すみません。その魔王は親友なので、勝手に起こさないでもらえます?

行枝ローザ

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賢者、王都に旅立つ。

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それにしても良い子だ──魔獣なのに、何故だろう?
とはいえ私自身にある魔物の知識は図鑑で見たり、他の冒険者たちがダンジョンで見つけて退治したモンスターたちの特徴などを教えてもらう程度であり、隷従させた魔物については転生し続けた人生のどこにもテイマーの知り合いがいないためまったくわからない。
「本当にお前は変わった子だねぇ」
そう言いながらウルの頭から痩せて背骨の形すらわかる身体まで撫でてやるが、まるで躾のちゃんとできた犬のように、気持ちよさそうに撫でられたままゆっくりとミンチ肉を味わっている。
《やっぱり変わっていますか?父も母も、ウルが一緒にいると迷惑だと言っていました。ウルがいると、餌を逃がしてしまうから》
「餌を逃がす?」
《ウルたちのようなウルフだけでなく、まあ魔獣は魔物たちを食べます。魔獣同士でも力の強いものが弱いものを食べることもありますけど……ノームはどちらかと言うと魔物というより精霊に近い種族で、魔物より美味らしいんです》
クゥ~ンと悲しそうな鳴き声を上げながら、人間で言えば溜め息をつくのに近い感じでウルが念話を続けるのを、私とミウはそばで座って聞いてやる。
《ウルはウサギとかネズミとか……普通の動物の方が美味しいと思うんですが、両親やきょうだいたちは魔力を帯びた方がいいって……なら、魔草とかでも良くないですか?なんなら魔草の上の朝露なんて甘露です!》
「魔物のベジタリアン……」
「いや、肉を食べるからベジタリアンではないでしょう?でも、確かに魔獣なのに普通の動物肉の方がいいなんて面白い。私は面白くて良い子を従獣にしたようですね」
《あっ!ウルの友達がいました!あの子たちです!》
え?と思って目を上げると、モフッとした毛玉のようなものがぴょこんと木の陰に見えていた。
しかもその数はひとつ、ふたつ──さらに増えていく。
《わが友ー!どうしたっ?!また虐められたのか?その人間に無理やり魔物を喰わされたのかっ?!》
『モフ』に手足ができてさらに身体が現れ、何故かその手に細いつまようじな剣まで携え、彼らは私たちを取り囲む。
「うふっ、あははっ、きゃぁ~、何か可愛い!いやぁ~ん!くすぐったい~」
自然と防御力が上がっているのか、ミウは毛玉モドキの持つ剣に突かれて笑っていた。
そのおそらく『攻撃』らしきものは私にも行われていてチクチクと確かにくすぐったいが、モフモフたちはどんどんウルのそばに集まって護るように囲んでいるのを見て少し感動する。
「ふふっ……ああ、そうか。ウルの『友達』はこの森のノームたちなのか」
《はいっ!良い人たちです!だからウルがウサギとかネズミを届けます!そうしたら朝露をくれるんです!》
なるほど──ウルが魔物の魔力を取り込まずとも魔獣として生きてこれたのは、どうやらノームたちの集める朝露を飲んでいたためらしい。

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