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逮捕

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バタバタと足音高くやってきたのは、コソコソ逃げたベレフォンではなく、数人の学園衛兵であった。
貴族の子女が多く通う学園のための警備で、近衛兵の中でも比較的経験の浅い者たちが遣わされている。
「ここで暴行騒ぎがあったと聞くが?」
「ええ。暴行犯はこの教室の中に」
「いや……おこなったのは、ディーファン公爵令息、あなただという通報だが」
「何ですってぇ?!」
どうやら顔見知りらしい衛兵長とアルベールがやや睨み合いながら交わす言葉に反応したのは、『被害者である』と言われた子爵令嬢だった。
「襲われたのはアルよ!今は協力してもらってるけど、イストフ・シュラー・エビフェールクス辺境侯爵令息を含めた五…いえ、四人ね。ひとりは逃げたから」
「逃げた?協力?いったいどういう……?」
「イェーン衛兵長……ちょっと確認したいんだが、一体誰があなたたちに通報したんだ?」
「え?ああ……どこかの男爵令嬢の侍女だとか……ディーファン公爵家の令嬢が兄を唆して、王太子殿下の側近並びに側付きの子爵令嬢に暴行を加えているため、告げ口がバレて迫害されるのは嫌だから家名は言えないと言われて……」
「迫害……」
「ルエナ様が唆し……」
イェーンと呼ばれて返事をしたその衛兵長が傷ひとつないシーナ嬢と、同じく無傷のアルベール、そしてそんなふたり付き従うように一歩下がって後ろに控えるイストフと順番に視線を向けたが、反応したのはアルベールとシーナだった。
「……何か物凄く誤解があるようだが。声をかけたのは家名不明の『侍女』であり、男子生徒ではなかったと?」
「男子?いや、顔を伏せていたのでしっかりと見たわけではないが、そちらの令嬢と同じような体つきで少し背は高めだったか……声も作っている様子もなかったし、手指も女性のものだったと記憶しているが」
不審者を見憶えるためか、顔以外の描写を聞かせてもらったが、痩せてはいてもそれなりに高身長のベレフォンではないのははっきりした。

であれば──

「ルエナ様が学園内にいらっしゃった……好機と捉えたのかも」
「ああ」
急いで駆け付けたのに騒ぎなど起きておらず、一体何に巻き込まれたのかと困惑するイェーン衛兵長を前にして、シーナとアルベールは顔を見合わせて頷いた。


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