。」
星音 「…じゃあ、車掌さんって何なんですか?」
モノ 「うーん…一種の死神と呼んでも良いんじゃないかな?鉄道内でのトラブルを防止し、人々を死に導く存在だよ」
星音 「車掌さんになるって、どう言うことなんですか」
モノ 「生と死を、つまり現世とこっちを行き来できるようになる。…肉体が存在している間はね。僕たちはとっくの昔に火葬されちゃったからもう無理だけど。ここに残った車掌達は、生きるのも死ぬのも拒んだ馬鹿か、享楽主義者の変人か、それくらいだよ」
ジド 「つまり、あなたが助かる方法は、車掌になることだけだということです。数日に一度こちらにこれば消されはしないでしょうから。」
星音 「御手洗先生もたまにこっちに来てるってことですか?」
オクタ 「御手洗? …もしかして、御手洗千堂?」
星音 「その反応は違うんですね。…リオネラさんに会えば、完全に生き返ることができるんじゃないんですか?」
モノ 「間違ってはいない。でもリオネラは気まぐれで、それこそ享楽主義者だ。夢を見ない方がいい」
星音 「…そう、ですか。」
モノ 「…リリヤ!渡会星音を、一番・神田春生の名のもとに車掌候補に推薦する!いるんだろ、出て来い!」
リリヤ 「いやァバレてました?」
モノ 「何でもいい、渡会さんに許可証を」
リリヤ 「はい。これ、手放さないで下さいねェ。これを着けている間だけ、アナタは車掌でいられます。あと、本名で名乗るのは辞めた方がいいですよォ。名前で呼ばれると情がうつっちゃいますから」
星音 「……なんて名乗れば?」
ジド 「…ステラ、で良いんじゃないですか?星音さんって、星に音でつづねさんなんでしょう」
星音 「ステラ…」
リリヤ 「アナタには、七日間の猶予を差し上げます。それまでに、正式に車掌になるかどうかァお決めになって下さいねェ」
星音 「七日…って、あたしその頃には死体じゃないですか!?」
オクタ 「こちらで七日が経つうちに、向こうでは一日しか経ちませんから。安心して下さい」
星音 「あ、そうなんですか……」
ジド 「…でも、何を待つことがありますか。今すぐあなたが車掌になれば…」
星音 「だって、死にに行く人たちを、黙って見送らなきゃいけないんでしょう…?自分のこともわからず、大切な人のことも忘れて、ただ死後の世界に向かう人たちを、全員無視して送らなきゃいけないんですよね」
ジド 「それは……でも、」
星音 「私にはそんなことできません。…偽善者だって思うかもしれませんけど、できないんです。…でも、何回も誰かを生き返したら、車掌の力は没収されちゃうんでしょう。そうなったら、…きっと、私は今度こそすぐに死ぬ」
モノ 「…七日間でしっかり考えたら良いよ。これから自分がどうするか」
星音 「あともう…二つだけ聞いても良いですか?」
モノ 「なんでも。」
星音 「一番さんみたいな魔法って、私も使えるようになったりするんですか?」
モノ 「…なんで?」
星音 「楽しめることは楽しんどこうと思って!」
モノ 「…使えないこともないんじゃない?要は気持ち次第。僕の力は、『正す』。何かを元の状態に戻すだけ」
ジド 「私の力は『縛る』。とにかく何でも縛れるのと、誰かと約束を科して必ず守らせる…とか、そういうことができますよ」
オクタ 「僕のは…『見通す』。遠くのものが見えたり、ちょっとした未来視的なのができたりします」
星音 「…宗ちゃんのは?」
モノ 「テトラの?あいつのは『燃やす』。なんか色々燃やしたり、相手の冷静さを奪ったりするやつ」
星音 「へぇ…なんか単純、宗ちゃんっぽい」
モノ 「もう一つの質問は?」
星音 「死んだらどうなるんですか。」
モノ 「……死後の世界があるらしいけどね」
星音 「らしい?」
オクタ 「僕たちは、死後の世界に行かなかったからここにいるんです」
星音 「あぁ、なるほど。」
リリヤ 「それはワタクシが説明致しましょうかァ?」
ジド 「まだいたんですか」
リリヤ 「車掌の方々と違い…ワタクシ、リリヤとシシドは、そちらで生まれ育ったのですよ。まぁ平和なとこです。少なくとも、アナタ方が想像するような天国やら地獄やらはない」
星音 「…ふぅん、そうなんですね」
リリヤ 「満足なさいましたか?」
星音 「はい。…地獄がなくて良かった。」
リリヤ 「どうして?」
星音 「…宗ちゃんにキスだけ残して死んじゃった悪い女だからね!」
ジド 「…青春ですね。」
オクタ 「ええ、羨ましい限りですよ。」
モノ 「…じゃあ、僕は行くから。」
星音 「えっ!?」
モノ 「元々、君の記憶を戻して去るつもりだったし。僕は消されるのは嫌だから、できればこれ以上は関わりたくないの」
星音 「えぇっ…」
モノ 「大丈夫。車掌の仕事って言っても、見回りさえしてりゃ良いからさ。二番と八番がいるしいいでしょ。じゃあね」
星音 「一番さん!」
ジド 「…まさか、一番と言葉を交わす時がくるとは」
星音 「え?一番さんってそういう方なんですか?」
ジド 「滅多に私たちの前には姿を見せませんでしたよ。それこそ、深く関わっていたのは四番くらいのものです」
オクタ 「…いくつか注意しておきます。」
星音 「は、はい」
オクタ 「あなたはステラ、本名は名乗らないこと。戻れなくなるので、決して駅で降りないこと。乗客に肩入れしすぎないこと。五番と七番には関わらないこと。いいですね」
星音 「降りたらどうなるんですか?途中の駅で。」
ジド 「質問の多い人ですね……まあ、仕方がありませんか。あなたが前回降りてしまった揺蕩う夢や、あと…惑星の縫い代。言葉通り戻れなくなるんですよ。時空が歪んでいるから、時間の進みは一定じゃないし、惑星の縫い代なんかは……永遠に落ち続けます」
星音 「えぇ…」
オクタ 「地獄があるというなら、それこそ全ての駅が地獄です。そこに路線図があるでしょう」
星音 「揺蕩う夢、温もりの棲家、掌の城、数多影差す森、世界の縫い代、致死毒の花畑、彼岸…って、最後の方だけ毒々しい。」
ジド 「温もりの棲家に放り出された時は死ぬかと思いましたよ」
星音 「なんか平和そうなのに」
ジド 「名前だけですよ。何が温もりですかあの地獄」
オクタ 「二番、僕は少々外します。ステラさんを頼みました」
ジド 「えぇ!?私だって休憩………まぁ、仕方ありません」
オクタ、去る。
星音 「…二番さん達ってどうして私を助けてくれたんですか? もしかして、宗ちゃんと何かあったとか?」
ジド 「…五番に殺されかけた時に助けられただけです。…八番は知りません。羨ましかったんじゃないですか?」
星音 「…何がですか?」
ジド 「命を擲っても救いたい人がいることが。」
星音 「…へへ。」
ジド 「何なんですか…。」
星音 「そういえば…あたしに変な魔法をかけた人って結局誰なんでしたっけ。あの、なんちゃらっす!って喋る人」
ジド 「あぁ…七番、ヘプタですよ。あいつの力は『消す』。色んなものを消したり薄めたりできます。何より性格が悪いので近寄らないことをお勧めしますけどね…」
星音 「気をつけますね」
泣く人、大声で喚きながら歩いてくる
泣く人 「おかあさぁん! どこぉ…ここどこぉ…!!」
星音 「あ…」
ジド 「辞めておきなさい! …あなたは優しすぎる、きっと肩入れしすぎて…」
星音 「…。」
ジド 「…あぁもう!この鍵を使って車両の間の扉を開けると休憩室に行けます!大暴れすると目をつけられるのでお気をつけて!車掌の仕事はあくまでトラブルの防止です!変に慰めて心痛めても知らないですから!!」
ジド、星音に鍵を押し付け去る。
星音 「…なんやかんや、優しい人。」
泣く人 「おかあさぁん…
星音 「お母さん、探してるの?」
泣く人 「わかんない…なんにもわかんない…おぼえてない」
星音 「そっかぁ。寂しい?」
泣く人 「わかんない…」
星音 「よし、じゃあお姉ちゃんとお話ししてよっか。」
泣く人 「でもおかあさん…」
星音 「そうだねぇ。お母さんの名前とか、顔とか、着てる服とか、わかる?」
泣く人 「おぼえてないの…」
星音 「…そっか。」
泣く人 「ぼくのおかあさん知らないの?」
星音 「知らないなぁ…」
泣く人 「なんで?」
星音 「なんで?そうだなぁ、なんでか…うーん。会ったことないから分かんないかなぁ」
泣く人 「大人なのにわかんないの?」
声)幼い星音「なんで朱音さんはなんでもわかるの?」
声)朱音「お母さんは大人だから分かるのよ」
声)幼い星音「ふうん、そうなんだ。星音もはやく大人になりたーい」
星音 「……大人でも、…分かんないの…」
泣く人 「泣いてる!だいじょうぶ?わかんないから泣いてるの?」
星音 「そうかも…」
泣く人 「ぼくもおかあさんわかんない…」
星音 「…そっか…」
星音、泣く人を抱きしめる
泣く人 「お姉ちゃんぼくのこと好きなの?」
星音 「…君のお母さんも、きっと君のこと大好きだったと思う…っ」
泣く人 「泣かないで、服ぬれちゃうよ」
星音 「濡れちゃうね……ごめんね……」
泣く人 「おなかすいた」
星音 「お腹空いた?ごめんね、あたし何にも持ってないや…」
トリ 「お腹空いたの…じゃあ、お腹いっぱいにしてあげようか…?」
トリ、いつに、ともなくそこに居る。
星音 「え…あなた、もしかして…車掌さん…?」
トリ 「三番のトリだよ。きみは…テトラの大事なひと…」
星音 「ステラと名乗ってます、車掌候補…?がどうとか。宗ちゃんのお友達?」
トリ 「ぼくはね、テトラのことが大好きだから、きみのことも大好きなんだ。ペンタとヘプタが危ないから、それを言いに来たの」
泣く人 「ねーえー、お腹いっぱいにできるの?」
トリ 「ぼくの力は『満たす』だから…心でも、お腹でも、何でもいっぱいにできるの」
トリ、泣く人に手を翳す。
トリ 「…どう?」
泣く人 「おなかすいてなくなった」
トリ 「よかったねえ。…ステラ、誰かに食べ物とか…貰っちゃだめだよ。『黄泉竈食ひ』…生きてる人の世界に、戻れなくなっちゃうよ」
星音 「そうなんですね、教えてくれてありがとうございます」
トリ 「…この子、連れてっていい?ぼくね、一緒に遊ぶ人がほしかったの」
47
星音 「このお兄さんが遊んでくれるって!」
泣く人 「ほんと!?」
トリ 「ほんとだよ。行こー」
トリ、泣く人を連れて去る。
星音 「…何だったんだろう…。…この鍵を使って車両の間の扉を開けたら休憩室…だっけ」
星音、鍵を差して回す。
暗転・明転
星音 「ステラ…あたしの部屋がある。すごい、早いなぁ。魔法でも使ったのかな?」
ジド 「早いですね。もう少し経ってから来るかと。…食べますか?」
星音 「三番さんが、ヨモツヘグイがなんとかって」
ジド 「あぁ、確かに。食べない方がいいかもしれませんね。四番は色々食ってましたけど。」
星音 「ふふ。」
ジド 「…何ですか?」
星音 「ううん。あたしが知らない宗ちゃんの話聞くの、すっごく楽しくて。」
ジド 「…良かったですね。」
星音 「うん。」
オクタ 「あ、二人とも。」
ジド 「八番。」
オクタ 「…まさかですけど、乗客…死者と仲良く話してはいないでしょうね。」
星音 「…」
オクタ 「…善い人というのも考えものですね。はっきり言って車掌には向いていませんよ。」
星音 「そうですよね…」
オクタ 「褒め言葉ですよ。ただ死を見送ることに慣れた僕たちと違って、…誰かのためを想うことができるあなたは羨ましい」
星音 「…へへへ…」
ジド 「で、どうしたんですか。用事があったんでしょう?ほぼ無職の私たちに仕事だなんて。」
オクタ 「五番の『変える』力でステラさんの心を軽くできればと、話を持ちかけてみましたがね。案の定断られました。それどころか、まずいことになりました。五番があなたに興味を持ち始めたかもしれません。」
ジド 「余計なことしてくれましたね」
オクタ 「悪かったですよ。何も言わなくとも、どうせバレたと思いますけどね」
星音 「五番さんって、もう一人のやばい人?」
ジド 「ええ。」
オクタ 「…五番がこちらに向かってきています、今すぐ無人の車両に移動した方がいいかもしれません。あれは、暴れますよ」
ジド 「クソッまた面倒な…!! 行きますよ!」
星音 「は、はい!」
暗転・明転
ジド 「あぁぁ…めんどくさい…帰りたいもう…!!」
ペンタ 「逃げんなよジドちゃん!俺その子と話に来ただけだよ?」
ジド 「ジドって呼ぶんじゃねーよ!死ねっ!」
オクタ 「下がって。二番、口が悪いですよ」
ジド 「ステラさん、絶対にこいつに触れられないようにしてください。こいつの力は触れると発動します」
星音 「はい!」
ペンタ 「もう触れそうだけど、だいじょぶそ?」
オクタ、ペンタを弾き飛ばす
ペンタ 「痛いんですけどぉ!そんなに俺のこと嫌い?」
ジド 「嫌いだ消えろ!」
オクタ 「二番。」
星音 「あの人そんなにやばい人なんですか?」
オクタ 「五番は車掌になってから、同じ車掌を三人消しています。一番危険と言っても過言ではありません」
ペンタ 「過言だよ!俺そんな悪い奴じゃないし。その子から現世の記憶もう一回消したらどうなんのかなって思っただけ!」
オクタ 「…頭が可笑しい」
ジド 「八番! …コイツはここで消します。この先生きていても私たちに利する事はないでしょうから」
オクタ 「…同感ですが、僕たちでやれますか」
ジド 「やるんですよ。何が何でも。」
ペンタ 「また俺のこと仲間はずれ?あ~もうやだなぁ、俺寂しいと死んじゃうよ~」
ジド 「だったら勝手に死んでろ!」
ジド・オクタ 対 ペンタ。
ジド、しばらく戦ったのちペンタに踏みつけられて。
ペンタ 「イキんなってば。ジドちゃん弱いんだから」
ジド 「うるせぇ!足を退けろッ!!」
ペンタ 「まだやる?」
オクタ 「……二番から離れろ」
オクタ、しばらく戦ったのち倒れる。
ペンタ 「怖がんないでよ!さっきはちょっとびっくりさせちゃったかもしれないけどさ、俺ほんとにお話ししに来ただけなの!記憶がある君の方が面白そうだったら何にもしないよ?」
星音 「…面白い自覚はないんですけど、とりあえず八番さんに座るの辞めてもらっていいですか?」
ペンタ 「ねえ、何で車掌になりたいの?なんで生き返りたいの?」
星音 「退いてください。」
ペンタ 「お話ししようよー」
星音 「話ならします。先にどいてください!」
ペンタ 「めんどくさいなもう…はいはい、退いた退いた」
星音 「逆に、五番さんはどうして車掌になったんですか?」
ペンタ 「なんか面白そうだったから!それ以外の理由は特にないよー。車掌になりたいは分かんなくもないけど生き返りたいは分かんないかな!だって、君向こうじゃ体弱くて体力もないんでしょ?疲れもなく自由に走り回れるこっちのほうが良くない?」
星音 「あなたには、大切な人はいないんですか?」
ペンタ 「いない!みんなおもんないからねー。」
オクタ 「挑発しないでください!こいつは…!」
星音 「…私は、大切な人ともっと一緒に過ごしたい。だから生き返りたいんです。」
ペンタ 「あー…はいはい、テンプレね。おもんないわ、消えて」
星音 「全てがつまらないのは、誰にも心を開いていないからじゃないですか?」
ペンタ 「逆だよ?面白くないから開かないの」
星音 「白々しい言葉に聞こえるかもしれない。でも、誰かを愛することができれば、きっと世界は変わる。私は変わった。宗ちゃんに出会って、心を開いて、恋をして変わった。」
ペンタ 「寒いよそういうの…もういい、本当もういいよ」
オクタ 「逃げて!!」
星音 「『変える』力を持つあなたが自分を変えられないのは、きっと心を開くのが怖いからだよ。」
ペンタ 「…何なの?その自信」
星音 「私があなたの心を変える、その心を開けて。」
星音、ペンタに『開ける』力を使う。
ペンタ 「えっ…お前、まだ候補なんじゃ……き、聞いてない、候補のくせに…!!」
オクタ 「ステラさん、それは…」
星音 「わ、わかんないです!なんか…使える気がして…!」
ジド 「どちらにしろ好都合でしょう…、」
星音 「二番さん!」
ジド 「早く、五番にとどめを!」
ペンタ 「聞いてない…聞いてないよ、…新しい子がこんなに可愛いなんて聞いてないよ!」
星音達 「…え?」
ペンタ 「いいねぇ君!よーしゃよしゃよしゃ!!」
ペンタ、星音を雑に撫で回す。
星音 「あの……心開きすぎでは…」
ジド 「五番がさらに気持ち悪くなっちゃった」
オクタ 「これ…ステラさんの力、…ですよね。何の力なんでしょう」
ジド 「…力を使った瞬間、何を考えてましたか?」
星音 「…この人の心を、こじ開けてやろうって」
ジド 「…じゃあ、『開ける』力でいいんじゃないですか。てか五番気持ち悪…おい離れろ、この子彼氏持ちなんで」
星音 「そっ宗ちゃんは彼氏じゃ…!」
ペンタ 「かんけーないね!テトラはもうこっちには来れないし!」
星音 「いやあの宗ちゃんとか関係なく離れてもらっていいですか…?」
ペンタ 「えぇ!やだよ!」
オクタ 「女性にベタベタ触るもんじゃない…」
オクタ、ペンタを星音から引き剥がす
ジド 「でどうするんですかコイツ。始末しますか」
星音 「…協力して下さい。私が呼んだらすぐに来て欲しいです」
ペンタ 「うん!!」
ジド 「ステラさん、『変える』なんて別に役に立ちませんよ。だって…、もしかしてあなた、まだリオネラ様のこと諦めてないんですか!?」
星音 「…備えは多いに越したことはありませんから。」
ペンタ 「俺、君のためならなんでもしちゃうよ!」
オクタ 「…四番が惚れるわけですよ。この命知らずな感じ」
星音 「へへ」
オクタ 「今度は褒めてませんよ」
ジド 「…五番を使うにしても、縛りはあった方がいい。約束して下さい、私たちの仲間には危害を加えないこと」
ペンタ 「えぇー」
シシド 「次は~…惑星の縫い代~。惑星の~、縫い代~。」
星音 「…してくれないなら、次の駅で投げ出します!」
ペンタ 「するする!そんな脅しなくたって、君が言うならするよ」
ジド 「触りたくはないですが、手を」
ペンタ、手を出し、ジドの『縛る』力を受ける。
ペンタ 「これ、ほんとに攻撃できなくなったの?」
オクタ 「どうぞ。」
ペンタ、オクタに蹴りを入れようとするが、足が固まって届かない。
ペンタ 「すごーい!」
ジド 「この縛りは完璧なものではないことを覚えておいて下さい。たとえば…たまたま蹴った石が誰かに当たる、みたいなことは制限できません。攻撃の意思を制限するものなので。」
声)千堂「渡会君!!渡会君聞こえますか!!」
星音 「御手洗先生の声…」
声)千堂「あー…届いてますか!?そっちの声聞こえてないんですけど、一応このまま話しますね! 四番さんが、橋本君が事故でし……した、すぐそっ……つ…と思いま…、………………!!」
千堂の声、どんどん不明瞭になって消える
星音 「え……宗ちゃんが…!?というか、何で先生…」
ジド 「…『伝える』の力を、まだ持っているのか…!?」
オクタ 「今はいい、それよりも四番さんの元へ!!」
暗転・明転
星音 「宗ちゃん!! …バカ!!後追ってきたら怒るって言ったでしょ!!アホ!!ふざけんなっ!!」
宗也 「……誰、…だ?」
星音 「…………え…?」
オクタ 「落ち着いて下さい。」
ジド 「…一度車掌の力を失ったんです、覚えていなくても仕方がありません」
星音 「そんな……!」
ヘキサ 「やあやあ、キミが星音ちゃんかい?」
ヘキサ、『止める』力を使い、ジド達を止める。
星音 「!だ、誰ですか」
ヘキサ 「六番!私村佐江子!ヘキサとも呼ばれる。…コレ、返して欲しいかい?」
星音 「それ……切符…!?」
ヘキサ 「彼のね。」
星音 「返してください!」
ヘキサ 「返して欲しければ、私とお話ししてくれ。なあに、五番みたいに誰かを傷つけたりはしない。」
星音 「…何ですか、あたし、早く宗ちゃんを…」
ヘキサ 「私の力でキミと私以外の全てを止めたから大丈夫さ。何時間話したってかまやしない」
星音 「…何を答えればいいんですか」
ヘキサ 「私は品定めに来たんだ。キミが本当に、リオネラと言葉を交わすほどの器かどうか。別に期待に沿わなくても、何もしないだけで危害を与えたりはしない。」
星音 「…分かりました」
ヘキサ 「いいね。物分かりのいい子は好きだ。…さて、第一問。キミは今からどうする?」
星音 「宗ちゃんを生き返らせたいです。」
ヘキサ 「ふむ。それは愛か?恋か?友情?情け?」
星音 「…いっぱい迷惑かけちゃったから、たぶん、恋だと思います」
ヘキサ 「相手に迷惑をかけないことが愛か」
星音 「相手を思いやることが愛だと思います。」
ヘキサ 「素敵だね!でも今はまだ、キミは『普通の素敵な子』だ。第二問。彼が一人で蘇ったとして、喜ぶか?」
星音 「……宗ちゃんは優しいから、きっとあたしだけ死んでることをずっと引きずると思います。それは、いやです。」
ヘキサ 「うぶだねぇ。素直に一緒に生きたいって言えばいいのに」
星音 「私は、生きたいですけど……、あれ…でも、一緒に生きたいって、うーん?」
ヘキサ 「いいよいいよ、多いに悩みな。」
星音 「…生きたいのは、ううん、死にたくないのは、お父さんとお母さんとか友達とか…みんなを悲しませたくないからで……、でも、生きたいのは…」
ヘキサ 「生きたいのと死にたくないのは違うの?」
星音 「…違う気がして、」
ヘキサ 「…第三問。キミは、自分とその愛する人のために、何でもする覚悟はある?」
星音 「あります。それだけは。」
ヘキサ 「即答だね。それで誰かを不幸にしても?」
星音 「…私、みんなに言われるほど優しくないんです。…多分、できると思います。そのあとで一生後悔して、一生償いを探しながら生きる覚悟もあります。」
ヘキサ 「…面白いね!良いよ、気に入った。2つだけ教えてあげよう。…一つ目、四番を車掌に推薦し鍛え上げたのは私だ。」
星音 「えっ…」
ヘキサ 「その私が言う。…キミは、この子に似ているね。とても真っ直ぐで良い子だと私は思うよ。」
星音 「え………」
ヘキサ 「二つ目。リオネラの本質は五番や私と一緒だ!面白そうとか、そう言うことだけで生きている。だから、キミが全力で足掻けば、きっとアイツに思いは通る。」
星音 「…思いは……」
ヘキサ 「要するに、…やっちまえってことだ!時が動き出したら、すぐに行動するんだ。武運を祈るよ」
星音 「……はい!」
ヘキサが星音に切符を返し、時が動き出す。と同時に、星音、踵を返して他の乗客の元へ
ジド 「…星音さん?」
星音 「切符、拝見します」
乗客 「?はい」
ジド 「っ馬鹿!!辞めろッ!!」
星音 「五番さん!」
ペンタ 「はいはいっ」
オクタ 「退け!あの子が消えてもいいのか!!」
ペンタ 「あの子が選んだことでしょ!そっちの方が面白そうじゃん!」
星音、乗客の切符を破り捨てる。
星音 「皆さん聞いてください!この鉄道に乗って終点に着いたら、皆さんは完全に死ぬんです!!」
二番八番「渡会さん!!」
星音 「死にたくない人!!あたしに切符を!!全員助けてあげますから!!」
乗客が押し寄せる、その切符を、片っ端から破っていく星音。
ジド 「ああ………終わりだ…………!!」
オクタ 「…ははっ、はははは!命知らずにも程がある!信じられない、あの子頭がおかしい!自分が消えてしまうかもしれないっていうのに!」
ジド 「何で笑うんです!心配じゃないんですか!?」
オクタ 「笑いながら)でもこの子なら本当に、リオネラ様に気に入られるかもしれないと思って!」
ジド 「小さく笑って)……やりすぎでしょうよ、明らかに…!」
シシド 「貴様!何をしている!」
星音 「アナウンスの人…!」
リリヤ 「にゃはは!思った三倍面白いじゃないですかァ!最ッ高ですよアナタ!」
星音 「あ…リリヤさん!」
ペンタ 「やばい人出てきちゃった…なぁっ!!」
ペンタ、シシドに攻撃する。
ペンタ 「もっと暴れてよ、ステラちゃん!」
星音 「五番さん…!」
リオネラ「その必要はない。」
二番八番「り……リオネラ様…!!」
リオネラ「どういうつもりか、聞かせて貰おうか。渡会星音……」
星音 「…暴れると目をつけられる、と言われたので。あなたに目を向けさせたら、きっと宗ちゃんと私が生き返る第一歩になると思って。」
リオネラ「…あははは!良いよ、私が求めてたのは君みたいな子だ!そういうの、嫌いじゃない」
一瞬暗転、その内に星音とリオネラ、宗也が消える。
ジド 「星音さんっ!!」
リリヤ 「大丈夫ですよォ、あの子はリオネラ様と話しに行っただけですから」
ペンタ 「行ったってどこに?」
シシド 「王の間だ。ここ…断絶の世界の王と、それに許可された者のみが立ち入ることができる。…貴様らの先の行動、反逆ととって良いな?」
リリヤ 「まァまァ!リオネラ様が帰ってくるまで待ちましょ! ね!」
オクタ 「……楽しかったですね」
ジド 「…そうですね。」
暗転・明転
王の間。水面に立っているような不思議な場所で、戸惑う星音。
リオネラ「どこにでも座りなさい。心配しなくても濡れやしないよ。」
星音 「は、はい。」
リオネラ「さて……何から話すかね。…うん、私は君と彼氏くん…四番・橋本宗也を蘇らせてやっても良いと思ってる。」
星音 「本当ですか!?」
リオネラ「でもな、私が君を生き返らせた後…後悔しないかが重要なのだよ。わかるだろう? だから、君にはいくつか聞かせてほしいことがあるんだ。そのくらいは良いだろう? 六番にも付き合わされて疲れているかもしれないが。」
星音 「ご存じだったんですね」
リオネラ「この部屋はあらゆる能力の影響を受けない。だから、君が得た力で私の心を開こうとしても無駄だよ」
星音 「…バレてましたか」
リオネラ「咎めはしないよ。全く良い度胸だ、君は面白い」
星音 「……具体的には、何を答えれば?」
リオネラ「一つ。君はなぜ生き返りたいのか。二つ。生き返って何をするのか。三つ。もし彼が………」
暗転・明転(時間経過)
リオネラ「…そうかい、そりゃ良いね。良いだろう。君を生き返らせてあげよう。これから君たちがどう生きていくか見ものだ。…私からのプレゼントだ、君の体の不調をいくつか治してやろう、健康な一般人として生きていけるように。」
星音 「いいんですか!?」
リオネラ「『開ける』の力と、車掌になる権利を没収するのと引き換えにだ。…良いね?」
星音 「…はい。」
リオネラ「…さあ、帰りなさい。橋本宗也には私が通しておく。」
星音 「……ありがとうございました。さようなら、リオネラ様。」
リオネラ「ああ、さっさと行け。」
星音が去ってしばらく、シシドとリリヤが武器を持って現れる。
リオネラ「ふふ、私も終わりか。四人も人を生き返らせてしまったものな。」
リリヤ 「寂しくなりますよォ、リオネラ様。」
シシド 「…貴様の作った法のもと、貴様を殺す。三代目リオネラ、いや、カルラ。」
リオネラ「次はお前の番かい?シシド。」
シシド 「…そうだ。大人しく消えろ。」
リオネラ「……良い神生だったなぁ。さよなら。」
暗転・明転
宗也 「はっ………、渡会!!」
星音 「なあに、宗ちゃん」
宗也 「な……い、生きて………、…良かった…!!」
星音 「宗ちゃんがあんまりあたしに生きてほしいって願うから……あたしも生きたくなっちゃった。…二人狂いなの。お互いがお互いの願いを引き寄せあって、最終的にはそれが自分の願いになっちゃうの。…そうやってリオネラ様にも話したよ。」
宗也 「…そうか。」
星音 「へへ。」
宗也、足を引き摺りながら立ち上がる。
宗也 「………約束、果たせよ。」
星音 「え?」
宗也 「えじゃねえよ、次生き返ったら付き合うっつったろ。」
星音 「……あぁ…えっと…」
宗也 「照れるとすぐ忘れたふりすんのは嫌いなんだろ。星音。」
星音 「…な、名前…珍しい、ね…?」
宗也 「どうせいずれ苗字で呼べなくなるからな。」
星音 「…それって………」
宗也 「…ガキの戯言かもしれないけど。………一生俺のそばにいてくれ」
星音 「……………ふふ、…あたし、めんどくさいよぉ?」
宗也、ゆっくり近づいて、キスをする。
「星屑フォリ・ア・ドゥ」終わり。
◆ステラ(渡会 星音)\女
◆テトラ(橋本 宗也)\男
◆モノ(神田 春生)\男
◆ジド(川上 双葉)\女
◆トリ(幸村 猫目)\男
◆ペンタ(木村 星太)\男
◆ヘキサ(私村 佐江子)\女
◆ヘプタ(根室 業人)\男
◆オクタ(秋津 風)\男
◆リリヤ\女
◆シシド\男
◆リオネラ(カルラ)\女
◆逃げる人\関根 夕\女
◆揺蕩う夢の住人\伊東 悠星\男
◆揺蕩う夢の住人\鈴木 真咲\女
◆揺蕩う夢の住人\福沼 玲印\男
◆揺蕩う夢の住人\黒川 彩樹\女
◆医者\御手洗 千堂\男
◆渡会 朱音\女
◆渡会 星司\男
◆湯田 日向\男
◆星野 寧音\女
◆寺田 光\男
◆夢川 ひまり\女
◆酔っ払い\福村 慎二\男
◆警察官\堂島 功\男
◆婦警\真霜 上\女
◆泣く人\須藤 優希\男
逃げる人「しつこいっ…あいつ、何度撒いたら気が済むのよ…!」
テトラ 「何度でも探し出す」
逃げる人「テトラ!!」
テトラ 「どこへ行く気だ。ここは鉄道、逃げ場なんてねえぞ」
逃げる人「…また、また失敗…!?」
テトラ 「その切符は回収させてもらう。」
逃げる人「辞めてよもう!!やめて、私は………!」
テトラ 「悪いな、俺のエゴで。…おっと、火がついちまった」
逃げる人「宗也!!!!」
テトラ 「さよならだな。」
逃げる人、消える
テトラ 「…何度も何度も…、諦めの悪ぃ奴だ…」
モノ 「またあの子…返したのかい」
テトラ 「…なんだ、モノ」
モノ 「ねえ、ちょっと。…干渉しすぎなんじゃないかい?僕らが干渉していいのは彼らの浅瀬だけであって……。…そんなことして。叱られてしまっても知らないよ?」
テトラ 「黙ってろモノ。これは俺の問題だ」
モノ 「テトラ。…最後の警告だ。君はこれ以上勝手をするべきじゃない。本当に、本当にリオネラに消されてしまうよ」
テトラ 「…。」
モノ 「テトラ!」
テトラ 「…結構だ。」
暗転・明転
星音 「っ!」
リリヤ 「おはようございます!切符をお渡しします」
星音 「は…はあ」
リリヤ 「失くすと、その場で戻されますので、ご注意下さいねェ」
星音 「…どこだっけ、ここ…。私、電車なんて乗ってた…?完全に寝てたけど、乗り過ごしちゃったかなぁ。と言うかそもそも、どこに向かってたんだっけ…何にもわかんないや…」
シシド 「次は~……揺蕩う夢~、揺蕩う…夢~……」
星音 「揺蕩う夢…変な名前の駅。…そうだ、切符にどこ行きか書いてあるかも…。かれ……きし…?」
テトラ 「ここか」
オクタ 「ええ、僕が見間違えてなければ。」
ジド 「…いつもより遠かったですね」
声)星音「あれ……この人、誰かに似てる。懐かしい誰か。大好きな誰かに、似てる気がする…」
テトラ 「おい。車掌だ、切符を拝見する」
星音 「はい…どうぞ。」
テトラ、星音の手から切符を奪い取る。
テトラ 「…」
声)星音「その時私は、なんだか胸が騒つくような感じがしていた。取られてはいけない。切符を、返して貰わないといけない…そう、強く思った。次の瞬間、私の手は乱暴に切符を掴んでいた」
星音、「私の手は」辺りで切符を奪い返す。
テトラ 「お前……何か、気付いたのか…?」
星音 「こ、これ、私のです…自分でもよくわからないけどっ…私のなんです!!」
オクタ 「…回数を重ねたからでしょうね」
テトラ 「妙に勘が鋭くなってるらしいな。関係ない、それを渡せ……俺がちゃんと、綺麗に燃やしてやるからよ」
星音、走って逃げ出す。
テトラ 「…ここは鉄道だぞ…。逃げ場なんか、…ある訳ねえだろ…」
オクタ 「僕が行きましょうか?テトラさん、とても疲れた顔をしています」
テトラ 「…そりゃ、…そうだろうよ…」
ジド 「でもまずいですよ、四番。次の…揺蕩う夢で降りられると厄介です。あそこは時間が捻じ曲がってますから…彼女の身体が耐えられるかどうか…。縛れば楽ですけど」
テトラ 「あ?」
ジド 「冗談ですよ」
オクタ 「なんにせよ急ぎましょう、見失っては危ない。それに、あそこで取り残されたら…戻すことさえ出来なくなります」
テトラ 「ああ…追うか。手分けするような道もねえしな」
暗転・明転
星音 「な…なんなの、あの人達……車掌さん?いやでも、燃やしてやるからとか言ってたし…悪い人!?」
ヘプタ 「そうっスよ、あのヒト達は悪いヒトっス!」
星音 「うわぁ!」
ヘプタ 「オレは七番のヘプタっス、よろしくっス!」
星音 「よ、よろしくお願いします…?私は…、私は…ええと、…誰なんでしょう?」
ヘプタ 「大丈夫っスよ!じきに思い出すと思うっスから」
星音 「そうなんですかね…」
ヘプタ 「お嬢さんを追ってたあのヒト達は、いろーんなヒトを巻き込んで、大混乱を巻き起こそうとしてるんっス!やばいっスよね?」
星音 「確かにやばいのかもしれませんね」
ヘプタ 「そこで!オレがお嬢さんにいいモノあげるっスよ!(言いながら、透明な羽織を手渡す)」
星音 「…レインコート?」
ヘプタ 「違うっスよぉ…確かに見えるかもっスけど…。それは、オレの能力を詰め込んだ『透明化フード』っス!誰からも見つからなくなるし、オマケに思考も透明に!こちらをプレゼントっス!」
星音 「え、良いんですか!?」
ヘプタ 「勿論っス!オレも、あなたがあのヒト達に捕まっちゃうのは本意じゃないっスから…」
星音 「あ、ありがとうございます!」
ヘプタ 「…さあ行って!先頭まであと十車両はあります、少しでも向こうへ!」
星音、走り去る。
ヘプタ 「身体もスケスケ、頭もスケスケ…心もスケスケで…全部透明になっちまって、死んじまうんスけどね!頼みの綱のテトラさんにも、霊力すら霧散していくから見つけてもらえないんじゃないっスかね?まぁドンマイっス!」
テトラ達、急ぎ足で入ってくる。
テトラ 「あいつの霊力が弱まった。お前だろ七番…!」
ヘプタ 「おお、気付くの早……ええ、勿論オレっスよ!」
オクタ 「どうしてそんなことを。あなたのことだ、規則を遵守しろとは言うまいに」
ヘプタ 「いやいやいや、テトラさんの好きな人だけ生き返るなんてずるいでしょ?あんな簡単なことで蘇るなら…央奈さんだけでも戻してあげられたのに……央奈さん…会いたいよ…!! じゃないわ、いやー取り乱しちゃってすみませんね!でもそういうことなんで。まぁ、一人だけ好きな女取り戻してのうのうと生きようなんて許されない、というよりオレが許さねーよ…ムカツクから死ねってことっスよ」
ジド 「男の執着とかキモいんですが。…四番、七番なら消しても文句は言いませんよね?」
テトラ 「…」
ヘプタ 「…二番…あんた、ほんの少しでも央奈さんに似てるんだから、そんな言葉遣いしないでほしいんスけど…つか、気に入らないんスよそのファッション!女ならもっと可愛い服着ろ…地味顔が地味な服着てちゃモブでしかないっスよ!?」
ジド 「私はお前の元カノじゃねえよ、カス」
オクタ 「二番、僕が。…同じ男として、女性を軽んずる人間は許せない」
ヘプタ 「…テトラさん、八番を殺ったらあんたが出てきてくれるんスか?」
テトラ 「…」
ヘプタ 「こっちを…こっちを見ろよ!!」
オクタ 対 ヘプタ。
ヘプタ、地面に崩れ落ちる。
ヘプタ 「こんなに力量に違いがあるとは…流石に思ってなかったっスよ」
ジド 「…『九曜縛り』。」
ヘプタ、ジドの能力で後ろ手を組まされる。
ヘプタ 「…ふっ、はははは……二番、オレの能力は、あらゆるモノの『存在感』を下げること……。霊力の存在感を下げられるオレを、霊力そのものを縛るあんたの能力で縛れる訳ないでしょ」
ジド 「!」
ヘプタ 「さよなら!また今度!」
ジド 「逃すかっ…」
テトラ 「いい。…それよりあいつだ。今に『揺蕩う夢』に着く。きっと降りるだろう。手分けして探すぞ」
オクタ 「はい。」
ジド 「…わかりました」
テトラ 「絶対に、夢で迷わせないように…!」
暗転・明転
シシド 「揺蕩う夢~、揺蕩う夢~。定刻出発時間は、二十分後です」
リリヤ 「お降りでしたら、時計をどうぞ!」
星音 「時計…?」
リリヤ 「向こうでは二十分が分からないでしょうから…五分前の十五分後にタイマーをセットしてございますよォ」
星音 「ありがとうございます。」
星音、戸惑いながらも降りる。
星音 「…誰からも見つからなくなるんじゃなかったっけ…」
ユウセイ「ねぇ君、僕と一緒に来ない?」
星音 「あ…あの、ここってどこなんですか?」
マサキ 「ここは『揺蕩う夢』。現実と夢と虚構が混じり合った場所。何年経っても時は流れず、数秒待てば十年が経つ。そんな場所だよ。」
ユウセイ「僕はユウセイ。」
マサキ 「私はマサキ!」
ユウセイ「失った記憶を取り戻したいなら、ずっとここにいればいい。じきに戻るよ」
マサキ 「一度入ったら出られないかも!でもきっと楽しいよ?」
星音 「出られないのは、多分、困ります」
マサキ 「えぇっ!楽しいのに!」
レイン 「ユウセイ!マサキ!その子は?」
アキ 「遊ぶならあたし達も混ぜてくれよ」
ユウセイ「レインとアキだよ。」
星音 「す、すみません、通してください!」
ユウセイ「ほら、時計を見てみなよ。既に十分経ったよ」
マサキ 「十分で帰れる?帰れる?」
星音 「や…やめて…!!」
モノ 「…一度だけ、助けてあげる。二度はないよ、渡会星音ちゃん」
レイン 「モノ!」
アキ 「なんだってアイツがこの子に手ェ貸すんだ!」
マサキ 「あたしたちのことは助けてくれなかったくせに!」
ユウセイ「贔屓すんじゃねーよ!」
モノ 「黙れ!君達は望んで揺蕩う夢に身を沈めた。その子は違う」
住人たち「…。」
モノ 「さあ、去れ!それとも、僕の力で魂ごと消滅させられたいか?」
ユウセイ「…行こう!この幸せな夢は、永遠に僕たちだけのものだ…」
星音 「…だ…誰ですか…?」
モノ 「…神田春生だよ。僕がしてあげるのはここまで。戻りたければ戻れば良いし、ここに残りたければ…それも良いんじゃないかな。選ぶのは君だ。ああでも、一つだけ。」
星音 「?」
モノ 「これ以上時間を歪められないように…君の『時間』に魔法をかけてあげる」
星音 「これは…」
モノ 「…よし、巻き戻った。あと十分で決めるんだ。鉄道まではきっと五分で着くから」
星音 「…ありがとう、…ございます」
モノ 「うん、じゃあね。」
星音 「……私、本当に…なんで逃げてるんだっけ。なんとなくだ。…悪い人じゃないのかな?でも怖い。…どうすれば…」
星音、自分の手が透けていることに気がつく。
星音 「え…手が…あ、足も…!やだ、沈む、うまく地面に立てないっ!なんで!?」
星音、しゃがみ込む。
星音 「やだ、怖い…せっかく助けて貰ったのに、私、私っ死んじゃ……」
星音、たぷんと音がして、倒れる。
星音 「息ができない。でも、なんだか懐かしい…いやでいやで仕方なかった、体が動かなくなっていく感覚…これは…」
テトラ 「どこだ!!」
声がして、間もなくテトラが駆け込んでくるが、星音を認識することはできない。
星音 「!しゃ、車掌さん!車掌さんっ助けて!!沈んじゃう!!息ができないんですっ!!」
オクタ 「いませんね…」
ジド 「でも微かにステラさんの霊力が…このあたりにいるはずなんです」
星音 「私ここにいます!虫がいい話でごめんなさいっ…助けて……!!」
テトラ 「…もう五分しかない、…あいつ、どこ行ったんだ…!!」
アラーム音が鳴り響く。
テトラ 「これは……」
星音 「助けてください!!ごめんなさいお願いします!!」
テトラ 「渡会!!!」
二番八番「渡会さん!」
テトラ、星音を引っ張って立たせる。
テトラ 「急ぐぞ!!」
ジド 「はい!」
オクタ 「了解!」
四人、走って去り、もう一度入ってきて鉄道に乗る。
リリヤ 「…駆け込み乗車ァ、駄目ですよ。気をつけてくださいねェ」
テトラ 「…ああ」
ジド 「さて、さっさと終わらせましょう!」
ジド、星音を取り押さえる。
星音 「!?」
テトラ 「ああ。」
テトラ、切符を奪い取り、燃やす。
星音 「あ………」
星音、気を失ったように首を垂れる。
テトラ 「…救ってるっつうのに、…死んじまうみたいな、…絶望したような顔するもんだ…」
ジド 「…四番、あなた…崩壊しかけてますよ」
テトラ 「…なに?」
オクタ 「干渉しすぎたんですよ。…ここからは僕たちにお任せを。もう現世に戻ってください」
テトラ 「…あとは頼んだ」
テトラ、ふらりと倒れる。
暗転・明転
星音 「……う…」
宗也 「!目え覚めたか!?」
星音 「そ…宗ちゃん…」
宗也 「…良かった。」
星音 「また宗ちゃんの夢を見たよ。宗ちゃんが私を追っかけて、私はなぜか逃げるの。夢の中にいる時は宗ちゃんのこと覚えてなくて…。なんなんだろうね、この夢。あたしが死にかけると……必ず見るねえ」
宗也 「おい、無理して体起こすな。また悪化したらどうする」
星音 「死ぬ前に…彼氏、欲しいなあ…優しいひと…それで、あたしのことだけ見てくれるひと」
宗也 「…そうだな。」
朱音 「つーちゃん!!」
星司 「星音!」
星音 「あ、朱音さん、お父さん…」
朱音 「良かった…ほんとに良かったよ…お医者様が助からないかもって言ってたから…」
星司 「宗也くんもありがとう、私たちの代わりに、星音のそばにいてやってくれて…」
宗也 「いえ……、友達…なので。」
千堂 「…はっきり言って、奇跡ですね。あんなに不安定になって尚、息を吹き返すとは。しかも、これで十回目ですよ。…正直初めてみる症例で、ちょっと私も驚いてます」
朱音 「つーちゃん、…信じ続ければ、きっと治るから……」
星司 「大丈夫だよ、星音。」
千堂 「…橋本君、いえ、四番サン…あんた、またですか。関根君も何度も送り返してるらしいじゃないですか」
宗也 「うるせえ。お前は黙って俺を向こうに繋いでればいい。お前ら姉弟も俺が救ってやったんだろセンドウ。」
千堂 「…姉ちゃんのこと出されると弱いですけど…。それにしても、渡会君は異常ですよ。言い方がちょっと悪いですけど…あんな高スパンでバンバン死にかけるなんて…もう、魂が限界迎えてるんですよ」
宗也 「じゃあてめえ、諦めて死ねっつうのかよあいつに」
宗也、千堂の胸ぐらを掴む。
宗也 「誰よりも頑張って生きてきたあいつに、誰よりも色々諦めてきたあいつに、そんな軽々しい言葉を吐けんのか!?」
千堂 「…渡会君は自分が死ぬって分かってるんです!!」
宗也 「…んだと」
千堂 「渡会君は覚悟ができてます、いつ死んでも仕方がないと、よく生きたと思ってます」
宗也 「他人の心がてめえに分かるか」
千堂 「…分かりますよ。目を見れば」
宗也 「あ?」
千堂 「ヤブでも医者ですからね」
宗也 「……死ね」
宗也、千堂を殴り飛ばす。
千堂 「がッ…!!四番サン何を…」
宗也 「お前が…お前があいつの代わりに死ねよ……!!あん時死ぬ予定だったお前が!!あいつの代わりに!!」
千堂 「…できるなら…か…代わってあげたい…ですけどね…」
宗也 「…余計なこと喋ったら殺す」
千堂 「…リオネラ様が、…妙なことを言っていました。…お気をつけて……」
宗也、去る。
千堂 「…自分も『死ぬ予定だった』から、…命を賭けて渡会君を救うとでも言うんですか…可哀想な人だ…。」
暗転・明転
ひまり 「つーちゃん!!もうガッコ来て大丈夫なの!?」
星音 「うん、ちょっと安定し始めたみたい。」
寧音 「なんで星音ってそんなに体弱いんだろう。ウチらが代わってあげたい。」
ひまり 「わかる!!二週間ぐらいかわったげたい、その間につーちゃんのしたいこと全部させたい」
星音 「その気持ちだけで十分だよ。ホントにあたしの体になったら辛いよー?」
寧音 「めっちゃ不謹慎でごめんだけど、テスト回避できるなら有り」
星音 「もー、ネオンはまた都合のいい考え方してぇ」
日向 「なぁ、渡会ちゃんほんとに大丈夫なん」
宗也 「…ああ」
光 「『…ああ』じゃねーーわ!なんでお前まで上の空!?てかお前ら一緒に登校してきたよな、橋本と渡会って付き合っ」
宗也 「はあ? …ないだろ。あいつは俺みたいなのはタイプじゃねえから」
日向 「……寺田、最近あいつおかしないか?おかしいって言うか、変わったやんな」
光 「分かる。大人びたっつーか老けたっつーかさ。隈も消えてねーし…」
日向 「あー…橋本の隈、あれは消えやんと思うで。俺の寝不足の隈とちゃうくて、茶色の隈は擦った痕やから」
光 「へー…あいつ、感動系の映画でも見漁ったのかな」
日向 「さあ…」
ひまり 「…あ、あとさ…隣のクラスの夕ちゃん、…また自殺未遂だって。聞いた?」
寧音 「え、それって橋本の親戚の?」
宗也 「…一命取り留めたっぽくて良かった」
ひまり 「本人なりに考えて、深い理由はあるんだろうけど…どうしても、死んでほしくはないよねえ。」
星音 「そうだね。残して行く方も残された方も悲しいばっかりだし」
ひまり 「ひまり怖いな…自分の好きなひとが自殺しちゃったら。」
宗也 「…遺されるのが怖いのか」
ひまり 「ううん。…何もできずに、誰かを死なせちゃうのが怖いよ」
寧音 「…何しんみりしてんの!久しぶりに星音が学校来れたって言うのに。」
ひまり 「そうだね!ひまり反省っ!よーし、復帰パーティーだ!」
光 「おし来たっ!今日は俺の秘蔵じゃがりこ開けてやろう!日向!お前も!」
日向 「…しるこサンドしかないけど」
光 「お前もっと若者っぽいやつ買ってこい!行け!」
日向 「ええ~…行きたない…お前が行けや」
寧音 「星音あれ好きだったよね、ウチ今日の朝急いで買ってきたの、食べよ食べよ」
ひまり 「あたしもー!」
星音 「いいの?みんなありがと!なんか元気出たよ!」
宗也 「…」
宗也、去る。
星音 「…宗ちゃん?」
光 「ほっときゃ戻ってくる、追っかけたいなら行けばいいけど」
星音 「…一人になりたいのかな」
日向 「わからん。あいつ、構ってちゃんやからな」
17
ひまり 「じゃじゃーん!!ポテチ!つーちゃんしあわせバターだもんね!」
寧音 「復帰おめでと、星音!」
星音 「…ありがと!」
暗転・明転
星音 「…宗ちゃん、このごろぼーっとしてるよね。何かあったの?」
宗也 「そう……か?」
星音 「うん。悩みとかあるんだったら、早いうちに相談してよ。…まぁ、あたしが悩みの種だったら、ごめんだけどさ」
宗也 「そんなことない、お前に悩みなんてねえよ」
星音 「そッ、よかった!」
宗也 「…お前、体型変わったか」
星音 「ん?ああ……ちょっとねぇ。」
宗也 「そんな落ち込むな。…でも、俺の前で無理に明るく振る舞わなくていい」
星音 「無理にでも明るくしてないと死んじゃいそーなの!だからあたしはいつでもニコニコで…」
宗也 「辛そうだぞ」
星音 「…宗ちゃんもね。」
宗也 「…俺は、そんなことない」
星音 「…ふふっ、あっはは!意地っ張り!」
宗也 「意地じゃねえよ、マジだわ」
星音 「宗ちゃんが意地張ってない時なんてあるの?」
宗也 「そもそも意地なんざ張ってねえよ」
酔っ払い「あぁン!?だァから、おれァ~やってねェっての!!」
警察官 「ハイハイ、話は署で聞くわ」
酔っ払い「なぁー婦警さんこの男どうにかしてよォ~…」
婦警 「ナゴヤの婦警はそんな甘くないでねー。はい、大人しく車乗りゃあ」
警察官 「まだ夕方だってのに騒ぎ起こしやがってもう、お兄さん大人しくして」
宗也 「…最近増えたな、酒に浸る大人」
星音 「ここんところ、どんどん治安悪くなってるよねえ」
宗也 「…全員死ねばいいのに」
星音 「…宗ちゃんがああ言う大人にトラウマあるのは知ってる。…でも…他人に軽々しく死ねなんて言う人だったっけ、キミは」
宗也 「…俺…」
星音 「…らしくないって言うか……良くないよ。」
宗也 「………俺今……、なんで?」
宗也、走り去る。
星音 「宗ちゃ……ちょ、一人でどこ行くの!?」
暗転・明転
宗也 「センドウ!!」
千堂 「あ…橋本君」
宗也 「なんか…、なんか変だ、俺…今、フワフワしてる!」
千堂 「フワフワ? …具体的には」
宗也 「前と価値観が違う気がする、思ってるのと違うことが口から出る。あと……霊力が、どんどん感じられなくなってる。」
千堂 「……やはり、四番サンの存在が崩壊しかけてます。銀河鉄道の車掌だったからこそ持っている『命に対する価値観』や『性格』『霊能力』が失われつつあります。これを止めることができるのは…リオネラ様、だけです」
宗也 「そんな…、」
モノ 「…自身の変化に気がついたようだね、テトラ…いや、宗也。」
宗也 「モノ…!」
千堂 「い…いるんですか、そこに、一番サンが…」
モノ 「…ここに僕は、モノとしてではなく、神田春生として…君の親友として来ている。その上で言わせてもらう、…君の車掌としての霊体は完全には崩壊していないが、僕の『正す』力でも直すことはできない。…君はじき、ただの人間に戻る」
宗也 「は…?」
モノ 「そして、あの子……渡会星音は、また死ぬ。それが君とあの子の別れだ。あと三日四日しかないが、…その間に告白でもしておけよ」
宗也 「オイ待てっ、モノ!視界が…霞む、これは…視えなくなったのか、霊体が…」
モノ 「…せめて、自殺をし続ける関根夕だけでも、…見放せば良かったのに。」
千堂 「…どう、…でしたか」
宗也 「…クソ……どうすれば…ッ!!」
宗也、走り去る。
千堂 「…四番サンったら、…すぐ逃げちゃうんですから…。」
星音、部屋に入ってくる
星音 「御手洗先生」
千堂 「…どうしました?渡会君」
星音 「……宗也が最近、おかしくて。」
千堂 「……あぁ、もう……私が喋ったってことは、…他言無用でお願いしますよ」
星音 「なにか、教えてくれるんですか?」
千堂 「…突飛な話をしますが、信じてください。…渡会君がよく見ると言う奇妙な夢。あれは全て本当に起こっていることなんです。あなたは何度も四番サン…橋本君に救われている。」
星音 「え…」
千堂 「…でも、運命を歪めすぎたせいで、橋本君は車掌になる力を失いました!次にあなたが死にかける時が、…本当に、『最後』なんです。一度死にかけた人は、その後一週間は絶対に死にません。あなたの魂は限界です、なので…ピッタリ四日後くらいには…きっと。」
星音 「…そうなんですね。…やっぱりあれ、…夢じゃ…」
千堂 「ごめんなさい、私達が救ってあげられなくて。なんのための医者なんだって、自分でも無力さを痛感してます」
星音 「…いいんです。私はよく生かされました。十分なんです。…でも、それで宗ちゃんが悲しむのは嫌です。…どうしたら…」
千堂 「…さあ…あの人は、気難しい方ですから…。」
星音 「…先生は、先生はなんで宗ちゃんの秘密、知ってるんですか?」
千堂 「…私は、四番サンに…リオネラ様のことを教えていただいて、…それでこちら側に蘇った人間なんです。」
星音 「え…」
千堂 「姉と一緒に死にかけて、でも…四番サンがリオネラ様に掛け合ってくれて、話す機会をくれたんです。私は、彼に恩を返さないといけないんです。だからこうして医学を学び、あなたを最大限延命できる施設を整えました。…それでも…神には抗えませんでしたが…。」
星音 「…人を蘇らせる、神がいる?」
千堂 「…あ、あの方を、信用しない方がいい!私は運が良かっただけです!誰しも必ず蘇らせていただける訳では…!!」
星音 「リオネラ…、私が死んだ時に、その人に会えれば…」
千堂 「無理です!!そもそも、…殆どの人は、死ぬ前の自分の記憶を思い出せません」
星音 「思い出せますよ」
千堂 「どうしてそんなこと…」
星音 「…恋なんですよ、あたしが宗ちゃんに感じてるのって。だからきっと、いけます」
千堂 「…こ、…恋…」
星音 「それに、どうせ死ぬなら希望を持って死にたいです!その方がきっと、何事もうまく行くと思いませんか?人の信じる力って、絶大なんですよ」
千堂 「…お好きに。あなたがそう言うなら、私に止める権利はありませんから。」
暗転・明転
宗也 「…この前は、…ごめん」
星音 「…いいんだよ、そうやって思えるなら大丈夫。それより、なんなのその怪我は…」
宗也 「…センドウと喧嘩」
星音 「センドウって御手洗先生!?馬鹿なの!?」
宗也 「俺のこと聞いたんだってな」
星音 「…うん。今までずっと、助けてくれてたんだね。本当にありがとう。……あたしね、宗ちゃんに助けられてばっかじゃ嫌なんだよ。助けられた分、ちゃんとあたしも宗ちゃんの力になりたい! …だから、…なんで宗ちゃんがそんなに悩んでるのか、聞かせてよ。」
宗也 「…疲れたんだ。…ごめんな、…心から助けたいと思ってる。生きていてくれて良かったと、助けられて良かったと思ってる。それでも…『もう疲れたな』って思っちまってた。…浅ましい人間だろ?勝手に自己満足で助けてるだけのくせに、感謝の言葉すら貰えねえのかよってずっと思ってたんだ。ほんと、性格悪いよな。」
星音 「ううん。もっと早くに気付けなくてごめんね。助けてくれてありがとう。自分の命を削ってまで、あたしのことを想ってくれてありがとう。宗ちゃんのおかげで、今こうやって息ができる。」
宗也 「…ごめん、…無理矢理感謝求める、みたいな、…ほんと嫌な奴だよな」
星音 「あたし心からありがとって思ってるよ!すーぐネガティブ思考になるんだからもう…それに、あたしは宗ちゃんの……」
宗也 「俺のなに?」
星音 「そーゆーとこが好きなんだよ。」
宗也 「…なあ、渡会。」
星音 「ん?なに?」
宗也 「…やっぱいいや」
星音 「え、なにそれ。気になる。言ってよ。」
宗也 「いや、いい。また言いたくなったら言う」
星音 「早く言いたくなって!」
宗也 「……あと四日…なんだよな。…何かしたいことあるか」
星音 「…言ったら叶えてくれるの?」
宗也 「うん。…なんでも。」
星音 「………うーん、……豪遊したい!全部宗ちゃんの奢りで!」
宗也 「そんなことでいいのか?」
星音 「じゃあ今すぐあたしと結婚して!って言ったらしてくれるの?」
宗也 「うん」
星音 「…やめて期待しちゃう」
宗也 「してくれよ」
星音 「…またそういうこと言ってぇ」
宗也 「俺じゃだめか?」
星音 「あたしすぐ死んじゃうんだよ?初彼女と数日しか続かなかったって、だいぶデバフでしょ」
宗也 「…べつに、…お前以上に大切にしたい奴なんていねえし」
星音 「…宗ちゃんのそういうとこ大好きよ。でもさ……、宗ちゃんが一番大事なのがあたしなら、悲しくなっちゃうでしょ……だから、あたしが嫌いになるようなこと!いーっぱいお金使わして、いーっぱいわがまま言って、それで……早くあたしのこと忘れたくなるように、」
宗也 「そんなに駄目なのかよ」
星音 「…うっさいなーもう。大人しく嫌いになってて」
宗也 「………最初はなに行くんだ」
星音 「え?」
宗也 「豪遊すんだろ、俺の金で」
星音 「…よーし!モール行こ!そんで、服とかスイーツとかコスメとかなんでも買わす!宗ちゃん貯金は!?」
宗也 「……15万」
星音 「えぇ!?お金持ちじゃん」
宗也 「使い道ないから…小遣い。」
星音 「あたしが使い果たしてやるっ!行くよ!あっプリも撮らないと!」
宗也 「プリクラ…?」
星音 「宗ちゃんとあたし二人のやつね!」
宗也 「あれ、すごい目デカくなるんだろ。男は気持ち悪いぞ」
星音 「いーのいーの!あたしがデコったげるから!」
暗転・明転
朱音 「つーちゃん、…ちょっと、いい?」
星音 「…なあに、朱音さん」
朱音 「あのね…、御手洗先生から聞いたんだけど…その、…あと少ししか生きられないかもって…」
星音 「…うん。だからあたし、この数日間めっちゃ楽しんだの!カラオケ行ってー、モール行ってー、プリ撮ってー……とか、…色々…したんだよ、…泣かないで、あたし分かってたんだ。…もう長くない命かもって。でも大丈夫、覚悟はできてる」
朱音 「…ごめんね…なにもしてあげられなくて…」
星音 「いいの!それに、また死にかけても、生き返るかもしれないよ?(咳き込む)」
朱音 「つーちゃん!」
星音 「大丈夫、大丈夫…」
朱音 「……つーちゃんにとって、私、お母さんになれてた…? …産みの親にはなれなかったけど…つーちゃんのこと、幸せにできてた…?」
星音 「なに言ってんの、お母さん! あたしちゃんとお母さんだと思ってるよ。朱音さんの方が慣れちゃって、ずっとそうやって呼んでただけなの…ごめんね…」
朱音 「私こそごめんね……無理をさせて…」
星音 「お母さん、写真撮ろ!あたし、遺影は証明写真とかじゃ嫌だからね。死ぬほど可愛いやつ!」
朱音 「遺影って……」
星音 「ほら!一緒に写って!」
朱音 「…そうね、家族写真なんか多い方がいいよね」
星音 「うん!いくよー…はいっ、チーズ!」
朱音 「…撮れた?」
星音 「うん!可愛い?」
朱音 「可愛いよ。」
星音 「…泣かないでってば、お母さん…あたしまで、悲しくなっちゃうでしょ…」
朱音 「…つーちゃん、ドレスとか着にいこうよ。旅行もいいね。今のうちにもっとお出かけしてさ。それとも学校行きたい?」
星音 「どっちも。選べないよそんなの」
朱音 「欲しい服とか、食べたいものとか…もう、何でもやっちゃおう!」
星司 「ただいま!遅れてごめんっ…ちょっと社内で揉めちゃって…」
朱音 「星司さんっ…星音、私たち、やっと覚悟決めたよ、使えてなかった有給も全部使う。今を全力で楽しもう。もうつーちゃんがやりたいことのために全部の時間使って、休日も全部空けて、いつでもそばにいる」
星音 「…あたし、欲しいもんとかないよ?強いて言えば思い出だけ!このまま、みんなで楽しく過ごせてさえいれば…それでいいの!」
星司 「…小さな頃から、病気や僕たちの多忙で色々我慢させていたと思う。本当に…本当にごめんよ…」
星音 「あぁもう、…だから良いんだってば…」
星音、つられて涙を流し始める。
星音 「あのね…二人に一つだけお願い。」
朱音 「なぁに?」
星音 「あ…やっぱふたつ」
星司 「なんでも。」
星音 「一つ目! …勝手にあたしを憐れまないで。あたしは幸せだし、二人の子供で、今のあたしに生まれてこられて良かったって思ってる。だから、勝手にあたしの人生を不幸にしないで。…二つ目。もうすぐ死ぬかもしれないにしても、今まで通りでいて!もしかしたら死なないかもだし、病気じゃなくて事故でいきなり死ぬかもしれない。それでもあたしは、今まで通りがいいんだ。約束してくれる?」
朱音 「わかった…頑張るよ、つーちゃんがそうしたいなら。」
星司 「うん。僕たちは星音の味方だからね。」
星音 「…ありがと!」
朱音 「よし!今日は青椒肉絲にしよう!ね、つーちゃん食べてなかったじゃない。」
星音 「御手洗先生がお肉はやめといた方がいいかもって」
朱音 「関係ない!食べたきゃ食べよう!」
星音 「…食べる!病院食ばっかで飽き飽きしてた!」
星司 「僕のせいでまた遅くなっちゃったけど…そろそろ八時だ。明日も学校なんだから、十一時までには寝るよ。でも、それまではなんでもしよう!久しぶりにスマブラでもやる?」
星音 「よっしゃ!ボコボコにしてやらー!宗ちゃんで修行したあたしは前より強いぞ!」
星司 「かかってこい!」
暗転・明転
ひまり 「ええっ!?寧音ちゃんにカレシぃ!?」
星音 「どどどどいういこと!?誰!?写真は!?」
寧音 「ちょ、声大きいって…写真なんかないけど…」
光 「ネオンに!?ありえねぇ!!ガサツで毒舌で断崖絶壁のコイツに!?絶対嘘だ!!」
日向 「ヒトの彼女に断崖絶壁とか言いなや」
寧音 「あ、実物ならそこに」
光 「ま……まさか、おお前……お前お前お前!!仲間だと思ってたのにいい!!」
星音 「え、え、えぇぇ!?ネオン日向君と付き合ってんの!?待って心臓が…」
寧音 「あんたが言うと洒落にならないのよ!」
光 「おいなんか言えお前も!」
宗也 「何を」
ひまり 「日向君とネオンが付き合っちゃったよ!ひゅうネオだよ!!」
宗也 「やっとか」
ひまり 「やっと?気付いてたの!?」
宗也 「日向は星野見る時目が違うから。お前ら、そう言う話好きなくせに鈍感すぎなんだよ」
ひまり 「えぇ…やっととか鈍感とか宗也君が言う?って言うか…」
光、ひまりの口を押さえる
ひまり 「ぐ」
光 「言わない優しさってのもあんだオメーは黙ってろッ!」
寧音 「光こそひまりと付き合わないわけ?」
光 「誰がこんなのと!」
ひまり 「あっそぉ…」
寧音 「いーよひまりにはもっといい男いるから」
日向 「寺田君さいてー」
光 「お前までなんなんだよ!」
ひまり 「いーえ?ひまりにはもっといいヒトいますから。近所の九条くんとかいますから?」
光 「九条くん誰?イマジナリーフレンド?」
寧音 「あぁ、あぁイケメンだったよ?」
光 「は!?」
星音 「光かわいそ!早くしないと取られちゃうよひまり」
光 「どうでもいい!勝手に作れカレシなんか!」
寧音 「あーっコイツ拗ねたァ!ガキだ!」
日向 「渡会、これ。」
星音 「あ、しるこサンドじゃないじゃん。珍しい」
日向 「夢川と星野に買わされてん。」
星音 「めっちゃ食べたい…でも太っちゃう…」
日向 「気にすんな。ヤダ太っちゃう~!みたいなんはヨソで…つか、橋本とやればいいやろ」
星音 「…ばか!殴るよ!」
日向 「殴ってるってもう」
宗也 「…つづ」
ひまり 「遮って)やばい!塾だ!もう行かないと!」
光 「げ、マジじゃん…」
ひまり 「ひまり普通に行くから光遠回りしてね。じゃあねばいばい。行ってくる!みんなばいばい!」
光 「てめっ…待て!ひまり!」
ひまり・光、走り去る
寧音 「…じゃ、あたしたちもデートだから」
星音 「え!」
日向 「そういうことで。」
寧音・日向、去る
星音 「なんでみんな、変に気い使うのよぅ!」
宗也 「…楽しめたか? …多分、今日か明日って…話だろ…」
星音 「言っとくけど、あたしの後とか追ってきたら怒るからね」
宗也 「…分かった。追わない」
星音 「宗ちゃん、」
星音、手を広げる。
星音 「…来てくれないの?」
宗也 「…」
星音 「…寂しいよ」
宗也 「それはだって、別れの挨拶だろ!?」
星音 「…」
宗也 「そんな理由で、お前に触れられたって……嬉しくねえよ…」
星音 「…今日の夜、必ず正門の前に来ること。夜の二時にしようかな。またLINEで言う」
宗也 「…何するんだ。秋の真夜中なんて寒いぞ」
星音 「ん?何かぁ…特に。喋りたいだけだよ。死ぬ前にいっぱい遺言残しとこーと思って。」
宗也 「…なんでそんなに明るくいられるんだよ。死ぬわけでもないのに、俺の方が……」
星音 「…初めてじゃないからねぇ。こんな風になるのも。言い方が悪いけど、毎度騒ぎ立ててくれるのは嬉しいよ。でも、あたしはもう良いかなって思ってる。よく生きたよ! …宗ちゃんのおかげでね」
宗也 「…そうか。……そうなんだな」
星音 「だから安心して。」
宗也、星音を抱きしめる
星音 「時間差で来たか」
宗也 「好きだ。…愛してる。」
星音 「…うーん…嫌いになって欲しいって思ってたんだけどなぁ……。…あたしも大好きだよ、宗ちゃん。」
宗也 「…」
星音 「強いよ宗ちゃん、苦しい」
宗也 「…ごめん」
星音 「…よし、帰ろっか!」
宗也 「…そうだな。」
暗転・明転
宗也 「…センドウ、オイ…千堂」
千堂 「何ですか?あ、あんまり近づかないで、ちょっとPTSD出そうなんで」
宗也 「PTSD?」
千堂 「トラウマ的なやつですよ。せっかく長い間かけて寛解させたって言うのに、この間殴られて再発したんですよ」
宗也 「…悪かったよ」
千堂 「…何がですか?」
宗也 「改めて謝ろうと思って。…代わりに死ねとか……、殴ったり…とか……すまん」
千堂 「…良いですよ別に。この先どんなに酷い目に遭ったって、私に文句を言うような資格はありませんから…。私こそ、改めて謝らせて下さい。あなたに断りもなく渡会君に…その、銀河鉄道の話をしてしまって」
宗也 「良い。きっといつか、言われなくても気付いたよあいつは」
千堂 「…関根君の自殺…止められなかったなんて思わないで下さいね。…彼女は死にたがっていました。あれでよかったんです」
宗也 「……俺には、…俺には…分からない。自ら死を望む人間の気持ちが。夕とは昔から仲が良かったし、俺の前では疲れた顔の一つも晒さないような奴だった。なのにこうだ。」
千堂 「親戚…従姉妹さんなんでしたよね。…仮にですけど、四番サン、いえ、橋本君は、母親や兄弟…親戚や親しい人に、疲れたところを見せたいと思いますか?」
宗也 「…心配はかけたくない。でも、心配はしてほしい」
千堂 「その気持ちと同じですよ。関根君を追い詰めたものが何であれ、…冷たい言い方ですがもう関係ない。橋本君がこれからどうしたいか、どうするべきか、…遺された人達と共に、どう生きるか。それが大切ですから」
宗也 「ヤブでも医者か」
千堂 「ええ。人の死というものに、誰よりも多く触れてきました。それは、車掌のあなたも同じはず。」
宗也 「…ああ。」
千堂 「…治せなくてすみませんでした」
宗也 「…何を」
千堂 「渡会君の病を。原因不明の心臓病…さらに渡会君の特性、呼吸器・循環器系が悉く弱いのも相まってあんなにも苦しめてしまいました」
宗也 「…そういうのは本人に言え。」
千堂 「でも、橋本君が一番苦しんでいる。あの子のために。」
宗也 「言い過ぎだろ。」
千堂 「いいえ。ご両親とあなたが渡会君を支えた結果ですよ。」
宗也 「そうだといいな。苦しむならあいつのために苦しみたい」
千堂 「…詩人とか目指せば良いんじゃないですか?」
宗也 「茶化すなよ…これでも意外と本気だぞ…」
千堂 「尚更良いじゃないですか!素敵な言葉を本気で言えるなんて、心から大好きな証拠でしょう?」
宗也 「…黙れ、また殴られたいのか」
千堂 「ご自由に。」
宗也 「……終わっちまう、…のかな」
千堂 「さぁ。どうでしょう。続くかも。」
宗也 「…今日が全ての終わりじゃないと良いな」
千堂 「ええ。続くと良いですね。」
宗也 「…誰かが死ぬのがこんなに悲しいのは初めてだ。…死んでほしくない」
千堂 「じゃあ死ぬ前に言っといた方がいいですよ」
宗也 「…考えとく」
千堂 「素直じゃないなあ。」
宗也 「……ふは、…ははは」
暗転・明転
星音 「…寝たかな、二人とも」
星司 「家出かい?不良娘」
星音 「起きてたんだ。…止める?」
星司 「いいや。でも母さんなら止めた」
星音 「行ってくるね。…帰って来れなかったら、ごめんね」
星司 「大丈夫。その時はその時だ。そしてまた、息を吹き返すかもしれないだろ?」
星音 「…うん、でしょ。」
星司 「好きにしな。」
星音 「…行ってきます!」
星音 「…あ、いた!忘れずに来てくれた」
宗也 「忘れたりするかよ。」
星音 「ふふふ。…さて、どこに行こうかねぇ?」
宗也 「学生二人で深夜徘徊なんて、補導で捕まってお終いだぞ」
星音 「そうならないように老け顔の宗ちゃん連れてきてんじゃん」
宗也 「老けっ……」
星音 「最悪なんとか大学生です!でいけるって。」
宗也 「無理だろ、かなり無理だろ」
星音 「公園でいいや。いつもの…って言っても、昔か。思えばだいぶ昔だ。懐かしいね…あそこ行こ」
宗也 「…あそこってどこだっけ」
星音 「そうやって照れるとすぐ忘れたフリする宗ちゃんはキライでーす」
二人、一度去ってまたすぐ入ってくる。
星音 「…デートみたいだね、深夜デート!」
宗也 「深夜すぎるだろ。…大人になってからやれよ…」
星音 「大人になんてなれないもん! …あーぁ、免許も仕事もお酒もまだなのになぁ。あたし全部やりたかったんだよ。でもまぁ…今こうして外を歩けるだけで、ちょっと楽しいんだけどね。」
宗也 「…どうしても、俺じゃだめか」
星音 「えぇ、またその話? 言ったじゃん。あたしが断るのは、宗ちゃんが次に進むためなんだよ。…宗ちゃん一途だからさ。死んだ人のために…ううん、あたしのために一生を費やすなんて、勿体無いから」
宗也 「勿体無くない。俺はお前が好きなんだよ。一生を費やす覚悟も、命を投げ打つ覚悟もある!だから……、だから…………」
星音 「…よし、分かった!じゃあ、次生き返ったらね」
宗也 「それじゃ…」
星音 「そしたら宗ちゃんだけは、あたしが生き返るって信じててくれるでしょ」
宗也 「…分かった、信じる、信じてるから、絶対に戻って来てくれ」
星音 「言われなくてもね! …死ぬ覚悟はできてるけど、死にたくはないの」
宗也 「渡会…」
星音 「死んだ後のことなんてわからないし、天国に行けるほど良いこともしてない。それに、お父さんお母さんにも迷惑かけちゃう。寂しくさせちゃうな。それも嫌だ。」
宗也 「…そんな理由だけでか?」
星音 「…………死にたくないよ!怖い!ちょー怖い!消えたくない!忘れられたくないよ!もうみんなに会えなくなるなんて……嫌だよ……」
宗也 「やっと、涙見せてくれたな」
星音 「あーもう!頑張って抑えてたのに!さいって!もうヤダぁ……!!」
宗也 「俺ばっかり弱いとこ見られてたら不公平だろ」
星音 「こんなに頑張って来たのにさぁ、終わる時って一瞬なんだよ。怖いに決まってるじゃん。やだよ……」
宗也 「…戻ってくるんだろ」
星音 「…うん……」
宗也 「…絶対な…」
星音 「……うん…」
星音、宗也の頬にキスをする。
宗也 「えっ…」
星音、激しく咳き込んだ後、項垂れる。
宗也 「おいっ!渡会!大丈夫か!!おいっ!!!」
暗転・明転
千堂 「…まずい状態です。でも、延命措置を続ければまだ助かるかもしれません。諦めないでください。娘さんは何度も、奇跡のような回復力を見せています。絶対に、諦めない方がいい」
朱音 「…あなたが、つーちゃんを止めていれば…!!」
星司 「…そうだね。ごめん。」
朱音 「…違うの、…ごめんなさい、どうにもならなかったって分かってるの…ごめんなさい…」
星司 「…いいんだよ…」
宗也 「千堂」
千堂 「何ですか」
宗也 「…帰ってくるよな」
千堂 「ええ。きっと、いえ、必ず…」
暗転・明転
星音 「…はっ、ここは…!!」
モノ 「…もう、…か」
星音 「あなたは……」
モノ 「…最後の情けだ。…こんなに色々して、僕も消されてしまうかもしれないな…。君の記憶を戻してあげる」
星音、翳されたモノの手を掴む。
星音 「魔法なんて必要ありませんよ、神田春生さん。私、…覚えてます」
モノ 「……え?」
星音 「記憶がある状態で来るのは初めてですね。改めまして、あたしは渡会星音です。助けてくれてありがとうございました」
モノ 「…いやいやいや……え?」
オクタ 「ここです!」
ジド 「え…い、一番と一緒にいる!?」
星音 「あ!あなた達は…あの時の!こんにちは、渡会星音です。え~~と、あ、二番さんと八番さん?何回目かにちらっと聞いた気がします」
オクタ 「え…もしかして、記憶が…?」
星音 「はい。…あと、私、人を探してるんです。リオネラさんって人ご存知ですか?」
ジド 「り…リオネラ様のことまで……」
オクタ 「記憶があるなら、リオネラ様に直談判しに行くよりも……車掌になった方が話が早い。」
星音 「え?私車掌になるんですか??」
モノ 「捲し立てない。…まずは自己紹介から。ね?」
ジド 「…そうですね。」
モノ 「僕は一番、モノ。本名は神田春生だけど、できれば一番かモノって呼んで。」
ジド 「二番の…ジド…です。二番と呼んで下さい。絶対。」
オクタ 「八番、オクタと申します。ご自由にお呼びください」
星音 「渡会星音です。よろしくお願いします。」
モノ 「…さて、何から話そうか。」
星音 「ここって、何なんですか?」
モノ 「ここは、銀河鉄道。生と死の間だよ。鉄道にいる間はまだ、ギリギリ生きていると言ってもいい。終点の彼岸に着いた時、人間は本当の意味で死ぬ。」
星音 「…じゃあ、車掌さんって何なんですか?」
モノ 「うーん…一種の死神と呼んでも良いんじゃないかな?鉄道内でのトラブルを防止し、人々を死に導く存在だよ」
星音 「車掌さんになるって、どう言うことなんですか」
モノ 「生と死を、つまり現世とこっちを行き来できるようになる。…肉体が存在している間はね。僕たちはとっくの昔に火葬されちゃったからもう無理だけど。ここに残った車掌達は、生きるのも死ぬのも拒んだ馬鹿か、享楽主義者の変人か、それくらいだよ」
ジド 「つまり、あなたが助かる方法は、車掌になることだけだということです。数日に一度こちらにこれば消されはしないでしょうから。」
星音 「御手洗先生もたまにこっちに来てるってことですか?」
オクタ 「御手洗? …もしかして、御手洗千堂?」
星音 「その反応は違うんですね。…リオネラさんに会えば、完全に生き返ることができるんじゃないんですか?」
モノ 「間違ってはいない。でもリオネラは気まぐれで、それこそ享楽主義者だ。夢を見ない方がいい」
星音 「…そう、ですか。」
モノ 「…リリヤ!渡会星音を、一番・神田春生の名のもとに車掌候補に推薦する!いるんだろ、出て来い!」
リリヤ 「いやァバレてました?」
モノ 「何でもいい、渡会さんに許可証を」
リリヤ 「はい。これ、手放さないで下さいねェ。これを着けている間だけ、アナタは車掌でいられます。あと、本名で名乗るのは辞めた方がいいですよォ。名前で呼ばれると情がうつっちゃいますから」
星音 「……なんて名乗れば?」
ジド 「…ステラ、で良いんじゃないですか?星音さんって、星に音でつづねさんなんでしょう」
星音 「ステラ…」
リリヤ 「アナタには、七日間の猶予を差し上げます。それまでに、正式に車掌になるかどうかァお決めになって下さいねェ」
星音 「七日…って、あたしその頃には死体じゃないですか!?」
オクタ 「こちらで七日が経つうちに、向こうでは一日しか経ちませんから。安心して下さい」
星音 「あ、そうなんですか……」
ジド 「…でも、何を待つことがありますか。今すぐあなたが車掌になれば…」
星音 「だって、死にに行く人たちを、黙って見送らなきゃいけないんでしょう…?自分のこともわからず、大切な人のことも忘れて、ただ死後の世界に向かう人たちを、全員無視して送らなきゃいけないんですよね」
ジド 「それは……でも、」
星音 「私にはそんなことできません。…偽善者だって思うかもしれませんけど、できないんです。…でも、何回も誰かを生き返したら、車掌の力は没収されちゃうんでしょう。そうなったら、…きっと、私は今度こそすぐに死ぬ」
モノ 「…七日間でしっかり考えたら良いよ。これから自分がどうするか」
星音 「あともう…二つだけ聞いても良いですか?」
モノ 「なんでも。」
星音 「一番さんみたいな魔法って、私も使えるようになったりするんですか?」
モノ 「…なんで?」
星音 「楽しめることは楽しんどこうと思って!」
モノ 「…使えないこともないんじゃない?要は気持ち次第。僕の力は、『正す』。何かを元の状態に戻すだけ」
ジド 「私の力は『縛る』。とにかく何でも縛れるのと、誰かと約束を科して必ず守らせる…とか、そういうことができますよ」
オクタ 「僕のは…『見通す』。遠くのものが見えたり、ちょっとした未来視的なのができたりします」
星音 「…宗ちゃんのは?」
モノ 「テトラの?あいつのは『燃やす』。なんか色々燃やしたり、相手の冷静さを奪ったりするやつ」
星音 「へぇ…なんか単純、宗ちゃんっぽい」
モノ 「もう一つの質問は?」
星音 「死んだらどうなるんですか。」
モノ 「……死後の世界があるらしいけどね」
星音 「らしい?」
オクタ 「僕たちは、死後の世界に行かなかったからここにいるんです」
星音 「あぁ、なるほど。」
リリヤ 「それはワタクシが説明致しましょうかァ?」
ジド 「まだいたんですか」
リリヤ 「車掌の方々と違い…ワタクシ、リリヤとシシドは、そちらで生まれ育ったのですよ。まぁ平和なとこです。少なくとも、アナタ方が想像するような天国やら地獄やらはない」
星音 「…ふぅん、そうなんですね」
リリヤ 「満足なさいましたか?」
星音 「はい。…地獄がなくて良かった。」
リリヤ 「どうして?」
星音 「…宗ちゃんにキスだけ残して死んじゃった悪い女だからね!」
ジド 「…青春ですね。」
オクタ 「ええ、羨ましい限りですよ。」
モノ 「…じゃあ、僕は行くから。」
星音 「えっ!?」
モノ 「元々、君の記憶を戻して去るつもりだったし。僕は消されるのは嫌だから、できればこれ以上は関わりたくないの」
星音 「えぇっ…」
モノ 「大丈夫。車掌の仕事って言っても、見回りさえしてりゃ良いからさ。二番と八番がいるしいいでしょ。じゃあね」
星音 「一番さん!」
ジド 「…まさか、一番と言葉を交わす時がくるとは」
星音 「え?一番さんってそういう方なんですか?」
ジド 「滅多に私たちの前には姿を見せませんでしたよ。それこそ、深く関わっていたのは四番くらいのものです」
オクタ 「…いくつか注意しておきます。」
星音 「は、はい」
オクタ 「あなたはステラ、本名は名乗らないこと。戻れなくなるので、決して駅で降りないこと。乗客に肩入れしすぎないこと。五番と七番には関わらないこと。いいですね」
星音 「降りたらどうなるんですか?途中の駅で。」
ジド 「質問の多い人ですね……まあ、仕方がありませんか。あなたが前回降りてしまった揺蕩う夢や、あと…惑星の縫い代。言葉通り戻れなくなるんですよ。時空が歪んでいるから、時間の進みは一定じゃないし、惑星の縫い代なんかは……永遠に落ち続けます」
星音 「えぇ…」
オクタ 「地獄があるというなら、それこそ全ての駅が地獄です。そこに路線図があるでしょう」
星音 「揺蕩う夢、温もりの棲家、掌の城、数多影差す森、世界の縫い代、致死毒の花畑、彼岸…って、最後の方だけ毒々しい。」
ジド 「温もりの棲家に放り出された時は死ぬかと思いましたよ」
星音 「なんか平和そうなのに」
ジド 「名前だけですよ。何が温もりですかあの地獄」
オクタ 「二番、僕は少々外します。ステラさんを頼みました」
ジド 「えぇ!?私だって休憩………まぁ、仕方ありません」
オクタ、去る。
星音 「…二番さん達ってどうして私を助けてくれたんですか? もしかして、宗ちゃんと何かあったとか?」
ジド 「…五番に殺されかけた時に助けられただけです。…八番は知りません。羨ましかったんじゃないですか?」
星音 「…何がですか?」
ジド 「命を擲っても救いたい人がいることが。」
星音 「…へへ。」
ジド 「何なんですか…。」
星音 「そういえば…あたしに変な魔法をかけた人って結局誰なんでしたっけ。あの、なんちゃらっす!って喋る人」
ジド 「あぁ…七番、ヘプタですよ。あいつの力は『消す』。色んなものを消したり薄めたりできます。何より性格が悪いので近寄らないことをお勧めしますけどね…」
星音 「気をつけますね」
泣く人、大声で喚きながら歩いてくる
泣く人 「おかあさぁん! どこぉ…ここどこぉ…!!」
星音 「あ…」
ジド 「辞めておきなさい! …あなたは優しすぎる、きっと肩入れしすぎて…」
星音 「…。」
ジド 「…あぁもう!この鍵を使って車両の間の扉を開けると休憩室に行けます!大暴れすると目をつけられるのでお気をつけて!車掌の仕事はあくまでトラブルの防止です!変に慰めて心痛めても知らないですから!!」
ジド、星音に鍵を押し付け去る。
星音 「…なんやかんや、優しい人。」
泣く人 「おかあさぁん…
星音 「お母さん、探してるの?」
泣く人 「わかんない…なんにもわかんない…おぼえてない」
星音 「そっかぁ。寂しい?」
泣く人 「わかんない…」
星音 「よし、じゃあお姉ちゃんとお話ししてよっか。」
泣く人 「でもおかあさん…」
星音 「そうだねぇ。お母さんの名前とか、顔とか、着てる服とか、わかる?」
泣く人 「おぼえてないの…」
星音 「…そっか。」
泣く人 「ぼくのおかあさん知らないの?」
星音 「知らないなぁ…」
泣く人 「なんで?」
星音 「なんで?そうだなぁ、なんでか…うーん。会ったことないから分かんないかなぁ」
泣く人 「大人なのにわかんないの?」
声)幼い星音「なんで朱音さんはなんでもわかるの?」
声)朱音「お母さんは大人だから分かるのよ」
声)幼い星音「ふうん、そうなんだ。星音もはやく大人になりたーい」
星音 「……大人でも、…分かんないの…」
泣く人 「泣いてる!だいじょうぶ?わかんないから泣いてるの?」
星音 「そうかも…」
泣く人 「ぼくもおかあさんわかんない…」
星音 「…そっか…」
星音、泣く人を抱きしめる
泣く人 「お姉ちゃんぼくのこと好きなの?」
星音 「…君のお母さんも、きっと君のこと大好きだったと思う…っ」
泣く人 「泣かないで、服ぬれちゃうよ」
星音 「濡れちゃうね……ごめんね……」
泣く人 「おなかすいた」
星音 「お腹空いた?ごめんね、あたし何にも持ってないや…」
トリ 「お腹空いたの…じゃあ、お腹いっぱいにしてあげようか…?」
トリ、いつに、ともなくそこに居る。
星音 「え…あなた、もしかして…車掌さん…?」
トリ 「三番のトリだよ。きみは…テトラの大事なひと…」
星音 「ステラと名乗ってます、車掌候補…?がどうとか。宗ちゃんのお友達?」
トリ 「ぼくはね、テトラのことが大好きだから、きみのことも大好きなんだ。ペンタとヘプタが危ないから、それを言いに来たの」
泣く人 「ねーえー、お腹いっぱいにできるの?」
トリ 「ぼくの力は『満たす』だから…心でも、お腹でも、何でもいっぱいにできるの」
トリ、泣く人に手を翳す。
トリ 「…どう?」
泣く人 「おなかすいてなくなった」
トリ 「よかったねえ。…ステラ、誰かに食べ物とか…貰っちゃだめだよ。『黄泉竈食ひ』…生きてる人の世界に、戻れなくなっちゃうよ」
星音 「そうなんですね、教えてくれてありがとうございます」
トリ 「…この子、連れてっていい?ぼくね、一緒に遊ぶ人がほしかったの」
47
星音 「このお兄さんが遊んでくれるって!」
泣く人 「ほんと!?」
トリ 「ほんとだよ。行こー」
トリ、泣く人を連れて去る。
星音 「…何だったんだろう…。…この鍵を使って車両の間の扉を開けたら休憩室…だっけ」
星音、鍵を差して回す。
暗転・明転
星音 「ステラ…あたしの部屋がある。すごい、早いなぁ。魔法でも使ったのかな?」
ジド 「早いですね。もう少し経ってから来るかと。…食べますか?」
星音 「三番さんが、ヨモツヘグイがなんとかって」
ジド 「あぁ、確かに。食べない方がいいかもしれませんね。四番は色々食ってましたけど。」
星音 「ふふ。」
ジド 「…何ですか?」
星音 「ううん。あたしが知らない宗ちゃんの話聞くの、すっごく楽しくて。」
ジド 「…良かったですね。」
星音 「うん。」
オクタ 「あ、二人とも。」
ジド 「八番。」
オクタ 「…まさかですけど、乗客…死者と仲良く話してはいないでしょうね。」
星音 「…」
オクタ 「…善い人というのも考えものですね。はっきり言って車掌には向いていませんよ。」
星音 「そうですよね…」
オクタ 「褒め言葉ですよ。ただ死を見送ることに慣れた僕たちと違って、…誰かのためを想うことができるあなたは羨ましい」
星音 「…へへへ…」
ジド 「で、どうしたんですか。用事があったんでしょう?ほぼ無職の私たちに仕事だなんて。」
オクタ 「五番の『変える』力でステラさんの心を軽くできればと、話を持ちかけてみましたがね。案の定断られました。それどころか、まずいことになりました。五番があなたに興味を持ち始めたかもしれません。」
ジド 「余計なことしてくれましたね」
オクタ 「悪かったですよ。何も言わなくとも、どうせバレたと思いますけどね」
星音 「五番さんって、もう一人のやばい人?」
ジド 「ええ。」
オクタ 「…五番がこちらに向かってきています、今すぐ無人の車両に移動した方がいいかもしれません。あれは、暴れますよ」
ジド 「クソッまた面倒な…!! 行きますよ!」
星音 「は、はい!」
暗転・明転
ジド 「あぁぁ…めんどくさい…帰りたいもう…!!」
ペンタ 「逃げんなよジドちゃん!俺その子と話に来ただけだよ?」
ジド 「ジドって呼ぶんじゃねーよ!死ねっ!」
オクタ 「下がって。二番、口が悪いですよ」
ジド 「ステラさん、絶対にこいつに触れられないようにしてください。こいつの力は触れると発動します」
星音 「はい!」
ペンタ 「もう触れそうだけど、だいじょぶそ?」
オクタ、ペンタを弾き飛ばす
ペンタ 「痛いんですけどぉ!そんなに俺のこと嫌い?」
ジド 「嫌いだ消えろ!」
オクタ 「二番。」
星音 「あの人そんなにやばい人なんですか?」
オクタ 「五番は車掌になってから、同じ車掌を三人消しています。一番危険と言っても過言ではありません」
ペンタ 「過言だよ!俺そんな悪い奴じゃないし。その子から現世の記憶もう一回消したらどうなんのかなって思っただけ!」
オクタ 「…頭が可笑しい」
ジド 「八番! …コイツはここで消します。この先生きていても私たちに利する事はないでしょうから」
オクタ 「…同感ですが、僕たちでやれますか」
ジド 「やるんですよ。何が何でも。」
ペンタ 「また俺のこと仲間はずれ?あ~もうやだなぁ、俺寂しいと死んじゃうよ~」
ジド 「だったら勝手に死んでろ!」
ジド・オクタ 対 ペンタ。
ジド、しばらく戦ったのちペンタに踏みつけられて。
ペンタ 「イキんなってば。ジドちゃん弱いんだから」
ジド 「うるせぇ!足を退けろッ!!」
ペンタ 「まだやる?」
オクタ 「……二番から離れろ」
オクタ、しばらく戦ったのち倒れる。
ペンタ 「怖がんないでよ!さっきはちょっとびっくりさせちゃったかもしれないけどさ、俺ほんとにお話ししに来ただけなの!記憶がある君の方が面白そうだったら何にもしないよ?」
星音 「…面白い自覚はないんですけど、とりあえず八番さんに座るの辞めてもらっていいですか?」
ペンタ 「ねえ、何で車掌になりたいの?なんで生き返りたいの?」
星音 「退いてください。」
ペンタ 「お話ししようよー」
星音 「話ならします。先にどいてください!」
ペンタ 「めんどくさいなもう…はいはい、退いた退いた」
星音 「逆に、五番さんはどうして車掌になったんですか?」
ペンタ 「なんか面白そうだったから!それ以外の理由は特にないよー。車掌になりたいは分かんなくもないけど生き返りたいは分かんないかな!だって、君向こうじゃ体弱くて体力もないんでしょ?疲れもなく自由に走り回れるこっちのほうが良くない?」
星音 「あなたには、大切な人はいないんですか?」
ペンタ 「いない!みんなおもんないからねー。」
オクタ 「挑発しないでください!こいつは…!」
星音 「…私は、大切な人ともっと一緒に過ごしたい。だから生き返りたいんです。」
ペンタ 「あー…はいはい、テンプレね。おもんないわ、消えて」
星音 「全てがつまらないのは、誰にも心を開いていないからじゃないですか?」
ペンタ 「逆だよ?面白くないから開かないの」
星音 「白々しい言葉に聞こえるかもしれない。でも、誰かを愛することができれば、きっと世界は変わる。私は変わった。宗ちゃんに出会って、心を開いて、恋をして変わった。」
ペンタ 「寒いよそういうの…もういい、本当もういいよ」
オクタ 「逃げて!!」
星音 「『変える』力を持つあなたが自分を変えられないのは、きっと心を開くのが怖いからだよ。」
ペンタ 「…何なの?その自信」
星音 「私があなたの心を変える、その心を開けて。」
星音、ペンタに『開ける』力を使う。
ペンタ 「えっ…お前、まだ候補なんじゃ……き、聞いてない、候補のくせに…!!」
オクタ 「ステラさん、それは…」
星音 「わ、わかんないです!なんか…使える気がして…!」
ジド 「どちらにしろ好都合でしょう…、」
星音 「二番さん!」
ジド 「早く、五番にとどめを!」
ペンタ 「聞いてない…聞いてないよ、…新しい子がこんなに可愛いなんて聞いてないよ!」
星音達 「…え?」
ペンタ 「いいねぇ君!よーしゃよしゃよしゃ!!」
ペンタ、星音を雑に撫で回す。
星音 「あの……心開きすぎでは…」
ジド 「五番がさらに気持ち悪くなっちゃった」
オクタ 「これ…ステラさんの力、…ですよね。何の力なんでしょう」
ジド 「…力を使った瞬間、何を考えてましたか?」
星音 「…この人の心を、こじ開けてやろうって」
ジド 「…じゃあ、『開ける』力でいいんじゃないですか。てか五番気持ち悪…おい離れろ、この子彼氏持ちなんで」
星音 「そっ宗ちゃんは彼氏じゃ…!」
ペンタ 「かんけーないね!テトラはもうこっちには来れないし!」
星音 「いやあの宗ちゃんとか関係なく離れてもらっていいですか…?」
ペンタ 「えぇ!やだよ!」
オクタ 「女性にベタベタ触るもんじゃない…」
オクタ、ペンタを星音から引き剥がす
ジド 「でどうするんですかコイツ。始末しますか」
星音 「…協力して下さい。私が呼んだらすぐに来て欲しいです」
ペンタ 「うん!!」
ジド 「ステラさん、『変える』なんて別に役に立ちませんよ。だって…、もしかしてあなた、まだリオネラ様のこと諦めてないんですか!?」
星音 「…備えは多いに越したことはありませんから。」
ペンタ 「俺、君のためならなんでもしちゃうよ!」
オクタ 「…四番が惚れるわけですよ。この命知らずな感じ」
星音 「へへ」
オクタ 「今度は褒めてませんよ」
ジド 「…五番を使うにしても、縛りはあった方がいい。約束して下さい、私たちの仲間には危害を加えないこと」
ペンタ 「えぇー」
シシド 「次は~…惑星の縫い代~。惑星の~、縫い代~。」
星音 「…してくれないなら、次の駅で投げ出します!」
ペンタ 「するする!そんな脅しなくたって、君が言うならするよ」
ジド 「触りたくはないですが、手を」
ペンタ、手を出し、ジドの『縛る』力を受ける。
ペンタ 「これ、ほんとに攻撃できなくなったの?」
オクタ 「どうぞ。」
ペンタ、オクタに蹴りを入れようとするが、足が固まって届かない。
ペンタ 「すごーい!」
ジド 「この縛りは完璧なものではないことを覚えておいて下さい。たとえば…たまたま蹴った石が誰かに当たる、みたいなことは制限できません。攻撃の意思を制限するものなので。」
声)千堂「渡会君!!渡会君聞こえますか!!」
星音 「御手洗先生の声…」
声)千堂「あー…届いてますか!?そっちの声聞こえてないんですけど、一応このまま話しますね! 四番さんが、橋本君が事故でし……した、すぐそっ……つ…と思いま…、………………!!」
千堂の声、どんどん不明瞭になって消える
星音 「え……宗ちゃんが…!?というか、何で先生…」
ジド 「…『伝える』の力を、まだ持っているのか…!?」
オクタ 「今はいい、それよりも四番さんの元へ!!」
暗転・明転
星音 「宗ちゃん!! …バカ!!後追ってきたら怒るって言ったでしょ!!アホ!!ふざけんなっ!!」
宗也 「……誰、…だ?」
星音 「…………え…?」
オクタ 「落ち着いて下さい。」
ジド 「…一度車掌の力を失ったんです、覚えていなくても仕方がありません」
星音 「そんな……!」
ヘキサ 「やあやあ、キミが星音ちゃんかい?」
ヘキサ、『止める』力を使い、ジド達を止める。
星音 「!だ、誰ですか」
ヘキサ 「六番!私村佐江子!ヘキサとも呼ばれる。…コレ、返して欲しいかい?」
星音 「それ……切符…!?」
ヘキサ 「彼のね。」
星音 「返してください!」
ヘキサ 「返して欲しければ、私とお話ししてくれ。なあに、五番みたいに誰かを傷つけたりはしない。」
星音 「…何ですか、あたし、早く宗ちゃんを…」
ヘキサ 「私の力でキミと私以外の全てを止めたから大丈夫さ。何時間話したってかまやしない」
星音 「…何を答えればいいんですか」
ヘキサ 「私は品定めに来たんだ。キミが本当に、リオネラと言葉を交わすほどの器かどうか。別に期待に沿わなくても、何もしないだけで危害を与えたりはしない。」
星音 「…分かりました」
ヘキサ 「いいね。物分かりのいい子は好きだ。…さて、第一問。キミは今からどうする?」
星音 「宗ちゃんを生き返らせたいです。」
ヘキサ 「ふむ。それは愛か?恋か?友情?情け?」
星音 「…いっぱい迷惑かけちゃったから、たぶん、恋だと思います」
ヘキサ 「相手に迷惑をかけないことが愛か」
星音 「相手を思いやることが愛だと思います。」
ヘキサ 「素敵だね!でも今はまだ、キミは『普通の素敵な子』だ。第二問。彼が一人で蘇ったとして、喜ぶか?」
星音 「……宗ちゃんは優しいから、きっとあたしだけ死んでることをずっと引きずると思います。それは、いやです。」
ヘキサ 「うぶだねぇ。素直に一緒に生きたいって言えばいいのに」
星音 「私は、生きたいですけど……、あれ…でも、一緒に生きたいって、うーん?」
ヘキサ 「いいよいいよ、多いに悩みな。」
星音 「…生きたいのは、ううん、死にたくないのは、お父さんとお母さんとか友達とか…みんなを悲しませたくないからで……、でも、生きたいのは…」
ヘキサ 「生きたいのと死にたくないのは違うの?」
星音 「…違う気がして、」
ヘキサ 「…第三問。キミは、自分とその愛する人のために、何でもする覚悟はある?」
星音 「あります。それだけは。」
ヘキサ 「即答だね。それで誰かを不幸にしても?」
星音 「…私、みんなに言われるほど優しくないんです。…多分、できると思います。そのあとで一生後悔して、一生償いを探しながら生きる覚悟もあります。」
ヘキサ 「…面白いね!良いよ、気に入った。2つだけ教えてあげよう。…一つ目、四番を車掌に推薦し鍛え上げたのは私だ。」
星音 「えっ…」
ヘキサ 「その私が言う。…キミは、この子に似ているね。とても真っ直ぐで良い子だと私は思うよ。」
星音 「え………」
ヘキサ 「二つ目。リオネラの本質は五番や私と一緒だ!面白そうとか、そう言うことだけで生きている。だから、キミが全力で足掻けば、きっとアイツに思いは通る。」
星音 「…思いは……」
ヘキサ 「要するに、…やっちまえってことだ!時が動き出したら、すぐに行動するんだ。武運を祈るよ」
星音 「……はい!」
ヘキサが星音に切符を返し、時が動き出す。と同時に、星音、踵を返して他の乗客の元へ
ジド 「…星音さん?」
星音 「切符、拝見します」
乗客 「?はい」
ジド 「っ馬鹿!!辞めろッ!!」
星音 「五番さん!」
ペンタ 「はいはいっ」
オクタ 「退け!あの子が消えてもいいのか!!」
ペンタ 「あの子が選んだことでしょ!そっちの方が面白そうじゃん!」
星音、乗客の切符を破り捨てる。
星音 「皆さん聞いてください!この鉄道に乗って終点に着いたら、皆さんは完全に死ぬんです!!」
二番八番「渡会さん!!」
星音 「死にたくない人!!あたしに切符を!!全員助けてあげますから!!」
乗客が押し寄せる、その切符を、片っ端から破っていく星音。
ジド 「ああ………終わりだ…………!!」
オクタ 「…ははっ、はははは!命知らずにも程がある!信じられない、あの子頭がおかしい!自分が消えてしまうかもしれないっていうのに!」
ジド 「何で笑うんです!心配じゃないんですか!?」
オクタ 「笑いながら)でもこの子なら本当に、リオネラ様に気に入られるかもしれないと思って!」
ジド 「小さく笑って)……やりすぎでしょうよ、明らかに…!」
シシド 「貴様!何をしている!」
星音 「アナウンスの人…!」
リリヤ 「にゃはは!思った三倍面白いじゃないですかァ!最ッ高ですよアナタ!」
星音 「あ…リリヤさん!」
ペンタ 「やばい人出てきちゃった…なぁっ!!」
ペンタ、シシドに攻撃する。
ペンタ 「もっと暴れてよ、ステラちゃん!」
星音 「五番さん…!」
リオネラ「その必要はない。」
二番八番「り……リオネラ様…!!」
リオネラ「どういうつもりか、聞かせて貰おうか。渡会星音……」
星音 「…暴れると目をつけられる、と言われたので。あなたに目を向けさせたら、きっと宗ちゃんと私が生き返る第一歩になると思って。」
リオネラ「…あははは!良いよ、私が求めてたのは君みたいな子だ!そういうの、嫌いじゃない」
一瞬暗転、その内に星音とリオネラ、宗也が消える。
ジド 「星音さんっ!!」
リリヤ 「大丈夫ですよォ、あの子はリオネラ様と話しに行っただけですから」
ペンタ 「行ったってどこに?」
シシド 「王の間だ。ここ…断絶の世界の王と、それに許可された者のみが立ち入ることができる。…貴様らの先の行動、反逆ととって良いな?」
リリヤ 「まァまァ!リオネラ様が帰ってくるまで待ちましょ! ね!」
オクタ 「……楽しかったですね」
ジド 「…そうですね。」
暗転・明転
王の間。水面に立っているような不思議な場所で、戸惑う星音。
リオネラ「どこにでも座りなさい。心配しなくても濡れやしないよ。」
星音 「は、はい。」
リオネラ「さて……何から話すかね。…うん、私は君と彼氏くん…四番・橋本宗也を蘇らせてやっても良いと思ってる。」
星音 「本当ですか!?」
リオネラ「でもな、私が君を生き返らせた後…後悔しないかが重要なのだよ。わかるだろう? だから、君にはいくつか聞かせてほしいことがあるんだ。そのくらいは良いだろう? 六番にも付き合わされて疲れているかもしれないが。」
星音 「ご存じだったんですね」
リオネラ「この部屋はあらゆる能力の影響を受けない。だから、君が得た力で私の心を開こうとしても無駄だよ」
星音 「…バレてましたか」
リオネラ「咎めはしないよ。全く良い度胸だ、君は面白い」
星音 「……具体的には、何を答えれば?」
リオネラ「一つ。君はなぜ生き返りたいのか。二つ。生き返って何をするのか。三つ。もし彼が………」
暗転・明転(時間経過)
リオネラ「…そうかい、そりゃ良いね。良いだろう。君を生き返らせてあげよう。これから君たちがどう生きていくか見ものだ。…私からのプレゼントだ、君の体の不調をいくつか治してやろう、健康な一般人として生きていけるように。」
星音 「いいんですか!?」
リオネラ「『開ける』の力と、車掌になる権利を没収するのと引き換えにだ。…良いね?」
星音 「…はい。」
リオネラ「…さあ、帰りなさい。橋本宗也には私が通しておく。」
星音 「……ありがとうございました。さようなら、リオネラ様。」
リオネラ「ああ、さっさと行け。」
星音が去ってしばらく、シシドとリリヤが武器を持って現れる。
リオネラ「ふふ、私も終わりか。四人も人を生き返らせてしまったものな。」
リリヤ 「寂しくなりますよォ、リオネラ様。」
シシド 「…貴様の作った法のもと、貴様を殺す。三代目リオネラ、いや、カルラ。」
リオネラ「次はお前の番かい?シシド。」
シシド 「…そうだ。大人しく消えろ。」
リオネラ「……良い神生だったなぁ。さよなら。」
暗転・明転
宗也 「はっ………、渡会!!」
星音 「なあに、宗ちゃん」
宗也 「な……い、生きて………、…良かった…!!」
星音 「宗ちゃんがあんまりあたしに生きてほしいって願うから……あたしも生きたくなっちゃった。…二人狂いなの。お互いがお互いの願いを引き寄せあって、最終的にはそれが自分の願いになっちゃうの。…そうやってリオネラ様にも話したよ。」
宗也 「…そうか。」
星音 「へへ。」
宗也、足を引き摺りながら立ち上がる。
宗也 「………約束、果たせよ。」
星音 「え?」
宗也 「えじゃねえよ、次生き返ったら付き合うっつったろ。」
星音 「……あぁ…えっと…」
宗也 「照れるとすぐ忘れたふりすんのは嫌いなんだろ。星音。」
星音 「…な、名前…珍しい、ね…?」
宗也 「どうせいずれ苗字で呼べなくなるからな。」
星音 「…それって………」
宗也 「…ガキの戯言かもしれないけど。………一生俺のそばにいてくれ」
星音 「……………ふふ、…あたし、めんどくさいよぉ?」
宗也、ゆっくり近づいて、キスをする。
「星屑フォリ・ア・ドゥ」終わり。
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なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
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