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第3章:冷静にゲームクリアを分析する
47:冷静に二学年を迎える
しおりを挟むあの奇襲攻撃を仕掛けた日の後、エレーナは姿を現さなくなった。
薬の件も調べると、やはり倉庫から在庫数がいくらか減っており、エレーナの仕業とし解決した。薬を作り出した、アンジュもドリスさんもその事件の流れを聞き、たいそう驚いていた。そして、それ以降よそ者に薬が安易に流れないよう規制を厳しくすることに決めたのだった。
一年はあっという間に過ぎていき、私たちはなんと二学年を迎えていた。
「ちょっと~辛気臭い顔してどうしたの?アティス。あなたまた、エレーナのこと考えてたでしょう?あんたがそう言う顔するのは大抵そのことなんだから。アメは帰ってきません。諦めなさい!
それよりも私たち、明日から二学生よ!ジャッジメントもある大事な年!なにがなんでもみんなで幸せになってやろうじゃない!支配人なんて怖くないんだから。おほほほほ」
いい加減に気持ちを切り替えよう。
そう、二学年といえばジャッジメントである、魔法旅行でのペア決めがある。
そして何より、ファイ様が二年時編入でこの学園にやってくるのだ、この年は重要な年。良いものにしなくては!!
「ちょっと、ねえさんたち?さっきから僕がいるのわかってる?
二人は一つ上がるだけだけど、僕は入学する立場、一年目なんだよ!少しは僕に気遣って話進めてくれない??」
あ、そうだった。
安全圏のジェイの存在をすっかり忘れていた。そう、彼も攻略対象で一年生になるのだ。
「お、オメデトウゴザイマス」
「ちょっと、二人とも心籠もってなさ過ぎ~!!」
そんな話をして笑っている時だった。
「アティスちゃんたち!ここにいたのね。ちょうどよかった!
アンジュからあなたちに重要な報告があるそうよ。アンジュいらっしゃい。」
車椅子を押されてアンジュが現れた。
少し頬が赤くなんだか緊張している様子…
「あのう…私も、今年から学園に通えることになりました!!!
そ、そのう。お姉さま方、よろしくお願いいたしますわ!!」
私たちは素直に喜んだ。
最初は病気で伏せがちだったアンジュが、自分で治療薬を作り出し、学校に通えるまでになったのだ。
私たちはアンジュを歓迎した。
「アンジュ、おめでとう!!何かあったらなんでも言ってね!!」
「アンジュ、妹と一緒に登下校できるなんてこれからは毎日が夢のようです…」
「お姉さま方…ありがとうございます!!」
そんな乙女たちの会話を見ながら一人肩を落とすものがいた。
「僕の時と反応がまるで違わないですか…」
****
「本年からクラスに、編入生が入る。さあ、入れ」
先生に促されて教室の扉が開き、入ってきたのは…?ええ??二人???
クラスがものすごくざわつき始めた。それもそうだろう。入ってきた二人は白銀色の美しい髪を持つ、人間離れした超絶美男美少女だったからだ。
「ファイ・ハトファル君と、皐月・ハトファルさんだ。二人は親戚同士、ご両親の都合でラティス国に長期滞在することになりこの学園に編入した。皆、仲良くするように。」
クシュナと私は顔を合わせて驚いた…
「えっ、そんなの聞いてないんですけど…」
****
昼休み、私たちは屋上に二人を連れ出した。
「ど、どうして皐月様がここにいらっしゃるんですか?」
私は単刀直入に問いただした。クシュナも首がちぎれるほどの勢いで肯いている。
「どうしてって…ティオに会いたかったから…じゃだめかしら?アティスさん??」
皐月様は新緑色の目をくりくりさせて私を見上げてきた…
こ、これが美少女無敵破壊力パワー…
(→美琴、しっかりしてください。思考停止とか勘弁してくださいよ。)
私が目を白黒させていると見かねたファイ様が助太刀する。
「ちょっとちょっと、皐月!アティスが困ってるよ!アティスを困らせて良いのは私だけなんだから!!アティス、あんずるな。皐月は、王子ジュノーをこっぴどくフルためにここに来たのだ。決して、クシュナを困らせるためではない。」
ファイ様の話によると、皐月様は黒竜殿下と愛を育み始めているらしく、ジュノー殿下はお呼びではないそうだ。しかし、何度断りの申し出をしても殿下の願いは止まず、完全に諦めてもらうために急遽遠路遥々人間界まで来てくれたらしい。大変失礼かもしれないが、言わせてもらおう。皐月様って、もしかして暇なのか…?
二回目のジャッジメントは、魔法旅行。
魔法旅行とは全学年が毎年行く、文化旅行のようなもので、魔法や魔術関するテーマをペアごとに決め、調査し報告すると言う旅行だ。期間は一週間。
その魔法旅行のペアは、同じ学園に通うものなら誰とでもペアを組むことができる。故に、一学年上の王子たち攻略対象とも、そして、年下攻略対象義弟ジェイとも組むことができるのだ。
「それでね、クシュナ。提案があるんだ。ジュノー殿下はきっと皐月と組みたがるだろう、それは皐月が好きと言う問題ではなく、ただ彼のドラゴン熱からくるものだ。そこで彼に、恋愛感情とドラゴン愛の区別をつけてもらう為、わざと皐月と組ませて理解させよう、本当の好きの意味を!!」
クシュナは少しバツの悪そうな顔をしている。
あの魔力実技試験以降、クシュナへの王子の態度は明らかに変わった。
昔は執拗に避けたり、彼女には無関心のそぶりをしていたりした。しかし、今は話をちゃんと聞くようになったし、彼女に一目置き始めた様子を見せている。それなのに、まだ、ドラゴン愛には勝てはいなかったのだ…。
「本当に、ジュノー殿下はドラゴン馬鹿ね。」
クシュナは小さくつぶやいた。そして顔を上げる。彼女の瞳は真っ赤に燃え上がっていた。
「わかりました。しかし条件があります。ファイ様は私と組んでください。」
「えっ??」
ファイ様も私も目が点だ。
「王子はドラゴンバカです。私がファイ様と一緒にいれば、必ず私たちの方にも近寄ってきます。王子ホイホイのためにファイ様、あなたを利用させていただきます!」
「ちょっと、待って。クシュナ。じゃあ私は誰と組めば…?」
クシュナは、待ってましたとばかりの笑みを浮かべて言った。
「ジェイがいるではありませんか。」
*****
魔法旅行まで一ヶ月を切った。
ジェイではなく、アンジュと組もうとしたが、彼女は流石に長期旅行にはいけないと断られてしまった。そこで仕方なく、ジェイにペアを申し込むことになった。一回目のジャッジメントもジェイだったし、何気に毎回私ジェイとペア組んでないか…?
「ジェイ。あなた魔法旅行のペア決めた?」
「うん?決めてないけど…」
「ジェイ、まだ決めてないなら私と組んでくれないかしら?」
彼は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「えっ…でもファイ様とねえさまが組むものだとばっかり…」
「ファイ様はクシュナと組むの。ジェイ、私と…組んでくれない?」
恐る恐る様子を伺うと、ジェイは子犬のような表情をしてうなずいた。
「いいよ!!」
純粋ピュアな少年の笑顔にしばらく当てられてしまう…私だった。
ジェイ…めっちゃ可愛い!!!!反則。
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