悪役令嬢の冷静分析録〜ババ抜き系乙女ゲームの世界で〜

にんじんうまい

文字の大きさ
47 / 55
第3章:冷静にゲームクリアを分析する

47:冷静に二学年を迎える

しおりを挟む

あの奇襲攻撃を仕掛けた日の後、エレーナは姿を現さなくなった。
薬の件も調べると、やはり倉庫から在庫数がいくらか減っており、エレーナの仕業とし解決した。薬を作り出した、アンジュもドリスさんもその事件の流れを聞き、たいそう驚いていた。そして、それ以降よそ者に薬が安易に流れないよう規制を厳しくすることに決めたのだった。


一年はあっという間に過ぎていき、私たちはなんと二学年を迎えていた。

「ちょっと~辛気臭い顔してどうしたの?アティス。あなたまた、エレーナのこと考えてたでしょう?あんたがそう言う顔するのは大抵そのことなんだから。アメは帰ってきません。諦めなさい!
それよりも私たち、明日から二学生よ!ジャッジメントもある大事な年!なにがなんでもみんなで幸せになってやろうじゃない!支配人なんて怖くないんだから。おほほほほ」


いい加減に気持ちを切り替えよう。
そう、二学年といえばジャッジメントである、魔法旅行でのペア決めがある。
そして何より、ファイ様が二年時編入でこの学園にやってくるのだ、この年は重要な年。良いものにしなくては!!


「ちょっと、ねえさんたち?さっきから僕がいるのわかってる?
二人は一つ上がるだけだけど、僕は入学する立場、一年目なんだよ!少しは僕に気遣って話進めてくれない??」


あ、そうだった。
安全圏のジェイの存在をすっかり忘れていた。そう、彼も攻略対象で一年生になるのだ。

「お、オメデトウゴザイマス」

「ちょっと、二人とも心籠もってなさ過ぎ~!!」

そんな話をして笑っている時だった。

「アティスちゃんたち!ここにいたのね。ちょうどよかった!
アンジュからあなたちに重要な報告があるそうよ。アンジュいらっしゃい。」

車椅子を押されてアンジュが現れた。
少し頬が赤くなんだか緊張している様子…

「あのう…私も、今年から学園に通えることになりました!!!
そ、そのう。お姉さま方、よろしくお願いいたしますわ!!」


私たちは素直に喜んだ。
最初は病気で伏せがちだったアンジュが、自分で治療薬を作り出し、学校に通えるまでになったのだ。

私たちはアンジュを歓迎した。

「アンジュ、おめでとう!!何かあったらなんでも言ってね!!」

「アンジュ、妹と一緒に登下校できるなんてこれからは毎日が夢のようです…」

「お姉さま方…ありがとうございます!!」


そんな乙女たちの会話を見ながら一人肩を落とすものがいた。


「僕の時と反応がまるで違わないですか…」



****



「本年からクラスに、編入生が入る。さあ、入れ」

先生に促されて教室の扉が開き、入ってきたのは…?ええ??二人???
クラスがものすごくざわつき始めた。それもそうだろう。入ってきた二人は白銀色の美しい髪を持つ、人間離れした超絶美男美少女だったからだ。

「ファイ・ハトファル君と、皐月・ハトファルさんだ。二人は親戚同士、ご両親の都合でラティス国に長期滞在することになりこの学園に編入した。皆、仲良くするように。」


クシュナと私は顔を合わせて驚いた…

「えっ、そんなの聞いてないんですけど…」


****


昼休み、私たちは屋上に二人を連れ出した。

「ど、どうして皐月様がここにいらっしゃるんですか?」

私は単刀直入に問いただした。クシュナも首がちぎれるほどの勢いで肯いている。


「どうしてって…ティオに会いたかったから…じゃだめかしら?アティスさん??」


皐月様は新緑色の目をくりくりさせて私を見上げてきた…
こ、これが美少女無敵破壊力パワー…


(→美琴、しっかりしてください。思考停止とか勘弁してくださいよ。)


私が目を白黒させていると見かねたファイ様が助太刀する。


「ちょっとちょっと、皐月!アティスが困ってるよ!アティスを困らせて良いのは私だけなんだから!!アティス、あんずるな。皐月は、王子ジュノーをこっぴどくフルためにここに来たのだ。決して、クシュナを困らせるためではない。」


ファイ様の話によると、皐月様は黒竜殿下と愛を育み始めているらしく、ジュノー殿下はお呼びではないそうだ。しかし、何度断りの申し出をしても殿下の願いは止まず、完全に諦めてもらうために急遽遠路遥々人間界まで来てくれたらしい。大変失礼かもしれないが、言わせてもらおう。皐月様って、もしかして暇なのか…?


二回目のジャッジメントは、魔法旅行。
魔法旅行とは全学年が毎年行く、文化旅行のようなもので、魔法や魔術関するテーマをペアごとに決め、調査し報告すると言う旅行だ。期間は一週間。
その魔法旅行のペアは、同じ学園に通うものなら誰とでもペアを組むことができる。故に、一学年上の王子たち攻略対象とも、そして、年下攻略対象義弟ジェイとも組むことができるのだ。


「それでね、クシュナ。提案があるんだ。ジュノー殿下はきっと皐月と組みたがるだろう、それは皐月が好きと言う問題ではなく、ただ彼のドラゴン熱からくるものだ。そこで彼に、恋愛感情とドラゴン愛の区別をつけてもらう為、わざと皐月と組ませて理解させよう、本当の好きの意味を!!」


クシュナは少しバツの悪そうな顔をしている。
あの魔力実技試験以降、クシュナへの王子の態度は明らかに変わった。
昔は執拗に避けたり、彼女には無関心のそぶりをしていたりした。しかし、今は話をちゃんと聞くようになったし、彼女に一目置き始めた様子を見せている。それなのに、まだ、ドラゴン愛には勝てはいなかったのだ…。

「本当に、ジュノー殿下はドラゴン馬鹿ね。」

クシュナは小さくつぶやいた。そして顔を上げる。彼女の瞳は真っ赤に燃え上がっていた。

「わかりました。しかし条件があります。ファイ様は私と組んでください。」

「えっ??」

ファイ様も私も目が点だ。

「王子はドラゴンバカです。私がファイ様と一緒にいれば、必ず私たちの方にも近寄ってきます。王子ホイホイのためにファイ様、あなたを利用させていただきます!」


「ちょっと、待って。クシュナ。じゃあ私は誰と組めば…?」


クシュナは、待ってましたとばかりの笑みを浮かべて言った。


「ジェイがいるではありませんか。」


*****


魔法旅行まで一ヶ月を切った。
ジェイではなく、アンジュと組もうとしたが、彼女は流石に長期旅行にはいけないと断られてしまった。そこで仕方なく、ジェイにペアを申し込むことになった。一回目のジャッジメントもジェイだったし、何気に毎回私ジェイとペア組んでないか…?

「ジェイ。あなた魔法旅行のペア決めた?」

「うん?決めてないけど…」

「ジェイ、まだ決めてないなら私と組んでくれないかしら?」

彼は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。

「えっ…でもファイ様とねえさまが組むものだとばっかり…」

「ファイ様はクシュナと組むの。ジェイ、私と…組んでくれない?」

恐る恐る様子を伺うと、ジェイは子犬のような表情をしてうなずいた。

「いいよ!!」

純粋ピュアな少年の笑顔にしばらく当てられてしまう…私だった。
ジェイ…めっちゃ可愛い!!!!反則。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...