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宣誓
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公爵家から、使用人たちに伝えることは以下。
シーナ・ティア・オイン嬢の行動を妨げない。
シーナ・ティア・オイン嬢の持ち物を損ねない。
シーナ・ティア・オイン嬢の私室に立ち入る時は、必ずシーナ・ティア・オイン嬢の立会いの下で。
シーナ・ティア・オイン嬢の身の安全を脅かす行為は、公爵家への反逆とみなす。
シーナ・ティア・オイン嬢には、王太子と共に次期当主であるアルベールの剣が守護としてあるため、誰の命令であっても傷つけることは許さない。
最後の文言は公爵夫人ではなくアルベール自身が付け加えたものだが、シーナはジロリと睨む。
「……ちょっと言い過ぎじゃない?」
「……言い訳に『ルエナから命じられた』という言葉を使うことを避けたい」
両親には聞こえないようにそっと素早く囁き、アルベールはするりとソファから滑り降りてシーナの前にひざまずいた。
「我が剣と忠誠を御身に。あなたを傷つける者があれば、私が必ず報いを。あなたを傷つけた者があれば、私が必ず後悔を。すべて白日のもとに晒し、正しい裁きを与えましょう」
「……アルベール・ラダ・ディーファン次期公爵様。あなたの忠誠と剣の力をお受けいたします。私の命ある限り、誓いを守られることを望みます」
それは主君と臣下の誓い。
爵位的にはあり得ないこの誓いも、ふたりがまだ『子息・令嬢』という曖昧な身分にいるため、そしてここが正式な場ではないからこそ成り立つものだったが、それをディーファン公爵夫妻と家令、家政婦長の前で行うことこそ意味があった。
もっとも『悪口を言わない』を付け加えなかったのは、逆にそれを行う者がいた場合、その動きを監視する目的もあったのだが、アルベールは歯噛みしながらもそこは自重している。
子爵令嬢が公爵家でその地位に見合わぬほどの待遇を受ければ、たとえ外部の者に命じられた以外でも忌々しく思う者はきっといるだろう。
だが、それを口に出すだけなのか、実際に害しようと行動するのか──そこが運命の分かれ道だ。
そして使用人たちのトップに聞かせたのは、万が一自分の意志でシーナ嬢の身に何かやらかす者がいた場合は、アルベールが認めた場合は問答無用で切り捨てられる可能性がある──そしてそれは己の『管理監督不行き届き』という烙印を押され、失態とみなされた上で最悪失職させられるという宣言である。
さすがにその場で立ち去って全使用人に徹底させるほど、公爵家の最上使用人として躾ができていないわけではなかったが、下がるようにと言われて先を争うように家令は従僕から下男、家政婦長は本来管理下にはないが特別に専属侍女から下女まで、それぞれ使用人を集めた。
公爵夫人及びアルベールが申し伝えたことと、アルベールが子爵令嬢に向かってこの屋敷内で暴力など理不尽な待遇を受けた場合はその者を処分するという誓いを立てたため、命が惜しければ賢明な判断をするようにということをかなりはっきりとした言い方で伝える。
不満そうな顔をした者を記憶するが、同時に顔を青褪めた者は後ほど面談を行うべきだと、家令のスチュアートと家政婦長のアメリアはそれぞれにしっかりと脳に刻み付けた。
シーナ・ティア・オイン嬢の行動を妨げない。
シーナ・ティア・オイン嬢の持ち物を損ねない。
シーナ・ティア・オイン嬢の私室に立ち入る時は、必ずシーナ・ティア・オイン嬢の立会いの下で。
シーナ・ティア・オイン嬢の身の安全を脅かす行為は、公爵家への反逆とみなす。
シーナ・ティア・オイン嬢には、王太子と共に次期当主であるアルベールの剣が守護としてあるため、誰の命令であっても傷つけることは許さない。
最後の文言は公爵夫人ではなくアルベール自身が付け加えたものだが、シーナはジロリと睨む。
「……ちょっと言い過ぎじゃない?」
「……言い訳に『ルエナから命じられた』という言葉を使うことを避けたい」
両親には聞こえないようにそっと素早く囁き、アルベールはするりとソファから滑り降りてシーナの前にひざまずいた。
「我が剣と忠誠を御身に。あなたを傷つける者があれば、私が必ず報いを。あなたを傷つけた者があれば、私が必ず後悔を。すべて白日のもとに晒し、正しい裁きを与えましょう」
「……アルベール・ラダ・ディーファン次期公爵様。あなたの忠誠と剣の力をお受けいたします。私の命ある限り、誓いを守られることを望みます」
それは主君と臣下の誓い。
爵位的にはあり得ないこの誓いも、ふたりがまだ『子息・令嬢』という曖昧な身分にいるため、そしてここが正式な場ではないからこそ成り立つものだったが、それをディーファン公爵夫妻と家令、家政婦長の前で行うことこそ意味があった。
もっとも『悪口を言わない』を付け加えなかったのは、逆にそれを行う者がいた場合、その動きを監視する目的もあったのだが、アルベールは歯噛みしながらもそこは自重している。
子爵令嬢が公爵家でその地位に見合わぬほどの待遇を受ければ、たとえ外部の者に命じられた以外でも忌々しく思う者はきっといるだろう。
だが、それを口に出すだけなのか、実際に害しようと行動するのか──そこが運命の分かれ道だ。
そして使用人たちのトップに聞かせたのは、万が一自分の意志でシーナ嬢の身に何かやらかす者がいた場合は、アルベールが認めた場合は問答無用で切り捨てられる可能性がある──そしてそれは己の『管理監督不行き届き』という烙印を押され、失態とみなされた上で最悪失職させられるという宣言である。
さすがにその場で立ち去って全使用人に徹底させるほど、公爵家の最上使用人として躾ができていないわけではなかったが、下がるようにと言われて先を争うように家令は従僕から下男、家政婦長は本来管理下にはないが特別に専属侍女から下女まで、それぞれ使用人を集めた。
公爵夫人及びアルベールが申し伝えたことと、アルベールが子爵令嬢に向かってこの屋敷内で暴力など理不尽な待遇を受けた場合はその者を処分するという誓いを立てたため、命が惜しければ賢明な判断をするようにということをかなりはっきりとした言い方で伝える。
不満そうな顔をした者を記憶するが、同時に顔を青褪めた者は後ほど面談を行うべきだと、家令のスチュアートと家政婦長のアメリアはそれぞれにしっかりと脳に刻み付けた。
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