【序章完結】魔力が無いと言われた青年、世界唯一の地脈使いでした〜攻撃・支援・回復なんでもこなす最強の傭兵は王にのみ忠誠を誓う〜

葉桜鹿乃

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8 『ダンジョンブレイク』

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 乗り合い馬車は10台にも渡り、100名近い冒険者をダンジョンの元へ運んだ。

 ノアも混ざって時々談笑に混ざったが、冒険者の形をしていても、長年の貴族暮らしと王宮での暮らしで話し言葉が丁寧だ。

 魔法を使えるのは貴族と決まっているので、周りもそれ程気にしなかった。合わせて丁寧に喋るわけでもなく、ノアに硬いと言うわけでもなく。それは、ノアにとってはありがたかった。

 ダンジョンは、空間に入った亀裂に作られる。体感時間は外と一緒で、ダンジョンが現れて3週間以内にクリアしなければ、ダンジョンブレイクが起こる。

 亀裂の中は高濃度の魔力に満ちていて、魔物もレベルが高い。ダンジョンが現れやすい場所は、そもそも魔力濃度が高い場所なので、冒険者はダンジョンを見つけやすく、周辺の魔物のレベルや種類が変わってきたらダンジョンブレイクが近いしるしだ。

 亀裂が大きく裂けて魔物が溢れ出す。

 それを避けるには、見つけたダンジョンに入り、ダンジョンボスと呼ばれる魔物を倒し、ダンジョンコアを持ち出す必要がある。ダンジョンコアは魔力の結晶で、その大きさでダンジョンの難易度が変わる。

 冒険者はダンジョンを見つけたら即座にギルドに報告をあげる。周辺の魔物の様子から、そのままクリアできそうならダンジョンに入ってクリアを目指してもいい。ただ、その時に死んだら……ギルドがパーティを指名するか、こうして大規模戦闘となる。

 ダンジョン前に着くと、すでに周辺の魔物はダンジョン内の魔物と置き換わっていた。

 中には霊体系の魔物もいる。物理攻撃が効かない厄介な魔物だ。

 ノアは外で魔物を倒す90名近い人数をギルドマスターに呼んでもらった。

「皆さんの武器に聖属性のエンチャントをします。これも効果は一日、倒せない時には深追いしないでください」

 いうが早いか、ノアは無詠唱でまた範囲魔法を使った。片手を軽くあげただけのように見えるのに、金色の魔力の範囲に集まった人間の武器に聖属性の魔法が掛かっている。

 これで霊体系に物理が効くはずだ。

「では、中に行ってきます。皆さんご無事で」

 丁寧に言ったノアは、ダンジョン攻略班の方へ走っていった。

「あの人一人いれば……、もしかして、私たちいらなかったんじゃない?」

「あぁ、まったく……魔法使いも極めるとあぁなのかね?」

「でも武器も持ってたよね……、何者なんだろう、ゴールデン・ウィザード」

 ザワザワと噂話で持ちきりになる冒険者たちに、ギルドマスターは苦笑いして手を叩いた。

「ほら! 効果時間は1日、キリキリやらねぇと終わらないぞ! 早く終わったらゴールデン・ウィザードの話をしてやる、いけ!」

 そのご褒美はどんな報酬より魅力的だった事だろう。

 ギルドマスターは頰をかいて、ダンジョンの現れた周辺の森に散っていったパーティを見送った。

 自分が知ってるのも噂程度の話だが、ギルドマスターは横の繋がりがある。

 素性までは知らないが、ゴールデン・ウィザードの武勇伝は数知れない。

 ダンジョンに潜っていったノアたちを見つめ、自分はギルド職員と一緒に馬車のお守りに専念した。
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