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19 奇妙なお茶会
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「ようこそ、いらしてくださいました……」
ユーリカは少しやつれたような気がする。彼女の勉強の才能は小さいころからとびぬけていて、この国では珍しく女性の官僚として王宮に勤める為に、今もまだ難しい勉強を続けていたはずだ。
学園の授業などではお話にならない、それこそ政治経済から国政に関わる事までを、徹底的に学んでいたと思う。
ただ、あの日……先日夢で見た時のような笑顔は、彼女の顔にはなかった。
困ったような、申し訳ないような顔で、怯えたように私とグラード様を見ている。
「ユーリカ……」
「私は……あの日、貴女の事を……本当に、傷つけたわ。ごめん、なさい……ルシアナ、貴女にこんな事言う資格はないかもしれないけれど……お誕生日本当におめでとう」
同じ貴族街に屋敷を構えていながら、私とユーリカはあの誕生日を境に会う事はなかった。
今目の前には現実のユーリカがいる。涙をいっぱい目に溜めた、同じ17歳とは思えないほどやつれている女性。
あのはつらつとした笑顔はどうしてしまったのだろう? グラード様の方を見ると、全てを仕組んだくせに肩をすくめてみせるだけだ。この野郎、全部知ってるくせになんてやつ。
とにかく、中へ、と案内されるままユーリカの屋敷の中に案内され、ケーキと茶菓子の用意された飾り付けられた可愛らしいサロンに案内された。だが、なんだかその中でユーリカだけがすごく浮いて見える。
私は心配に眉を下げて、……不思議と、あったはずのわだかまりを感じることなく、彼女の肩に手を置いた。
「ねぇ、ユーリカ。どうしたの? こんなにやつれて……何があったの?」
「ルシアナ……、ごめんなさい。貴女の誕生日に、私……、私は……」
「ねぇ、もういいの。小さい頃のことは、もういいのよ。今のあなたが心配なの。何があったの?」
そうしてユーリカは、ぽつぽつと泣きながら事情を語った。
聞いた私は彼女に何をしてあげられるかを考えながら聞いていたけれど、どちらかと言えばグラード様の得意分野な気もするような内容だった。
というのも、彼女は私と疎遠になってから、勉強の他に美容関係に精を出し、勉強を頑張るご褒美に様々な化粧品やドレスを試したらしい。怪しげな健康食品にも手を出し、結果、やつれて肌はボロボロ、髪も傷み、体が栄養を受け付けにくくなってしまって勉強の方も集中できなくなっている、らしい。
生まれ持った才能を台無しにしようとした私は失敗してしまい、生まれ持った才能で美容関係に力を入れたユーリカはこれまた失敗したらしい。
「……私、ユーリカにずっと嫉妬してたの。なんでこの子にできることが私にできないのかしら、って」
「ルシアナ……、そんなの、すぐに同じになるような物よ。私は全然だめ……もう、勉強も集中できなくて」
「でもね、私は自分の身体を台無しにするために医学書まで読んだわ。その位勉強して台無しにしてやろうと思ったの。あなたは頭がいいからアンテナが広すぎるんだわ。なんでも自分の身体で試したから、自分の身体を悪くしちゃったのね」
かさかさのユーリカの手を握って、私は身を乗り出した。
「今日は私の誕生日よ。私に付き合ってくれるわよね?」
「ルシアナ……」
「大丈夫よ、お金のことは気にしないで。今日は、とーっても身ぎれいなお財布が着いてきてくれてるからね!」
私が笑って隣でおとなしく猫を何十匹も被ってお茶を飲んでいたグラード様を財布扱いすると、微かに片眉をあげたが、無言でそれを肯定された。
グラード様はどうやら、あの夢から全部の事柄を調べ上げたのだろう。そして、ユーリカの現状も。
ユーリカを健康に戻すお手伝いができる……そしたら、会う時間も今後も増える。その為に、あえて私と自分を着飾って、ボロボロのユーリカに会いに来たのだろう。
悔しいけど、人生で一番嬉しい誕生日プレゼントを、グラード様はやっぱりお見通しなようだった。
ユーリカは少しやつれたような気がする。彼女の勉強の才能は小さいころからとびぬけていて、この国では珍しく女性の官僚として王宮に勤める為に、今もまだ難しい勉強を続けていたはずだ。
学園の授業などではお話にならない、それこそ政治経済から国政に関わる事までを、徹底的に学んでいたと思う。
ただ、あの日……先日夢で見た時のような笑顔は、彼女の顔にはなかった。
困ったような、申し訳ないような顔で、怯えたように私とグラード様を見ている。
「ユーリカ……」
「私は……あの日、貴女の事を……本当に、傷つけたわ。ごめん、なさい……ルシアナ、貴女にこんな事言う資格はないかもしれないけれど……お誕生日本当におめでとう」
同じ貴族街に屋敷を構えていながら、私とユーリカはあの誕生日を境に会う事はなかった。
今目の前には現実のユーリカがいる。涙をいっぱい目に溜めた、同じ17歳とは思えないほどやつれている女性。
あのはつらつとした笑顔はどうしてしまったのだろう? グラード様の方を見ると、全てを仕組んだくせに肩をすくめてみせるだけだ。この野郎、全部知ってるくせになんてやつ。
とにかく、中へ、と案内されるままユーリカの屋敷の中に案内され、ケーキと茶菓子の用意された飾り付けられた可愛らしいサロンに案内された。だが、なんだかその中でユーリカだけがすごく浮いて見える。
私は心配に眉を下げて、……不思議と、あったはずのわだかまりを感じることなく、彼女の肩に手を置いた。
「ねぇ、ユーリカ。どうしたの? こんなにやつれて……何があったの?」
「ルシアナ……、ごめんなさい。貴女の誕生日に、私……、私は……」
「ねぇ、もういいの。小さい頃のことは、もういいのよ。今のあなたが心配なの。何があったの?」
そうしてユーリカは、ぽつぽつと泣きながら事情を語った。
聞いた私は彼女に何をしてあげられるかを考えながら聞いていたけれど、どちらかと言えばグラード様の得意分野な気もするような内容だった。
というのも、彼女は私と疎遠になってから、勉強の他に美容関係に精を出し、勉強を頑張るご褒美に様々な化粧品やドレスを試したらしい。怪しげな健康食品にも手を出し、結果、やつれて肌はボロボロ、髪も傷み、体が栄養を受け付けにくくなってしまって勉強の方も集中できなくなっている、らしい。
生まれ持った才能を台無しにしようとした私は失敗してしまい、生まれ持った才能で美容関係に力を入れたユーリカはこれまた失敗したらしい。
「……私、ユーリカにずっと嫉妬してたの。なんでこの子にできることが私にできないのかしら、って」
「ルシアナ……、そんなの、すぐに同じになるような物よ。私は全然だめ……もう、勉強も集中できなくて」
「でもね、私は自分の身体を台無しにするために医学書まで読んだわ。その位勉強して台無しにしてやろうと思ったの。あなたは頭がいいからアンテナが広すぎるんだわ。なんでも自分の身体で試したから、自分の身体を悪くしちゃったのね」
かさかさのユーリカの手を握って、私は身を乗り出した。
「今日は私の誕生日よ。私に付き合ってくれるわよね?」
「ルシアナ……」
「大丈夫よ、お金のことは気にしないで。今日は、とーっても身ぎれいなお財布が着いてきてくれてるからね!」
私が笑って隣でおとなしく猫を何十匹も被ってお茶を飲んでいたグラード様を財布扱いすると、微かに片眉をあげたが、無言でそれを肯定された。
グラード様はどうやら、あの夢から全部の事柄を調べ上げたのだろう。そして、ユーリカの現状も。
ユーリカを健康に戻すお手伝いができる……そしたら、会う時間も今後も増える。その為に、あえて私と自分を着飾って、ボロボロのユーリカに会いに来たのだろう。
悔しいけど、人生で一番嬉しい誕生日プレゼントを、グラード様はやっぱりお見通しなようだった。
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