黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜

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CASE:6 やっぱり私、好きかもしれない

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 その日は、仕事のトラブルで泣きそうになった日だった。重要なデータをうっかり削除してしまった後輩。巻き添えでプロジェクト全体が一時ストップ。直属の上司にキツく叱られた莉央は、責任を感じて必死に立て直そうと動いた。けれど…………。疲労も、プレッシャーも限界に近かった。

 ようやく帰路につく頃にはオフィスは静まり返っていた。エントランスで、ふと立ち止まる。

「……もう、無理かも」

 足が動かなくて、目の奥がじんと熱くなる。そのとき……。

「……白石? まだ居たのか」

 背後から優しい声。振り返ると、そこに慧がいた。スーツのジャケットを腕にかけて、いつもの落ち着いた表情。

「く、黒瀬部長……あの、今日はすみませんでした……っ」
「……謝らなくていい。頑張ってたの、ちゃんと知ってる」

 その言葉だけで、涙がこぼれそうになった。慧は一歩、莉央に近づいて、さっと自分のジャケットを肩にかけてくれた。

「誰かの責任を背負って、ひとりで抱え込むのは、優しい人がよくやる間違い……でも、それって優しさじゃない時もあるからさ」
「……っ」
「辛い時は、俺に頼れ。無理して立ってなくていい」

 その瞬間。

(あ……やっぱり私、この人が……)

 胸の奥が、じんわりとあたたかくなっていく。泣きたかったはずの気持ちが、いつの間にか『この人に甘えたい』って想いに変わっていた。

To be continued
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