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長(45分以上/15000文字以上)
桃鬼伝説(18,000文字程度)
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【登場人物】◇人間、◆鬼
◇ナレーター①\女:
◇ナレーター②\女:
◇おじいさん(河野 平助)\男:
◇おばあさん(和水)\女:
◇桃から生まれた 桃太郎\男:
◇戌亥 秀\男:
◇雉村 治子\女:
◇猿飛 日乃\女:
◇林檎から生まれた 倫太郎\男:
◇葡萄から生まれた 紫\女:
◇葡萄から生まれた 藤\男:
◇葡萄から生まれた 菫\女:
◇苺から生まれた 太一郎\男:
◇蜜柑から生まれた 甘太郎\男:
◇将軍\男:
◇村の人\女:
◆鬼の長 布留川 透子\女:
◆側近の鬼 佐武 百音\女:
◆門番の鬼 鶴見 桃次\男:
◆門番の鬼 猪野 桃太郎\男:
◆偵察隊の鬼 芹 桃香\女:
◆偵察隊の鬼 和田 平太\男:
◆宝庫番の鬼 菅原 とう吉\男:
①「昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが仲睦まじく暮らしておりました。」
おじいさん「ばあさん、俺は山へ薪狩りに行ってくるよ。」
おばあさん「行ってらっしゃい。腰やらないでよ。」
①「おじいさんは山へ薪狩りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。」
①「おばあさんが川で洗濯をしていると、どんぶらこどんぶらこと上流からとても大きな桃が流れてきたのです。」
おばあさん「おや、大きい桃」
①「おばあさんは桃を持って家に帰りました。」
おばあさん「ただいま」
おじいさん「おかえり。って、………大きい桃じゃな…」
おばあさん「川から流れてきたんです」
①「おじいさんは桃を包丁で切ろうとしました、しかし」
①「桃はびくともしませんでした。」
①「おじいさんは日本刀を取り出し、桃を二つに割りました。」
おじいさん「割れたな」
おばあさん「ええ、食べましょうか…って、えぇ?!?!」
①「おばあさんが桃に視線を戻すと、何と桃の中から男の子が生まれたのです。」
①「二人はたいそう喜んで、その子に桃太郎と名前をつけて育てることにしました。」
①「二人は桃太郎を可愛がりました。」
①「しばらくしたある日、おばあさんはまた川へ洗濯をしに行きました。」
①「ふとおばあさんが上流の方を見ると、今度は何と林檎が流れてきたのです。」
①「おばあさんは林檎を家に持ち帰りました。」
①「おばあさんは林檎を斬りました。」
おじいさん「お前なんで横から切ったんじゃ!!また人はいっとるかもしれんじゃろ!!」
おばあさん「かわいい!!今日からお前は倫太郎だよ!」
おじいさん「ちょっ待、その子も育てるんか?!?!」
①「おばあさんはおじいさんを無視して倫太郎を可愛がりました。」
①「そして懲りずにまた川へ行き、葡萄と苺と蜜柑を持って帰ってきました。その中からも、もれなく小さな子供が生まれてきたようです。」
①「時は過ぎ、果物から生まれた子供達は大きくなりました。」
ナレーター「長男 桃太郎」
桃太郎「みんなは俺が守る!」
ナレーター「次男 倫太郎」
倫太郎「勝手にしてくれ」
ナレーター「長女 紫」
紫「私は将軍になる女よ!」
ナレーター「三男 藤」
藤「ひぃいごめんなさいいい!!」
ナレーター「次女 菫」
菫「知識は最大の武器」
ナレーター「四男 太一郎」
太一郎「兄さん大好き!」
ナレーター「末男 甘太郎」
甘太郎「はらへった~」
①「つまり、七人の子供たちは健やかに育ちました。兄弟達は人助けを多くしたため、近くの村では評判になっていました。」
①「桃から生まれた桃太郎、林檎から生まれた倫太郎、葡萄から生まれた三つ子の紫、藤、菫」
①「苺から生まれた太一郎、蜜柑から生まれた甘太郎。七人の元にある手紙が届きました。」
将軍「鬼ヶ島の鬼どもを何とかしてこい!」
①「一家では家族会議が開かれます。」
おじいさん「俺は反対じゃ!可愛い子供達を戦いに出すわけにはいかん!」
倫太郎「俺も断固反対。っつか、勝手にやっててくれよ。俺は寝る。」
紫「私は賛成!将軍を目指す女たるもの、絶対に行くべきだわ!」
藤「ぼ僕は行きたくない…怖いし…痛いの嫌だし…」
菫「菫も反対です。行くべきではないと判断します」
太一郎「僕は行きたい!鬼と話して帰ってくるだけだ!戦う必要なんてないし!」
甘太郎「ぼくも行きたいな~、鬼ヶ島って、美味しいものとかありそうじゃ~ん!」
おじいさん「…おまえは」
おばあさん「私は桃太郎に決めてほしいと思う。わたしは、桃太郎が正しいと思った方に賛成だよ。」
おじいさん「…うん。俺もだよ。」
桃太郎「なら…………僕一人で行ってくる。」
その他「(驚愕)」
桃太郎「ほら この中で大人なのは僕だけだし、父さん達には安全なところにいてほしい。だから、僕一人で行ってくる。」
紫「私も連れて行ってよ!」
桃太郎「だーめ。紫はまだガキじゃん」
菫「行くべきではありません。大人だからと言って安全だと言うわけでもありません」
桃太郎「菫たちが来るよりは安全だよ」
藤「し、死なないでね絶対帰ってきてよ」
桃太郎「もちろんだよ、藤」
太一郎「僕は戦う気はないよ!だから連れてってよ兄さん!」
桃太郎「太一郎。お前は真面目すぎるからだめだ」
太一郎「どういうこと?!兄さん?!」
甘太郎「美味しいもの持って帰ってきてくれたら~、それでいいよぉ~」
桃太郎「分かった。何か持って帰ってくるよ」
倫太郎「…」
桃太郎「倫は?何か言うことある?」
倫太郎「…死んだら、殺す」
桃太郎「はいはい。倫は照れ屋なんだから。死なないようにしますよっと」
桃太郎「じゃ僕行くから。父さんたちはそれでいいんだよね」
おじいさん「ああ。いってらっしゃい。」
おばあさん「この刀と吉備団子を持ってお行き!きっと役に立つよ」
①「おばあさんは、桃太郎の桃を割った刀を渡しました。」
桃太郎「うん。じゃあ。」
①「桃太郎は家を出ました。」
桃太郎「さて…まずは船か」
秀「おーい!桃太郎さーん!!」
桃太郎「ん?あ、秀!!どうしたのさ?」
秀「この戌亥秀、桃太郎さんにはどこまででも着いていきます!船出ですってね、丁度いいやつを知ってますよ」
桃太郎「いいの?」
秀「勿論!」
桃太郎「じゃ、紹介してもらおうかな」
秀「ところで、どちらまで?」
桃太郎「…鬼ヶ島!」
秀「へへっ、お供しますよ」
桃太郎「頼もしいよ。」
①「桃太郎が戌亥の案内で船着場まで行くと、そこには女の船乗りがいました。」
秀「雉ちゃん!おーい、治子!」
治子「どうしたん、秀ちゃん。あ、こんにちは。秀ちゃんのお友達?」
桃太郎「そんなところかな。」
秀「こいつは雉村。さっき言ってた船乗りです」
治子「雉村治子と申します。よろしくお願いします。」
桃太郎「桃太郎です。よろしく。」
秀「なあ治子、鬼ヶ島まで船出してくれない?」
治子「え!お、鬼ヶ島?!なんでそんなところ、」
秀「お願いだよ、この人は鬼を退治しに行くんだよ」
桃太郎「ちょっ、秀」
治子「そ、そうなん、あの鬼を…?仕方ねぇな、一回だけなら出しちゃってもいいよ」
桃太郎「本当ですか?ありがとうございます!」
秀「ありがとな、雉ちゃん!」
治子「あ、あんたのためじゃねえわ!桃太郎さんのためや!」
秀「うん、分かってる。ありがと」
治子「黙っとって!船出すよ!」
①「桃太郎は戌亥と雉村と共に船に乗り込み、鬼ヶ島へと漕ぎ出しました。」
暗転・明転
桃太郎「うわっ」
治子「気いつけて!この辺は海が荒れとりますけぇ…」
桃太郎「……あそこに誰か、溺れてないか…?!」
秀「え、あ、本当だ…!!」
桃太郎「手を伸ばして!!もう少し!」
日乃「ああ、うう、」
暗転・明転
日乃「…は!あ、え?ここは…?」
桃太郎「大丈夫ですか?!」
秀「治子、見張り変わるよ」
治子「うん、あ、その前に!秀ちゃん、あたしの鞄から包帯取ってえ」
秀「分かった」
治子「あんた名前は?自分のことわかる?」
日乃「…分かる。」
治子「ちょっとあんた!手当てしとる時はジッとせられぇ!!」
日乃「平気だこれくらい!この程度の傷で…」
治子「怪我人は黙って寝てろ!!傷口が膿んだらどうすんのよ!!」
日乃「う、うるさい!もういい、拾ってくれて有難う!わたしはもう行く…」
桃太郎「もう行くって、どこへ」
日乃「どこへでもだ!ここは何島だ?」
桃・戌・雉「鬼ヶ島」
日乃「なん…はぁ?!」
桃太郎「だから、『どこへ』って聞いただろう。ここは危ない、大人しくしててくれよ」
桃太郎「僕達は、ここにいる鬼を退治しに来たんだよ。怪我はさせないから、着いてきてくれる?」
日乃「…」
桃太郎「雉村さん、…悪いんだけど、あなたにもついてきて欲しい。いつどこに鬼が現れるかわからないから。」
治子「えぇ!」
秀「何かあったら、必ず俺が守るから。」
治子「…え、あ、なら、いいけど…」
日乃「待て!」
日乃「…わたしも戦わせろ。助けられただけなんて情けない。恩を返すくらいさせてくれ」
桃太郎「…危険だよ。怪我も治ってない」
日乃「私は忍だ。いざとなれば、女……治子を連れて逃げ仰せよう」
桃太郎「…僕は桃太郎。河野桃太郎。」
秀「俺は戌亥秀!」
治子「あたしは雉村治子。」
日乃「…わたしは、…日乃。猿飛日乃だ。」
桃太郎「よろしく日乃。」
桃太郎「……二人とも、行けるかい?」
秀「いつでも!」
日乃「勿論。」
桃太郎「じゃあ雉村さん、猿飛さんの手当てを。」
治子「はい!」
桃太郎「……じゃあ、行こうか!!」
一同「おう!!!」
①「こうして桃太郎は、戌・猿・雉の力を借り、暴れていた鬼たちを懲らしめました。」
①「鬼たちが盗んだ宝を取り返し、幸せに暮らしましたとさー…」
紫・太一郎「ちょっと待った!!」
倫太郎・菫「話が違ぇぞ\話が違います !!」
①「え?」
倫太郎「桃は帰ってきやしねぇし、鬼を倒したかも聞いてねぇし、宝も持って帰ってきてねぇ!!」
②「そう、」
①「わぁ!!」
②「桃太郎は帰ってこなかったのです。」
藤「あ、あの桃兄さんが負けるなんて、ありえない…」
甘太郎「みんなで~、助けに行こ~」
その他太郎「おう!!」
暗転・明転
菫「もしかしたら、兄さんは帰ってきているのかもしれません。まずはあの港に行ってみましょう」
②「その他太郎たちが港へ向かうと、女の船乗りがそこにいました。」
治子「…どこに行くんです、今は海が荒れていて、どこへも。」
紫「鬼ヶ島へ。兄さんを救いに行くのよ」
治子「兄さん、と言うと、あなたは妹さん?」
紫「ええ。私たち全員、桃兄さんの妹と弟よ。」
治子「桃……兄さん、」
太一郎「兄さんについて何か知っているんですか?」
治子「…いいえ、何も。」
藤「そ、そんなぁ…」
菫「では、船を貸して頂くことは可能ですか?一刻も早く、鬼ヶ島へ行かないといけないんです。」
治子「………一度だけなら、私が舟を出しましょう。ただ、私の船は小舟ですんで、転覆しても知りませんよ」
甘太郎「ありがと~、ございます~」
倫太郎「俺は倫太郎。こっちから順に、」
紫「紫よ」
藤「藤ですぅ…」
菫「菫と申します」
太一郎「太一郎です」
甘太郎「かんたろ~だよ」
倫太郎「あんたは?」
治子「…名乗るほどの名前は、ございません。」
倫太郎「じゃあせめて、苗字を教えてくれ。」
治子「…雉村です。」
太一郎「よろしく、雉村さん!」
治子「さぁ、船を出しますけえ、乗ってください」
②「一行の船は進み出したのです。」
暗転・明転
透子「教えてやろうか、我々鬼について」
百音「私たちはあなたを歓迎します。」
透子「悪いことは言わん。人のもとを離れ、我らと共に歩もうぞ。」
百音「あなた程のものが、どうして人と共に生きているのです?お辛かったでしょう、私たちはあなたを否定しませんから」
透子「なぁ、お前が守りたがっていた二人は、……もう居ないんだ」
百音「私たちと共に暮らしましょう?」
透子「さぁ、認めよ、桃太郎」
二人「我々は同志であると」
暗転・明転
治子「さぁ、つきましたよ。行っていらっしゃい。」
太郎たち「ありがとう(それぞれの言い方で)」
紫「あなたは今からどうするの?」
治子「………お気になさらず。明日の朝には戻りますから」
藤「き……危険ですよ…?」
治子「良いんです。さぁ、行って。」
②「その他太郎たちは船乗りと別れ、鬼ヶ島を進んでいきます。」
桃香「おい和田の、あれが見えるか。」
平太「見えるよ、芹さん」
桃香「佐武のに知らせを。私が迎え撃つ」
平太「了解」
桃香「そこの者ども!止まれ!」
紫「人がいたなんて…私は紫!この辺りで、河野桃太郎って男を見かけなかった?!」
桃香「…河野の、あぁ、貴様らがか。」
菫「何か知っているような口振りですね。」
太一郎「知っているなら教えてくれないでしょうか!!」
桃香「無理だな。」
藤「お、お願いです!この島はき危険ですから、教えてくれたらあなたのことも守りますから!!」
桃香「はっ、私を守るだと?笑わせる。」
桃香「私は人ではない。貴様らのような弱い者どもに守られる由もなし。」
甘太郎「人じゃないって~、どういうこと~…?」
倫太郎「平和にゃ進みそうにねぇな」
紫「どうする、倫兄さん」
倫太郎「力尽くだ。人じゃねぇなら、鬼なんだろ」
桃香「力尽く、か。六対一でも構わんぞ、私は」
紫「一対一だよ!!」
アクション 紫 対 桃香
紫「取った!」
紫「両手をあげて降参しなさい!命まで貰うつもりはないわ。」
桃香「……まぁ、私相手にこのザマでは、先が思いやられるなぁ」
倫太郎「どう言う意味だ。」
桃香「私はただの見張りだ。島中を駆け回って侵入者を排除するだけの、第一関門に過ぎんぞ」
菫「お前のようなのが沢山いると言うことですか」
桃香「当たり前だ。ここは鬼ヶ島だぞ?」
藤「こんな人たちが、たくさん…」
太一郎「余計な体力使ってられない、ってことだね…」
甘太郎「ねぇ~、そういえばさ~、お姉さんの名前は~?」
桃香「芹 桃香。だから何だ?」
甘太郎「う~ん、人じゃないって言ってたけど~、人っぽいな~って、思って~。異国の人でも無さそうだし~…」
桃香「…いずれ分かる。」
紫「こいつ、どうしよう。放しておく訳にもいかないし」
平太「え、芹さん?!」
桃香「馬鹿和田…」
平太「負けたのぉ?!」
倫太郎「おい、こいつの命が惜しければ、大人しくしろ。」
桃香「気にするな逃げろ。お前の頭じゃ敵わん」
平太「えぇ~でもぉ…」
菫「両手をあげて降伏して下さい。」
平太「はぁい、降参です」
桃香「馬鹿が…」
太一郎「さっき、いずれ分かると言ったね」
桃香「言ったが」
太一郎「君たちは人なの?鬼なの?」
桃香「河野のが言っていたよ、我々は鬼だと。貴様らの大好きなお兄様の通りなら、私たちは鬼だ」
倫太郎「どう言う意味だ、なぜ桃の話が出てくる。はっきり言え。」
桃香「さぁな…和田の、立てるか」
平太「勿論」
桃香「逃げるぞ!」
平太「うん」
藤「あ…ちょ、ちょっと待って…」
紫「追わなくて良いわ!」
藤「だ、だけど」
紫「先を急ぎましょう。」
倫太郎「ああ。…いったい、桃がどうしたって言うんだ…。…いや、行こう。急がねえと。」
菫「待って下さい。ここは、二手に分かれ、表と裏から入るのが最善だと思います」
倫太郎「たしかにな。」
太一郎「倫兄さん、藤くん、甘太郎が表から、紫姉さん、菫姉さん、僕が裏から行くのはどうだろうか?」
紫「私は賛成。」
菫「私もです。」
藤「ぼ、僕も…」
甘太郎「ぼくも~」
倫太郎「よし。今日の日没までに、この木の下で集合。いいな?」
その他太郎「おう!」
②「その他太郎たちは二手に分かれ、鬼の根城へと向かっていきました。」
暗転・明転
桃次と治子が倒れている。
甘太郎「ここが入口っぽいけど~…」
倫太郎「藤、無理するなよ。」
猪野「あ?今日は客の多い日だな…」
藤「ひっ!!あ、あなたも…鬼?それとも、人?」
猪野「あーうん、鬼だよ。おーい、起きろ桃次ー」
桃次「痛ってぇ…コイツ、ふざけやがって!」
藤「…ね、ねぇ、あの人…雉村さんじゃない…?」
甘太郎「ほんとだ~…大丈夫ですか~…?」
治子「うう、」
猪野「お、この子知り合い?持って帰ってくれない?」
桃次「ざけんな!こいつは俺が…」
倫太郎「悪いが、先にこっちの用件を言わせてもらうぞ」
倫太郎「桃太郎と言う人間を知っているだろう。どこにいる。」
猪野「どこにも何も、俺は桃太郎だけど。」
藤「え…?」
甘太郎「桃兄さんなの~?全然違う気がするけど~…」
桃次「バカ、お前じゃない方だろ」
猪野「あぁ、そっか。俺は猪野桃太郎。こっちは鶴見桃次。お前らが探してんのは、河野の方の桃太郎だな?」
倫太郎「…ちっ、紛らわしい」
猪野「まぁそりゃ被りもあるよね~…だって…」
桃次「(遮って)おい」
猪野「あぁ、ごめんごめん。言っちゃったら面白くないもんねぇ」
倫太郎「…おい、その続き、聞かせろよ」
猪野「やだよぉ、そしたら君ら泣いちゃうかもしれないじゃん?俺泣いてる奴は男でも切りたくねぇの。」
倫太郎「…泣かねぇよ、じゃあせめてそこ通せ」
桃次「それも無理だ。俺らは門番だからな」
倫太郎「ちっ…面倒くせぇ…」
甘太郎「ぼくにまかしてよ~!二人は先に行ってて~?」
藤「か、甘ちゃん…」
甘太郎「大丈夫~、あとで雉村さんと一緒に上まで行くから~!」
猪野「そう簡単に通れると思うなよ、ガキ」
桃次「全員ここから通さねぇ」
甘太郎「ぼくは甘太郎だよ、名前で呼んでよね~!」
かかる門番を薙ぎ倒す甘太郎。
甘太郎「二人とも行って!のんびりするのは、ぼくだけでいいから~!」
倫太郎「任せた!」
藤「怪我しないでねぇっ!」
猪野「あーぁ、本当苛立たせてくれるね」
桃次「随分舐められてるな?」
甘太郎「…僕を舐めてんのは君たちでしょ。はぁっ!!」
アクション 倒れ込む門番二人
猪野「中々強いな」
桃次「あぁ、流石に舐めすぎてた」
猪野「俺らと一緒だもんね。蜜柑…だっけ」
甘太郎「何の話?僕ちょっと疲れちゃった…」
桃次「蜜柑って!ははは!聞いたことねぇ!伊予の国で生まれたか?」
二人「あはははは!!!」
甘太郎「え、意味わかんない」
猪野「だろーなぁ」
桃次「俺の名前の、桃次ってなんて書くか教えてやろうか!桃に次って書いて桃次!そろそろ分かるか?」
甘太郎「それがなに…………え、……冗談よしてよ…」
猪野「ハハッ」
桃次「あはは!」
二人「あはははは!」
フェードアウトして暗転・明転
紫「まさか私が裏から入ることになるなんて…地味ね」
菫「派手なばかりが美しさではありませんよ 紫」
太一郎「派手なものが綺麗ってのも、分からなくもないけどね。」
桃香「あ」
全員「あ」
紫「あんたさっきの!」
平太「待って待って!!実は、あんたたちを探してたんだよ」
菫「探していた?」
平太「そぉ!俺らの長?将軍?的な人がいるんだけど、ちょっと話がしたいって。」
太一郎「そうですか、ならお話ししましょう!」
紫「そうね。」
菫「…そうですね。」
桃香「こっちだ。」
②「三人は案内されるまま、ついて行きました。」
紫「なんか暗いわね、」
太一郎「本当にここなんですか?」
桃香「勿論そこだよ、」
桃香「貴様らが入る牢屋はな。」
SE ガシャン(牢が落ちてくる音)
紫と太一郎は牢に入れられる(マイム)
菫はすぐに飛び退き、逃れる
菫「やはりそう来ましたか」
菫「(間髪入れず早口で)バカどもはそこで待っていなさい!後で助けに戻ります!!」
紫・太一郎「菫ー?!\菫姉さん?!」
桃香「チッ、聡いやつだ」
平太「俺、探してきます」
桃香「私も行く。(振り返って)せいぜい、兄弟が捕まるのを待っていることだな!」
太一郎「やられた…」
紫「はぁっ!!(檻を蹴る。が、びくともしない)」
紫「くそっ…こんなところで、じっとしていろって言うの?!?!」
桃太郎「落ち着きなよ、紫」
二人「も、桃兄さん!!」
桃太郎「久しぶりだね、心なしか大きくなった気がするよ」
太一郎「兄さんみんなで帰ろう、兄さんを探すためにみんなで来たんだ!!だから…」
桃太郎「(遮って)ううん、みんなでここに居よう。」
太一郎「兄…さん…?」
桃太郎「その方が幸せになれるからさ…勿論強要はしない、嫌なら帰ってくれて良い」
紫「どう言うこと、何で鬼に同情するの…?!」
太一郎「しっかりしてよ兄さん!!正気になって!!!」
桃太郎「正気だよ、太一郎」
桃太郎「僕は、透子さんと話してきたんだよ。」
紫「とうこさん…?誰のこと?」
桃太郎「…みんなが倒そうとしてる、鬼たちの長のことさ」
桃太郎「透子さんの話を聞けば、みんなもきっと分かってくれる」
透子「やめて!!やめてよぉ!!」
①「昔々あるところに、すごく力の強い娘がいました。」
村の女「気持ち悪い、近寄らないでよ!!」
村の男「女のくせに男よりも力が強いなんて、ばけもんだ!」
村の女「化け物!」
透子「いや、いやぁあ…違うもん、化け物じゃないもんん…!!」
村の男「この村から出ていけ!!」
村の女「出ていって!!」
袖にいる人たち、出て行け出て行けと囃し立てる
透子「おかぁちゃん、なんで透子はこんなに力が強いの?」
②「…分からないわ。」
透子「ねぇ、透子変なの?桃から生まれたら、人間じゃないのかなぁ?」
②「お母さんにとっては、立派な人間よ。だってこんなに優しいもの。」
①「ある日娘が家に帰ると、母がぐったりと倒れていました。」
透子「お、おかぁちゃん…?!」
透子「なんでぇ、透子何にもしてないのにぃ…!!」
百音「あたし、見たよ」
透子「だっ、誰…?」
百音「村の人たちがその人を叩いたり蹴ったりしてたところ、見たよ」
透子「え……」
百音「あたしと一緒においでよ トウコちゃん。あたしもおんなじなんだ。」
透子「同じ…?」
百音「許せないよねぇ、トウコちゃんとお母さんをいじめた、村の人間達」
透子「……許せない、許せ、ないよ…」
百音「二人で国をつくろうよ。あたし達みたいなのが、いじめられない国を」
透子「…国を、二人で…」
百音「ほら立って、行こう。良いところ知ってるんだ」
透子「まっ、まって、なんで透子の名前知ってるの?あと、あなた誰なの…?」
百音「…百音。あなたと同じ、鬼の子」
①「こうして二人の娘は、鬼だけの国を作ったのです。」
桃太郎「それが…鬼ヶ島」
紫「……私たちも、果実から生まれた、…鬼ってこと…。」
桃太郎「あぁ、そうだよ。」
紫「だから、復讐の手伝いをするって?」
桃太郎「僕は人間を恨んでないし、日本を鬼のものに!…なーんて気もさらさらない。でも僕は、家に戻るよりもここに残る方が幸せに過ごせると思った。それだけの話だよ」
太一郎「兄さん、いやだよ、僕は一緒に…」
桃太郎「ああ、そう。じゃあここで大人しくしててね。」
太一郎「待っ…兄さん、兄さん!!!」
紫「…無駄よ、ああなった兄さんは止めらんないの」
紫「あぁ見えて、倫兄さんに劣らぬ頑固さだからね…。」
太一郎「…諦めて、みんなが負けるのを待てって言うのか…?!」
紫「ふっざけんじゃないわよ!!!!(太一郎に掴み掛かる。)」
紫「あたし達だけは、あたし達だけはみんなの勝利を信じなきゃダメでしょう!!!」
太一郎「…ご、ごめん…」
紫「……頭に血が上りすぎたわ。こんな事してもどうにもならないって、分かってる…ごめんね」
紫「菫を待ちましょう。大丈夫よ、絶対助けに来てくれる」
太一郎「うん、そうだね」
暗転・明転
藤「二手に別れようってぇ、僕のこと見捨てる気ぃ…?!」
とう吉「んんん、もう、食べられない…」
藤「キャアアアア!!!」
藤「…じゃない、この人は…鬼かな…?」
藤「うぅぅ……何で僕が……」
とう吉「はっ!あ、すみません!聞いてませんでした!!」
藤「うわぁああ!!」
とう吉「…って、誰?この島にいるってことは…いやでも、見たことないやつだな」
藤「あ…えっと…最近ここに来ました、藤です」
とう吉「そっか、じゃあ見張り番変わってよ!」
藤「え?見張りって?」
とう吉「ここ。宝庫番。オレはとう吉、お前の先輩だから。」
藤「…はい、わかりました」
とう吉「あ、いいの?じゃ、オレ散歩行って来る。戻ってこないから、テキトーな時間になったら帰って良いよ」
藤、とう吉が行ったのを確認して、恐る恐る宝庫の戸を開ける
藤「うわぁ、キラキラしてる…これ、全部金かな…?」
日乃「!何奴!!」
藤「ひぃっっっ鬼?!??」
日乃「違う、お前こそ鬼じゃないのか?」
藤「僕は、藤…人間です」
日乃「……なぁ、何か食べるものを持っていないか、飢え死にそうなんだ…」
藤「食べるもの…甘ちゃんなら持ってるはずだけど…。」
藤「待って、何かあるかもしれない」
藤「あった!はい、これ。」
日乃「ありがとう、…(食べる)…これは…」
藤「和水さん特製のお団子です。僕らは吉備団子って呼んでますけど」
日乃「吉備団子?……おまえ、藤と言ったか」
藤「はい、」
日乃「頼む!お願いだ!いや、お願いします!!私を一緒に、桃太郎を…!!!」
藤「ヒィィイイッッッ?!?!おおおお落ち着いて!!……え…今、桃太郎と言いましたか?」
日乃「私は、私が弱いから………あの人は……」
藤「……話してくれませんか、その、桃兄のこと…。」
日乃「あぁ、…私は、桃太郎に救われた。恩を返すために共に戦ったんだ。」
日乃・①「鬼ヶ島に四人で上陸して、私たちは共に戦うことを約束した。」
①(日乃が語っているように)「おまえ達の兄の桃太郎、戌亥秀、雉村治子、そして私。」
①「私たちは何時間か戦い抜いて、ついに城の頂上へ辿り着いたんだ。」
桃太郎「お前が、鬼の長だな」
透子「ああ、そうだ。そして歓迎するよ、桃太郎。」
鬼たち、喝采。
桃太郎「…どういう意味だ。歓迎される覚えなんてないけど」
透子「覚えがないのは確かだろうなぁ」
秀「切りますか」
日乃「その方が手っ取り早いしな」
治子「いつでも…!」
百音「お前たちは帰っていいですよ。私たちが歓迎しているのは、桃太郎ただ一人」
桃太郎「お前たちに歓迎される謂れはないよ」
透子「しかし、お前…そちら側に付いていていいのか?戌亥秀」
秀「何故」
透子「桃太郎は、我らと同じく桃から生まれている。」
日乃「は?!」
治子「どういう…?」
桃太郎「…おい…待って、…どう言うことだ…!」
透子「そうだ……鬼がどこから生まれるか、お前らは知らないのだろう。答えは簡単だ。桃から生まれた力の強い人間が、鬼と呼ばれているだけ」
透子「お前たち、もう仕事へ戻れ。こいつらはもう永くないだろう」
秀「桃太郎さん、鬼なんですか?」
桃太郎「…俺は鬼じゃない」
秀「だからかあ、別にあなた鍛えていたわけじゃないですもんね」
桃太郎「秀?」
治子「…なんか、秀ちゃん、変…」
秀「鬼か。そうかなるほど。じゃあ殺す」
秀、桃太郎に切り掛かる。
桃太郎「な、何するんだよ!」
秀「俺は鬼を殺すために、将来有望なお前についていた。お前が鬼だと言うなら、ここで切る」
日乃「おい何を言っているんだ!桃太郎が悪いやつじゃないのは、お前も知っているだろう?!」
秀「お前は鬼の味方か?」
治子「秀ちゃん!!なんか、おかしい…いつもの秀ちゃんじゃねえ!!」
秀「いつもの戌亥秀なんて存在しない。俺にあるのは、将軍様から与えられた、役目のみだ」
将軍「秀、戌亥秀よ。お前に頼みたいことがある。」
秀「私に…ですか?」
将軍「あぁ。農民どもは知らんだろうが、ごく一部の武士どもが、鬼だなんだと騒ぎ立てている。」
秀「…」
将軍「戯言だと思うか?」
秀「はい、ただの迷信だと思います。」
将軍「そうであろう。しかし、これは事実なのだ。」
将軍「あと、そうだな、4、5年すれば目立って暴れ出すだろう。その鬼どもを始末する仕事を、お前にやろう」
秀「え、」
将軍「文句か?」
秀「いえ、そのような大きな仕事…いただいて良いのかと」
将軍「もちろんだ。何年かかろうと必ず果たせ。」
秀「は。」
秀「俺の仕事は、鬼を全員殺すこと。肩入れするならヒトでも切るぞ」
日乃「治子、逃げるぞ」
治子「逃げれんよ、だって秀ちゃんが…」
日乃「その秀ちゃんがお前に鋒を向けているんだぞ!!」
治子「いや…!!!」
治子、座り込む
日乃「私は行くからな!!」
百音「逃すな」
桃香・平太「了解!」
日乃、桃香、平太、走り去る
日乃「…と言うことがあったんだ。」
藤「なんてこと…!!」
日乃「治子を見捨てて逃げたのは後悔している、治子はきっと、今も港で…」
藤「………港?」
日乃「治子は船乗りだ。私たちが巻き込んだのが悪かったんだ。あの時も、『一度だけならいい』と桃太郎たちを乗せてきたらしい。私は、自分の命の恩人になんてことを…!!!」
藤「……はるこさんの苗字を、ご存知ですか」
日乃「…雉村のはずだ。雉村、治子…」
治子(声のみ)「仕方ねぇな、一回だけなら出しちゃってもいいよ」
治子(声のみ)「一度だけなら、私が舟を出しましょう。」
藤「……………なんて、救いのない話……。」
菫「はぁ…はぁ、チッ、ここはどこですか…鬼どもは巻きましたが、迷うだなんて…」
藤「す、菫!」
菫「あ?って藤!…と、その人は誰です?」
藤「忍者の日乃さんって人。兄さんの昔の仲間」
菫「どう言うことです?昔の?兄さんを裏切ったと?」
日乃「…それは、」
藤「(遮って)ちがう!…後で話す、とりあえず味方だよ。」
菫「わかりました。…とりあえず、紫と太一郎を助けに行きましょう。牢に入れられました」
藤「なんだって?!」
菫「日乃と言いましたか、二人を助け出します、手を貸して下さい。」
日乃「協力する。行こう。」
菫「こっちです。」
桃香「おっと?」
平太「逃すわけには行きませんよ」
日乃「貴様らは…」
平太「誰かと思えば、日乃どのじゃないですか!負け犬で腰抜けの、忍の恥!日乃どの!」
藤「これ以上この人を傷つけないで下さい!!」
日乃「いい、今はそんなことどうだっていい。…こいつらに時間を割く余裕はないのだろう?好きに暴れてくれ、合わせる」
桃香「暴れるほどの力が、お前らにあるかな?」
菫「舐められては困りますね。」
藤「僕らだってやる時はやるよ。」
二人「はぁっ!!」
アクション。倒れる平太と桃香
桃香「これでは…あのお方に顔向けができん…!!おい和田の!立て!」
平太「もう無理っす。ガチ無理っす。」
桃香「雑魚が…」
菫「行きましょう。」
二人「(返事)」
暗転・明転
倫太郎「…ここは…」
透子「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ。お前が倫太郎か」
百音「お待ちしていました。」
倫太郎「…どう言う意味だ。」
透子「同志たるお前を歓迎するのはおかしいことか?」
倫太郎「…俺たちは人間だ。お前らとは違う」
透子「どこが?」
百音「強靭な体を持ち、強い力を持ち、そして桃や他の果実から生まれている。どこが違う?」
倫太郎「…違う」
透子「我々は…」
倫太郎「(遮って)違ぇんだよ!!」
透子「…私たちは同じだ。お前も、薄々察しているだろう?」
倫太郎「……違う」
百音「話の通じんやつだ。」
倫太郎「俺たちは、誰に何と言われようが、他人を傷つけたことなんて一度もねぇ。」
倫太郎「どうしようもないと割り切って、傷つけて殺し続けたお前らとは違う。」
倫太郎「俺たちは人間なんだよ。ただ生まれるところを間違えただけのな」
桃太郎「…。」
足音に気付き、桃太郎の方を向く。
倫太郎「…………桃?」
桃太郎「久しぶりだなぁ、倫。恋しかったよ、ずっと」
倫太郎「ふざけんな。説明しろ。」
桃太郎「えーとね。」
百音「話させるためにあなたを呼んだわけではありませんよ。」
桃太郎「…分かったよ。」
桃太郎「別の部屋でいいか?」
透子「ああ、好きにしろ。」
桃太郎「来いよ、倫。お前も話したいことあるだろ」
倫太郎「…おい、待て!!」
桃太郎「…来いって。」
倫太郎「………てめぇ…!!」
暗転・明転
倫太郎「どう言うつもりだ。鬼に肩入れしてんじゃねぇよ!!」
桃太郎「肩入れじゃない。守ってるだけだよ。俺がここにいた数週間の間に、八回も人間が攻め込んできた。」
倫太郎「お前は人間だ。俺も、弟たちも妹たちも」
桃太郎「どうかな…実際、僕らは村では恐れられていた。」
倫太郎「……何言ってんだよ。あんなに良くしてもらったのを忘れたか?…帰るぞって言ってんだよ。来い。」
桃太郎「帰らないよ。みんなで帰ればいい」
倫太郎「…じゃあ構えろ、考え直させてやる」
桃太郎「随分デカい口叩くようになったな。お前の兄が誰か、思い出させてやるよ」
アクション 途中まで
倫太郎「お前は人間なんだよ!!どこまで行っても、俺らの家族なんだよ!!」
桃太郎「人間は暴れすぎた。我が物顔で少数を虐げる時代は終わりにした方がいいんだ」
アクション 吹き飛ばされる倫太郎
桃太郎「どうした、前より弱くなったんじゃないか?」
倫太郎「お前こそ…、喋ってる余裕、あんのかよ」
アクション 途中まで
桃太郎「俺たちは家族なんだよ。俺はみんなを守りたいだけ」
倫太郎「…何が守るだ、俺たちを捨てて安寧をとったくせに」
桃太郎「…だから、ここでみんなで暮らそうって、言ってんじゃん。もういいよ。降伏しろよ。」
倫太郎「黙れ。…俺が負けるわけには行かねえんだよ、後ろに何人も、俺を信じてくれてる兄弟がいる。お前と違って、一人じゃねえからな…」
暗転・明転
日乃「…と言うことなんだ。」
太一郎「なるほど…」
紫「兄さんが裏切るだなんて…!」
菫「…元から、そう言う気質だったのかもしれません。」
藤「そんなわけないよ。兄さんは兄さんだもん、きっと何か理由がある」
菫「いいえ。裏切るとかそう言う話ではありません。……境遇が同じとなれば、鬼側についてもおかしくはないと思います。元々、仲間意識が強い人ですし」
日乃「桃太郎がその後どうなったのかはわからん。すぐに逃げてしまったからな。」
太一郎「…兄さんを信じよう。」
甘太郎「あ、み~んな~」
日乃「誰だ!」
紫「大丈夫、味方よ」
甘太郎「ん?誰~?」
日乃「忍の日乃だ。」
甘太郎「かんたろ~だよ!」
藤「甘ちゃん、あの、(治子のことを聞こうとして、言葉に詰まる)」
甘太郎「だいじょーぶ!雉村さんもちゃ~んと連れてきたよぉ!」
日乃「治子…?治子ッ!!!」
治子「ひ、ひーちゃん…!」
日乃「なんでここに…!!」
甘太郎「門番の鬼の前で、倒れてたんだ~」
日乃「なんで…何してるんだよ!何で戻ってきた!」
治子「助けたかったから……みんなを……」
日乃「馬鹿…」
日乃「…………良かった………!!(治子を抱きしめる)」
紫「これで、倫兄さん以外は全員揃ったわね。頂上を目指そう。」
治子「待ってください。…あたしはいけません…」
太一郎「ならどこか、休める場所を…。」
治子「秀ちゃんところに行かんとだめなんです。ここまで一緒に来てくれてありがとうございました、助けてくれたことも感謝してます。でも行かなきゃ…!!」
菫「…では、ここで別れましょうか。私たちは上へ行きます。しゅうさんを助けたら、船着場で待っていてもらえますか?」
治子「…はい、必ず。…それと、桃太郎さんをよろしくお願いします。」
紫「当たり前よ。」
日乃「…私も、治子と共に行ってもいいか」
藤「もちろんです、行ってください」
太一郎「あなたたちのお仲間、助けられるといいですね。」
日乃「…心遣い感謝する。」
日乃「行こう、治子」
治子「うん、ひーちゃん」
二人、去る
紫「さて!私たちは迎えに行きましょう。きっと倫兄さんが上で待ってる」
菫「はい。」
藤「急ごう、日没が近いから」
太一郎「ああ。何やら嫌な予感がする」
甘太郎「僕も~…」
菫「ついてきてください。道を覚えました」
一同(返事)
暗転・明転
日乃「本当にこんなところにあいつがいるのか?」
治子「わからん…鬼から聞いた話やから、違うかも…でも、きっとこの島にはいると思う。」
日乃「信じるぞ。」
日乃「…何者だ!!」
治子「な、なに?!」
日乃「…誰かいる…私たちに殺意を向けてる…、」
秀「久しぶり、二人とも」
日乃「秀!!」
治子「秀ちゃん…」
秀「なぁ、治子。俺思い直したよ、変われたと思う。三人には悪いことした。…今からじゃやり直せないかな?」
日乃「耳を貸すな!コイツは何か隠してる!」
治子「分かってる。…でも、話したいことがあるの」
日乃「治子!!」
秀「なら、俺と…」
治子「(遮って)違うの。もういいよ、それ。あたしが今話したいのは、その秀ちゃんじゃないよ…」
日乃「治子…?何をしようと。」
治子「あたしは、秀ちゃんのことを許す気はないよ。私たちを傷つけた、最低な人やしな」
治子「…………ねぇ、何があったの?」
秀「…ははっ、馬鹿は変わっていないみたいだな」
秀「俺に何があったかって?今に分からせてやるよ」
治子に襲いかかる秀。(刀は抜かず)
治子を庇い武器で受ける日乃。
日乃「素手で受けるとはな。」
秀「…。」
治子「…ねぇ、血が……ほとんど出てない…!!」
日乃「なんだと?」
秀「鬼どもに妙な施術をされた。もう、人じゃないんだろうな、私も。鬼を全員殺して俺も死ぬんだよ。桃太郎はどこだ?お前たちがいるなら、どこかで永らえてるんだろう?」
日乃「桃太郎を救いに、その兄弟たちがきた。私たちは彼らに救われたんだ。」
秀「兄弟?ならそれも消す。退け、もしくは共に来い」
秀「…なぁ、お前は俺に味方してくれるよな、」
治子「…冗談言わないで。私は、秀ちゃんと蹴りをつけにきた。」
秀「…は?」
治子「ひーちゃん、手伝って。」
日乃「当たり前だ。」
秀「…(落胆して)そうか…では、まずはお前らからだな。」
二人「やってみろ!!」
アクション。うつ伏せに倒れる秀。
秀「くそ…!」
日乃「鬼だからといって、疲れがないわけじゃないのか」
治子「うん。それはもう試した」
秀「…殺せよ。」
日乃「船着場に行こう、3人でだ。」
秀「殺せよ!!散々踏み躙っただろお前らを!!あいつのことも襲ったし、俺のことは恨んでるはずだろ!!早く殺せよ!!」
日乃「…。」
秀「…このために、恨まれたんだよ…!!殺してくれ………!!!!」
日乃「その通り、お前は私たちを裏切った。恨んでいないわけがない。…詫びて生きろ、秀」
治子「行こう、ひーちゃん。秀ちゃんも早く立って」
日乃「置いてくぞ、裏切り者」
秀「………。」
暗転・明転
倫太郎と桃太郎が刀を重ねている。
倫太郎「はぁ、はぁ………!!」
桃太郎「そろそろ諦めろよ、もう疲れただろ?」
紫「居た!!」
藤「え、た、戦ってる…?」
菫「二人ともなにをしているのですか?!」
倫太郎「下がれ。邪魔するな」
桃太郎「…」
桃太郎「そろそろ諦めろって言ってんだろ、倫。」
桃太郎、倫太郎を弾き飛ばす。
倫太郎「うっせぇな…」
紫「桃兄さんから全部聞いた、加勢するわ」
倫太郎「黙れ…、俺の喧嘩なんだよ…」
桃太郎「いい加減にして」
桃太郎、倫太郎の刀を弾き飛ばす
桃太郎「みんな…帰って。もう疲れたよ。」
倫太郎「ふざけんな…!!」
太一郎「待って兄さん!なんで、どうしてそこまで拘るんだよ!僕らと一緒に帰るだけだろ?!」
桃太郎「………もう、無理なんだよ」
桃太郎「みんな見殺しにしたよ。みんな裏切ったし、裏切られたよ。信じてた親友すら、…嘘だったんだ。何もなかったんだ。鬼を退治しに来た人たちを何人も何人も殺して殺して殺して殺して…みんな自分なりの正義のはずだったのになぁ…もう俺はどこにも居られないよ。ここに居るしかない。」
桃太郎「秀も、雉村さんも、日乃も、………もう全部失った」
桃太郎「もう何人も斬ってるんだよ!!俺だけ都合良くヒトに戻れないだろ!!」
紫「……………この分からず屋!!!!」
紫が桃太郎の胸ぐらを掴む。
紫「生きてるわよ!!船乗りさんも忍者の子も!!」
桃太郎「……………………は…?」
紫「二人とも前向きにっ…戦おうと立ち上がって!!それを……あんたが……勝手に裏切ったとか言ってんじゃないわよ!!!」
桃太郎「食い気味で)生きてる?どこで?会ったの?二人とも?」
紫「私たちは、…私たちも、二人に助けられてここまできたのよ!あんたにあたし達を会わせるために、手伝ってくれたのよ!!それを何もないだの、どこにも居られないだの、あんたどこまで自分本位なの?!」
桃太郎「嘘だ!!二人が生きてるわけ、ましてやこの島にいるわけ、嘘だ、うそだ…」
桃太郎、泣き出す。
太一郎「嘘じゃないよ、兄さん」
菫「日乃さんと治子さんはしゅうさんという方を探すために、私たちとは別行動をしています」
桃太郎「秀までいるわけない……生きてるわけない…だって、俺が…」
藤「桃兄さん、…帰ろうよ」
桃太郎「……無理だよ、…………秀達が生きてたとしても…」
桃太郎「いいひとだったんだ、みんな」
桃太郎「俺のことも受け入れてくれる、優しいひとたちだったんだ……」
甘太郎「戦わずに帰ったらいいんだよ~!」
百音「そうは行きませんよ」
菫「お前は…」
倫太郎「お前ら下がれ!」
百音「いいのか?兄弟達を下がらせて。貴様程度で我らの王に敵うとでも?」
倫太郎「…だから、何なんだよ…」
倫太郎「妹と弟が構えてるのに…俺が引けるわけねぇだろうが」
透子「良い心意気だな。相手をしてやろう」
アクション。うずくまる倫太郎
近寄る透子
藤「やめろ!」
透子に切り掛かる藤
透子「お前もやるか?」
藤「みんなも何やってるんだよ!なんで倫兄さんがやられるとこ黙ってみてるんだよ!!」
藤「負けそう?怖い?関係ないでしょ、違う?!」
百音に刺されて崩れる藤
菫「藤!!」
百音「一人ずつ殺して行く。死にたい者から前へ出ろ」
透子「百音!殺すのは話が違うでしょ」
百音「どうして?私たちの国のため、ですよ」
百音「鬼だろうと人だろうとそれ以外だろうと、規律を乱す奴がいるなら消せばいい違いますか?」
透子「……。」
紫・菫「はぁっ!」
紫が透子、菫が百音に同時に切り掛かる
菫は百音に蹴り飛ばされる
百音「雑魚が」
紫「菫!」
透子を振り払い菫を庇う
透子「百音!」
甘太郎「やめろ!」
百音に切り掛かる
甘太郎「(太一郎に)お前も動け!甘ったれ!!」
太一郎「あ、ああ!」
透子に切り掛かる
紫「さっきから…貴方の主人と意見が食い違ってるみたいだけど?」
百音「ええ、…だって、透子は知りませんから…」
甘太郎「何を?」
百音「裏切りの、恐ろしさを。」
百音「透子に出会う前にも、私には鬼の仲間がいました。でもそれは、あろうことか自分を人だと偽り、私を売ったのだ!!」
百音「私はあいつが許せない!!今やヒトの頂点まで上り詰め、国を支配しているあいつが!!!」
百音「だからもっと硬い絆で結んだんだ!!決まりも作って、もう二度と裏切られないように!!!」
甘太郎「決まりを守るのに必死で、大事なあの人の顔すら見えてないみたいだけどね。本当に硬い絆で結ばれてると思ってんの?」
百音「…は?」
甘太郎「あんたさ、僕たちの攻撃から一度でもあの人のこと庇ったことある?」
甘太郎「相手が強いと分かってても、勝てる相手でも、相手のことを心から信じてるにしても、一度でもあの人のこと心配したことあるの?」
甘太郎「…………それってさ、ただ強い人を利用してるだけなんじゃないの」
百音「利用?私が?そんな訳ないでしょう。透子のために全てを捧げた私が利用しているだなんて。酷い話にも程があるでしょう」
百音「私は透子の願いは何でも叶えて上げたのですから。利用するつもりならそこまでしなくても良いでしょう」
紫「透子さんのお母さんを酷い目に合わせた癖に?」
百音「…。」
紫「硬い絆で結んだ、ね。その言い方だと、あなたが殺したみたいだけど。違う?」
紫「桃から聞いたのよ、透子さんの過去の話。しかもさっきから、私たちを本気で殺そうとしてるのは貴方の方」
百音「…。」
紫「嘘でも否定したらどうなの」
透子「え、…百音…?うそ、だって…」
紫「…さっきから、あなたの話って『してあげた』とか、『裏切る』とか、…鬼の長って、あなたなんじゃないの?」
紫「その人を操って、鬼の国を築き上げたのは、あなた。」
紫「全てを捧げた…だなんて、本気で言ってるなら勘違いも甚だしいわ」
百音「…すべては、私たちが虐げられない世界のためです。私の七年間を、すべて捧げました。目的はどうあれ、私が尽くしてきたのは事実でしょう。それを今、敵の言った信用ならない話のために捨てるのですか?」
透子「…うそ、」
百音「前のあなたならばそんなことで迷ったりしなかったのに。私を信じてくれないだなんて。何がいけなかったんですか?私が何か間違えたとでも?」
透子「嘘だ、……私たち親友だねって、言ってくれたのに」
百音「それは…」
甘太郎、(言葉を遮るために)百音を切る
百音「…おまえ…!!」
甘太郎「ごめん」
甘太郎「…聞きたくないかと思って」
透子「百ちゃん……(泣き出す)」
皆、色々なものを噛み締めて、黙り込む。
紫「………菫、大丈夫?」
菫「私よりも、藤と倫が心配です」
倫太郎「…何ともねぇよ。」
菫「藤…、藤!」
藤「大丈夫、生きてる、よ」
倫太郎「…桃、おい、桃!帰るぞ。」
太一郎「僕が背負うよ」
紫「…この人、連れて行きましょう」
太一郎「え?」
紫「え?って何よ」
太一郎「良いのかな?この人、」
倫太郎「良いんだよ。……黙って介抱してやれ」
甘太郎「掴まって~」
藤「僕も手伝、(咳込む)」
菫「黙ってなさい!貴方が一番重症なんですよ?!」
桃太郎「百音……さん、」
倫太郎「やめろ。あいつは…俺たちと一緒に来るだなんて、望んでねぇだろ」
紫「行くわよ。甘ちゃん、その人ちゃんと支えてあげて」
甘太郎「うん。」
ぽつりぽつりはけていく。
暗転・明転
治子「よかった…みんな…無事で…!!」
日乃「…それは、鬼の長の女ではないのか」
甘太郎「そうだよ~。」
桃太郎「秀…………」
秀「触ら……触るな(と言いつつ、泣いている秀)」
桃太郎「……」
甘太郎「感動の再会ってやつ?」
菫「そんな優しいもんですかね?」
治子「…って、みんな傷だらけで…治療、治療しますから、酷い人から…」
紫「藤の治療をお願いしても?」
治子「見せて下さい」
倫太郎「…おい、あんた。ついてきたきゃ着いてこい。ここに残りたきゃ勝手に残れ」
透子「…ついてきたければ?ずいぶんお優しいことだ。向こうに戻ってどうしろというの」
透子「向こうに行って私はどうしたらいい……百音がいなかったら。私何も…」
倫太郎「…俺らの親は、7人もガキを受け入れたお人好しのジジイとババアだ。お前一人くるぐらい良いんじゃね」
菫「それもそうですね。」
紫「行くわよ。」
藤「い、痛い!ちょっ、紫!」
菫「藤、ぼーっとしないでください。」
太一郎「帰ろう。日乃さんも、肩を貸しますよ」
日乃「いい…私は忍だ」
甘太郎「ばいば~い。」
治子「秀ちゃん、」
秀「…」
治子「…分かった。あんたは頑固やからねぇ」
菫「………船を出していただけますか?」
治子「うん。」
倫太郎「………帰るぞ。」
一同「(それぞれ返事)」
桃鬼伝説 終わり
◇ナレーター①\女:
◇ナレーター②\女:
◇おじいさん(河野 平助)\男:
◇おばあさん(和水)\女:
◇桃から生まれた 桃太郎\男:
◇戌亥 秀\男:
◇雉村 治子\女:
◇猿飛 日乃\女:
◇林檎から生まれた 倫太郎\男:
◇葡萄から生まれた 紫\女:
◇葡萄から生まれた 藤\男:
◇葡萄から生まれた 菫\女:
◇苺から生まれた 太一郎\男:
◇蜜柑から生まれた 甘太郎\男:
◇将軍\男:
◇村の人\女:
◆鬼の長 布留川 透子\女:
◆側近の鬼 佐武 百音\女:
◆門番の鬼 鶴見 桃次\男:
◆門番の鬼 猪野 桃太郎\男:
◆偵察隊の鬼 芹 桃香\女:
◆偵察隊の鬼 和田 平太\男:
◆宝庫番の鬼 菅原 とう吉\男:
①「昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが仲睦まじく暮らしておりました。」
おじいさん「ばあさん、俺は山へ薪狩りに行ってくるよ。」
おばあさん「行ってらっしゃい。腰やらないでよ。」
①「おじいさんは山へ薪狩りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。」
①「おばあさんが川で洗濯をしていると、どんぶらこどんぶらこと上流からとても大きな桃が流れてきたのです。」
おばあさん「おや、大きい桃」
①「おばあさんは桃を持って家に帰りました。」
おばあさん「ただいま」
おじいさん「おかえり。って、………大きい桃じゃな…」
おばあさん「川から流れてきたんです」
①「おじいさんは桃を包丁で切ろうとしました、しかし」
①「桃はびくともしませんでした。」
①「おじいさんは日本刀を取り出し、桃を二つに割りました。」
おじいさん「割れたな」
おばあさん「ええ、食べましょうか…って、えぇ?!?!」
①「おばあさんが桃に視線を戻すと、何と桃の中から男の子が生まれたのです。」
①「二人はたいそう喜んで、その子に桃太郎と名前をつけて育てることにしました。」
①「二人は桃太郎を可愛がりました。」
①「しばらくしたある日、おばあさんはまた川へ洗濯をしに行きました。」
①「ふとおばあさんが上流の方を見ると、今度は何と林檎が流れてきたのです。」
①「おばあさんは林檎を家に持ち帰りました。」
①「おばあさんは林檎を斬りました。」
おじいさん「お前なんで横から切ったんじゃ!!また人はいっとるかもしれんじゃろ!!」
おばあさん「かわいい!!今日からお前は倫太郎だよ!」
おじいさん「ちょっ待、その子も育てるんか?!?!」
①「おばあさんはおじいさんを無視して倫太郎を可愛がりました。」
①「そして懲りずにまた川へ行き、葡萄と苺と蜜柑を持って帰ってきました。その中からも、もれなく小さな子供が生まれてきたようです。」
①「時は過ぎ、果物から生まれた子供達は大きくなりました。」
ナレーター「長男 桃太郎」
桃太郎「みんなは俺が守る!」
ナレーター「次男 倫太郎」
倫太郎「勝手にしてくれ」
ナレーター「長女 紫」
紫「私は将軍になる女よ!」
ナレーター「三男 藤」
藤「ひぃいごめんなさいいい!!」
ナレーター「次女 菫」
菫「知識は最大の武器」
ナレーター「四男 太一郎」
太一郎「兄さん大好き!」
ナレーター「末男 甘太郎」
甘太郎「はらへった~」
①「つまり、七人の子供たちは健やかに育ちました。兄弟達は人助けを多くしたため、近くの村では評判になっていました。」
①「桃から生まれた桃太郎、林檎から生まれた倫太郎、葡萄から生まれた三つ子の紫、藤、菫」
①「苺から生まれた太一郎、蜜柑から生まれた甘太郎。七人の元にある手紙が届きました。」
将軍「鬼ヶ島の鬼どもを何とかしてこい!」
①「一家では家族会議が開かれます。」
おじいさん「俺は反対じゃ!可愛い子供達を戦いに出すわけにはいかん!」
倫太郎「俺も断固反対。っつか、勝手にやっててくれよ。俺は寝る。」
紫「私は賛成!将軍を目指す女たるもの、絶対に行くべきだわ!」
藤「ぼ僕は行きたくない…怖いし…痛いの嫌だし…」
菫「菫も反対です。行くべきではないと判断します」
太一郎「僕は行きたい!鬼と話して帰ってくるだけだ!戦う必要なんてないし!」
甘太郎「ぼくも行きたいな~、鬼ヶ島って、美味しいものとかありそうじゃ~ん!」
おじいさん「…おまえは」
おばあさん「私は桃太郎に決めてほしいと思う。わたしは、桃太郎が正しいと思った方に賛成だよ。」
おじいさん「…うん。俺もだよ。」
桃太郎「なら…………僕一人で行ってくる。」
その他「(驚愕)」
桃太郎「ほら この中で大人なのは僕だけだし、父さん達には安全なところにいてほしい。だから、僕一人で行ってくる。」
紫「私も連れて行ってよ!」
桃太郎「だーめ。紫はまだガキじゃん」
菫「行くべきではありません。大人だからと言って安全だと言うわけでもありません」
桃太郎「菫たちが来るよりは安全だよ」
藤「し、死なないでね絶対帰ってきてよ」
桃太郎「もちろんだよ、藤」
太一郎「僕は戦う気はないよ!だから連れてってよ兄さん!」
桃太郎「太一郎。お前は真面目すぎるからだめだ」
太一郎「どういうこと?!兄さん?!」
甘太郎「美味しいもの持って帰ってきてくれたら~、それでいいよぉ~」
桃太郎「分かった。何か持って帰ってくるよ」
倫太郎「…」
桃太郎「倫は?何か言うことある?」
倫太郎「…死んだら、殺す」
桃太郎「はいはい。倫は照れ屋なんだから。死なないようにしますよっと」
桃太郎「じゃ僕行くから。父さんたちはそれでいいんだよね」
おじいさん「ああ。いってらっしゃい。」
おばあさん「この刀と吉備団子を持ってお行き!きっと役に立つよ」
①「おばあさんは、桃太郎の桃を割った刀を渡しました。」
桃太郎「うん。じゃあ。」
①「桃太郎は家を出ました。」
桃太郎「さて…まずは船か」
秀「おーい!桃太郎さーん!!」
桃太郎「ん?あ、秀!!どうしたのさ?」
秀「この戌亥秀、桃太郎さんにはどこまででも着いていきます!船出ですってね、丁度いいやつを知ってますよ」
桃太郎「いいの?」
秀「勿論!」
桃太郎「じゃ、紹介してもらおうかな」
秀「ところで、どちらまで?」
桃太郎「…鬼ヶ島!」
秀「へへっ、お供しますよ」
桃太郎「頼もしいよ。」
①「桃太郎が戌亥の案内で船着場まで行くと、そこには女の船乗りがいました。」
秀「雉ちゃん!おーい、治子!」
治子「どうしたん、秀ちゃん。あ、こんにちは。秀ちゃんのお友達?」
桃太郎「そんなところかな。」
秀「こいつは雉村。さっき言ってた船乗りです」
治子「雉村治子と申します。よろしくお願いします。」
桃太郎「桃太郎です。よろしく。」
秀「なあ治子、鬼ヶ島まで船出してくれない?」
治子「え!お、鬼ヶ島?!なんでそんなところ、」
秀「お願いだよ、この人は鬼を退治しに行くんだよ」
桃太郎「ちょっ、秀」
治子「そ、そうなん、あの鬼を…?仕方ねぇな、一回だけなら出しちゃってもいいよ」
桃太郎「本当ですか?ありがとうございます!」
秀「ありがとな、雉ちゃん!」
治子「あ、あんたのためじゃねえわ!桃太郎さんのためや!」
秀「うん、分かってる。ありがと」
治子「黙っとって!船出すよ!」
①「桃太郎は戌亥と雉村と共に船に乗り込み、鬼ヶ島へと漕ぎ出しました。」
暗転・明転
桃太郎「うわっ」
治子「気いつけて!この辺は海が荒れとりますけぇ…」
桃太郎「……あそこに誰か、溺れてないか…?!」
秀「え、あ、本当だ…!!」
桃太郎「手を伸ばして!!もう少し!」
日乃「ああ、うう、」
暗転・明転
日乃「…は!あ、え?ここは…?」
桃太郎「大丈夫ですか?!」
秀「治子、見張り変わるよ」
治子「うん、あ、その前に!秀ちゃん、あたしの鞄から包帯取ってえ」
秀「分かった」
治子「あんた名前は?自分のことわかる?」
日乃「…分かる。」
治子「ちょっとあんた!手当てしとる時はジッとせられぇ!!」
日乃「平気だこれくらい!この程度の傷で…」
治子「怪我人は黙って寝てろ!!傷口が膿んだらどうすんのよ!!」
日乃「う、うるさい!もういい、拾ってくれて有難う!わたしはもう行く…」
桃太郎「もう行くって、どこへ」
日乃「どこへでもだ!ここは何島だ?」
桃・戌・雉「鬼ヶ島」
日乃「なん…はぁ?!」
桃太郎「だから、『どこへ』って聞いただろう。ここは危ない、大人しくしててくれよ」
桃太郎「僕達は、ここにいる鬼を退治しに来たんだよ。怪我はさせないから、着いてきてくれる?」
日乃「…」
桃太郎「雉村さん、…悪いんだけど、あなたにもついてきて欲しい。いつどこに鬼が現れるかわからないから。」
治子「えぇ!」
秀「何かあったら、必ず俺が守るから。」
治子「…え、あ、なら、いいけど…」
日乃「待て!」
日乃「…わたしも戦わせろ。助けられただけなんて情けない。恩を返すくらいさせてくれ」
桃太郎「…危険だよ。怪我も治ってない」
日乃「私は忍だ。いざとなれば、女……治子を連れて逃げ仰せよう」
桃太郎「…僕は桃太郎。河野桃太郎。」
秀「俺は戌亥秀!」
治子「あたしは雉村治子。」
日乃「…わたしは、…日乃。猿飛日乃だ。」
桃太郎「よろしく日乃。」
桃太郎「……二人とも、行けるかい?」
秀「いつでも!」
日乃「勿論。」
桃太郎「じゃあ雉村さん、猿飛さんの手当てを。」
治子「はい!」
桃太郎「……じゃあ、行こうか!!」
一同「おう!!!」
①「こうして桃太郎は、戌・猿・雉の力を借り、暴れていた鬼たちを懲らしめました。」
①「鬼たちが盗んだ宝を取り返し、幸せに暮らしましたとさー…」
紫・太一郎「ちょっと待った!!」
倫太郎・菫「話が違ぇぞ\話が違います !!」
①「え?」
倫太郎「桃は帰ってきやしねぇし、鬼を倒したかも聞いてねぇし、宝も持って帰ってきてねぇ!!」
②「そう、」
①「わぁ!!」
②「桃太郎は帰ってこなかったのです。」
藤「あ、あの桃兄さんが負けるなんて、ありえない…」
甘太郎「みんなで~、助けに行こ~」
その他太郎「おう!!」
暗転・明転
菫「もしかしたら、兄さんは帰ってきているのかもしれません。まずはあの港に行ってみましょう」
②「その他太郎たちが港へ向かうと、女の船乗りがそこにいました。」
治子「…どこに行くんです、今は海が荒れていて、どこへも。」
紫「鬼ヶ島へ。兄さんを救いに行くのよ」
治子「兄さん、と言うと、あなたは妹さん?」
紫「ええ。私たち全員、桃兄さんの妹と弟よ。」
治子「桃……兄さん、」
太一郎「兄さんについて何か知っているんですか?」
治子「…いいえ、何も。」
藤「そ、そんなぁ…」
菫「では、船を貸して頂くことは可能ですか?一刻も早く、鬼ヶ島へ行かないといけないんです。」
治子「………一度だけなら、私が舟を出しましょう。ただ、私の船は小舟ですんで、転覆しても知りませんよ」
甘太郎「ありがと~、ございます~」
倫太郎「俺は倫太郎。こっちから順に、」
紫「紫よ」
藤「藤ですぅ…」
菫「菫と申します」
太一郎「太一郎です」
甘太郎「かんたろ~だよ」
倫太郎「あんたは?」
治子「…名乗るほどの名前は、ございません。」
倫太郎「じゃあせめて、苗字を教えてくれ。」
治子「…雉村です。」
太一郎「よろしく、雉村さん!」
治子「さぁ、船を出しますけえ、乗ってください」
②「一行の船は進み出したのです。」
暗転・明転
透子「教えてやろうか、我々鬼について」
百音「私たちはあなたを歓迎します。」
透子「悪いことは言わん。人のもとを離れ、我らと共に歩もうぞ。」
百音「あなた程のものが、どうして人と共に生きているのです?お辛かったでしょう、私たちはあなたを否定しませんから」
透子「なぁ、お前が守りたがっていた二人は、……もう居ないんだ」
百音「私たちと共に暮らしましょう?」
透子「さぁ、認めよ、桃太郎」
二人「我々は同志であると」
暗転・明転
治子「さぁ、つきましたよ。行っていらっしゃい。」
太郎たち「ありがとう(それぞれの言い方で)」
紫「あなたは今からどうするの?」
治子「………お気になさらず。明日の朝には戻りますから」
藤「き……危険ですよ…?」
治子「良いんです。さぁ、行って。」
②「その他太郎たちは船乗りと別れ、鬼ヶ島を進んでいきます。」
桃香「おい和田の、あれが見えるか。」
平太「見えるよ、芹さん」
桃香「佐武のに知らせを。私が迎え撃つ」
平太「了解」
桃香「そこの者ども!止まれ!」
紫「人がいたなんて…私は紫!この辺りで、河野桃太郎って男を見かけなかった?!」
桃香「…河野の、あぁ、貴様らがか。」
菫「何か知っているような口振りですね。」
太一郎「知っているなら教えてくれないでしょうか!!」
桃香「無理だな。」
藤「お、お願いです!この島はき危険ですから、教えてくれたらあなたのことも守りますから!!」
桃香「はっ、私を守るだと?笑わせる。」
桃香「私は人ではない。貴様らのような弱い者どもに守られる由もなし。」
甘太郎「人じゃないって~、どういうこと~…?」
倫太郎「平和にゃ進みそうにねぇな」
紫「どうする、倫兄さん」
倫太郎「力尽くだ。人じゃねぇなら、鬼なんだろ」
桃香「力尽く、か。六対一でも構わんぞ、私は」
紫「一対一だよ!!」
アクション 紫 対 桃香
紫「取った!」
紫「両手をあげて降参しなさい!命まで貰うつもりはないわ。」
桃香「……まぁ、私相手にこのザマでは、先が思いやられるなぁ」
倫太郎「どう言う意味だ。」
桃香「私はただの見張りだ。島中を駆け回って侵入者を排除するだけの、第一関門に過ぎんぞ」
菫「お前のようなのが沢山いると言うことですか」
桃香「当たり前だ。ここは鬼ヶ島だぞ?」
藤「こんな人たちが、たくさん…」
太一郎「余計な体力使ってられない、ってことだね…」
甘太郎「ねぇ~、そういえばさ~、お姉さんの名前は~?」
桃香「芹 桃香。だから何だ?」
甘太郎「う~ん、人じゃないって言ってたけど~、人っぽいな~って、思って~。異国の人でも無さそうだし~…」
桃香「…いずれ分かる。」
紫「こいつ、どうしよう。放しておく訳にもいかないし」
平太「え、芹さん?!」
桃香「馬鹿和田…」
平太「負けたのぉ?!」
倫太郎「おい、こいつの命が惜しければ、大人しくしろ。」
桃香「気にするな逃げろ。お前の頭じゃ敵わん」
平太「えぇ~でもぉ…」
菫「両手をあげて降伏して下さい。」
平太「はぁい、降参です」
桃香「馬鹿が…」
太一郎「さっき、いずれ分かると言ったね」
桃香「言ったが」
太一郎「君たちは人なの?鬼なの?」
桃香「河野のが言っていたよ、我々は鬼だと。貴様らの大好きなお兄様の通りなら、私たちは鬼だ」
倫太郎「どう言う意味だ、なぜ桃の話が出てくる。はっきり言え。」
桃香「さぁな…和田の、立てるか」
平太「勿論」
桃香「逃げるぞ!」
平太「うん」
藤「あ…ちょ、ちょっと待って…」
紫「追わなくて良いわ!」
藤「だ、だけど」
紫「先を急ぎましょう。」
倫太郎「ああ。…いったい、桃がどうしたって言うんだ…。…いや、行こう。急がねえと。」
菫「待って下さい。ここは、二手に分かれ、表と裏から入るのが最善だと思います」
倫太郎「たしかにな。」
太一郎「倫兄さん、藤くん、甘太郎が表から、紫姉さん、菫姉さん、僕が裏から行くのはどうだろうか?」
紫「私は賛成。」
菫「私もです。」
藤「ぼ、僕も…」
甘太郎「ぼくも~」
倫太郎「よし。今日の日没までに、この木の下で集合。いいな?」
その他太郎「おう!」
②「その他太郎たちは二手に分かれ、鬼の根城へと向かっていきました。」
暗転・明転
桃次と治子が倒れている。
甘太郎「ここが入口っぽいけど~…」
倫太郎「藤、無理するなよ。」
猪野「あ?今日は客の多い日だな…」
藤「ひっ!!あ、あなたも…鬼?それとも、人?」
猪野「あーうん、鬼だよ。おーい、起きろ桃次ー」
桃次「痛ってぇ…コイツ、ふざけやがって!」
藤「…ね、ねぇ、あの人…雉村さんじゃない…?」
甘太郎「ほんとだ~…大丈夫ですか~…?」
治子「うう、」
猪野「お、この子知り合い?持って帰ってくれない?」
桃次「ざけんな!こいつは俺が…」
倫太郎「悪いが、先にこっちの用件を言わせてもらうぞ」
倫太郎「桃太郎と言う人間を知っているだろう。どこにいる。」
猪野「どこにも何も、俺は桃太郎だけど。」
藤「え…?」
甘太郎「桃兄さんなの~?全然違う気がするけど~…」
桃次「バカ、お前じゃない方だろ」
猪野「あぁ、そっか。俺は猪野桃太郎。こっちは鶴見桃次。お前らが探してんのは、河野の方の桃太郎だな?」
倫太郎「…ちっ、紛らわしい」
猪野「まぁそりゃ被りもあるよね~…だって…」
桃次「(遮って)おい」
猪野「あぁ、ごめんごめん。言っちゃったら面白くないもんねぇ」
倫太郎「…おい、その続き、聞かせろよ」
猪野「やだよぉ、そしたら君ら泣いちゃうかもしれないじゃん?俺泣いてる奴は男でも切りたくねぇの。」
倫太郎「…泣かねぇよ、じゃあせめてそこ通せ」
桃次「それも無理だ。俺らは門番だからな」
倫太郎「ちっ…面倒くせぇ…」
甘太郎「ぼくにまかしてよ~!二人は先に行ってて~?」
藤「か、甘ちゃん…」
甘太郎「大丈夫~、あとで雉村さんと一緒に上まで行くから~!」
猪野「そう簡単に通れると思うなよ、ガキ」
桃次「全員ここから通さねぇ」
甘太郎「ぼくは甘太郎だよ、名前で呼んでよね~!」
かかる門番を薙ぎ倒す甘太郎。
甘太郎「二人とも行って!のんびりするのは、ぼくだけでいいから~!」
倫太郎「任せた!」
藤「怪我しないでねぇっ!」
猪野「あーぁ、本当苛立たせてくれるね」
桃次「随分舐められてるな?」
甘太郎「…僕を舐めてんのは君たちでしょ。はぁっ!!」
アクション 倒れ込む門番二人
猪野「中々強いな」
桃次「あぁ、流石に舐めすぎてた」
猪野「俺らと一緒だもんね。蜜柑…だっけ」
甘太郎「何の話?僕ちょっと疲れちゃった…」
桃次「蜜柑って!ははは!聞いたことねぇ!伊予の国で生まれたか?」
二人「あはははは!!!」
甘太郎「え、意味わかんない」
猪野「だろーなぁ」
桃次「俺の名前の、桃次ってなんて書くか教えてやろうか!桃に次って書いて桃次!そろそろ分かるか?」
甘太郎「それがなに…………え、……冗談よしてよ…」
猪野「ハハッ」
桃次「あはは!」
二人「あはははは!」
フェードアウトして暗転・明転
紫「まさか私が裏から入ることになるなんて…地味ね」
菫「派手なばかりが美しさではありませんよ 紫」
太一郎「派手なものが綺麗ってのも、分からなくもないけどね。」
桃香「あ」
全員「あ」
紫「あんたさっきの!」
平太「待って待って!!実は、あんたたちを探してたんだよ」
菫「探していた?」
平太「そぉ!俺らの長?将軍?的な人がいるんだけど、ちょっと話がしたいって。」
太一郎「そうですか、ならお話ししましょう!」
紫「そうね。」
菫「…そうですね。」
桃香「こっちだ。」
②「三人は案内されるまま、ついて行きました。」
紫「なんか暗いわね、」
太一郎「本当にここなんですか?」
桃香「勿論そこだよ、」
桃香「貴様らが入る牢屋はな。」
SE ガシャン(牢が落ちてくる音)
紫と太一郎は牢に入れられる(マイム)
菫はすぐに飛び退き、逃れる
菫「やはりそう来ましたか」
菫「(間髪入れず早口で)バカどもはそこで待っていなさい!後で助けに戻ります!!」
紫・太一郎「菫ー?!\菫姉さん?!」
桃香「チッ、聡いやつだ」
平太「俺、探してきます」
桃香「私も行く。(振り返って)せいぜい、兄弟が捕まるのを待っていることだな!」
太一郎「やられた…」
紫「はぁっ!!(檻を蹴る。が、びくともしない)」
紫「くそっ…こんなところで、じっとしていろって言うの?!?!」
桃太郎「落ち着きなよ、紫」
二人「も、桃兄さん!!」
桃太郎「久しぶりだね、心なしか大きくなった気がするよ」
太一郎「兄さんみんなで帰ろう、兄さんを探すためにみんなで来たんだ!!だから…」
桃太郎「(遮って)ううん、みんなでここに居よう。」
太一郎「兄…さん…?」
桃太郎「その方が幸せになれるからさ…勿論強要はしない、嫌なら帰ってくれて良い」
紫「どう言うこと、何で鬼に同情するの…?!」
太一郎「しっかりしてよ兄さん!!正気になって!!!」
桃太郎「正気だよ、太一郎」
桃太郎「僕は、透子さんと話してきたんだよ。」
紫「とうこさん…?誰のこと?」
桃太郎「…みんなが倒そうとしてる、鬼たちの長のことさ」
桃太郎「透子さんの話を聞けば、みんなもきっと分かってくれる」
透子「やめて!!やめてよぉ!!」
①「昔々あるところに、すごく力の強い娘がいました。」
村の女「気持ち悪い、近寄らないでよ!!」
村の男「女のくせに男よりも力が強いなんて、ばけもんだ!」
村の女「化け物!」
透子「いや、いやぁあ…違うもん、化け物じゃないもんん…!!」
村の男「この村から出ていけ!!」
村の女「出ていって!!」
袖にいる人たち、出て行け出て行けと囃し立てる
透子「おかぁちゃん、なんで透子はこんなに力が強いの?」
②「…分からないわ。」
透子「ねぇ、透子変なの?桃から生まれたら、人間じゃないのかなぁ?」
②「お母さんにとっては、立派な人間よ。だってこんなに優しいもの。」
①「ある日娘が家に帰ると、母がぐったりと倒れていました。」
透子「お、おかぁちゃん…?!」
透子「なんでぇ、透子何にもしてないのにぃ…!!」
百音「あたし、見たよ」
透子「だっ、誰…?」
百音「村の人たちがその人を叩いたり蹴ったりしてたところ、見たよ」
透子「え……」
百音「あたしと一緒においでよ トウコちゃん。あたしもおんなじなんだ。」
透子「同じ…?」
百音「許せないよねぇ、トウコちゃんとお母さんをいじめた、村の人間達」
透子「……許せない、許せ、ないよ…」
百音「二人で国をつくろうよ。あたし達みたいなのが、いじめられない国を」
透子「…国を、二人で…」
百音「ほら立って、行こう。良いところ知ってるんだ」
透子「まっ、まって、なんで透子の名前知ってるの?あと、あなた誰なの…?」
百音「…百音。あなたと同じ、鬼の子」
①「こうして二人の娘は、鬼だけの国を作ったのです。」
桃太郎「それが…鬼ヶ島」
紫「……私たちも、果実から生まれた、…鬼ってこと…。」
桃太郎「あぁ、そうだよ。」
紫「だから、復讐の手伝いをするって?」
桃太郎「僕は人間を恨んでないし、日本を鬼のものに!…なーんて気もさらさらない。でも僕は、家に戻るよりもここに残る方が幸せに過ごせると思った。それだけの話だよ」
太一郎「兄さん、いやだよ、僕は一緒に…」
桃太郎「ああ、そう。じゃあここで大人しくしててね。」
太一郎「待っ…兄さん、兄さん!!!」
紫「…無駄よ、ああなった兄さんは止めらんないの」
紫「あぁ見えて、倫兄さんに劣らぬ頑固さだからね…。」
太一郎「…諦めて、みんなが負けるのを待てって言うのか…?!」
紫「ふっざけんじゃないわよ!!!!(太一郎に掴み掛かる。)」
紫「あたし達だけは、あたし達だけはみんなの勝利を信じなきゃダメでしょう!!!」
太一郎「…ご、ごめん…」
紫「……頭に血が上りすぎたわ。こんな事してもどうにもならないって、分かってる…ごめんね」
紫「菫を待ちましょう。大丈夫よ、絶対助けに来てくれる」
太一郎「うん、そうだね」
暗転・明転
藤「二手に別れようってぇ、僕のこと見捨てる気ぃ…?!」
とう吉「んんん、もう、食べられない…」
藤「キャアアアア!!!」
藤「…じゃない、この人は…鬼かな…?」
藤「うぅぅ……何で僕が……」
とう吉「はっ!あ、すみません!聞いてませんでした!!」
藤「うわぁああ!!」
とう吉「…って、誰?この島にいるってことは…いやでも、見たことないやつだな」
藤「あ…えっと…最近ここに来ました、藤です」
とう吉「そっか、じゃあ見張り番変わってよ!」
藤「え?見張りって?」
とう吉「ここ。宝庫番。オレはとう吉、お前の先輩だから。」
藤「…はい、わかりました」
とう吉「あ、いいの?じゃ、オレ散歩行って来る。戻ってこないから、テキトーな時間になったら帰って良いよ」
藤、とう吉が行ったのを確認して、恐る恐る宝庫の戸を開ける
藤「うわぁ、キラキラしてる…これ、全部金かな…?」
日乃「!何奴!!」
藤「ひぃっっっ鬼?!??」
日乃「違う、お前こそ鬼じゃないのか?」
藤「僕は、藤…人間です」
日乃「……なぁ、何か食べるものを持っていないか、飢え死にそうなんだ…」
藤「食べるもの…甘ちゃんなら持ってるはずだけど…。」
藤「待って、何かあるかもしれない」
藤「あった!はい、これ。」
日乃「ありがとう、…(食べる)…これは…」
藤「和水さん特製のお団子です。僕らは吉備団子って呼んでますけど」
日乃「吉備団子?……おまえ、藤と言ったか」
藤「はい、」
日乃「頼む!お願いだ!いや、お願いします!!私を一緒に、桃太郎を…!!!」
藤「ヒィィイイッッッ?!?!おおおお落ち着いて!!……え…今、桃太郎と言いましたか?」
日乃「私は、私が弱いから………あの人は……」
藤「……話してくれませんか、その、桃兄のこと…。」
日乃「あぁ、…私は、桃太郎に救われた。恩を返すために共に戦ったんだ。」
日乃・①「鬼ヶ島に四人で上陸して、私たちは共に戦うことを約束した。」
①(日乃が語っているように)「おまえ達の兄の桃太郎、戌亥秀、雉村治子、そして私。」
①「私たちは何時間か戦い抜いて、ついに城の頂上へ辿り着いたんだ。」
桃太郎「お前が、鬼の長だな」
透子「ああ、そうだ。そして歓迎するよ、桃太郎。」
鬼たち、喝采。
桃太郎「…どういう意味だ。歓迎される覚えなんてないけど」
透子「覚えがないのは確かだろうなぁ」
秀「切りますか」
日乃「その方が手っ取り早いしな」
治子「いつでも…!」
百音「お前たちは帰っていいですよ。私たちが歓迎しているのは、桃太郎ただ一人」
桃太郎「お前たちに歓迎される謂れはないよ」
透子「しかし、お前…そちら側に付いていていいのか?戌亥秀」
秀「何故」
透子「桃太郎は、我らと同じく桃から生まれている。」
日乃「は?!」
治子「どういう…?」
桃太郎「…おい…待って、…どう言うことだ…!」
透子「そうだ……鬼がどこから生まれるか、お前らは知らないのだろう。答えは簡単だ。桃から生まれた力の強い人間が、鬼と呼ばれているだけ」
透子「お前たち、もう仕事へ戻れ。こいつらはもう永くないだろう」
秀「桃太郎さん、鬼なんですか?」
桃太郎「…俺は鬼じゃない」
秀「だからかあ、別にあなた鍛えていたわけじゃないですもんね」
桃太郎「秀?」
治子「…なんか、秀ちゃん、変…」
秀「鬼か。そうかなるほど。じゃあ殺す」
秀、桃太郎に切り掛かる。
桃太郎「な、何するんだよ!」
秀「俺は鬼を殺すために、将来有望なお前についていた。お前が鬼だと言うなら、ここで切る」
日乃「おい何を言っているんだ!桃太郎が悪いやつじゃないのは、お前も知っているだろう?!」
秀「お前は鬼の味方か?」
治子「秀ちゃん!!なんか、おかしい…いつもの秀ちゃんじゃねえ!!」
秀「いつもの戌亥秀なんて存在しない。俺にあるのは、将軍様から与えられた、役目のみだ」
将軍「秀、戌亥秀よ。お前に頼みたいことがある。」
秀「私に…ですか?」
将軍「あぁ。農民どもは知らんだろうが、ごく一部の武士どもが、鬼だなんだと騒ぎ立てている。」
秀「…」
将軍「戯言だと思うか?」
秀「はい、ただの迷信だと思います。」
将軍「そうであろう。しかし、これは事実なのだ。」
将軍「あと、そうだな、4、5年すれば目立って暴れ出すだろう。その鬼どもを始末する仕事を、お前にやろう」
秀「え、」
将軍「文句か?」
秀「いえ、そのような大きな仕事…いただいて良いのかと」
将軍「もちろんだ。何年かかろうと必ず果たせ。」
秀「は。」
秀「俺の仕事は、鬼を全員殺すこと。肩入れするならヒトでも切るぞ」
日乃「治子、逃げるぞ」
治子「逃げれんよ、だって秀ちゃんが…」
日乃「その秀ちゃんがお前に鋒を向けているんだぞ!!」
治子「いや…!!!」
治子、座り込む
日乃「私は行くからな!!」
百音「逃すな」
桃香・平太「了解!」
日乃、桃香、平太、走り去る
日乃「…と言うことがあったんだ。」
藤「なんてこと…!!」
日乃「治子を見捨てて逃げたのは後悔している、治子はきっと、今も港で…」
藤「………港?」
日乃「治子は船乗りだ。私たちが巻き込んだのが悪かったんだ。あの時も、『一度だけならいい』と桃太郎たちを乗せてきたらしい。私は、自分の命の恩人になんてことを…!!!」
藤「……はるこさんの苗字を、ご存知ですか」
日乃「…雉村のはずだ。雉村、治子…」
治子(声のみ)「仕方ねぇな、一回だけなら出しちゃってもいいよ」
治子(声のみ)「一度だけなら、私が舟を出しましょう。」
藤「……………なんて、救いのない話……。」
菫「はぁ…はぁ、チッ、ここはどこですか…鬼どもは巻きましたが、迷うだなんて…」
藤「す、菫!」
菫「あ?って藤!…と、その人は誰です?」
藤「忍者の日乃さんって人。兄さんの昔の仲間」
菫「どう言うことです?昔の?兄さんを裏切ったと?」
日乃「…それは、」
藤「(遮って)ちがう!…後で話す、とりあえず味方だよ。」
菫「わかりました。…とりあえず、紫と太一郎を助けに行きましょう。牢に入れられました」
藤「なんだって?!」
菫「日乃と言いましたか、二人を助け出します、手を貸して下さい。」
日乃「協力する。行こう。」
菫「こっちです。」
桃香「おっと?」
平太「逃すわけには行きませんよ」
日乃「貴様らは…」
平太「誰かと思えば、日乃どのじゃないですか!負け犬で腰抜けの、忍の恥!日乃どの!」
藤「これ以上この人を傷つけないで下さい!!」
日乃「いい、今はそんなことどうだっていい。…こいつらに時間を割く余裕はないのだろう?好きに暴れてくれ、合わせる」
桃香「暴れるほどの力が、お前らにあるかな?」
菫「舐められては困りますね。」
藤「僕らだってやる時はやるよ。」
二人「はぁっ!!」
アクション。倒れる平太と桃香
桃香「これでは…あのお方に顔向けができん…!!おい和田の!立て!」
平太「もう無理っす。ガチ無理っす。」
桃香「雑魚が…」
菫「行きましょう。」
二人「(返事)」
暗転・明転
倫太郎「…ここは…」
透子「ようやく来たか。待ちくたびれたぞ。お前が倫太郎か」
百音「お待ちしていました。」
倫太郎「…どう言う意味だ。」
透子「同志たるお前を歓迎するのはおかしいことか?」
倫太郎「…俺たちは人間だ。お前らとは違う」
透子「どこが?」
百音「強靭な体を持ち、強い力を持ち、そして桃や他の果実から生まれている。どこが違う?」
倫太郎「…違う」
透子「我々は…」
倫太郎「(遮って)違ぇんだよ!!」
透子「…私たちは同じだ。お前も、薄々察しているだろう?」
倫太郎「……違う」
百音「話の通じんやつだ。」
倫太郎「俺たちは、誰に何と言われようが、他人を傷つけたことなんて一度もねぇ。」
倫太郎「どうしようもないと割り切って、傷つけて殺し続けたお前らとは違う。」
倫太郎「俺たちは人間なんだよ。ただ生まれるところを間違えただけのな」
桃太郎「…。」
足音に気付き、桃太郎の方を向く。
倫太郎「…………桃?」
桃太郎「久しぶりだなぁ、倫。恋しかったよ、ずっと」
倫太郎「ふざけんな。説明しろ。」
桃太郎「えーとね。」
百音「話させるためにあなたを呼んだわけではありませんよ。」
桃太郎「…分かったよ。」
桃太郎「別の部屋でいいか?」
透子「ああ、好きにしろ。」
桃太郎「来いよ、倫。お前も話したいことあるだろ」
倫太郎「…おい、待て!!」
桃太郎「…来いって。」
倫太郎「………てめぇ…!!」
暗転・明転
倫太郎「どう言うつもりだ。鬼に肩入れしてんじゃねぇよ!!」
桃太郎「肩入れじゃない。守ってるだけだよ。俺がここにいた数週間の間に、八回も人間が攻め込んできた。」
倫太郎「お前は人間だ。俺も、弟たちも妹たちも」
桃太郎「どうかな…実際、僕らは村では恐れられていた。」
倫太郎「……何言ってんだよ。あんなに良くしてもらったのを忘れたか?…帰るぞって言ってんだよ。来い。」
桃太郎「帰らないよ。みんなで帰ればいい」
倫太郎「…じゃあ構えろ、考え直させてやる」
桃太郎「随分デカい口叩くようになったな。お前の兄が誰か、思い出させてやるよ」
アクション 途中まで
倫太郎「お前は人間なんだよ!!どこまで行っても、俺らの家族なんだよ!!」
桃太郎「人間は暴れすぎた。我が物顔で少数を虐げる時代は終わりにした方がいいんだ」
アクション 吹き飛ばされる倫太郎
桃太郎「どうした、前より弱くなったんじゃないか?」
倫太郎「お前こそ…、喋ってる余裕、あんのかよ」
アクション 途中まで
桃太郎「俺たちは家族なんだよ。俺はみんなを守りたいだけ」
倫太郎「…何が守るだ、俺たちを捨てて安寧をとったくせに」
桃太郎「…だから、ここでみんなで暮らそうって、言ってんじゃん。もういいよ。降伏しろよ。」
倫太郎「黙れ。…俺が負けるわけには行かねえんだよ、後ろに何人も、俺を信じてくれてる兄弟がいる。お前と違って、一人じゃねえからな…」
暗転・明転
日乃「…と言うことなんだ。」
太一郎「なるほど…」
紫「兄さんが裏切るだなんて…!」
菫「…元から、そう言う気質だったのかもしれません。」
藤「そんなわけないよ。兄さんは兄さんだもん、きっと何か理由がある」
菫「いいえ。裏切るとかそう言う話ではありません。……境遇が同じとなれば、鬼側についてもおかしくはないと思います。元々、仲間意識が強い人ですし」
日乃「桃太郎がその後どうなったのかはわからん。すぐに逃げてしまったからな。」
太一郎「…兄さんを信じよう。」
甘太郎「あ、み~んな~」
日乃「誰だ!」
紫「大丈夫、味方よ」
甘太郎「ん?誰~?」
日乃「忍の日乃だ。」
甘太郎「かんたろ~だよ!」
藤「甘ちゃん、あの、(治子のことを聞こうとして、言葉に詰まる)」
甘太郎「だいじょーぶ!雉村さんもちゃ~んと連れてきたよぉ!」
日乃「治子…?治子ッ!!!」
治子「ひ、ひーちゃん…!」
日乃「なんでここに…!!」
甘太郎「門番の鬼の前で、倒れてたんだ~」
日乃「なんで…何してるんだよ!何で戻ってきた!」
治子「助けたかったから……みんなを……」
日乃「馬鹿…」
日乃「…………良かった………!!(治子を抱きしめる)」
紫「これで、倫兄さん以外は全員揃ったわね。頂上を目指そう。」
治子「待ってください。…あたしはいけません…」
太一郎「ならどこか、休める場所を…。」
治子「秀ちゃんところに行かんとだめなんです。ここまで一緒に来てくれてありがとうございました、助けてくれたことも感謝してます。でも行かなきゃ…!!」
菫「…では、ここで別れましょうか。私たちは上へ行きます。しゅうさんを助けたら、船着場で待っていてもらえますか?」
治子「…はい、必ず。…それと、桃太郎さんをよろしくお願いします。」
紫「当たり前よ。」
日乃「…私も、治子と共に行ってもいいか」
藤「もちろんです、行ってください」
太一郎「あなたたちのお仲間、助けられるといいですね。」
日乃「…心遣い感謝する。」
日乃「行こう、治子」
治子「うん、ひーちゃん」
二人、去る
紫「さて!私たちは迎えに行きましょう。きっと倫兄さんが上で待ってる」
菫「はい。」
藤「急ごう、日没が近いから」
太一郎「ああ。何やら嫌な予感がする」
甘太郎「僕も~…」
菫「ついてきてください。道を覚えました」
一同(返事)
暗転・明転
日乃「本当にこんなところにあいつがいるのか?」
治子「わからん…鬼から聞いた話やから、違うかも…でも、きっとこの島にはいると思う。」
日乃「信じるぞ。」
日乃「…何者だ!!」
治子「な、なに?!」
日乃「…誰かいる…私たちに殺意を向けてる…、」
秀「久しぶり、二人とも」
日乃「秀!!」
治子「秀ちゃん…」
秀「なぁ、治子。俺思い直したよ、変われたと思う。三人には悪いことした。…今からじゃやり直せないかな?」
日乃「耳を貸すな!コイツは何か隠してる!」
治子「分かってる。…でも、話したいことがあるの」
日乃「治子!!」
秀「なら、俺と…」
治子「(遮って)違うの。もういいよ、それ。あたしが今話したいのは、その秀ちゃんじゃないよ…」
日乃「治子…?何をしようと。」
治子「あたしは、秀ちゃんのことを許す気はないよ。私たちを傷つけた、最低な人やしな」
治子「…………ねぇ、何があったの?」
秀「…ははっ、馬鹿は変わっていないみたいだな」
秀「俺に何があったかって?今に分からせてやるよ」
治子に襲いかかる秀。(刀は抜かず)
治子を庇い武器で受ける日乃。
日乃「素手で受けるとはな。」
秀「…。」
治子「…ねぇ、血が……ほとんど出てない…!!」
日乃「なんだと?」
秀「鬼どもに妙な施術をされた。もう、人じゃないんだろうな、私も。鬼を全員殺して俺も死ぬんだよ。桃太郎はどこだ?お前たちがいるなら、どこかで永らえてるんだろう?」
日乃「桃太郎を救いに、その兄弟たちがきた。私たちは彼らに救われたんだ。」
秀「兄弟?ならそれも消す。退け、もしくは共に来い」
秀「…なぁ、お前は俺に味方してくれるよな、」
治子「…冗談言わないで。私は、秀ちゃんと蹴りをつけにきた。」
秀「…は?」
治子「ひーちゃん、手伝って。」
日乃「当たり前だ。」
秀「…(落胆して)そうか…では、まずはお前らからだな。」
二人「やってみろ!!」
アクション。うつ伏せに倒れる秀。
秀「くそ…!」
日乃「鬼だからといって、疲れがないわけじゃないのか」
治子「うん。それはもう試した」
秀「…殺せよ。」
日乃「船着場に行こう、3人でだ。」
秀「殺せよ!!散々踏み躙っただろお前らを!!あいつのことも襲ったし、俺のことは恨んでるはずだろ!!早く殺せよ!!」
日乃「…。」
秀「…このために、恨まれたんだよ…!!殺してくれ………!!!!」
日乃「その通り、お前は私たちを裏切った。恨んでいないわけがない。…詫びて生きろ、秀」
治子「行こう、ひーちゃん。秀ちゃんも早く立って」
日乃「置いてくぞ、裏切り者」
秀「………。」
暗転・明転
倫太郎と桃太郎が刀を重ねている。
倫太郎「はぁ、はぁ………!!」
桃太郎「そろそろ諦めろよ、もう疲れただろ?」
紫「居た!!」
藤「え、た、戦ってる…?」
菫「二人ともなにをしているのですか?!」
倫太郎「下がれ。邪魔するな」
桃太郎「…」
桃太郎「そろそろ諦めろって言ってんだろ、倫。」
桃太郎、倫太郎を弾き飛ばす。
倫太郎「うっせぇな…」
紫「桃兄さんから全部聞いた、加勢するわ」
倫太郎「黙れ…、俺の喧嘩なんだよ…」
桃太郎「いい加減にして」
桃太郎、倫太郎の刀を弾き飛ばす
桃太郎「みんな…帰って。もう疲れたよ。」
倫太郎「ふざけんな…!!」
太一郎「待って兄さん!なんで、どうしてそこまで拘るんだよ!僕らと一緒に帰るだけだろ?!」
桃太郎「………もう、無理なんだよ」
桃太郎「みんな見殺しにしたよ。みんな裏切ったし、裏切られたよ。信じてた親友すら、…嘘だったんだ。何もなかったんだ。鬼を退治しに来た人たちを何人も何人も殺して殺して殺して殺して…みんな自分なりの正義のはずだったのになぁ…もう俺はどこにも居られないよ。ここに居るしかない。」
桃太郎「秀も、雉村さんも、日乃も、………もう全部失った」
桃太郎「もう何人も斬ってるんだよ!!俺だけ都合良くヒトに戻れないだろ!!」
紫「……………この分からず屋!!!!」
紫が桃太郎の胸ぐらを掴む。
紫「生きてるわよ!!船乗りさんも忍者の子も!!」
桃太郎「……………………は…?」
紫「二人とも前向きにっ…戦おうと立ち上がって!!それを……あんたが……勝手に裏切ったとか言ってんじゃないわよ!!!」
桃太郎「食い気味で)生きてる?どこで?会ったの?二人とも?」
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甘太郎「戦わずに帰ったらいいんだよ~!」
百音「そうは行きませんよ」
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倫太郎「お前ら下がれ!」
百音「いいのか?兄弟達を下がらせて。貴様程度で我らの王に敵うとでも?」
倫太郎「…だから、何なんだよ…」
倫太郎「妹と弟が構えてるのに…俺が引けるわけねぇだろうが」
透子「良い心意気だな。相手をしてやろう」
アクション。うずくまる倫太郎
近寄る透子
藤「やめろ!」
透子に切り掛かる藤
透子「お前もやるか?」
藤「みんなも何やってるんだよ!なんで倫兄さんがやられるとこ黙ってみてるんだよ!!」
藤「負けそう?怖い?関係ないでしょ、違う?!」
百音に刺されて崩れる藤
菫「藤!!」
百音「一人ずつ殺して行く。死にたい者から前へ出ろ」
透子「百音!殺すのは話が違うでしょ」
百音「どうして?私たちの国のため、ですよ」
百音「鬼だろうと人だろうとそれ以外だろうと、規律を乱す奴がいるなら消せばいい違いますか?」
透子「……。」
紫・菫「はぁっ!」
紫が透子、菫が百音に同時に切り掛かる
菫は百音に蹴り飛ばされる
百音「雑魚が」
紫「菫!」
透子を振り払い菫を庇う
透子「百音!」
甘太郎「やめろ!」
百音に切り掛かる
甘太郎「(太一郎に)お前も動け!甘ったれ!!」
太一郎「あ、ああ!」
透子に切り掛かる
紫「さっきから…貴方の主人と意見が食い違ってるみたいだけど?」
百音「ええ、…だって、透子は知りませんから…」
甘太郎「何を?」
百音「裏切りの、恐ろしさを。」
百音「透子に出会う前にも、私には鬼の仲間がいました。でもそれは、あろうことか自分を人だと偽り、私を売ったのだ!!」
百音「私はあいつが許せない!!今やヒトの頂点まで上り詰め、国を支配しているあいつが!!!」
百音「だからもっと硬い絆で結んだんだ!!決まりも作って、もう二度と裏切られないように!!!」
甘太郎「決まりを守るのに必死で、大事なあの人の顔すら見えてないみたいだけどね。本当に硬い絆で結ばれてると思ってんの?」
百音「…は?」
甘太郎「あんたさ、僕たちの攻撃から一度でもあの人のこと庇ったことある?」
甘太郎「相手が強いと分かってても、勝てる相手でも、相手のことを心から信じてるにしても、一度でもあの人のこと心配したことあるの?」
甘太郎「…………それってさ、ただ強い人を利用してるだけなんじゃないの」
百音「利用?私が?そんな訳ないでしょう。透子のために全てを捧げた私が利用しているだなんて。酷い話にも程があるでしょう」
百音「私は透子の願いは何でも叶えて上げたのですから。利用するつもりならそこまでしなくても良いでしょう」
紫「透子さんのお母さんを酷い目に合わせた癖に?」
百音「…。」
紫「硬い絆で結んだ、ね。その言い方だと、あなたが殺したみたいだけど。違う?」
紫「桃から聞いたのよ、透子さんの過去の話。しかもさっきから、私たちを本気で殺そうとしてるのは貴方の方」
百音「…。」
紫「嘘でも否定したらどうなの」
透子「え、…百音…?うそ、だって…」
紫「…さっきから、あなたの話って『してあげた』とか、『裏切る』とか、…鬼の長って、あなたなんじゃないの?」
紫「その人を操って、鬼の国を築き上げたのは、あなた。」
紫「全てを捧げた…だなんて、本気で言ってるなら勘違いも甚だしいわ」
百音「…すべては、私たちが虐げられない世界のためです。私の七年間を、すべて捧げました。目的はどうあれ、私が尽くしてきたのは事実でしょう。それを今、敵の言った信用ならない話のために捨てるのですか?」
透子「…うそ、」
百音「前のあなたならばそんなことで迷ったりしなかったのに。私を信じてくれないだなんて。何がいけなかったんですか?私が何か間違えたとでも?」
透子「嘘だ、……私たち親友だねって、言ってくれたのに」
百音「それは…」
甘太郎、(言葉を遮るために)百音を切る
百音「…おまえ…!!」
甘太郎「ごめん」
甘太郎「…聞きたくないかと思って」
透子「百ちゃん……(泣き出す)」
皆、色々なものを噛み締めて、黙り込む。
紫「………菫、大丈夫?」
菫「私よりも、藤と倫が心配です」
倫太郎「…何ともねぇよ。」
菫「藤…、藤!」
藤「大丈夫、生きてる、よ」
倫太郎「…桃、おい、桃!帰るぞ。」
太一郎「僕が背負うよ」
紫「…この人、連れて行きましょう」
太一郎「え?」
紫「え?って何よ」
太一郎「良いのかな?この人、」
倫太郎「良いんだよ。……黙って介抱してやれ」
甘太郎「掴まって~」
藤「僕も手伝、(咳込む)」
菫「黙ってなさい!貴方が一番重症なんですよ?!」
桃太郎「百音……さん、」
倫太郎「やめろ。あいつは…俺たちと一緒に来るだなんて、望んでねぇだろ」
紫「行くわよ。甘ちゃん、その人ちゃんと支えてあげて」
甘太郎「うん。」
ぽつりぽつりはけていく。
暗転・明転
治子「よかった…みんな…無事で…!!」
日乃「…それは、鬼の長の女ではないのか」
甘太郎「そうだよ~。」
桃太郎「秀…………」
秀「触ら……触るな(と言いつつ、泣いている秀)」
桃太郎「……」
甘太郎「感動の再会ってやつ?」
菫「そんな優しいもんですかね?」
治子「…って、みんな傷だらけで…治療、治療しますから、酷い人から…」
紫「藤の治療をお願いしても?」
治子「見せて下さい」
倫太郎「…おい、あんた。ついてきたきゃ着いてこい。ここに残りたきゃ勝手に残れ」
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日乃「いい…私は忍だ」
甘太郎「ばいば~い。」
治子「秀ちゃん、」
秀「…」
治子「…分かった。あんたは頑固やからねぇ」
菫「………船を出していただけますか?」
治子「うん。」
倫太郎「………帰るぞ。」
一同「(それぞれ返事)」
桃鬼伝説 終わり
10
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