翻る社旗の下で

相良武有

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序章

第2話 みんな仲間だった

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 新人研修が一カ月も過ぎると、百五十人もの人間が居れば自ずと自然発生的にグループが形成されて行った。体育系の者、文系の者、アウトドア派、インドア派、酒を飲む者、飲まない者等々、次第に十人前後の小グループに分かれて行ったし、更に、最初の三ヶ月間の総合研修が終わって現場実習が始まり、五、六人一組の班に分かれて、班単位のローテーションで現場を回って行く頃になると、営業系、事務系、技術系、製造系等々と細分化しても行った。
 研修期間中は残業が無く、仕事は何日も定時に終わった。新人達は毎晩、誰彼無く声をかけ合い、連れ立って繁華街へ繰り出しては、男も女も仕事や人生について談論を風発させた。これから開けるであろう自分達の未来を信じて誰もが熱く語り合った。
「俺はビジネスマンとして大きな目標を持ちたいと思うから、やってやろうじゃないか、という熱い闘志を胸の中に滾らせているが、みんなはどうなんだ?」
一人が問い掛けると仲間達が夫々に呼応した。
「俺は先ず、他人から貪欲に学ぼうと思っている。経験の乏しい新人のうちから自分流に拘ってみても大成する見込みは薄いだろうし、一通り仕事の基本を身につけてから自己流を打ち出したいと考えている」
「そうだな。先ず自分を振り返りながら、プラス思考に徹することだ。努力に努力を重ねてもなかなか結果が出ないという状況はどんな場合にも有り得るよな。そこで腐ってしまうか、図太くチャレンジし続けるかが成否の分かれ道になる。要は一喜一憂しないでタフに粘り抜くことが出来るかどうかだ」
「個人的な能力など有って当たり前の世界でしょう。それを前提とした上で、どれほど他人を共感と共に動かすことが出来るか、自分が花を咲かせるだけでなく、周りにも花をもたらすことが出来るか、それが求められるのではないかしら・・・」
「あのな、俺たちの入った会社は日本経済を牽引する、その一翼を担う大企業である訳だろう。今や中国や東南アジアを越えてインドやアフリカまでグローバリーゼーションが拡がる時代だ。これから、混沌と模索の二十一世紀を生きて行く俺たちに、会社が今、教えようとしているのは、仕事が出来る社員の条件等よりももっと根幹的なもの、そう、人としての生きかた、在り方みたいなものなのではないか?プラスにしろマイナスにしろ、自分の持ち味を極端なまでに活かすこと。それは「自分は自分」という強烈な自負心であり、短所でさえ活かせば強力な武器になるという「逆転の発想」と言えるかもしれない。一人の人間の性格、能力、考え方というものは一つに特定出来るものではない。色々な側面がある筈で、そうであれば、その時の状況に応じて自分の一番良い部分を出すという柔軟性こそが絶対条件となって来る。パーソナリティの時代とはそういうことではないのか。そして、それは俺たちの持つ気概に懸かっている。俺たちの持っている個々の能力はこの気概によってのみ引き出される。その気概とは何か?それは、未来を創る気概だ、と俺は思うのだが違うか、な?」
「そうね。会社の未来、日本の未来、人類の未来・・・でも、私は先ず自分の未来をしっかり創ることから始めたいと思うわ」

 仲間達は休日には、連れ立ってハイキングに出かけたり、近くの河原でバーベキューに興じたりもした。都会の子も地方から来た寮生もみんな青春真っ盛りだった。新人の研修期間の間は、互いの間に、競争というものが無かった、みんな仲間だった。
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