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7 『多重支援魔法展開』
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町外れの人気のない裏通りに姿を現したノアは、さり気なく人通りに混ざって冒険者ギルドを目指した。
特に人通りが多い。しかも、ノアと同じように武装した冒険者の姿が。
地脈の力でノアは地脈のつながっている場所ならば即座に移動できる。同時に、地脈の通っている場所の景色も見渡せる。人に見つかることも無いし、地脈と繋がって一番便利だと感じたのはこの機能だった。
遅刻の心配はしていなかったが、これだけ参加するなら余り来た意味は無かったかもしれないと、冒険者たちを見て思う。
冒険者ギルドに着いて、レイが作らせたS級ギルド証を提示し、今日の大規模戦闘への参加を希望した。
当初は苦労もしたが、最初からS級で無ければ好きに見て回れないだろう? というレイのありがたくもスパルタな言葉によって、ノアは無名のS級冒険者として活動を初め、今は二つ名で呼ばれるほどになった。
記入用紙にはドラコニアとは書かず、ただのノアと書き、剣と弓に丸をつけて、備考欄に支援・回復・攻撃魔法と書き加えておく。
できる事を書いておかないと、配備の時に困る。大規模戦闘は人が多い筈だから、魔法が使える人材もいるはずだが、確実に後方支援に回されるだろう。
平民の冒険者の中には魔法に近い、『気』という力を練り上げて『スキル』として使う人間もいる。大抵は前衛職だ。
レイが言うには、気は大気中のエネルギーを使う技で、魔法は体内の魔力を使う技、地脈と繋がったノアはこの力をなんと呼んでいいか分からず、とりあえずの仮称として『星の力』と呼んでいる。まぁ、他人の前では魔法であり、時に気であり、どういう方向に扱ってもいいのは便利だと考えていた。
大規模戦闘に参加する冒険者はギルド裏の演習場で班わけされた。
ノアは予想通り後方支援だったが、A級とS級の混ざったダンジョン突入組に仕分けされた。
ダンジョンブレイクは起こりかけている。外にいる魔物も強いし、素材もいいものが手に入る。
パーティを組んで狩るB級C級のメンツに、保険として魔法の使えるA級が混ぜられていた。
「全員、役割は理解したか。ダンジョンの亀裂は大きくなり、少なからかず魔物が出てきている。人里からは幸いそんなに近い場所ではない。今日は外に出てきた魔物の掃討、および、突入班はダンジョンクリアを目指してくれ。以上だ、それでは馬車に乗り込むように……、なんだ?」
ギルドマスターの言葉の最後に、ノアは手を挙げた。今はとてもちょうどいい、全員が集まっている。
「私は支援魔法が使えます。今、ここに全員が集まっているので、支援魔法の使用を許可してもらえますか?」
「それは構わないが……この人数だぞ? それに、移動先は馬車で30分はかかる」
「問題ありません。効果時間は1日続きます。死傷者はいない方がいいでしょう?」
「君は……あぁ、『ゴールデン・ウィザード』か! それなら頼もう。実績のある冒険者の参加はとてもありがたい」
ありがとうございます、とお礼を言って、新人の訳がわからなそうな冒険者や、あの『ゴールデン・ウィザード』か、と訳知り顔のベテランにまで届くように、ノアは範囲指定をした。
各個人に支援魔法をかけると、それは時間がかかる。だからノアは、基本的には範囲で魔法を掛ける。細かいコントロールも習ったが、ノアが扱うのは『星の力』だ。コントロールの方が疲れます、とレイに言った時には苦笑いされた。
「【防御力増強】【攻撃力増強】【状態異常抵抗力増強】【反射速度増強】【自動回復効果付与】の、うーん……【五重】」
少しざわついていた冒険者たちの足元が光ると、ノアの指定した範囲に多重支援魔法が掛かった。
それは種類でもあり、重ねた魔法の数でもある。
支援魔法はその名の通り支援なので、本来の能力値を少し補佐するのだが、ノアの場合魔力の代わりに使っているのは『星の力』だ。地脈から吸い上げて反映させる、だからノアの魔力は無尽蔵であり、広範囲に渡って支援の域を超えた力を与える事が可能になっている。
ノアの二つ名は、魔法を使う時に独特の金色の光が現れる事からそう言われる。また、その能力の特異さと無尽蔵な魔力から、貴重と言う意味でのゴールデンでもある。
「今皆さんの体感ではレベルが10は上がった状態になっています。効果時間は1日。それが過ぎたら元に戻るので、味を占めて危険な依頼に手を出したり、魔物に手を出さないようにお願いします。——お時間いただきました。いきましょう」
「あ、あぁ」
ギルドマスターも自分の体の軽さに驚いているようだった。
ノアは丁寧で、人の役に立つ事を厭わないが、全ての忠誠はレイにある。
レイが大事にしている民だから、ノアは大事にする。
簡単な事だった。ノアは、レイが自分をここに寄越したのは、誰も死なせるな、という意味だと知っている。
特に人通りが多い。しかも、ノアと同じように武装した冒険者の姿が。
地脈の力でノアは地脈のつながっている場所ならば即座に移動できる。同時に、地脈の通っている場所の景色も見渡せる。人に見つかることも無いし、地脈と繋がって一番便利だと感じたのはこの機能だった。
遅刻の心配はしていなかったが、これだけ参加するなら余り来た意味は無かったかもしれないと、冒険者たちを見て思う。
冒険者ギルドに着いて、レイが作らせたS級ギルド証を提示し、今日の大規模戦闘への参加を希望した。
当初は苦労もしたが、最初からS級で無ければ好きに見て回れないだろう? というレイのありがたくもスパルタな言葉によって、ノアは無名のS級冒険者として活動を初め、今は二つ名で呼ばれるほどになった。
記入用紙にはドラコニアとは書かず、ただのノアと書き、剣と弓に丸をつけて、備考欄に支援・回復・攻撃魔法と書き加えておく。
できる事を書いておかないと、配備の時に困る。大規模戦闘は人が多い筈だから、魔法が使える人材もいるはずだが、確実に後方支援に回されるだろう。
平民の冒険者の中には魔法に近い、『気』という力を練り上げて『スキル』として使う人間もいる。大抵は前衛職だ。
レイが言うには、気は大気中のエネルギーを使う技で、魔法は体内の魔力を使う技、地脈と繋がったノアはこの力をなんと呼んでいいか分からず、とりあえずの仮称として『星の力』と呼んでいる。まぁ、他人の前では魔法であり、時に気であり、どういう方向に扱ってもいいのは便利だと考えていた。
大規模戦闘に参加する冒険者はギルド裏の演習場で班わけされた。
ノアは予想通り後方支援だったが、A級とS級の混ざったダンジョン突入組に仕分けされた。
ダンジョンブレイクは起こりかけている。外にいる魔物も強いし、素材もいいものが手に入る。
パーティを組んで狩るB級C級のメンツに、保険として魔法の使えるA級が混ぜられていた。
「全員、役割は理解したか。ダンジョンの亀裂は大きくなり、少なからかず魔物が出てきている。人里からは幸いそんなに近い場所ではない。今日は外に出てきた魔物の掃討、および、突入班はダンジョンクリアを目指してくれ。以上だ、それでは馬車に乗り込むように……、なんだ?」
ギルドマスターの言葉の最後に、ノアは手を挙げた。今はとてもちょうどいい、全員が集まっている。
「私は支援魔法が使えます。今、ここに全員が集まっているので、支援魔法の使用を許可してもらえますか?」
「それは構わないが……この人数だぞ? それに、移動先は馬車で30分はかかる」
「問題ありません。効果時間は1日続きます。死傷者はいない方がいいでしょう?」
「君は……あぁ、『ゴールデン・ウィザード』か! それなら頼もう。実績のある冒険者の参加はとてもありがたい」
ありがとうございます、とお礼を言って、新人の訳がわからなそうな冒険者や、あの『ゴールデン・ウィザード』か、と訳知り顔のベテランにまで届くように、ノアは範囲指定をした。
各個人に支援魔法をかけると、それは時間がかかる。だからノアは、基本的には範囲で魔法を掛ける。細かいコントロールも習ったが、ノアが扱うのは『星の力』だ。コントロールの方が疲れます、とレイに言った時には苦笑いされた。
「【防御力増強】【攻撃力増強】【状態異常抵抗力増強】【反射速度増強】【自動回復効果付与】の、うーん……【五重】」
少しざわついていた冒険者たちの足元が光ると、ノアの指定した範囲に多重支援魔法が掛かった。
それは種類でもあり、重ねた魔法の数でもある。
支援魔法はその名の通り支援なので、本来の能力値を少し補佐するのだが、ノアの場合魔力の代わりに使っているのは『星の力』だ。地脈から吸い上げて反映させる、だからノアの魔力は無尽蔵であり、広範囲に渡って支援の域を超えた力を与える事が可能になっている。
ノアの二つ名は、魔法を使う時に独特の金色の光が現れる事からそう言われる。また、その能力の特異さと無尽蔵な魔力から、貴重と言う意味でのゴールデンでもある。
「今皆さんの体感ではレベルが10は上がった状態になっています。効果時間は1日。それが過ぎたら元に戻るので、味を占めて危険な依頼に手を出したり、魔物に手を出さないようにお願いします。——お時間いただきました。いきましょう」
「あ、あぁ」
ギルドマスターも自分の体の軽さに驚いているようだった。
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