兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります

毒島醜女

文字の大きさ
15 / 15

私たち、幸せになります

しおりを挟む

一つない空には雲の代わりに真白の鳩が舞っていた。
ウェディングドレスを脱ぎ、お色直しの用意をする。

神の御許の、正式な婚礼の場では帝国のブランドのウェディングドレスを纏ったが、今回着るのは領民が作ってくれたものだ。
ヒューゴ様の瞳の色と同じ、淡くも澄み切った青色のドレス。温かみを感じる刺繍が施され、見ているだけでも心が和やかになる。

それに袖を通し、先程よりもカジュアルな服装をしたヒューゴ様と再会する。
互いの左手薬指に嵌められた銀色の輝きに改めて、今日という日を持って彼と私、ライラ・コーデルは夫婦として結ばれ、家族になったのだと感慨に耽る。

「先程、姉上を見ました」
「はい」
「……涙を、流していました。生まれて初めてです。クロエ姉上の涙を見たのは」

俯いてそう呟く彼の太い二の腕に、そっと手を添える。

「嬉しかったのですね。弟の晴れ舞台が」
「そうですね。侯爵様、あ、義父殿もここまで来られて良かったですね」
「ええ。色々ありましたが……あそこまで回復して本当によかったと思います」

ふと、控室で会った時に父とした会話を思い出す。

『お前たちに親らしいことをしてやれなかった私を今日招いてくれて、許してくれて、ありがとう。今更だが私に出来る事はなんでもする』

それに「父様が健やかで、私たちの家族でいてくれれば、それでライラは幸せです」と答えた。
それが本心だ。大丈夫です父様。
母様に肩を抱かれ泣いている父様を見て、ロザムンデ姉様も満足そうに微笑んでいた。

「夫婦に、なったのですよね。私たちは」
「そうですね。幸せです。ライラ、様」
「ですから、その、敬称は外しませんか? 家族、なのですから」

私の言葉にヒューゴ様は綺麗な瞳を見開いて、あらぬ方向に目を向ける。

「つまりは呼び捨てですか?」
「……はい」
「確かにそうですね」
「ヒューゴ」
「……ライラ」
「…………」
「…………」

そこからしばらく、重い沈黙が流れる。
ああ、もう。言い出しっぺの私まで恥ずかしくなってしまったわ。
化粧が手袋にうつらないようにしながら、赤くなった顔を隠し、ヒューゴ様を見上げる。彼もまた真っ赤になっていた。
二人とも同じ気持ちなようだ。

「まだ、早かったですね」
「え、ええ。焦らずに行きましょう」

そう。焦らなくていい。
私たちはこれからずっといるんだから。

「ヒューゴ様」
「はい。ライラ様」
「幸せです」
「私もです。今日という日をずっと、ずっと夢に見てきましたから」
「私は、こんな日が来るなんて夢にも思ってなかった。愛する人と一緒になれるだなんて」
「ライラ様……愛しています」
「ヒューゴ様……」
「す、すいません……今日は、先に自分から気持ちをお伝えしたくて」
「うふ、ふふふ。では私は、これから毎日お伝えしますね」
「え! 待ってください、それでは、私の心が――」
「さ、いきましょう。皆が待っています」

戸惑う彼の手を取り、私は皆が待つ広間に向かった。
家族、親しい領民、友人たち。

きっかけはツラいものだったけれど、おかげでベミリオン領で幸せな生活を送る事が出来た。
そしてその幸せはこれからも続いていくのだ。
いつまでも。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

kayopon
2025.09.16 kayopon
ネタバレ含む
2025.09.18 毒島醜女

ライラを推して頂き、ありがとうございます。
転生ヒドインにとってどんな末路が一番いやかな?と考えたらああなりましたw

解除
すずまる
2025.07.19 すずまる
ネタバレ含む
2025.07.19 毒島醜女

誤字報告ありがとうございます。修正いたしました!

お似合いと言っていただけ、ありがとうございます。体格差カップリング好きなのでこの二人はお気に入りです。
知らないまま勝手に恨んでた方が幸せでしょうねえ。もう兄貴の方は尊厳も何もないんで。

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」

仙桜可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。 「で、政略結婚って言われましてもお父様……」 優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。 適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。 それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。 のんびりに見えて豪胆な令嬢と 体力系にしか自信がないワンコ令息 24.4.87 本編完結 以降不定期で番外編予定

【完結】愛で結ばれたはずの夫に捨てられました

ユユ
恋愛
「出て行け」 愛を囁き合い、祝福されずとも全てを捨て 結ばれたはずだった。 「金輪際姿を表すな」 義父から嫁だと認めてもらえなくても 義母からの仕打ちにもメイド達の嫌がらせにも 耐えてきた。 「もうおまえを愛していない」 結婚4年、やっと待望の第一子を産んだ。 義務でもあった男児を産んだ。 なのに 「不義の子と去るがいい」 「あなたの子よ!」 「私の子はエリザベスだけだ」 夫は私を裏切っていた。 * 作り話です * 3万文字前後です * 完結保証付きです * 暇つぶしにどうぞ

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。