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4 こんなに沢山の人とご一緒するのは初めてで
デビュタントの日も、私が言った通りの綺麗な光沢のあるアイボリーのドレスに白いリボンを結んだジャスミン様が我が家に来て、一緒の馬車で向かった。
彼女の美しさは本当に天使のよう。馬車を降りてきた時には天使が駆け寄ってきたのかと思った。
存分に美しさを引き立てる控えめな金色は、肩から袖をレースで仕立てられていて、上半身は身体に沿う厚手の生地、リボンから下の柔らかく膨らんだスカートは紗々を重ねたような軽さで、ジャスミン様の美しさを軽やかに引き立てていた。我ながらいい色を指定した、と思うが、彼女は何を着ても似合うので何を勧めてもよかったのかもしれない。
私と言えば、無難な白いフリルの襟に青い生地をアクセントに使った、見事なバイカラーのドレスになった。特に刺繍やリボンはなく、少し大人っぽい気もする。
その分、腰の大きなリボンが目立っていいかもしれない。
ジャスミン様とお互いの見目を褒め合いながら、頰を紅潮させてデビュタントの会場……なんと、王城である……に向かった。馬車の行列ができ、同年代の男女と保護者が集められる。我が家の両親も付いてきたが、ジャスミン様も纏めて面倒を見る形になるらしい。
中々進まない馬車の列を思えば正解な気もする。それでも、ジャスミン様は今日も私を褒めちぎり、沢山の退屈しない話題を持ってきてくれたから、時間が過ぎるのが遅い気はしなかった。
そうしてやっと会場につく。今日のホールは一番広い所らしく、庭に絨毯が引いてあり、大きく開け放たれた窓からの入場となった。
「まぁ、私、こんなに沢山の人とお会いするのは初めてだわ」
私が入り口で驚いてつぶやくと、近くにいた門番がぎょっとしたように私を見て目を逸らした。
……田舎者っぽい言葉だったかしら。これでも王都育ちの侯爵令嬢なのだけれど。
ジャスミン様がうきうきしながら、私の白手袋の手を握って会場に入る。
「私、フリージア様とこの日を迎えるのが、すごく怖くて、それ以上に楽しみでしたの! さぁ、楽しみましょう」
「あら、うふふ。そうね、楽しみましょう」
私の手を引きながら輝かんばかりに笑うジャスミン様に、会場にいる人が一度はポカンと魂を抜かれたように振り返り、今のは現実だったのだろうか? と、思い直してまた人波に消えていく。
そうよね、こんな天使みたいな子、びっくりして見返してしまうわよね。私も今でも、見ていて本当に飽きないもの。
「みんなフリージア様に夢中ですね」
「はい?」
「ほら、今も。——だから、あまり人前に出てほしくはなかったんですけど……、でも、お互い大人になりましたから!」
「待って、何を言っているの? みんなが振り返っているのはジャスミン様に見惚れてよ。私は平凡な、どこにでもいる令嬢だわ」
私の両親が背中に着いてきていたので、ねぇ? と同意を求めたら、何故か苦笑いされている。
「フリージア様。今日は、殿方とダンスも踊りますけど……、私とも一緒にいてくださいませね」
「えぇ、もちろんよ。ジャスミン様とのデビュタント、楽しみにしていたのだから」
笑顔でそう告げると、周りが針を落としても聞こえそうなほどシンと静まり返ってしまった。
一体何ごと? と思って周囲を見渡すも、どうやら私とジャスミン様が中心のようだ。
「フリージア様、お気付きになりませんか?」
「一体……何が起こってるのかしら?」
ジャスミン様はこの上なく誇らしそうに笑って、私に特大の爆弾を落とした。
「皆、フリージア様のお声に聞き入っているのですよ」
……ちょっと、意味が飲み込めないかもしれない。
彼女の美しさは本当に天使のよう。馬車を降りてきた時には天使が駆け寄ってきたのかと思った。
存分に美しさを引き立てる控えめな金色は、肩から袖をレースで仕立てられていて、上半身は身体に沿う厚手の生地、リボンから下の柔らかく膨らんだスカートは紗々を重ねたような軽さで、ジャスミン様の美しさを軽やかに引き立てていた。我ながらいい色を指定した、と思うが、彼女は何を着ても似合うので何を勧めてもよかったのかもしれない。
私と言えば、無難な白いフリルの襟に青い生地をアクセントに使った、見事なバイカラーのドレスになった。特に刺繍やリボンはなく、少し大人っぽい気もする。
その分、腰の大きなリボンが目立っていいかもしれない。
ジャスミン様とお互いの見目を褒め合いながら、頰を紅潮させてデビュタントの会場……なんと、王城である……に向かった。馬車の行列ができ、同年代の男女と保護者が集められる。我が家の両親も付いてきたが、ジャスミン様も纏めて面倒を見る形になるらしい。
中々進まない馬車の列を思えば正解な気もする。それでも、ジャスミン様は今日も私を褒めちぎり、沢山の退屈しない話題を持ってきてくれたから、時間が過ぎるのが遅い気はしなかった。
そうしてやっと会場につく。今日のホールは一番広い所らしく、庭に絨毯が引いてあり、大きく開け放たれた窓からの入場となった。
「まぁ、私、こんなに沢山の人とお会いするのは初めてだわ」
私が入り口で驚いてつぶやくと、近くにいた門番がぎょっとしたように私を見て目を逸らした。
……田舎者っぽい言葉だったかしら。これでも王都育ちの侯爵令嬢なのだけれど。
ジャスミン様がうきうきしながら、私の白手袋の手を握って会場に入る。
「私、フリージア様とこの日を迎えるのが、すごく怖くて、それ以上に楽しみでしたの! さぁ、楽しみましょう」
「あら、うふふ。そうね、楽しみましょう」
私の手を引きながら輝かんばかりに笑うジャスミン様に、会場にいる人が一度はポカンと魂を抜かれたように振り返り、今のは現実だったのだろうか? と、思い直してまた人波に消えていく。
そうよね、こんな天使みたいな子、びっくりして見返してしまうわよね。私も今でも、見ていて本当に飽きないもの。
「みんなフリージア様に夢中ですね」
「はい?」
「ほら、今も。——だから、あまり人前に出てほしくはなかったんですけど……、でも、お互い大人になりましたから!」
「待って、何を言っているの? みんなが振り返っているのはジャスミン様に見惚れてよ。私は平凡な、どこにでもいる令嬢だわ」
私の両親が背中に着いてきていたので、ねぇ? と同意を求めたら、何故か苦笑いされている。
「フリージア様。今日は、殿方とダンスも踊りますけど……、私とも一緒にいてくださいませね」
「えぇ、もちろんよ。ジャスミン様とのデビュタント、楽しみにしていたのだから」
笑顔でそう告げると、周りが針を落としても聞こえそうなほどシンと静まり返ってしまった。
一体何ごと? と思って周囲を見渡すも、どうやら私とジャスミン様が中心のようだ。
「フリージア様、お気付きになりませんか?」
「一体……何が起こってるのかしら?」
ジャスミン様はこの上なく誇らしそうに笑って、私に特大の爆弾を落とした。
「皆、フリージア様のお声に聞き入っているのですよ」
……ちょっと、意味が飲み込めないかもしれない。
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