空と地上を繋ぐ者~竜に育てられた少年~

かげろう

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魔族の将

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キリバスの街より300キロメル南
世界で最初に魔族に攻め込まれた街
魚人の街エスパス

南部諸王国は、一つ一つの街自体が独立した自治権を持っており、街の有力者による合議制で統治されている。その中で唯一魔族に攻め落とされた街がエスパスである。今は魔族側の一大拠点となっていた。

元々は魚人族が治めていた海に面する美しい街であり、所々に運河が敷かれ、交易の要所として様々な種族が訪れ、全国津々浦々の交易品で溢れていた。

それもかつての栄光。
現在は、魚人族をはじめとしたかつての住人は労働力としての役を課せられている。

街の真ん中に一際大きい建物がある。
かつて町人達の代表達が政治を行なっていた議事堂だ。

今は魔族の中央司令部となっていた。

「それでオメオメと逃げ帰って来たわけね。七魔将の名が泣くわねツァトゥグ。」

7体の魔族が円卓を囲んでいる。

左上から
爆炎のファーミル
大海のレミングウェイ
金色のヴィンドル
暴風のツァトゥグ
魅惑のパーセルトルラン
無形のリリム
そして、魔将達の長
英知のパパス

「ファーミル、確かに此度の敗戦は我が軍の責任。だがあの場面では戦略的撤退が最前であった。あのまま戦っては全滅もあり得ただろうよ。」

「ふん、わたくしは魔族の誇りを傷付けた事に対して、何にも感じていないのか。ということよ。」

「ふん、下らんな。」

ファーミルとツァトゥグは円卓を挟んでお互いに睨み合っている。ピリピリとした空気が円卓を包む。

「そこまでだ、今回其方らを呼び戻したのはいがみ合わせる為ではない。」

パパスの言葉で言い合っていた2人が押し黙る。

「ツァトゥグの敗戦は確かに我らに少なくない痛手じゃ。人間共を勢いづかせる懸念もある。それよりじゃ、ツァトゥグからの報告で気になる事がある。」

「今回の戦いは我も作戦に絡んでおる。我らの勝利は戦力差からいっても揺るがなかった筈じゃ、それが覆された。」

「このエスパスからも感じた魔力の波動。
人間どもが神々の遺産を手に入れた可能性を考えねばなるまい。」

神々の遺産、つまり失われた古代魔法が使われた可能性を考える。魔族でも一部が遺されている古代魔法は神話の時代の神々が作った魔法であり、威力は現行の魔法体系では実現不可能な大きさを実現する。

この古代魔法を使える人間がいるというだけで、魔族側は戦略の練り直しが必要不可欠だった。

「どう言う事だ。魔神様に加護を受けた我々で漸く使える古代魔法を何故人間が一個人で使用出来るのだ?奴らも神との契約を成した者がいるというのか?」

金色のヴィンドルが、腕を組みながら、片目だけをパパスに向けて問い掛ける。

「その筈だ。我の使い魔共は人間の国々に密偵として入り込んでおる。そこから得た情報を元に人間共の戦力を我が分析しておるのだ、間違いはない。」

「ですが、実際に今回人間共は古代魔法を使ったのでありんしょ?」

そう発言するのは魅惑のパーセルトルランだ。

「そう、だからイレギュラーが発生したと考えるべきである。そして此れは我らにとって無視出来ないものである可能性が非常に高い。だからこそ、調べる必要がある。」

「今回我の部隊は、人間どもを敗戦寸前まで追い詰めていた。だがたった1人、あの黒髪のガキが現れた瞬間、流れが全て変わってしまった。」

「赤い炎の剣を振るい、想像を絶する威力の炎の魔法を我の部隊に撃ち込んできおった。その後は説明する迄もないな、指揮系統も混乱に落ち、士気も落ちた部隊の命運は決まっておる。」

ツァトゥグが悔しそうに拳を握り締めながら、今回の敗因を皆に説明する。

「と、言うわけだ。その黒髪の人間が、何者なのか至急調べる必要がある。パーセルトルラン。其方に頼みたいのだが。」

パーセルトルランはサキュバスの種族特性を持つ。異性に対する魅了の効果は絶大だ。
そらこそ一つの街を彼女の魅了の能力で落とした事すらある。

「問題ありませんわ。わっちに任せて下さいまし。」

「うむ、必要な物があれば自由に使うといい。ほかの魔将の力を借りても良い。我が許す。」

「それは良きで御座いますなぁ。では、リリムさんに力を貸してもらいまひょか。」

「構わない。俺は何をすれば良い?」

いまいち表情が読めないのが無形のアザトースだ。その名の通り決まった形を持たない。今は深いフードを被っており人間の様な姿だが、その正体はスライムだ。

どんな物にでも擬態出来るし、その体は強烈な酸性も有しており、取り込まれれば一巻の終わりだ。

「では、頼んだぞ。」

各魔将は立ち上がると持っていたワインを一気に飲み干して、グラスごと投げ捨てた。

「我らが神の復活の為に。」
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