魔道具師アイクのキセキ~奴隷のようにこき使われた挙げ句クビにされたので店を開きます~

ツキ

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新人さんは幼女でした!?

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 ちょうど日が暮れてきた頃、アイクは魔道具を全て作り終えた。

 難しい作業ではなかったもののなかなか疲れた。

 普段作らないものを作ったせいか想像以上の疲労感がある。おまけに腰が痛い。

 それでも開店準備はこれでおおよそ終わったと言えるだろう。

 後必要なのは人手くらいだが、それに関しては昼食をとるときにギルドに魔道具の素材を買う契約をしたのだが、そのついでに雇用依頼を出しておいた。

 たぶん明日辺りには何人か希望者が見つかっているだろう。

 住み込みで働いてもらおうと思っているので希望者は少ないかもしれないが。

 今日はもうやることがないと結論付けたアイクは、その日残った時間をだらだらと過ごした。

 

 次の日、アイクは昨日の反省を生かし、朝の五時に目を覚ました。

 それでも布団から出るのにはやはりかなり時間がかかった。三十分かからなかったのは進歩だと言えるだろう。

 適当に朝食を済ませ、ギルドに向かう。家からギルドへの距離はかなり近く徒歩二分程度だ。

 何人か希望者がいる…と信じているがどうだろうか。もしいなければかなり面倒なことになる。

 少し心配しつつもギルドに入り、受付嬢に用件を伝える。

 「昨日雇用依頼を出したアイクです。希望者は見つかりましたか?」

 「えーと、希望者がいたにはいたのですが…」

 そこで不自然に言葉をつまらせる受付嬢。

 不思議に思い、アイクは尋ねる。

 「何か問題のある人だったのですか?」

 「いえ、問題という訳ではなくてですね、その希望者が…九歳の女の子だったんですよ」

 「へっ? 」

 どんなヤバい奴なのかと身構えていたアイクだったが、受付嬢の返答を聞いて安心した。

 アイクは人を年齢で差別するタイプではない。

 自身が前の職場でその差別を受けてきたからこそ、その辛さが分かるのだ。

 あのクソ上司には「これだから若い奴は」と数えきれない程言われてきた。

 慣れてからは気にならなくなったが。

 九歳となると仕事ができるのかは少し不安だが。

 「仕事ができるのであれば全然問題ありません」

 アイクはこう言って受付嬢を見たが、受付嬢はアイクを怪しむような視線を向ける。

 アイクは雇用依頼を出すときにできれば住み込みで働いてほしいと書いていたので、おそらくその子に手を出したりしないか、心配しているのだろう。

 「俺はそういう趣味は持ってないので安心してください」 

 「それはよかったです。では、その子には後でアイクさんのところに行くように伝えておきますね」

 受付嬢は安心したように言った。

 一体どこが変態に見えたのだろうか。



 ちょうど十二時頃、アイクが自宅で昼食をとっていると、コンコンとノックが聞こえた。

 来客の心当たりは一つしかない。恐らく例の子だろう。

 少し緊張した返事をして外に出る。

 外にいたのは想像の数倍背丈が小さい幼女だった。

 髪色はビビッドイエローで明るい印象を受ける。頭の上にわっかを乗せれば天使に見えそうだ。

 同年代の子と比べても背が低いであろうことが容易に想像できるレベルの小さい女の子はその見た目とは裏腹にしっかりとした口調で話し始めた。

 「はじめまして。私はベルとい言います。これからよろしくお願いします。」

 九歳の子とは思えない挨拶をされ、アイクは驚く。

 「はじめまして。俺はアイク。これからよろしくね、ベル」

 「はい。よろしくお願いします」

 「ところで住み込みで働いてもらうってことになってたと思うんだけど大丈夫? 」

 「はい、全然大丈夫です」

 そんなこんなで挨拶も済んだのでベルを中にいれつつ、早速案内を始める。

 「一階が店になっていて、ベルにはここでお客さんの対応とかをしてもらおうと思ってる。三階は研究室になってるからベルが住むのは二階になるかな」

 「分かりました。お仕事はなるべく早く覚えられるように頑張ります。というかそれより気になったことがあるんですけど…」

 「え~と、何か変なとことかあった?」

 「なんか外から見た時よりすごく広く感じるんですけど気のせいですか?」

 「いや、気のせいじゃないよ。実は俺が作ったオリジナルの魔道具を使っていて空間を拡張しているんだ」

 「空間のかくちょうですか? 」

 「要するにいつもより部屋が広くなるってこと」

 「私、この魔道具は初めて見ました。オリジナルなんてすごいですね」

 ベルに褒められて嬉しく思いながらアイクは説明を続ける。  

 全ての説明を終えると、ベルは荷物をギルドに預けたままだったらしく、すぐに戻りますと言ってギルドに向かった。

 (思ったよりすんなり懐いてくれたな)

 警戒されていた様子もほとんどなく、スムーズに会話ができていたと思う。

 新人さんと良好な関係が築けたことにアイクは一人安堵した。 

 
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