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賢者、寄り道をする。

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よくよく見るとモフモフたちはただのモフモフではなくちゃんと身体があるのだが、伸びっぱなしの髪や髭で綿毛のようになっている。
「いやでも……確かに精霊に近い種族と仲の良い魔獣なんて……仲間にしてみたら差別とか排除の対象になってしまうかもなぁ……」
「パトリック賢者様ぁ~!くふっ!きゃははっ!もっ、もうっ!このヒトたち、どうにかなりませんかねぇ~?!もう~!ずーっと突っついてきてぇ~く、擽ったすぎぃ~!」
「え?」
ケラケラと笑うミウにもモフモフたちが集まり、今では痛めつけようとするよりも笑わせようとしているようにしか見えない。
「……ウル?彼らに止めるように言ってくれないか?」
《うん?我が友、名前が付いたのか?》
《付いたのです!ウルは、ウルって言いました!》
《ウル!良い名だ!!良い主人だ!長老に会わせよう!》
「え?長老?」
そう口をはさんで、やっと私は気が付いた──私はウルとだけでなく、何故かノームたちと会話ができていることに。
「……な、何で……?」
《ウルは我が友!》
《我が友ー!!》
《我が友の主人は、我が友ー!》
《我が友ー!!》
「そ、そういうものですか……あ、では」
単純なような、そうでないような理屈を聞いても、私と彼らが会話をできる理由がよくわからなかったが、ついでにミウとも話せるようにならないかと思いついた。
「彼女とも意思疎通ができるようになりませんかね?」
《アレは楽しい!良い子!でも、ウルの友か?》
「ええ。ウルの友達で、私の仲間です。とても良い子ですよ」
《よく笑う!良い子!!これ、飲ませる!》
そう言って差し出されたのは、小さな筒である。
「それは……?」
《飲む!器!!》
望んでいる回答はくれなかったが、その筒の中の物を入れる物を寄こせと身振り手振りで催促され、私たちの持つ器の中でもなるべく小さな物を差し出した。
《小さい!もっと!大きいの!》
「え…えぇ~?」
疑いながらも普通に水を飲むためのコップを出すと、小さな音を立てて栓を抜いたノームは、私の手に乗って筒を傾けた。

コプ…
コプコプコプ……

それはマジックバッグのように亜空巻収納ができる物だったらしく、たっぷりとコップに虹色に輝く水が溜まる。
「こ、これ……?」
《それが、ウルがいつも飲ませてもらう甘露です!ご主人!ミウ様がそれを飲めば、しばらくの間はウルの友とお話ができます!》
「はぁ~……これが『甘露』……」
ふわりと甘い香りが漂ってくるのにつられて私は思わずつばを飲み込んでしまったが、ノームに止められてしまう。
《それはあの良い子の!お前は長老からもらう!》
どうやら私専用に別に甘露水をもらえるらしい。
まずはミウにこの水を飲ませてから、彼らの言う『長老』の下に案内してもらうことにした方がいいのだろう。

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