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【第三章】王都国立学園へ
夜ご飯の準備
しおりを挟む暗闇の森は、栄養分を豊富に蓄えた植物が良く育つ。
回復薬のポーションに使われる薬草も質の良い物が採れる。それ故、木の実やキノコも市場に出回るものよりも栄養価が高く、立派なものが多い。
「レイ!この実、食べごろだよ!」
木登りの得意なルビーラビットが、赤い実が生っている木に登ってレイに伝えた。
彼らにとって、果実の食べ頃を見極めるのは朝飯前だ。
「こっちは、美味しそうなキノコがあるよ!」
セレリスも負けじと、木の根元に生っていたキノコを見つけ、近くを足で掘りながらレイに知らせる。
「二人とも張り切ってるわね。食べ頃のを見つけたら、このかごに入れていって」
そう言い、レイは背負っていたかごを置いた。
「は~い!セレ!どっちが多く集められるか勝負しよう!」
「うん。いいよ」
「じゃあ行くよ~。よ~い、どん!」
そう言うと二匹は木の実、キノコを採りに勢いよく駆けていった。
「離れすぎないでね」
時すでに遅し。レイが声を掛けた頃には、彼らの姿は彼方に消えていた。
「大丈夫かしら?」
レイは、彼らの事を心配しつつ、自身も食材調達を始めた。
採集から、およそ一時間が経った頃。
何事も無く、食材を集め終えたレイたちは、合流場所の湖に一足先に来て釣りをしていた。
「いっぱい取れたね!」
「私も、いつもより頑張った」
2匹が競走して採ってきた木の実やキノコは、かごいっぱいに入っている。
「2人とも、お疲れ、助かったわ。お陰で、今晩はたくさん作れるわ」
「やった!きょうは、何作る~?」
ルビーラビットは、彼女のそばでぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねる。
その横で、セレリスはレイの役に立てたと、満足げだ。
「なにがいい?」
レイが、二匹に晩ご飯は何がいいか聞いた。
「んー。あ!クルミのパンケーキたべたい!」
「それは、ご飯食べた後ね」
「は~い」
主食ではないと言われ、パンケーキをメインに食べたかったルビーラビットは肩を落とした。
「デザートに作ってあげるから」
彼の様子を見かねたレイは、慰めの言葉を掛けた。
「うん!」
その言葉を聞いた彼は、耳をピンと立て、元気を取り戻す。
「ねぇ、レイ。あたし、木の実のサラダ食べたい」
セレリスは、少し控えめにサラダを希望した。
「いいわよ。……他は、フェンが捕ってきてくれた後で考えようかしら」
レイがそう呟いた時、森の奥からこちらに向かって来る者の気配がした。
「レイ!今日はいい獲物が取れたぞ!」
森の中から姿を現したのは、黒い血にまみれたフェンだった。
血まみれの原因は彼が咥えている、獲物の返り血だ。その返り血で、もはやフェンなのか誰か分からない。
「暴れたわね」
レイは、フェンの姿を見て呆気にとられながら言葉を溢した。
「なかなかに、しぶとい奴だった。さぞ、こいつは美味いんだろうなぁ」
そう言いながらフェンは、咥えていた獲物をどしんと、降ろした。
獲物は、彼の体の半分ほどの大きさ。上等の大きさだ。
「最高に美味く作ってくれよ、レイ」
「そうね。今日はあえて、塩コショウだけで味付けしたステーキにしようかしらね」
「おお、ステーキか。いいな。ステーキは肉の旨さを直に感じられるから好きだ。今晩が楽しみだ」
フェンは、目を輝かせうきうきとした表情をした。
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