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第六話 三十路の女ともだち
⑦女の盛りは桜の花の如くに短い
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「天橋立で処女を捨てて一人前の女になり、浩介さんと幸せな結婚生活を送ったのに、その後一年もしない内に、あなたはまるで未亡人みたいになってしまったのよね。浩介さんの死と言うあの悲痛は測り知れない程に甚大だったんだろうとあたしは思っているわ」
「あなただって、山崎さんとのことをずぅ~っと引き摺って来たじゃない」
「あたしが?」
「そう」
「まさか」
「あの後、あなたは、恋愛はしても、相手の人を愛さなくなったわ」
理恵は何も応えず、残り少なくなったグラスを空けた。
早希が空になったグラス一杯にブランディを注いだ。
「ねえ、あたし達の春って、もう過ぎちまったのかしら?」
聞いた早希の胸に微かな淋しい翳がふっと過ぎった。その気持を吹っ切るかのように彼女は言った。
「さあね、恋は思案の外、って言うし・・・」
「恋は魔物、要注意だわ」
「わたし達にも、幻ではない、晩生の真実の愛が、これからやって来るわよ、きっと」
「そうね、未だ三十歳を過ぎたばかりだもんね」
「そうよ・・・ねぇ、乾杯しましょうよ、三十路の女の未来に」
「うん」
二人は笑い合いながらグラスを合せた。
窓の外の春雨はもう小降りになっていた。
この分なら今夜には降り止むだろう・・・
女の盛りは桜の花の如くに短い。女ひとり、女であるが故に、真実の愛に巡り逢って、女として生きたい。女だから・・・
夕刻前の日曜日は、未だ、しんと静まりかえったままだった。
「あなただって、山崎さんとのことをずぅ~っと引き摺って来たじゃない」
「あたしが?」
「そう」
「まさか」
「あの後、あなたは、恋愛はしても、相手の人を愛さなくなったわ」
理恵は何も応えず、残り少なくなったグラスを空けた。
早希が空になったグラス一杯にブランディを注いだ。
「ねえ、あたし達の春って、もう過ぎちまったのかしら?」
聞いた早希の胸に微かな淋しい翳がふっと過ぎった。その気持を吹っ切るかのように彼女は言った。
「さあね、恋は思案の外、って言うし・・・」
「恋は魔物、要注意だわ」
「わたし達にも、幻ではない、晩生の真実の愛が、これからやって来るわよ、きっと」
「そうね、未だ三十歳を過ぎたばかりだもんね」
「そうよ・・・ねぇ、乾杯しましょうよ、三十路の女の未来に」
「うん」
二人は笑い合いながらグラスを合せた。
窓の外の春雨はもう小降りになっていた。
この分なら今夜には降り止むだろう・・・
女の盛りは桜の花の如くに短い。女ひとり、女であるが故に、真実の愛に巡り逢って、女として生きたい。女だから・・・
夕刻前の日曜日は、未だ、しんと静まりかえったままだった。
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