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9 『魔力タンク』
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ダンジョンに潜ったのは、ノアを含めて10名。全員SかA級で、5人パーティと4人パーティにノアが混ざった形だ。
このメンツなら特に不安なくダンジョンクリアできるだろう、と思いながらも、メンツを見ると、タンク役が2人、前衛職が4人、中距離の攻撃が2人、回復魔法の使える僧侶が1人という組み合わせだ。なるほど、ノアを魔法職として後方に入れるわけである。
ダンジョン内部はほんのりと光る壁でできた洞窟になっていて、ダンジョン自体が強い魔力を帯びているからだと言われている。
ノアは少し考えた。スケルトンやゾンビなどの不死者系の魔物なら今の編成で問題ないが、死霊系の魔物が外に出ていていた。
物理では突破できない可能性もあるし、タンク役に任せるよりも、ノアがタンクを務めた方が効率よく進めると考えた。
「皆、すまない、冒険者のノアといいます。あの、君らをみくびっている訳じゃ無いんだけど、楽に先に進むために先頭は私が行ってもいいだろうか?」
因みに、ダンジョンの中は龍穴の中だという事は、ノアは知っている。ダンジョンの仕組み……唐突に現れては魔物を吐き出そうとするのか。
それは、地脈に流れるエネルギーが龍穴になりかけた所で滞留し、堪えきれずに空間が裂けてしまう、らしい。ノアも、レイに聞いた話だが、たぶん合っているんだろうなと思っている。
ノアの申し出にタンク役の二人が顔を顰める。ノアは盾を持っていない。なのに、自分たちの仕事を奪うのか、という気持ちなのだろう。
「ドロップしたアイテムや素材は君らが拾ってくれ。私ならトラップにも気付ける。外に死霊系の魔物がいたのは見ただろう? 攻撃魔法が使えるのは私だけのようだし、でしゃばった真似だと思うが譲ってくれないか」
そこまで言われると、確かにタンク役にはノアが相応しいかもしれない、という気持ちが強くなったらしい。
また、物理系の敵が出てきた時には自分たちが前に出ればいいと思って、タンク役の2人が頷いてくれた。
「あんたが凄いのは分かっている、ゴールデン・ウィザード……いや、ノア。俺たちもそれなりに経験を積んできた冒険者だ。キツくなったら頼ってくれ」
「あぁ。ノアが前を守るなら、俺たちはしんがりを務める。無理はするなよ」
龍穴の中にいてノアの力が尽きることはまず無いのだが、そこは言わない。優しく温かい言葉に、ありがとうございます、と丁寧に頭を下げて先頭に立った。
背後の皆さんには非常に申し訳ない気もするが、ノアが今からする事はただ歩くだけで敵を殲滅する、という方法だ。
たぶん、出番がないだろう。できるだけ美味しいドロップアイテムが出てくれることを祈るのみだ。
ノアの戦闘能力は、もともと武器の扱いに関しては天賦の才があったが、本来ならば『泥の血』である。
しかし、『星の力』を自由自在に操るノアは、レイも認める最強である。戦士でも、魔法使いでもない。ただ、最強。
ノアが一度しゃがんでダンジョンの床に手をつく。龍穴のできそこないと繋がっている感触、このダンジョンの魔力もノアに『懐いている』一部だ。
そのまま、立ち上がって腕を大きく振り上げると、半透明の金色の膜ができあがった。
「これが、俺の盾です。万が一討ち漏らしがあったらお願いしますが、たぶん無いので、探索とアイテムを拾うのに専念してください。ボス部屋を真っ直ぐ目指します」
ノアの床から天井まで張られた魔力の膜は、冒険者たちからしても規格外がすぎて、もはや何も言えない。
丁寧に会釈したノアが、行きますと言って歩を前に進める。
彼らは自分たちの出番がないことをさっさと悟り、精々後ろにだけ気をつけながら、ノアの後ろをついていった。
このメンツなら特に不安なくダンジョンクリアできるだろう、と思いながらも、メンツを見ると、タンク役が2人、前衛職が4人、中距離の攻撃が2人、回復魔法の使える僧侶が1人という組み合わせだ。なるほど、ノアを魔法職として後方に入れるわけである。
ダンジョン内部はほんのりと光る壁でできた洞窟になっていて、ダンジョン自体が強い魔力を帯びているからだと言われている。
ノアは少し考えた。スケルトンやゾンビなどの不死者系の魔物なら今の編成で問題ないが、死霊系の魔物が外に出ていていた。
物理では突破できない可能性もあるし、タンク役に任せるよりも、ノアがタンクを務めた方が効率よく進めると考えた。
「皆、すまない、冒険者のノアといいます。あの、君らをみくびっている訳じゃ無いんだけど、楽に先に進むために先頭は私が行ってもいいだろうか?」
因みに、ダンジョンの中は龍穴の中だという事は、ノアは知っている。ダンジョンの仕組み……唐突に現れては魔物を吐き出そうとするのか。
それは、地脈に流れるエネルギーが龍穴になりかけた所で滞留し、堪えきれずに空間が裂けてしまう、らしい。ノアも、レイに聞いた話だが、たぶん合っているんだろうなと思っている。
ノアの申し出にタンク役の二人が顔を顰める。ノアは盾を持っていない。なのに、自分たちの仕事を奪うのか、という気持ちなのだろう。
「ドロップしたアイテムや素材は君らが拾ってくれ。私ならトラップにも気付ける。外に死霊系の魔物がいたのは見ただろう? 攻撃魔法が使えるのは私だけのようだし、でしゃばった真似だと思うが譲ってくれないか」
そこまで言われると、確かにタンク役にはノアが相応しいかもしれない、という気持ちが強くなったらしい。
また、物理系の敵が出てきた時には自分たちが前に出ればいいと思って、タンク役の2人が頷いてくれた。
「あんたが凄いのは分かっている、ゴールデン・ウィザード……いや、ノア。俺たちもそれなりに経験を積んできた冒険者だ。キツくなったら頼ってくれ」
「あぁ。ノアが前を守るなら、俺たちはしんがりを務める。無理はするなよ」
龍穴の中にいてノアの力が尽きることはまず無いのだが、そこは言わない。優しく温かい言葉に、ありがとうございます、と丁寧に頭を下げて先頭に立った。
背後の皆さんには非常に申し訳ない気もするが、ノアが今からする事はただ歩くだけで敵を殲滅する、という方法だ。
たぶん、出番がないだろう。できるだけ美味しいドロップアイテムが出てくれることを祈るのみだ。
ノアの戦闘能力は、もともと武器の扱いに関しては天賦の才があったが、本来ならば『泥の血』である。
しかし、『星の力』を自由自在に操るノアは、レイも認める最強である。戦士でも、魔法使いでもない。ただ、最強。
ノアが一度しゃがんでダンジョンの床に手をつく。龍穴のできそこないと繋がっている感触、このダンジョンの魔力もノアに『懐いている』一部だ。
そのまま、立ち上がって腕を大きく振り上げると、半透明の金色の膜ができあがった。
「これが、俺の盾です。万が一討ち漏らしがあったらお願いしますが、たぶん無いので、探索とアイテムを拾うのに専念してください。ボス部屋を真っ直ぐ目指します」
ノアの床から天井まで張られた魔力の膜は、冒険者たちからしても規格外がすぎて、もはや何も言えない。
丁寧に会釈したノアが、行きますと言って歩を前に進める。
彼らは自分たちの出番がないことをさっさと悟り、精々後ろにだけ気をつけながら、ノアの後ろをついていった。
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