可愛くて、健気で、エッチで、一途な幼馴染の女の子は、好きですか?~付き合いたい彼女と付き合いたくない彼の攻防戦~

三日月

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開幕

ペンギンと幼馴染

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「見て見て‼ ペンギンさんだよ‼ 可愛い‼」
「そうだな」

 僕もペンギンは動物の中で比較的な好きな部類だ。あのまるまるとしたフォルムに、よちよちと可愛らしく歩くさまは、他の動物では見ることができない。

   そんなペンギン達にもやはり個性はある。水の中を泳ぐのが好きなもの、陸上でくつろぎながら寝るのがすきなもの、夫婦なのか常に寄り添って頑なに離れようとしないもの。

   その中で僕が気になったのはやはり夫婦のペンギンで、ついとなりの咲夜をみてしまう。

「ん? 何?」
「いや。なんでもないよ」 
「んん?」

   咲夜は首を可愛らしく傾げ、こちらを見る。その姿も愛らしい。

   僕が咲夜を見た理由など本当に単純で、もし僕と咲夜が付き合ったらあのような風になるのかと思ったからで、咲夜はあの二匹の反応を見て、どのような反応をするのか気になったのだ。 

「いいなぁ……餌とか上げてみたいなぁ……」

   ただ肝心の咲夜はそんな事には興味ないようで、ペンギンに餌をあげてみたいようで、その事に内心苦笑するが、咲夜らしいといえばらしい反応だった。

「餌……上げられるぞ」

 僕は咲夜と今回デートするにあたり、ネットで動物園のイベント事について調べ尽くしていた。それは偏に咲夜に今回のデートを楽しんでもらうためで、咲夜を楽しませると決めた僕に抜かりは一切ない。

「え、本当‼」
「ちょ、近い、近い」

 咲夜はその言葉を聞いて嬉しそうに瞳を輝かせる。ただその際距離が近づきすぎており、後少しでキスが出来てしまうほど僕に迫っており、その距離は咲夜のかすかな吐息もかんじられるほどだった。

 咲夜はこういう事を無意識でやるから本当に質が悪い。咲夜ほどの美少女にこれほど近づかれたら普通の男ならばそのまま勢いでキスしてしまいそうだ。

 ただ僕は自分で言うのもなんだがヘタレチキンなので、その様な事をする度胸など一切ない。まあ咲夜とのファーストキスは小学生の頃にすませているのだが、それはいわゆる子供の頃勢いでしたものなわけで、咲夜もきっと覚えていないだろうし、今更蒸し返すのも阿呆らしいし、仮に覚えていたとしたらダメージを受けるのは、僕の方だろう。

「あ、その、ゴ、ゴメン……」

 咲夜は沸騰したヤカンの様に顔が急速に真っ赤になっていき、僕からすぐさま距離を取ると手で自身の事を扇ぎ始めた。

「べ、別に謝らなくていいよ」

 咲夜が近づく分には僕は一向に不快に思わない。むしろもっと近くで感じていたいくらいだ。ただ今の状況を先輩がしていたとしたら僕は、容赦なく殴っている。ただまあ……今はあの人の事を考えるのはよそう。変に考えたらあの人の事だ。後ろからするっと現れそうな気がするのだ。

「それよりもペンギンに餌……あげたいんだろう?」
「う、うん。でもどうやって……」
「実はここの動物園は、朝十一時と午後三時の二回にかけてペンギンへの餌やり体験会をやっているんだ」
「そうなの!?」
「あ、ああ……」

 だから近いって。まあそれだけ喜んでくれているってわけだから、文句はないけれどな。

「それなら早く行こう‼ 今すぐ行こう‼」
「待て、待て。まだ時間じゃない」

 ただいまの時刻は午前十時半。餌やり体験まで後三十分ある。一応餌やり体験の時間までこの場で留まるという考えもあるが、それはいくらなんでも時間がもったいない。

「そ、そっか。それじゃあまーくんの見たいって言ってたリスさんでも見に行く?」
「いや、それはダメだ」

 リスのいる場所は園の端もいいところで、ペンギンのいる場所からはかなり距離がある。その様な場所に言っていたらペンギンの餌やり体験に確実に間に合わない。それにしてもリスにさん付けする咲夜も可愛いな、おい。

「それじゃあどこ行くの?」
「そうだな。僕としてはやはりチンパンを見に行こう」
「別にいいけど……まーくん。変な事言わないでね?」
「ちょっと待て。それはどういう意味だ」
「だってまーくんさっき……」

 咲夜はどうやら僕が先程言った冗談を未だに気にしているらしく、僕の事をいぶかし気に見てくる。

「そんな目をしないでくれよ。傷つくだろう?」
「だってあの時のまーくんの表情全く嘘をついているようには見えなかったんだもん」
「は、ははは……そんなわけないじゃないか」
「その妙な間は何かな?」
「さ、さぁ……」

 咲夜の僕を見る視線がますます厳しくなる。

「な、なんか僕浮気した彼氏みたいな状況じゃない……?」
「へ!? そ、それって……つ、つまりわ、私がま、まーくんの……かの……」
「咲夜。顔真っ赤だぞ~」
「あうぅ……うううう‼」

 咲夜は顔を真っ赤に染めながら僕の肩に自身の頭を何度もぶつけてくるが、全く痛くない。きっと加減をしてくれているのだろう。冷静さを失っても尚咲夜は、僕の事をきづかっているのだ。それを嬉しく思わないわけがない。

 僕は咲夜の頭を優しくポンポンと叩くと咲夜は動きを止め、今度はすり寄ってきた。

「咲夜は本当に甘えん坊だな」
「そうだよ。甘えん坊な女の子は嫌い?」
「いいや。大好き」
「……………………馬鹿」
「そういう咲夜は?」
「私は阿呆だよ。まーくんに関しては……ね」

 僕はよく咲夜に阿呆という。咲夜はそれをうまく逆手に取ってこのような言い回しをしてきたのだろう。

「僕は馬鹿で、咲夜は阿呆か」

 なんかそう聞くと無性に笑えてきた。それは咲夜も同じ様で、僕と同じくらい大いに笑ってくれた。それこそ人目も気にしないほどに。
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