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第25話 勘違い野郎
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「アリースーーーーー!!!!」
空高くへと飛んで行く彼女に届けとばかりにおれは腹の底から叫び続けた。だが彼女は振り返ろうともせずに行ってしまった。アリスが消えて行った青い虚空をおれは涙を流しながらいつまでも見つめていた。横でジュノがぎゃあぎゃあと喚いていたがおれの耳には何も入ってこなかった。今おれの心にあるのはアリスだけだ。おれはその場を離れる事が出来ずアリスの帰りを待ち続けた。だが夜が明けるまで彼女が戻る事はなかった。
それからいくつ夜を数えただろうか。アリスはいつまで経っても帰ってこない。彼女が戻り次第、おれはすぐにでも婚姻の儀を挙げたかった。一度婚約解消されてしまったが、また求婚すればいい。心を込めて彼女に愛を伝えればきっと彼女も分かってくれる。
「おい、マーカス。ロビン殿がお呼びだ。今すぐ団長室へ行け」
魔王襲来後、ようやく王都の復興も目処がついてきた。当然の話だがアリスの功績は国が認める程の偉業だ。最近では「アリス敬愛倶楽部」なる組織まであるらしい。些か不愉快ではあるがそれだけ彼女は素晴らしいという事だろう。
「マーカス・バッシュ。入りまーす!」
団長室へと入るとそこにはロビン団長と見知らぬ男が椅子に座っていた。団長に促され、おれは彼らの向かい側の席についた。まずはロビン団長が腕組みしながらおれに質問してきた。
「現在、アリス殿が消息を絶った件の調査をしているのは知っているな?」
「はい。もちろん存じております」
アリスが王都から、いやこの国から出て行ってしまった理由。真っ先に疑われたのは元婚約者のおれだった。確かにあの日、おれは彼女を怒らせてしまった。ジュノという女に唆され、アリスに嫉妬させてしまった。その結果、婚約解消という道を選ばせてしまったのだが――
「おまえは前回の聴取で、婚約解消は彼女が誤解をしたからだと言っていたな?」
「はっ! 小さな不運が積み重なった結果でした。もっとおれが彼女を大切にしていれば……」
「それはおまえが長らくザイロへ帰っていない事を言っているのだな? 今一度、なぜザイロに帰らなかったかを説明しろ」
おれは団長に故郷に帰れなかった理由を事細かに説明した。流行病にかかった事や闘技大会での怪我。その他思い出せる範囲でその理由を話した。
「まあ嘘は言ってないようだな。だがおまえの話にはどうやら齟齬がある」
そう言って団長は封筒の束をおれの目の前にばさりと投げ寄越した。
「それは魔法省のサミエルから渡されたものだ。おまえがアリス殿に送った手紙で間違いないな?」
封筒を手に取って見れば確かにおれがアリスに送った手紙だった。どうやら彼女はおれからの手紙を大切に保管していたらしい。少し照れ臭くなりおれは思わず笑みがこぼれた。
「概ね、おまえが先程言った内容がその手紙には書いてあった。だがおまえは本当に帰れなかったのか? 帰らなかったの間違いじゃないか?」
「……どういう意味でしょう?」
おれが恐る恐る尋ねると団長の目つきがわずかに鋭くなった。
「まず流行病にかかったという件だが、当時の診断書が残っていた。おまえがかかったのはただの風邪だった。2,3日寝たら治っただろう?」
「えっと……それは……」
「その次の闘技大会の怪我。これも診断書があった。確かにおまえは左腕に怪我を負った。だがそれはひび程度のものだ。利き腕は無事だったし歩けるのだから馬車には乗れたろ?」
まさか何年も前の事を調べ上げられるとは思わなかった。冷静に思い返せば、あの頃はジュノと離れたくないという気持ちもあった。だがあれは若気の至りというものだ。
「う、占いの話は本当です! 王都で有名な占い師で、あの時は非常に不吉な予感がしました! もしザイロに帰って、万が一アリスも巻き添えにしてしまったらと思い――」
「あの占い師はインチキで有名だったんですよ」
その時突然、団長の横に座っていた男がにこにことしながら口を開いた。
空高くへと飛んで行く彼女に届けとばかりにおれは腹の底から叫び続けた。だが彼女は振り返ろうともせずに行ってしまった。アリスが消えて行った青い虚空をおれは涙を流しながらいつまでも見つめていた。横でジュノがぎゃあぎゃあと喚いていたがおれの耳には何も入ってこなかった。今おれの心にあるのはアリスだけだ。おれはその場を離れる事が出来ずアリスの帰りを待ち続けた。だが夜が明けるまで彼女が戻る事はなかった。
それからいくつ夜を数えただろうか。アリスはいつまで経っても帰ってこない。彼女が戻り次第、おれはすぐにでも婚姻の儀を挙げたかった。一度婚約解消されてしまったが、また求婚すればいい。心を込めて彼女に愛を伝えればきっと彼女も分かってくれる。
「おい、マーカス。ロビン殿がお呼びだ。今すぐ団長室へ行け」
魔王襲来後、ようやく王都の復興も目処がついてきた。当然の話だがアリスの功績は国が認める程の偉業だ。最近では「アリス敬愛倶楽部」なる組織まであるらしい。些か不愉快ではあるがそれだけ彼女は素晴らしいという事だろう。
「マーカス・バッシュ。入りまーす!」
団長室へと入るとそこにはロビン団長と見知らぬ男が椅子に座っていた。団長に促され、おれは彼らの向かい側の席についた。まずはロビン団長が腕組みしながらおれに質問してきた。
「現在、アリス殿が消息を絶った件の調査をしているのは知っているな?」
「はい。もちろん存じております」
アリスが王都から、いやこの国から出て行ってしまった理由。真っ先に疑われたのは元婚約者のおれだった。確かにあの日、おれは彼女を怒らせてしまった。ジュノという女に唆され、アリスに嫉妬させてしまった。その結果、婚約解消という道を選ばせてしまったのだが――
「おまえは前回の聴取で、婚約解消は彼女が誤解をしたからだと言っていたな?」
「はっ! 小さな不運が積み重なった結果でした。もっとおれが彼女を大切にしていれば……」
「それはおまえが長らくザイロへ帰っていない事を言っているのだな? 今一度、なぜザイロに帰らなかったかを説明しろ」
おれは団長に故郷に帰れなかった理由を事細かに説明した。流行病にかかった事や闘技大会での怪我。その他思い出せる範囲でその理由を話した。
「まあ嘘は言ってないようだな。だがおまえの話にはどうやら齟齬がある」
そう言って団長は封筒の束をおれの目の前にばさりと投げ寄越した。
「それは魔法省のサミエルから渡されたものだ。おまえがアリス殿に送った手紙で間違いないな?」
封筒を手に取って見れば確かにおれがアリスに送った手紙だった。どうやら彼女はおれからの手紙を大切に保管していたらしい。少し照れ臭くなりおれは思わず笑みがこぼれた。
「概ね、おまえが先程言った内容がその手紙には書いてあった。だがおまえは本当に帰れなかったのか? 帰らなかったの間違いじゃないか?」
「……どういう意味でしょう?」
おれが恐る恐る尋ねると団長の目つきがわずかに鋭くなった。
「まず流行病にかかったという件だが、当時の診断書が残っていた。おまえがかかったのはただの風邪だった。2,3日寝たら治っただろう?」
「えっと……それは……」
「その次の闘技大会の怪我。これも診断書があった。確かにおまえは左腕に怪我を負った。だがそれはひび程度のものだ。利き腕は無事だったし歩けるのだから馬車には乗れたろ?」
まさか何年も前の事を調べ上げられるとは思わなかった。冷静に思い返せば、あの頃はジュノと離れたくないという気持ちもあった。だがあれは若気の至りというものだ。
「う、占いの話は本当です! 王都で有名な占い師で、あの時は非常に不吉な予感がしました! もしザイロに帰って、万が一アリスも巻き添えにしてしまったらと思い――」
「あの占い師はインチキで有名だったんですよ」
その時突然、団長の横に座っていた男がにこにことしながら口を開いた。
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