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知識

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一応は花も恥じらう十七歳──ではあるが、この世界では早婚が当たり前で、身分を問わず十五歳か十六歳で初夜から妊娠・出産まで一直線な人生を送る娘も多い。
だから閨でナニがどう行われているかというのをもう知って──はいないようで、さらにシーナから距離を取っている。
「……女性は嫁ぐ前にその……手ほどきを教える者が雇われたり、それができない場合は母親が直接『心得』を教えるんだ……その男の場合もちょっと『勉強』というのは……シオ……シーナ嬢や殿下の記憶とは……」
「なぬっ?!じゃ、じゃあ……本来だったらリオンで…殿下でも、直前にならないとしっかりお勉強しないわけ?」
「そういうことに……建前上はなっているが、男兄弟や従兄弟、もしくはすでに経験のある男友達が自慢するために『どうしたらいいのか』と話す場合もあるし……その、娼館に連れて行かれる場合も……」
言いづらそうに、そして周りには決して聞こえない音量で、アルベールがシーナに教えてくれる。
それはゲームの中では決して語られない『現実』の中に存在するルールや『お決まり』らしい。
「ああ……そっか……それでリオンが前に怒っていたのか……」
「当たり前だろう……たとえ王族が貴族たちよりも『子孫を確実に残す』という使命を負っていたとしても、十五歳になる前に誰かがその身体を穢すようなことや知識を教え込むことは犯罪だ」

なるほど。

シーナは頷いた。
「アルベールはもうその手の洗礼は受け済み?」
「食事のできる娼館に連れて行かれたことがある……よけいなおせっかいをしたい奴らにな。父上はきちんと手順を踏んで、できれば王宮で王太子殿下に手ほどきをする者に依頼したかったらしい」
「え?なんで?」
「たぶん……俺が王太子殿下が成人した時に最側近になる予定の人間だから……そういった手ほどきを依頼される場合もあるかもしれない。しかし、その際に間違った情報というか女性の扱い方を教えないように……ということだと思う。今現在もだが、ルエナが王太子殿下の婚約者であるから、俺が変なことを殿下に教えるはずがないというのが一番だろうな」
「そうね……まさか兄が義理の弟になる男に、妹に対してSMプレイをやれとかけしかけるような変態だとは考えないしね」
「え…えす、えむ?」
「いわゆる女性に対して加虐的嗜好を持って性交に及ぶ、ということ」
「かっ……」
「大丈夫。リオンは絶対そんなことしないし、たぶんこの世界の誰よりもルエナ様を大切に、そして女性の悦びも教えるから」
「よろ……女性も、その……よろこぶ、とは……?」
顔を真っ赤にして囁くアルベールを見て、シーナは「あ、これはDTかも」と察する。
「……それは逆にあいつに教えてもらったらいいと思うわ。知識としては知っているけれど、私自身も知らないから」
それはシーナ自身の潔白をも意味しているのだが、はっきり言って前世のことがあって自分自身については語りたくないシーナは無意識に顔を強張らせた。


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