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3 あの嫌味眼鏡からの呼び出し
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「やっと来ましたか。ずいぶん待たせますね、貴女」
校内の心当たり……新聞部からゴシップ好きな女生徒の集まりから男子生徒の溜まり場まで……を巡回して、諦めて玄関ロビーに来たら、普通にいた。嫌味眼鏡。
いや、ここは心の中であろうとバルティ様と呼ばなければ。こちらは下手に出る立場、うっかり挑発に乗せられて売り言葉に買い言葉をしてはいけない。
「すみません、ちょうどバルティ様を探していたところでしたもので」
深呼吸をして胸に手を当てニッコリと微笑む。バルティ様も薄く笑ったまま、ここではなんだからと、ちょっと座って休めるロビーすみのソファに促された。
あぁ、どうゴシップを回避しよう。それとも弱味握ったり、と何か無茶なことでも言われるのだろうか。
「確認ですが……確認するのもバカバカしいのですが……ユーリカ嬢は殿下から想いをよせられ、そしてそれを受ける意思はない、そのような状況でよろしかったですかね、先程の面白い光景は」
くつくつ、と笑いながら言わないで欲しい。
殿下も殿下でどうかしているとは思うが、この嫌味眼……バルティ様も、たいがい性格が悪い。
「えぇ、そのような……状況です。私は全くもって殿下を異性として意識したこともありませんし、婚約者のファリア様と敵対したくもありません。殿下にもハッキリとお断り申し上げました。聞く耳を持っていらっしゃらない。非常に困っているのが、現状です……」
あぁ、バルティ様に弱音を吐くなんて!
これでは自ら弱味を握らせているのと変わらない。だけど、あの状況を目撃しておきながら、噂を広める様子はないようだ。先ほど噂の元になる場所は一通り回ってバルティ様が現れていない事は確認している。
何がそんなに楽しいのか、眼鏡の縁と額に長く骨張った指を伸ばして顔を伏せて笑っている。
そう、嫌味……というか、正論で人を殴る様な真似をしなければ、バルティ様は実に見目が良く、頭もいい。性格は……難があるとは思うけれど、あの状況を見て噂を広げないというだけの分も弁えている。
私が危惧したことくらいは危惧して、そして黙っている。そのくらいは現実が見えている。
そもそも、別に正論で人を殴るだけで、嫌味を言う訳ではない。弱味になるような真似をする相手に容赦がないだけで、それもこの学園のうちならば取り返しがつく事ばかりだ。社会に出たら誰も止めてくれず、取り返しがつかない様な事も、バルティ様はいちはやく察して釘を刺しているに過ぎない。
(もしかして……バルティ様っていい人なんじゃないかしら……?)
一瞬そんな考えが頭をよぎった。
私が困った様子で沈黙している間に、いつの間にか笑みを収めて薄い硝子越しに殿下そっくりの青い目が私をじっと見つめてくる。
これは、気持ち悪くない。何故だか、心拍が速くなるような気さえする。
「そうですか。よければ私が助けてあげましょうか? もちろん、条件がありますが」
不敵な笑みを浮かべて断れない取引を持ちかけてくる。
いい人、などというのは前言撤回だ。バルティ様が助けると言ったら助けてくれるのは間違いない。だけども。
なんで私が条件を出されなきゃいけないの?!
あぁ、もう! 全部色ボケ殿下のせいだ!
校内の心当たり……新聞部からゴシップ好きな女生徒の集まりから男子生徒の溜まり場まで……を巡回して、諦めて玄関ロビーに来たら、普通にいた。嫌味眼鏡。
いや、ここは心の中であろうとバルティ様と呼ばなければ。こちらは下手に出る立場、うっかり挑発に乗せられて売り言葉に買い言葉をしてはいけない。
「すみません、ちょうどバルティ様を探していたところでしたもので」
深呼吸をして胸に手を当てニッコリと微笑む。バルティ様も薄く笑ったまま、ここではなんだからと、ちょっと座って休めるロビーすみのソファに促された。
あぁ、どうゴシップを回避しよう。それとも弱味握ったり、と何か無茶なことでも言われるのだろうか。
「確認ですが……確認するのもバカバカしいのですが……ユーリカ嬢は殿下から想いをよせられ、そしてそれを受ける意思はない、そのような状況でよろしかったですかね、先程の面白い光景は」
くつくつ、と笑いながら言わないで欲しい。
殿下も殿下でどうかしているとは思うが、この嫌味眼……バルティ様も、たいがい性格が悪い。
「えぇ、そのような……状況です。私は全くもって殿下を異性として意識したこともありませんし、婚約者のファリア様と敵対したくもありません。殿下にもハッキリとお断り申し上げました。聞く耳を持っていらっしゃらない。非常に困っているのが、現状です……」
あぁ、バルティ様に弱音を吐くなんて!
これでは自ら弱味を握らせているのと変わらない。だけど、あの状況を目撃しておきながら、噂を広める様子はないようだ。先ほど噂の元になる場所は一通り回ってバルティ様が現れていない事は確認している。
何がそんなに楽しいのか、眼鏡の縁と額に長く骨張った指を伸ばして顔を伏せて笑っている。
そう、嫌味……というか、正論で人を殴る様な真似をしなければ、バルティ様は実に見目が良く、頭もいい。性格は……難があるとは思うけれど、あの状況を見て噂を広げないというだけの分も弁えている。
私が危惧したことくらいは危惧して、そして黙っている。そのくらいは現実が見えている。
そもそも、別に正論で人を殴るだけで、嫌味を言う訳ではない。弱味になるような真似をする相手に容赦がないだけで、それもこの学園のうちならば取り返しがつく事ばかりだ。社会に出たら誰も止めてくれず、取り返しがつかない様な事も、バルティ様はいちはやく察して釘を刺しているに過ぎない。
(もしかして……バルティ様っていい人なんじゃないかしら……?)
一瞬そんな考えが頭をよぎった。
私が困った様子で沈黙している間に、いつの間にか笑みを収めて薄い硝子越しに殿下そっくりの青い目が私をじっと見つめてくる。
これは、気持ち悪くない。何故だか、心拍が速くなるような気さえする。
「そうですか。よければ私が助けてあげましょうか? もちろん、条件がありますが」
不敵な笑みを浮かべて断れない取引を持ちかけてくる。
いい人、などというのは前言撤回だ。バルティ様が助けると言ったら助けてくれるのは間違いない。だけども。
なんで私が条件を出されなきゃいけないの?!
あぁ、もう! 全部色ボケ殿下のせいだ!
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