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5 惚れ薬って横行してるものなのかしら

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「まぁ、身体に悪いのは悪いんだけど……どちらかというと精神にかね? そのせいでやり直してるんだろう?」

「はい……、私、嫉妬のあまりに……その、他人に刃物を向けてしまって」

 お祖母様の口調は軽いが、やり直しとはいえ私は自分のやった事を恥じていた。小さくなって正直に話すと、お祖母様はかかと笑って流してくれた。

「ほほ、そういう劇薬なんだよ。まぁ、惚れ薬でニアのことを繋ぎ止めておきたい位、ミストの所の坊主はあんたに入れ込んでいた。……たぶん、他の誰かも惚れ薬を使ったんだろうね。ミストの所の坊主に。そのままの未来を受け入れていたら、ミストの坊主の心も2つに裂けていただろうねぇ」

 私の心は裂けたりしなかった。私はなんだかんだ、グレアム様が好きだった。……婚前から浮気する男を好きでいられるわけがないので、さらに言えば婚約者に惚れ薬を飲ませる男を好きでいられるわけもなく、私の中にグレアム様への好意はなくなっているけれど。

 そんなゆっくりとカップを傾けながら話すことではない。と、思うが祖母からしたら既に孫が『やり直して』いるのだから、惚れ薬の一つや二つ、そこまで驚くことではないのかもしれない。

「惚れ薬って……そんなに横行しているものなんですか?」

「普通はないね。ふむ……薬学に詳しい家系だとか、材料が揃うような領地なら手に入れるのも作るのも難しい薬じゃない。違法にもあたっていないしね、精神に作用する薬なんてのは……あまり信用されていない」

 しかし、効果はてきめんだった。私が長い事飲まされた続けていたのもあるかもしれないけれど、アリアナ嬢にグレアム様を取られたのが本当に憎かった。

 あんなものが横行していいはずはない。とはいえ、私は巻き戻ってしまったから証拠にならないし……。

 真剣に考えていると、お祖母様がヒントをくれた。

「何も惚れ薬を一人に使ったとは限らない。一人で何もかも解決しなくていいんだよ、あんたは先を知っている。仲間を集めなさい」

「お祖母様……!」

「ほほ、今度は普通の茶菓子でお茶にしようじゃないか。とりあえず、このクッキーは……勿体ないけど、捨てるか……本人に突きつけて惚れ薬の入手先を吐かせてもいいねぇ」

「それです! お祖母様、ありがとうございます! 今度、美味しいパウンドケーキを焼きますね」

「楽しみにしているよ。全部終わったら、またおいで」

「はい!」

 私はお祖母様にお礼を言ってクッキーを持って部屋に帰った。途中、台所におやつとお茶をお願いして部屋に戻る。

 頭の中を整理して、ちゃんと作戦をたてるためには、アリサの協力は必要不可欠だ。

 甘い物と一緒に、この劇薬クッキーの効果的な使い方を2人で考えなければ。

 お祖母様、そして今は亡きお祖父様、孫は今度は間違えません!
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