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第24話 罪深さの代償
しおりを挟む「ねえ、聞いて! サミエル! 私はあの男につきまとわれていたの! 私にはちゃんとした婚約者がいるって言ったのに! それでもあいつはしつこく迫っ――」
「調べたよ」
サミエルがこちらへ向き直り抑揚のない声で私の言葉を遮った。その表情は変わらずに冷淡なものだったけど、彼の拳は強く握られわずかに震えていた。
「学生時代、君達二人は随分仲が良かったみたいだね。マーカスの婚約者はてっきり君だと思っていた人も中にはいたよ」
彼の問い詰めるような視線に耐えきれず、私は思わず視線を逸らした。
「君は彼の事をただの友達だと思っていたかもしれない。だがその振る舞いは正しかったかい? 友人としての節度を持った行動をしてたかい?」
彼に返す言葉は何も見つからなかった。マーカスに対する態度や接し方、どれもが間違っていた。ほんのひと時の遊びだと言い訳を用意してマーカスを誑かし、そしてサミエルを裏切っていた。こうなったのはまさに自業自得としか言いようがない。サミエルが手紙を手に取り視線を落とす。
「彼の手紙にはこう書いてありました。『今度ジュノが結婚するからそれに合わせておれ達も婚姻の儀を執り行う。彼女にも一旦おれの苦しみを知ってもらい、自分の気持ちを再確認してもらおう。だが彼女が家の事情でやむなく結婚する事はわかっている。だからおれも困難を乗り越え彼女を救い出すために敢えて彼女と同じ境遇にその身を置こう。婚姻の儀は12月15日。その日までに王都まで来るように』以上、原文のまま読み上げました」
マーカスの手紙の内容を初めて知り恐怖を感じた。彼が正気を失っているとは感じていたが、そこまで妄想が進んでいるとは思ってなかった。
「彼がなぜ、私達と同じ日に婚姻の儀を行おうとしたのか……そのあたりは現在騎士団の方で話を聞いているはずです。いずれにせよ今回マーカスが起こした一連の行動が、アリスさんが姿を消した理由にひとつであると私は思います。そしてジュノ・ダリンジャーがその要因の一端を担っていたと結論付けました」
彼の言葉がずしりと重く背中にのしかかる。そして自分の愚かさ、浅はかさを思い知った。「最後に――」とサミエルが言葉を続けた。
「最後に陛下。婚約者のかような行動に今まで気づかなかった私にも責任はございます。私自身いかなる処分もお受け致します」
「ふむ」と王は軽く息を吐いた。そしてなにかを見定めようと、しばらく私の方を見ていた。
「ジュノ・ダリンジャー」
「……はい」
「おぬしがやって来たことは法律の上では罪に問われる事はない。だがそれにより一人の少女の心を深く傷つけた。その事は重々理解したか?」
「はい、陛下……」
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サミエルとの結婚はもちろんなくなった。最後に目にした彼の憐れむような、どこか悲しむような顔が今でも忘れられない。もしかしたら彼女もまた、同じような目でマーカスを見ていたのかもしれない。
深く長くついた溜息は白い雪の中に静かに消えてなくなった。
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