【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃

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7 聖女式反転の術(※ローリニア国王視点)

 『金剛の聖女』が現れてから3年、我が国は平穏を保っている。

 それもこれも、聖女・聖人であるだけで我よりも高位の存在であるうえに、さらに最高位の『金剛の聖女』が馬鹿なおかげだ。

 何をどうしているのか知らないが、本当ならば年頃の娘。あの男所帯で間違いを起こせばそれを罪として幽閉して生きている間ずっと飼い殺せるというのに、何も間違いは起こっていないらしい。

 忌々しいが、最高のコマだ。今は飼い殺しとまではいかないが、下女と同じ扱いで、外向き……我以外の者に知られぬよう予算を組んではいる。

 早く間違えが起こればいい。そしたらその予算は丸々浮く。ただの積立と一緒だ。

 聖女が結婚できぬなどというのはこの国のしきたりに過ぎない。どの国でも聖女は子を為して次代に力を受け継がせている。

 だから、この国に聖女が現れる『はずがない』のだが、まさか先代が聖女の子を攫ってきて孤児院に預けていたとは……。

 聖女の力で守られているとは言え、本来ならば正式な祈りをもって国を浄化する必要がある。が、我は魔法に通ずるもの。

 聖女の瘴気を払う力を、瘴気を反転させるという魔術式に聖女を組み込み、いよいよ隣国のグランドルム王国を滅亡に追い込む事に成功する。あと少し、完全に土が汚れ、水が汚れ、魔物が跳梁跋扈する国になれば人は勝手に途絶える。

 そのあと、『金剛の聖女』に浄化させて我が国の領土にすればいい。あんな国の名など、歴史の中に置き去りにされればいいのだ。

 その道中、金で雇った男に襲わせれば、金剛の聖女の力を持っただけの、我が国では権威の認められない、便利なコマが生まれる。それが楽しみでならない。

「く、くく……まやかしの術も続けて、我も随分と老けた」

 定期的にあの『金剛の聖女』にあって反転式をかけ、宰相と家族にまやかしの術をかけて聖女の扱いに疑問を抱かせず、お陰でこの3年で頭髪は真っ白に、顔には深い皺が刻まれた。

 だが、いい。我の代で全ての始末がつけられれば、我は本望だ。

 この国をグランドルムと合併させ、大国として息子に譲渡し、聖女の扱いを隠居してから教えればいい。

 やがて聖女が高位の存在であることが形骸化し、便利な戦の道具となれば……やがてここはローリニア帝国となる。

 グランドルム王国はその足掛かりに過ぎない。国向こうの貴石の産出国に攻め入るためには落とさねばならぬ国、そもそも貴石の流入を高値をつけてきたあちらの横暴が事の発端だ。

 お陰でこの国で魔法を使えるのは王族、ないしは最高位神官、そして、先代がグランドルムより盗んだ聖女の落とし子のみ。

 孤児院で育てて知恵をつけさせなかった先代の慧眼には畏れ入る。このまま、なんとか隣国が滅びるまで飼い殺し、その後は傷モノにして本当に飼えばいい。

 そして子を産ませよう。聖女の、聖人の血が絶えぬよう。

 今は下女の『金剛の聖女』……あとは、間者の洗い出しだが……。

 残念ながら、そちらはうまくいっていない。5年は遡った、瘴気が現れ始めた頃だからだ。だが、見つからない。

 一体どこにいるのか……まぁ、いい。『金剛の聖女』が手元にあれば、それで。
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