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禁恋

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結局のところ「ありがとう」と「もういいわ」以外の言葉も下々の者にかけた覚えはなく、シーナとエルネスティーヌ嬢の好奇心に満ちた視線を、ルエナ嬢はまともに受け入れられずに逸らすしかない。
「まぁ~……ルエナ様はお姫様だもの。そういうことを言っちゃいけないっていうのもあるかもしれないですよねっ!」
「えっ……ル、ルエナ様は、お姫様……?」
「うふふ……今の王家の血は引いていないけれど、王太子様にはディーファン家の血が流れていますのよ?」
「ま、まぁっ……では、ルエナ様と王太子殿下は近しい……?」
「確か三代以上前にディーファン家の女性が王家へ嫁がれたから、はとこ以上の遠縁であるから『近しい』とは言い難いと思いますけど」
『禁じられた恋』というのは乙女心をそそるような題材なのか、生き別れた異母きょうだいが素性を知らずに愛し合うという恋物語が巷にあるぐらいだから、恋愛に対する興味は異世界だろうとあまり変わりはないらしい。
さすがにこちらでもそんな血族近親婚などは遥か古代の話だろうが、いまだにいとこ婚で一族の結束を固めている貴族は存在する──そういえば。
「確かエルネスティーヌ様も、イス…エビフェールクス辺境侯爵家のご兄弟とは血縁関係が……?」
「え……まぁ……」
シーナがそう水を向けると、年下の伯爵令嬢は顔を曇らせた。
(これはイストフにもチャンスはないんじゃ……)
せっかく自分への横恋慕が無くなったのだから優しい目でイストフの初恋を応援したいが、お相手にと望むこの可愛らしいエルネスティーヌ嬢にその気がなければ、話を進めるわけにはいかない。
「その……イストフ兄様が王都の学校に入られてしまってからはあまりお会いできてないのですが……そ、その……テフラヌ兄様は……ちょっと……その、こ、怖くて……」
「怖い?」
「はい…………」
俯いたエルネスティーヌ嬢は顔を赤らめ、言いにくそうに身動ぎをした。


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