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隅田
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全館禁煙が施行されて半年。これを期に禁煙しようと思って貼り薬を購入したが、貼り薬がなくなるとまた吸ってしまうため、俺はパッチ中毒のような状態になってしまった。このパッチがまた強固で肌がかぶれるし、同じところで買うと毎回薬剤師に説教されるのが苦痛でドラッグストアをループして買いだめする羽目になり面倒で、いいことなど何もないような気がして結局煙草を買ってしまう。一番いいのが喫煙所のある会社に転職することだが、残念なことに三十を過ぎてしまい潰しのきかない事務職ということで今の職場にとどまっている。同僚は皆俺が全館禁煙に合わせて煙草を卒業した偉い奴だと思っている。日中はパッチで退社するや否やヘビースモーカーに戻っているなど決して言えない。
「加熱式にすればいいんだよ。バレないよ」
そう助言をくれたのは最近できた彼女だ。煙は一瞬で消えるし、ロッカーで吸っても問題ないというのだ。というわけで、今週からその作戦を採用している。俺の立てたタイムスケジュールはこれだ。
朝礼の前にトイレで一服。途中でお腹を壊した振りをしてトイレで一服。昼御飯は喫煙できる飲食店に行き紙巻きを一服。そして午後も一度トイレで一服。これでなんとか乗り越えられる気がする。一日中加熱式だと少々物足りないので、間に紙巻きを挟む必要があるのだった。
昼御飯は徒歩三分ほどにある、カレー喫茶『しま』に行く。あそこは喫煙所としか思えないくらい紫煙で曇っている。
「ポークカレー大盛りで」
俺はいつも一番リーズナブルなカレーを大盛りにして節約する。マスターも煙草を咥えている。うん、安心する。簡単なカレーは秒で出てくるし、ここがなくなったら生きていけないと感じる。
戻ると隣の席の瀬戸が「なんか煙草くさいな」と言い出した。皆一同に頷き、俺を見てきた。
「いやー、ランチ『しま』に行ったからかな」
俺は慌てて誤魔化した。いや、事実であるが、あくまで副流煙のせいにする。
「えっよくあんな煙草くさいところいけるな。カレーの味も普通だし。早いけど」
「禁煙した奴なら普通は行けないよな」
皆が疑いの目を向けてくる。
「俺すごいカレー好きでさ」
俺は即座に答えた。カレーは別に好きでも嫌いでもないが、この方向で行くしかない。
なんとかその場を誤魔化し、翌日はランチから戻ると上着を椅子に掛けずにロッカーへ押し込み、消臭剤を自分に振りかけてから職場に赴いた。
加熱式タイムをトイレで終えて俺は、何の気なしにまた机に戻った。
「あれ? なんか変なにおいしない?」
「臭いな」
周りがまた呟いている。まさか俺か? 俺はその会話には入らず、仕事を続けた。
幾日も幾日も、そんなことがありながらも過ぎていった。ある日の帰り、俺は上司に呼び出された。
「隅田君さぁ、ひょっとして館内で煙草吸ってないか?」
「えっ」
何故。何故バレたのだ。しかし、証拠はないはずだ。しらを切るんだ。
「すすすすすってませんよ」
「皆が守っているルールを守れないような人間は信用されないよ」
上司は返事をガン無視した。なんだ、何をこれから言われるんだ。
あぁ煙草が吸いたい。おかしい。こんな時に。でも吸いたいんだ。俺は何か、処分をされるのだろうか。
「加熱式にすればいいんだよ。バレないよ」
そう助言をくれたのは最近できた彼女だ。煙は一瞬で消えるし、ロッカーで吸っても問題ないというのだ。というわけで、今週からその作戦を採用している。俺の立てたタイムスケジュールはこれだ。
朝礼の前にトイレで一服。途中でお腹を壊した振りをしてトイレで一服。昼御飯は喫煙できる飲食店に行き紙巻きを一服。そして午後も一度トイレで一服。これでなんとか乗り越えられる気がする。一日中加熱式だと少々物足りないので、間に紙巻きを挟む必要があるのだった。
昼御飯は徒歩三分ほどにある、カレー喫茶『しま』に行く。あそこは喫煙所としか思えないくらい紫煙で曇っている。
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俺は慌てて誤魔化した。いや、事実であるが、あくまで副流煙のせいにする。
「えっよくあんな煙草くさいところいけるな。カレーの味も普通だし。早いけど」
「禁煙した奴なら普通は行けないよな」
皆が疑いの目を向けてくる。
「俺すごいカレー好きでさ」
俺は即座に答えた。カレーは別に好きでも嫌いでもないが、この方向で行くしかない。
なんとかその場を誤魔化し、翌日はランチから戻ると上着を椅子に掛けずにロッカーへ押し込み、消臭剤を自分に振りかけてから職場に赴いた。
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