42 / 53
いざ人里へ
ヤニの家(風呂)
ヤニと横並びで歩いていると、炯におんぶされてる零が口を開いた。
「ねぇねぇ、気になってたんだけどいい?」
「?どうしたの?」
「この村は襲われないの?村の入口の柵程度じゃ魔物が越えてきそうだし、すぐ壊されそうなんだけど。」
この村は平和そう。だが村の外に出たらゴブリンや森狼などがウヨウヨしている。だから零は不思議で仕方がなかった。
「んっと、村の入口の柵覚えてる?柵にキラキラした石がくくりつけられてたと思うんだけど、あの魔石があるお陰で村の中は安全なんだ!だからイタズラとかで触ったらとっても怒られるんだからね!」
ヤニから説明を受けている最中炯は相槌を打ち、零は黙って何かを考えてた。
そうこうしている内に井戸の場所を案内された後、ヤニの家へ案内されると裏手の方で身体を洗えるよと言われた。零を抱えたままいけば布一枚の隔たりしかない外の小スペースで2人してショックを受けた。
「壁とか扉とかないしキッツ…嘘でしょ。あ、これってあれじゃ?足洗い場!」
学校にある外の足洗い場を狭くしたような場所で布一枚の隔たりしかない状況で裸になって身体を洗わなければいけない事に2人して抵抗が凄く強かった。
「炯、先に行きなよ。」
「いや、零のが怪我酷いから先に入った方がいいよ。傷口からバイ菌入って化膿したら大変だし」
お互い最初に入るのを譲り合いグダグダしていたのを見かねてヤニが一言
「一緒に入れば?」
と言った瞬間…
「「それは絶対嫌」」
同時にヤニの方へ顔を向ける2人の台詞がシンクロした。
大浴場なら問題なく入れるが流石に狭すぎる...
これでは埒が明かないとため息を零す炯は突然キリッとした表情になり口を開いた
「俺が外で見張りするから…ね?覗いたりしないから!」
「いや、その台詞が犯罪くさい」
炯がふざけるので零はわざと冷たい視線を向けバッサリ言い捨てた。
「ひどいわっ!ぐすん...零ってば俺の事そんな風に見てたんだね!!」
零の台詞を聞くやいなやわざとらしい台詞を吐く炯は実際には全く傷付いていなかった。
2人してギャグ漫画のようなコントを繰り広げると場が少し和んだ。
場のノリについていけないヤニは2人が喧嘩していると勘違いしてオロオロと少し慌てている
「まぁ怪我してるから服脱がせたり協力はするよ?着替えや身体洗ったり..介護いる?」
コントを終えたのでそろそろ真面目に風呂の事を考えようと思い零へどうしたいか尋ねると
「えー…意地でも自分でやる」
怪我してるのでやりにくいが羞恥心もあり一瞬迷いが生じたが自力でする事を選んだ
「言うと思った、じゃあ水汲みしてくるから何かあれば呼んで。」
長年の付き合いだから零ならそう言うだろうなと思った炯は水を汲んで来るとその場を離れた。決して1番に入りたくないからではないと心の内でコッソリ呟いた。
「あれ?なんで僕が1番に入る事になってるの?おかしくない?大体どうやって呼べばいいんだよ。逃げたなアイツ」
案内のヤニと共に取り残された零は空を仰ぎ見た
「いっ...あー…しんど」
炯が井戸から汲んできた水で身体を洗うが傷口に染みる。身体はあちこち痛いし、汗や汚れでベタベタして気持ち悪い。ボディーソープや石鹸もなければシャンプーとかもあるわけがない。体を洗うスポンジがないので布で身体をゴシゴシと擦れば多少汚れは落ちた気がした。ただ匂いがまだまだ臭いのでどうにかしたくて仕方がない。
異世界は異世界でももう少し文化的に発展したところにしてくれればよかったのに…神の(自主規制)野郎
等と零は思わざるをえなかった。
「ねー、服汚いけど着替えどうすればいいと思う?」
入る前にヤニから受け取ってた薄汚い布で濡れた身体を拭くと布越しに外で待ってる炯に向かって叫んだ。
「ヤニに聞いてくるからちょっと待っててー」
零に一声掛けてからヤニの元へ行き尋ねると男性ものだろうか?大きめの服を渡してくれたのでそれを受け取り零の元へ急いだ。
「おまたせ」
布の隙間から手を入れて服を渡すと手に持ってた服の感覚が消えたので零が受け取ってくれたんだろうと思い手を引っこめた。
「ありがとう。....デカイね。」
炯から服を受け取った零はいそいそと着替え始めたがウエストがぶかぶかすぎてズボンは諦めた。下着は洗ったので履いていない。
くすんだ色のTシャツっぽい服に袖を通し終えると、思ったより大きく膝下まであったのでロングTシャツのようにも見えるだろう。
ただ今まで着ていた服が問題だ。血が落ちない。あちこち破れたり擦れてボロボロ。服を借りることは出来たが下着の予備などないので今から下着を最優先で乾かさなくていけない。が、どこに干せばいいか分からず悩んでいた。
「零?着替えが難しければ手伝おうか?」
怪我してる場所が痛むので服を着るのに時間が掛かってると勘違いした炯は布越しに声を掛ける
「あー大丈夫、下着をどこで干そうか迷ってただけだから」
水洗いの後手絞りした下着を手に炯の元へ姿を出した。
「あー..じゃあまとめて干しとくから足下に置いてて。ヤニからベッド使っていいって言われたから零は背中に乗って」
零に背中を向けしゃがみこんだ炯は零をおんぶするとゆっくり立ち上がり家の中のベッドまで運んだ。
「よいしょ、俺も水浴びてくるから零は休んでて」
零をベッドに下ろすと自分も水浴びする為外へ出た。
「うん、いってら」
固くて少しカビ臭いベッドだが今までの疲労もあったのだろう。1人残された零は急に眠気が襲ってきてベッドの上にパタンと倒れこんだ。炯が戻って来たらこれからどうするか話をしようと思ってたが瞼が重くて上がらない。意識が遠くなっていつの間にか眠りに落ちた。
「身体ベタベタするー、髪ギシギシするー、寒いー、風吹くなよ!布捲れるじゃん!」
零が夢の中へ誘われてる間1人でぶつくさ文句を言いながら手早く水浴びをする炯だった。
あなたにおすすめの小説
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。