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【第一章】出会いの始まり
少女とフェンリルの出会い
しおりを挟む「フェン殿はこの森にもともといなかったと聞いたが、どうして今ここで暮らしているんだ?」
「フェンは、この森で怪我をして倒れていたのよ。その時はまだ、聖獣については知らなかったから、ただの大きい狼だと思っていたんだけど」
「……フェンリルだったわけだ」
「ええ。彼が狼じゃなくてフェンリルだって知ったのは、怪我が治ったときに、教えてもらったの」
「そうなのか。……フェン殿との出会いをもう少し聞いても?」
カインはレイとフェンの関係に深く興味を示した。
「……フェンと出逢ったのは確か、私が十歳になった頃。当時の私は魔法が使えなかったから、怪我が治るまでしばらくお世話することにしたの」
「それから?」
カインは、二人の出会いに、興味津々だ。
「それから、フェンとは一緒に遊んだり。……あ、当時はフェンリルさんって呼んでたわね。契約のことも、その頃に聞いて。」
「フェン殿は物知りな方だな」
「ええ。魔法のことも彼から教わったわ。私の先生でもあるわね」
彼女は、当時のことを思い返しながら、嬉しそうに話す。
「私もフェン殿に何か教わってみたいな」
「教えてくれるんじゃないかしら。……彼はすごく強いわよ」
「だったらなおさら、手合わせしていただきたいな」
カインは、フェンに深く興味を示した。まるで、師匠をたたえる弟子のように。
「すまない。話をそらしてしまった。続きを聞かせてくれるか?」
「ええ。どこまで話したかしら。…ああそうだわ。二人で遊んだり、森を散策するようなって、いろんな経験をしたわ。そんな風に過ごしていたら、一年が経っていたの」
「そんなに経っていたのか」
「ええ。彼はこの森が気に入ったと言ってくれた。私といる毎日は飽きないと。私もフェンと過ごす毎日が楽しいと思っていてから素直に嬉しかった」
レイは、懐かしそうに目を細めた。
「もしかして、その時に契約を?」
「いいえ。確かに彼から契約を申し出てくれたけど、私は反対したわ。契約のことを教えてもらった時から、名前を付けてあなたを縛らないって決めてるって。その時初めて、フェルと喧嘩したわ」
「そんなに、君は契約をするのを拒んだのか」
「ええ。街に下りた時に、契約したことで苦しんでいる子達をたくさん見てきたし、人間が彼らを奴隷のように扱っていたところも見た。本来契約をするには、お互いの信頼関係と合意がないといけないはず。なのに、それを無視して強引に契約しているのが許せなかった。私は、そんなもので彼を縛り付けたくなかった」
レイは、拳を強く握りしめて、強い口調で語った。
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