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第二章 始まりとやり直し
026 さやかとエルト帰還
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セレスティアの街はずれまで行き降りる
よし、ここなら誰も見てないだろ
≪はい。半径三キロ圏内に人と魔物の反応はありません≫
「さやか。降りるぞ」
「うっ、うん」
マキナ次元の扉出してくれ
≪はい≫
ブォン
次元の扉が開く
「うわっ……なっ、なにこれ!?」
「これは俺の神器が出す能力の一つで次元の扉だ。
アニメの「どんなことでもできるもん」に「どこまでもドア」ってのがあるだろ? アレだ」
「えっ。おにーちゃんの神器ってそんな事もできるの!?」
「ああ。他にも色々できる。さ、外は危ないからとりあえず入ろう。兄ちゃんは後から入るから」
「う、うん……。…………大丈夫だよね? なんか変なビョーキになったりしないよね? これ」
≪へ、変なビョーキ……≫
「兄ちゃんも何回も入ってるし大丈夫だ。まあ、確かに初めて入る時はちょっと怖いかもしれないけどな。
この扉は俺が住んでる国の部屋に繋がってる」
「う、うん。わかった。じゃあ。入ってみる……」
さやかが次元の狭間の前まで行くとピタリと止まり、微動だにしなくなる
「……ん? どうした…………?」
「……おっ…………おにーちゃん? やっぱり、怖い……」
さやかが青い顔で涙を浮かべながら俺の方を向く
ああ、やっぱ怖いのか。よし
マキナ? もう少し大きめのサイズの次元の扉って出せるか
≪はいっ≫
次元の扉のサイズがいつものサイズより倍の大きさになる
うん、これなら二人で一緒に入っても大丈夫そうだ
ありがとう、マキナ
≪はいっ≫
「よし、じゃあ。兄ちゃんと手繋いで一緒に入ろうか」
「う、うんっ」
二人一緒に次元の扉をくぐると見慣れた俺の部屋に出る
マキナが次元の扉を消す
「うわっ……!? こっ、ここどこ!? ホントに…………どこまでもドアだ……!」
≪ふふふっ。本当にマスターの妹さん可愛いですねっ!≫
だろ?
≪ええ、可愛いです≫
「ただいまー。マキナ? サポートありがとう」
≪どういたしましてっ。おかえりなさい! マスター!≫
「ああ……、紹介するよ。さやか。この子が俺の神器の「デウス・エクス・マキナ」だ。マキナって呼んでやってくれ」
≪はじめまして、さやかさん! マキナですっ≫
「……えっ? あの? おにーちゃん…………? おにーちゃんの神器はあのおっきーのと翼じゃないの?」
「そうだよ? あの大きいのと翼がマキナの別の姿なんだ」
「えええええ!? あの大きいのが……こんなに可愛い女の子…………!?」
≪はいっ! それらは私です≫
「あっ、どうもよろしくお願いします……マキナさん…………」
≪いえ。こちらこそ≫
「さやか。兄ちゃんな? マキナには助けられてばかりなんだ。恩人と言っても過言じゃないくらい世話になってるんだ。
だからさやかもマキナと仲良くしてやってくれよ?」
「そうなの!? マキナさんいつも兄がお世話になってます!!?」
≪ふふふっ。もぉ、マスター。過去私を宿したマスターでそんな事言ってくれた人はマスターだけですよ≫
コンコン……!
「司様ー? いらっしゃいますか?」
「お。レティシアか? 入っておいでよ」
「はいっ! おじゃましますっ」
挨拶をしながらレティシアが入室してくる
「……あら? こちらの方は」
「ああ。紹介するよ。俺の義理の妹のさやかだ」
「……東条さやかです。よろしくお願いします。兄がいつもお世話になってます…………」
「あら、妹さんなんですねっ! よろしくおねがいしますっ! レティシア・メルといいます」
「レティシアはにーちゃんの仕事仲間なんだ」
「仕事仲間……そっか。よろしくお願いしますっ! レティシアさんっ!」
「もう。嫌ですわ司様ったら! お嫁さんという立場も忘れてますわ」
≪レティシアさん……空気読みましょう…………≫
「えっ? 空気……?」
「おにーちゃん? ……レティシアさんがお嫁さんってどういう事…………」
さやかが肩を震わせながら、震える声で話し出す
「さやか様?」
「えっと、にーちゃんとレティシア付き合ってるんだ」
「……本当ですか? レティシアさん」
「はいっ。……うふふふっ…………」
言いながら、レティシアが俺の腕を取り組んでくる
「っ……! やめて!! おにーちゃんは私のなんだからっ!」
がっ……
さやかが俺の腕を掴みレティシアから引き離し、さやかが俺の腕を抱きながら咆える
ええええ!? ガチ切れ!? いや、ちょっとさやか!? おい! どうした!
≪どうしたじゃありませんよ……マスター…………≫
「さ、さやか? どうした……」
「どうしたもこうしたもないよ! おにーちゃんが突然居なくなって、心配で心配で夜も眠れなくなるくらい心配して……!
学校終わったらおにーちゃんの行きそうなところ足棒にして探し回って! もしかしたらどこかで事故とかに巻き込まれて、
死んじゃってるんじゃないかってすっごい哀しい気持ちで毎日過ごして! おにーちゃんの学校から家までを何回も何回も往復しながら探して!
神社でお祈りしてたらわけわかんないうちに飛ばされて、シスターさんに救世主とか神器とかわけわからない事ばっかり言われて!
やっとおにーちゃんに会えたと思ったら、ありもしない神器出せとか言われて汗だくになるまでやらされて!
それでやっと、やっと全部終わっておにーちゃんの部屋に着いたと思ったら……! おにーちゃんは異世界で彼女が出来て仲良くやってました!?
はぁぁぁぁぁぁぁ!!!? 何それ!!? 何なの今日は!! もうっ!! もうっ……もぉぉぉぉぉぉっ!!! わけわかんないんだけど!!! !」
「あの、さやか? お前きっと疲れてるんだよ。今日色々あって大変だっただろ……」
「疲れてなんかない! むしろ今ので疲れなんか吹っ飛んだよ! ホントにホンットにおにーちゃんはぁ……! !」
≪さやかさん。心中お察しします……≫
マキナちゃん!? 俺の味方してくれよ! 君俺の神器だよね!?
≪マスターこれは擁護無理です。ごめんなさい≫
もしかして……、俺が気が付かないうちに何かしたのか…………? 俺が何をしたっていうんだ……
≪何もしてないからですよ!≫
えぇ……?
「大体さ!? なんで!? なんでおにーちゃんに彼女が出来てるの!? おかしくない!?」
さやか? さすがにそれはにーちゃん傷つくぞ……
「お、俺だって彼女くらいできるだろそりゃあ……」
「だって! 元の世界の時同級生には全然全っ然モテなかったじゃん!? 一回も家に同級生の女の子連れてきた事ないじゃん!?
何? 異世界パワー? マキナさんの能力で好きにさせたの!?」
「……さやか? それはレティシアに失礼だぞ」
「違います。私が司様に惹かれたのは優しい所ですよ」
≪……マスターの為に私が一肌脱ぎましょう!≫
おお!? マキナちゃん! 言ってやって言ってやって!
≪さやかさん。大切な事をお知らせします≫
「……なんですか? マキナさん…………」
≪マスターには、レティシアさんの他にソフィアさんという婚約者の方がいます≫
マキナちゃん!? そうじゃないでしょ!?
「はぁぁぁぁぁぁ!? どっ! どういう事なの!!! おにーちゃん!! まさか二股!? 私も入れたらハットトリックじゃん!?」
俺は膝をつきさやかの両腕を持ち、目線を下からさやかの目に向ける
「……それは違うぞ、さやか。…………いいか? この世界は異世界で、ここはエルトって国なんだ。
俺らの元居た世界の日本じゃない。これは、わかるな?」
「……うん。それで?」
「でな? このエルトって国は一夫多妻制が認められてるんだ」
「いっぷたさいせいって何?」
「えっとな。簡単に言うと、一人の男が複数のお嫁さんをもらってもいいって法律」
「えっ!? 何それ!? そんなのあるの!? おにーちゃん!?」
「ああ、あるんだ。俺らの元の世界だと外国とかである制度だから、さやかが知らなくても仕方ないよ。
だからこれは浮気でもなければ二股でもない。これは「もう一つの恋」と言うんだ」
「つまり……それって。レティシアさんをお嫁になってもらってそのソフィアさんにもお嫁になってもらって、さらに私がおにーちゃんと結婚してもいいって事だよね!?」
「ああ……そうだ。…………ん? え? いや、今最後何て言った?」
「え? いっぷたさいせいなら、複数の女の人と結婚できるんでしょ?」
「うん、そうだよ?」
「だから、おにーちゃんはレティシアさんとそのソフィアさんって人と結婚しても、
その後に私がおにーちゃんと結婚しても大丈夫ってことだよね?」
ん……!? えぇ…………!?
≪そうですね。大丈夫です。さやかさんは義理の妹ですし、何も問題はありません≫
マキナちゃん!? なんでさやかの援護に回ってんの!?
≪いやぁ……。女として凄く共感できる部分が多々ありまして…………≫
「なーんだ! じゃあ問題解決じゃん!! いいじゃん! それ! 異世界ってサイコーじゃん!! !
「もう一つの恋」があるなら「三つ目の恋」があってもいいって事だよね!
あっ!? レティシアさん!? さっきはごめんなさい! 私失礼な事言っちゃって……!」
「いっ、いえ!? 大丈夫です! はいっ」
≪おぉ~……「三つ目の恋」と来ましたかぁ。間違いなくマスターの妹さんですねー≫
マキナちゃん!? 何を感心してるの! 止めて!? さやかを止めて!?
≪無理です≫
ええっ!? マキナが俺に「無理です」って言った!?
≪いくら私でも無理なものは無理です。マスター……≫
「に……、にーちゃんは何も問題は解決してないと思うよ!? さやか!」
「えっ? 何か問題あるの?」
「……えぇ? いや、あの、ちょっとまって? …………さやか? 俺の事を「男」として好きなの? 俺らは兄妹だぞ? わかってるか」
「うん。わかってるよ? 義理のね? 私おにーちゃんが好きって割と言ってるよね? お昼もあの大聖堂で言ったし……」
「それはあの、兄妹としての「好き」じゃなくて?」
「うん。小三の頃から言ってるよね? 私。
「大きくなったらおにーちゃんのお嫁さんになる」って私とおにーちゃんの誕生日とクリスマスのパーティを家でする時に必ず言ってるよね?
もう色々合わせて千回は言ってると思うんだけど? おにーちゃんだって「ああ、結婚しような」って毎年言うでしょ」
「言ってたけど、ええ……あれってそういうガチな意味だったのか…………」
「そうだよ? 「好き」なんて言葉を軽々しく言うわけないじゃん。ていうかもう家に婚姻届けも取ってきて家に置いてあるし」
「えっ!? 緑の紙!?」
「うん。おにーちゃんが一八になったらおにーちゃんに記入してもらって出すつもりだった」
「ちょ、お前……、え…………マジで……?」
「私が冗談でこういう事言うと思う?」
「……父さんと、母さんには…………言ったのか?」
「そりゃ知ってるよ? 毎年クリスマスパーティの時言ってるんだし。お父さんとお母さんと一緒に婚姻届け書いたし。
お父さんお酒飲みながら「そうか。さやかは司と結婚するのかぁ! 楽しみだなーさやかのウェディング姿!」って笑いながらいつも言うじゃん?
私さ? 部活とかやらずに家の家事手伝ってるでしょ?」
ちょ!? 父さん!? 何やってんの!? あんた!? 父親でしょ! 止めろよ! 大切な娘が兄と結婚しようとしてんだぞ!
「……うん。母さんといつも一緒に料理とか家事してるな」
「お母さんが「さやかが司のお嫁さんになるのなら花嫁修業にお料理とか家事教えてあげるわね」って言うから、
他のやりたい事とか友達と遊びに行くのとか全部断って家事手伝いやってる」
母さん!? 母さんは母さんで何してんの!? 何花嫁修業始めさせちゃってるの!?
……うーわー…………ガチな奴だったんかい……アレ。
うちの家の世間体ノーフューチャー過ぎだろ
≪私はマスターが気が付いてなかった事に驚きですよ≫
……よくあるじゃん? 子供が「おにーちゃんすきすきー」って言うじゃん? あのノリだと思ってたし…………
≪甘いです! マスター! 小三と言えばもう立派に女の思考してますよ!≫
小三で!? 早くない!?
≪普通です! むしろマスターが遅れてるんです! 知りませんか? 今時の小三女子はMINEで彼氏の話とかしてますよ?≫
マジで!? それ盛ってない!? 小三だよ!? 年齢一桁だよ!?
≪盛ってないです! リアルで普通にそこら中に転がってる話です! それを言うなら私だって九歳ですよ!
ましてさやかさんは高校一年生ですからそういう感情を持っていたとしても何も不思議じゃないです!≫
衝撃の事実なんだけど! 破滅の王の軍勢が救世主だった時よりショックなんだけど!
≪ささっ! マスター! さやかさんに返事をしてあげてください! さやかさん待ってますよ!≫
「……待て、さやか」
「ん? 何? おにーちゃん」
「あのな? 俺らは兄妹じゃん? いずれは元の世界戻るんだぞ?
そうなった時兄弟で恋人になりましたって言ったら変な目で見られるぞ?」
「うん。それが?」
「えっ!?」
「ふっ……おにーちゃん私を甘く見過ぎだよ。そんな事小学校の三年の時からわかってるよ」
「ええ!?」
「はぁ~……この際ぶっちゃけるとさ? 私結構モテるんだ」
「うん、だろうな。さやかは可愛いもんな」
「……でね? …………告白される時困るんだ。すっごいすっごい困るんだ……。だってその相手は私と同じように悩んで、辛くて、
それでもなんとか伝えようとして、勇気出して告白しようって私を呼び出すわけじゃん。結果がどうで有れさ……
それでさ? 断る時「好きな人がいるから」って断るんだけどさ……その相手だって傷つくわけじゃん?
……すっごい勇気だして恥ずかしいのも我慢して、友達とかに冷やかされたりするのも恐れずに私に気持ちぶつけてくるわけじゃん?
告白して玉砕した後がどんだけ無様な物かおにーちゃんだって知ってるでしょ? クラスの笑いものだったり、からかわれるネタにされたり……
そういうの覚悟して真剣に告白してきた相手にさ! 言いたくないじゃん!? 相手にもされてない男の事好きだから無理とか言いたくないじゃん!
おにーちゃんはさ、そういうの考えた事ある? 私の周りが苦しんでるかとか想像したことある? ないでしょ? ないよね? あったらあんな言葉言えるはずないもん。
私はね? そういう人達と関わりブチ切って今まで来たよ。嫌がらせだってされたよ、告白してきた男子の事が好きだった女子から虐めだって受けた事あるよ。
女子って付き合い悪かったらすぐハブるからね? 朝学校行って教室入っても女子からは全員に無視されて男子しか挨拶返してこないしさ。
それがまた男に色目使ってるとか噂になったりして嫌がらせされたりとかするよ。校舎裏の焼却炉に二週間に一度は呼び出されて、詰められるよ。
でもね、それでもいいって思ってた。いつかはおにーちゃんが私を一人の女としてみてくれるって思ってたからさ……。さっきのは…………ホントにないよ?」
……さやかが虐めにあってたなんて…………!
大馬鹿野郎だ! 俺は……! なんで気が付かなかった…………!
「……悪い。そこまで想像してなかった。…………さやか? 嫌がらせとかイジメってどの程度か聞いていいか?」
「んーとね、異世界来る前にやられた奴が一番強烈だった。ほら、よく漫画とかであるじゃん? 教室の机に落書きされて花が花瓶が供えられてる奴。あれやられたの」
「……マジかよ。あんな陰湿な事現実にする奴いるのか」
「うん、アレやられた」
「……マジか…………」
……どこの奴だ…………? さやかにそんな事した奴は……
「でね? 私が机の上にある花瓶見てため息ついてたら、なんかニヤニヤして私の事見て笑ってた女子達が居てね?
「ああ、こいつらだ」って思ってスマホで証拠の動画と写真撮りながら聞いたんだ「これやったのアンタ達?」って、そしたら
「そうだよ? だったら何?」って言って笑いながら色々煽ってきたから「こうするの」って花瓶そいつらに投げつけてやった」
「え……! マジか」
「うん……。ついカッとなって…………」
よし、ここなら誰も見てないだろ
≪はい。半径三キロ圏内に人と魔物の反応はありません≫
「さやか。降りるぞ」
「うっ、うん」
マキナ次元の扉出してくれ
≪はい≫
ブォン
次元の扉が開く
「うわっ……なっ、なにこれ!?」
「これは俺の神器が出す能力の一つで次元の扉だ。
アニメの「どんなことでもできるもん」に「どこまでもドア」ってのがあるだろ? アレだ」
「えっ。おにーちゃんの神器ってそんな事もできるの!?」
「ああ。他にも色々できる。さ、外は危ないからとりあえず入ろう。兄ちゃんは後から入るから」
「う、うん……。…………大丈夫だよね? なんか変なビョーキになったりしないよね? これ」
≪へ、変なビョーキ……≫
「兄ちゃんも何回も入ってるし大丈夫だ。まあ、確かに初めて入る時はちょっと怖いかもしれないけどな。
この扉は俺が住んでる国の部屋に繋がってる」
「う、うん。わかった。じゃあ。入ってみる……」
さやかが次元の狭間の前まで行くとピタリと止まり、微動だにしなくなる
「……ん? どうした…………?」
「……おっ…………おにーちゃん? やっぱり、怖い……」
さやかが青い顔で涙を浮かべながら俺の方を向く
ああ、やっぱ怖いのか。よし
マキナ? もう少し大きめのサイズの次元の扉って出せるか
≪はいっ≫
次元の扉のサイズがいつものサイズより倍の大きさになる
うん、これなら二人で一緒に入っても大丈夫そうだ
ありがとう、マキナ
≪はいっ≫
「よし、じゃあ。兄ちゃんと手繋いで一緒に入ろうか」
「う、うんっ」
二人一緒に次元の扉をくぐると見慣れた俺の部屋に出る
マキナが次元の扉を消す
「うわっ……!? こっ、ここどこ!? ホントに…………どこまでもドアだ……!」
≪ふふふっ。本当にマスターの妹さん可愛いですねっ!≫
だろ?
≪ええ、可愛いです≫
「ただいまー。マキナ? サポートありがとう」
≪どういたしましてっ。おかえりなさい! マスター!≫
「ああ……、紹介するよ。さやか。この子が俺の神器の「デウス・エクス・マキナ」だ。マキナって呼んでやってくれ」
≪はじめまして、さやかさん! マキナですっ≫
「……えっ? あの? おにーちゃん…………? おにーちゃんの神器はあのおっきーのと翼じゃないの?」
「そうだよ? あの大きいのと翼がマキナの別の姿なんだ」
「えええええ!? あの大きいのが……こんなに可愛い女の子…………!?」
≪はいっ! それらは私です≫
「あっ、どうもよろしくお願いします……マキナさん…………」
≪いえ。こちらこそ≫
「さやか。兄ちゃんな? マキナには助けられてばかりなんだ。恩人と言っても過言じゃないくらい世話になってるんだ。
だからさやかもマキナと仲良くしてやってくれよ?」
「そうなの!? マキナさんいつも兄がお世話になってます!!?」
≪ふふふっ。もぉ、マスター。過去私を宿したマスターでそんな事言ってくれた人はマスターだけですよ≫
コンコン……!
「司様ー? いらっしゃいますか?」
「お。レティシアか? 入っておいでよ」
「はいっ! おじゃましますっ」
挨拶をしながらレティシアが入室してくる
「……あら? こちらの方は」
「ああ。紹介するよ。俺の義理の妹のさやかだ」
「……東条さやかです。よろしくお願いします。兄がいつもお世話になってます…………」
「あら、妹さんなんですねっ! よろしくおねがいしますっ! レティシア・メルといいます」
「レティシアはにーちゃんの仕事仲間なんだ」
「仕事仲間……そっか。よろしくお願いしますっ! レティシアさんっ!」
「もう。嫌ですわ司様ったら! お嫁さんという立場も忘れてますわ」
≪レティシアさん……空気読みましょう…………≫
「えっ? 空気……?」
「おにーちゃん? ……レティシアさんがお嫁さんってどういう事…………」
さやかが肩を震わせながら、震える声で話し出す
「さやか様?」
「えっと、にーちゃんとレティシア付き合ってるんだ」
「……本当ですか? レティシアさん」
「はいっ。……うふふふっ…………」
言いながら、レティシアが俺の腕を取り組んでくる
「っ……! やめて!! おにーちゃんは私のなんだからっ!」
がっ……
さやかが俺の腕を掴みレティシアから引き離し、さやかが俺の腕を抱きながら咆える
ええええ!? ガチ切れ!? いや、ちょっとさやか!? おい! どうした!
≪どうしたじゃありませんよ……マスター…………≫
「さ、さやか? どうした……」
「どうしたもこうしたもないよ! おにーちゃんが突然居なくなって、心配で心配で夜も眠れなくなるくらい心配して……!
学校終わったらおにーちゃんの行きそうなところ足棒にして探し回って! もしかしたらどこかで事故とかに巻き込まれて、
死んじゃってるんじゃないかってすっごい哀しい気持ちで毎日過ごして! おにーちゃんの学校から家までを何回も何回も往復しながら探して!
神社でお祈りしてたらわけわかんないうちに飛ばされて、シスターさんに救世主とか神器とかわけわからない事ばっかり言われて!
やっとおにーちゃんに会えたと思ったら、ありもしない神器出せとか言われて汗だくになるまでやらされて!
それでやっと、やっと全部終わっておにーちゃんの部屋に着いたと思ったら……! おにーちゃんは異世界で彼女が出来て仲良くやってました!?
はぁぁぁぁぁぁぁ!!!? 何それ!!? 何なの今日は!! もうっ!! もうっ……もぉぉぉぉぉぉっ!!! わけわかんないんだけど!!! !」
「あの、さやか? お前きっと疲れてるんだよ。今日色々あって大変だっただろ……」
「疲れてなんかない! むしろ今ので疲れなんか吹っ飛んだよ! ホントにホンットにおにーちゃんはぁ……! !」
≪さやかさん。心中お察しします……≫
マキナちゃん!? 俺の味方してくれよ! 君俺の神器だよね!?
≪マスターこれは擁護無理です。ごめんなさい≫
もしかして……、俺が気が付かないうちに何かしたのか…………? 俺が何をしたっていうんだ……
≪何もしてないからですよ!≫
えぇ……?
「大体さ!? なんで!? なんでおにーちゃんに彼女が出来てるの!? おかしくない!?」
さやか? さすがにそれはにーちゃん傷つくぞ……
「お、俺だって彼女くらいできるだろそりゃあ……」
「だって! 元の世界の時同級生には全然全っ然モテなかったじゃん!? 一回も家に同級生の女の子連れてきた事ないじゃん!?
何? 異世界パワー? マキナさんの能力で好きにさせたの!?」
「……さやか? それはレティシアに失礼だぞ」
「違います。私が司様に惹かれたのは優しい所ですよ」
≪……マスターの為に私が一肌脱ぎましょう!≫
おお!? マキナちゃん! 言ってやって言ってやって!
≪さやかさん。大切な事をお知らせします≫
「……なんですか? マキナさん…………」
≪マスターには、レティシアさんの他にソフィアさんという婚約者の方がいます≫
マキナちゃん!? そうじゃないでしょ!?
「はぁぁぁぁぁぁ!? どっ! どういう事なの!!! おにーちゃん!! まさか二股!? 私も入れたらハットトリックじゃん!?」
俺は膝をつきさやかの両腕を持ち、目線を下からさやかの目に向ける
「……それは違うぞ、さやか。…………いいか? この世界は異世界で、ここはエルトって国なんだ。
俺らの元居た世界の日本じゃない。これは、わかるな?」
「……うん。それで?」
「でな? このエルトって国は一夫多妻制が認められてるんだ」
「いっぷたさいせいって何?」
「えっとな。簡単に言うと、一人の男が複数のお嫁さんをもらってもいいって法律」
「えっ!? 何それ!? そんなのあるの!? おにーちゃん!?」
「ああ、あるんだ。俺らの元の世界だと外国とかである制度だから、さやかが知らなくても仕方ないよ。
だからこれは浮気でもなければ二股でもない。これは「もう一つの恋」と言うんだ」
「つまり……それって。レティシアさんをお嫁になってもらってそのソフィアさんにもお嫁になってもらって、さらに私がおにーちゃんと結婚してもいいって事だよね!?」
「ああ……そうだ。…………ん? え? いや、今最後何て言った?」
「え? いっぷたさいせいなら、複数の女の人と結婚できるんでしょ?」
「うん、そうだよ?」
「だから、おにーちゃんはレティシアさんとそのソフィアさんって人と結婚しても、
その後に私がおにーちゃんと結婚しても大丈夫ってことだよね?」
ん……!? えぇ…………!?
≪そうですね。大丈夫です。さやかさんは義理の妹ですし、何も問題はありません≫
マキナちゃん!? なんでさやかの援護に回ってんの!?
≪いやぁ……。女として凄く共感できる部分が多々ありまして…………≫
「なーんだ! じゃあ問題解決じゃん!! いいじゃん! それ! 異世界ってサイコーじゃん!! !
「もう一つの恋」があるなら「三つ目の恋」があってもいいって事だよね!
あっ!? レティシアさん!? さっきはごめんなさい! 私失礼な事言っちゃって……!」
「いっ、いえ!? 大丈夫です! はいっ」
≪おぉ~……「三つ目の恋」と来ましたかぁ。間違いなくマスターの妹さんですねー≫
マキナちゃん!? 何を感心してるの! 止めて!? さやかを止めて!?
≪無理です≫
ええっ!? マキナが俺に「無理です」って言った!?
≪いくら私でも無理なものは無理です。マスター……≫
「に……、にーちゃんは何も問題は解決してないと思うよ!? さやか!」
「えっ? 何か問題あるの?」
「……えぇ? いや、あの、ちょっとまって? …………さやか? 俺の事を「男」として好きなの? 俺らは兄妹だぞ? わかってるか」
「うん。わかってるよ? 義理のね? 私おにーちゃんが好きって割と言ってるよね? お昼もあの大聖堂で言ったし……」
「それはあの、兄妹としての「好き」じゃなくて?」
「うん。小三の頃から言ってるよね? 私。
「大きくなったらおにーちゃんのお嫁さんになる」って私とおにーちゃんの誕生日とクリスマスのパーティを家でする時に必ず言ってるよね?
もう色々合わせて千回は言ってると思うんだけど? おにーちゃんだって「ああ、結婚しような」って毎年言うでしょ」
「言ってたけど、ええ……あれってそういうガチな意味だったのか…………」
「そうだよ? 「好き」なんて言葉を軽々しく言うわけないじゃん。ていうかもう家に婚姻届けも取ってきて家に置いてあるし」
「えっ!? 緑の紙!?」
「うん。おにーちゃんが一八になったらおにーちゃんに記入してもらって出すつもりだった」
「ちょ、お前……、え…………マジで……?」
「私が冗談でこういう事言うと思う?」
「……父さんと、母さんには…………言ったのか?」
「そりゃ知ってるよ? 毎年クリスマスパーティの時言ってるんだし。お父さんとお母さんと一緒に婚姻届け書いたし。
お父さんお酒飲みながら「そうか。さやかは司と結婚するのかぁ! 楽しみだなーさやかのウェディング姿!」って笑いながらいつも言うじゃん?
私さ? 部活とかやらずに家の家事手伝ってるでしょ?」
ちょ!? 父さん!? 何やってんの!? あんた!? 父親でしょ! 止めろよ! 大切な娘が兄と結婚しようとしてんだぞ!
「……うん。母さんといつも一緒に料理とか家事してるな」
「お母さんが「さやかが司のお嫁さんになるのなら花嫁修業にお料理とか家事教えてあげるわね」って言うから、
他のやりたい事とか友達と遊びに行くのとか全部断って家事手伝いやってる」
母さん!? 母さんは母さんで何してんの!? 何花嫁修業始めさせちゃってるの!?
……うーわー…………ガチな奴だったんかい……アレ。
うちの家の世間体ノーフューチャー過ぎだろ
≪私はマスターが気が付いてなかった事に驚きですよ≫
……よくあるじゃん? 子供が「おにーちゃんすきすきー」って言うじゃん? あのノリだと思ってたし…………
≪甘いです! マスター! 小三と言えばもう立派に女の思考してますよ!≫
小三で!? 早くない!?
≪普通です! むしろマスターが遅れてるんです! 知りませんか? 今時の小三女子はMINEで彼氏の話とかしてますよ?≫
マジで!? それ盛ってない!? 小三だよ!? 年齢一桁だよ!?
≪盛ってないです! リアルで普通にそこら中に転がってる話です! それを言うなら私だって九歳ですよ!
ましてさやかさんは高校一年生ですからそういう感情を持っていたとしても何も不思議じゃないです!≫
衝撃の事実なんだけど! 破滅の王の軍勢が救世主だった時よりショックなんだけど!
≪ささっ! マスター! さやかさんに返事をしてあげてください! さやかさん待ってますよ!≫
「……待て、さやか」
「ん? 何? おにーちゃん」
「あのな? 俺らは兄妹じゃん? いずれは元の世界戻るんだぞ?
そうなった時兄弟で恋人になりましたって言ったら変な目で見られるぞ?」
「うん。それが?」
「えっ!?」
「ふっ……おにーちゃん私を甘く見過ぎだよ。そんな事小学校の三年の時からわかってるよ」
「ええ!?」
「はぁ~……この際ぶっちゃけるとさ? 私結構モテるんだ」
「うん、だろうな。さやかは可愛いもんな」
「……でね? …………告白される時困るんだ。すっごいすっごい困るんだ……。だってその相手は私と同じように悩んで、辛くて、
それでもなんとか伝えようとして、勇気出して告白しようって私を呼び出すわけじゃん。結果がどうで有れさ……
それでさ? 断る時「好きな人がいるから」って断るんだけどさ……その相手だって傷つくわけじゃん?
……すっごい勇気だして恥ずかしいのも我慢して、友達とかに冷やかされたりするのも恐れずに私に気持ちぶつけてくるわけじゃん?
告白して玉砕した後がどんだけ無様な物かおにーちゃんだって知ってるでしょ? クラスの笑いものだったり、からかわれるネタにされたり……
そういうの覚悟して真剣に告白してきた相手にさ! 言いたくないじゃん!? 相手にもされてない男の事好きだから無理とか言いたくないじゃん!
おにーちゃんはさ、そういうの考えた事ある? 私の周りが苦しんでるかとか想像したことある? ないでしょ? ないよね? あったらあんな言葉言えるはずないもん。
私はね? そういう人達と関わりブチ切って今まで来たよ。嫌がらせだってされたよ、告白してきた男子の事が好きだった女子から虐めだって受けた事あるよ。
女子って付き合い悪かったらすぐハブるからね? 朝学校行って教室入っても女子からは全員に無視されて男子しか挨拶返してこないしさ。
それがまた男に色目使ってるとか噂になったりして嫌がらせされたりとかするよ。校舎裏の焼却炉に二週間に一度は呼び出されて、詰められるよ。
でもね、それでもいいって思ってた。いつかはおにーちゃんが私を一人の女としてみてくれるって思ってたからさ……。さっきのは…………ホントにないよ?」
……さやかが虐めにあってたなんて…………!
大馬鹿野郎だ! 俺は……! なんで気が付かなかった…………!
「……悪い。そこまで想像してなかった。…………さやか? 嫌がらせとかイジメってどの程度か聞いていいか?」
「んーとね、異世界来る前にやられた奴が一番強烈だった。ほら、よく漫画とかであるじゃん? 教室の机に落書きされて花が花瓶が供えられてる奴。あれやられたの」
「……マジかよ。あんな陰湿な事現実にする奴いるのか」
「うん、アレやられた」
「……マジか…………」
……どこの奴だ…………? さやかにそんな事した奴は……
「でね? 私が机の上にある花瓶見てため息ついてたら、なんかニヤニヤして私の事見て笑ってた女子達が居てね?
「ああ、こいつらだ」って思ってスマホで証拠の動画と写真撮りながら聞いたんだ「これやったのアンタ達?」って、そしたら
「そうだよ? だったら何?」って言って笑いながら色々煽ってきたから「こうするの」って花瓶そいつらに投げつけてやった」
「え……! マジか」
「うん……。ついカッとなって…………」
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