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相川
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俺は喫煙所仲間の菊菜医師に勧められるままに、アイコスを購入した。菊菜医師とは同世代で、話が合う。おちゃらけているしイケメンだしいいところだらけなのに、あれで乳癌を切りさばいているというから尊敬に値する。
これを妻に言うか、言わざるか。これがポイントだ。アイコスも煙草と認定されれば離婚。それなら隠れてアイコスするほうがいいだろうか。しかしバレた時は即座に離婚されるとみていいだろう。
「有害物質を九割カットしてるんだって」
菊川医師が言っていた。医者が言うんだから、と説得するか。しかし吸ってみると確かに臭くないし煙たくない。バレない気もする。
「ただいま~」
俺は試しに家に入る直前にアイコスで一服してから門を開いてみた。離婚を言い渡されてからは今までは自宅で禁煙、職場で禁煙、許されるのは通勤途中と昼だけでたいそうな減煙週間となりストレスが溜まっていた。
「お帰りなさい」
妻はいつものように子供を背負って夕飯の支度をしていた。美味しそうなにおいが押し寄せてくる。
わざと近くに行って弁当箱を差し出しても、反応はない。バレてない。
夕飯を食べ終えて、妻と子供が風呂に入っている時にこっそり換気扇の下で吸ってみた。上がってきた妻は、何も気付いていない。
これは言わなくても良いのではないだろうか。
問題はその本体の管理だ。妻の目のつくところにアイコスや充電器や煙草を置いてはいけない。絶対に肌身離さず持っていなければ離婚だ。
困るのは充電なので、俺はモバイルバッテリーを購入し、それも肌身離さず持つことにしたが荷物がどんと増えた。しかしそれも煙草のためと思えばなんのそのだ。
しかし大学病院内で吸うのは勇気がいる。やはり外のほうがいいだろうか。工学部の灰皿はまだあるが、何せ遠い。菊菜医師はどうしているのだろう。
「相川君ー」
そんなことを考えながら従業員通路をうろうろしていると、菊菜医師が声をかけてきた。
「一服かい?」
「うん、アイコスを買ったんだけど、やっぱり喫煙所に行かなきゃだめかなと思って悩んでいたんだよ」
「買ったんだ」
菊菜医師はにこにこしている。
「あれ、菊菜先生も一服? どこでしてる?」
俺は充電器、スマホ、アイコス一式を鞄に押し込み、たかが休憩なのに見た目おおごとである。
「俺、実は車にしてるよ。あれから色々調べてみたんだけど、副流煙の害はまだわかってないんだけど、実はけっこう独特のにおいがあるらしいんだ。こっそりロッカーで、と思ってたけど厳しい感じがする」
「……そうなんだ……」
菊菜医師は車通勤だが、俺は電車である。期待を胸に菊菜医師を見ると、「勿論相川君も来いよ!」と言ってくれた。
菊菜医師の車はワーゲンのゴルフで小綺麗だった。今までは車での喫煙は控えていたらしいのだが、アイコスにした際解禁したらしい。カーコロンのにおいがきつい。
「アイコスのにおいが気になってしまって、強めの香水にしたんだよね」
菊菜医師が苦笑する。へぇーそうなんだ、と軽く返したが、ふと俺は気付いた。においがあるということは、妻にバレてもおかしくないということだ。まずい。ここ数日、室内で吸ってしまった。
「あれ? 奥さんには言ったの? なんか離婚だとかになってたじゃない」
「……いや、言ってないんだ……」
「そうかぁー。俺は彼女もアイコスだから気楽だけど、煙草吸わないパートナーだと大変だな」
菊菜は笑ったが、俺は青ざめた。
これを妻に言うか、言わざるか。これがポイントだ。アイコスも煙草と認定されれば離婚。それなら隠れてアイコスするほうがいいだろうか。しかしバレた時は即座に離婚されるとみていいだろう。
「有害物質を九割カットしてるんだって」
菊川医師が言っていた。医者が言うんだから、と説得するか。しかし吸ってみると確かに臭くないし煙たくない。バレない気もする。
「ただいま~」
俺は試しに家に入る直前にアイコスで一服してから門を開いてみた。離婚を言い渡されてからは今までは自宅で禁煙、職場で禁煙、許されるのは通勤途中と昼だけでたいそうな減煙週間となりストレスが溜まっていた。
「お帰りなさい」
妻はいつものように子供を背負って夕飯の支度をしていた。美味しそうなにおいが押し寄せてくる。
わざと近くに行って弁当箱を差し出しても、反応はない。バレてない。
夕飯を食べ終えて、妻と子供が風呂に入っている時にこっそり換気扇の下で吸ってみた。上がってきた妻は、何も気付いていない。
これは言わなくても良いのではないだろうか。
問題はその本体の管理だ。妻の目のつくところにアイコスや充電器や煙草を置いてはいけない。絶対に肌身離さず持っていなければ離婚だ。
困るのは充電なので、俺はモバイルバッテリーを購入し、それも肌身離さず持つことにしたが荷物がどんと増えた。しかしそれも煙草のためと思えばなんのそのだ。
しかし大学病院内で吸うのは勇気がいる。やはり外のほうがいいだろうか。工学部の灰皿はまだあるが、何せ遠い。菊菜医師はどうしているのだろう。
「相川君ー」
そんなことを考えながら従業員通路をうろうろしていると、菊菜医師が声をかけてきた。
「一服かい?」
「うん、アイコスを買ったんだけど、やっぱり喫煙所に行かなきゃだめかなと思って悩んでいたんだよ」
「買ったんだ」
菊菜医師はにこにこしている。
「あれ、菊菜先生も一服? どこでしてる?」
俺は充電器、スマホ、アイコス一式を鞄に押し込み、たかが休憩なのに見た目おおごとである。
「俺、実は車にしてるよ。あれから色々調べてみたんだけど、副流煙の害はまだわかってないんだけど、実はけっこう独特のにおいがあるらしいんだ。こっそりロッカーで、と思ってたけど厳しい感じがする」
「……そうなんだ……」
菊菜医師は車通勤だが、俺は電車である。期待を胸に菊菜医師を見ると、「勿論相川君も来いよ!」と言ってくれた。
菊菜医師の車はワーゲンのゴルフで小綺麗だった。今までは車での喫煙は控えていたらしいのだが、アイコスにした際解禁したらしい。カーコロンのにおいがきつい。
「アイコスのにおいが気になってしまって、強めの香水にしたんだよね」
菊菜医師が苦笑する。へぇーそうなんだ、と軽く返したが、ふと俺は気付いた。においがあるということは、妻にバレてもおかしくないということだ。まずい。ここ数日、室内で吸ってしまった。
「あれ? 奥さんには言ったの? なんか離婚だとかになってたじゃない」
「……いや、言ってないんだ……」
「そうかぁー。俺は彼女もアイコスだから気楽だけど、煙草吸わないパートナーだと大変だな」
菊菜は笑ったが、俺は青ざめた。
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